自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

理性と感性~脳卒中と自閉症が教えてくれること

2015-08-24 18:52:23 | 理性と感性
 理性は言葉で物語を紡ぐが、その物語には意図的であれ、無意識であれ嘘が忍び込む。その物語(自己主張)が対立を生み、生きにくい世界を作り出している。したがって、我々凡人が幸せに穏やかに生きていくためには、自他分離の理性より自他同一の感性を大切にしたい。それがこのブログ「自然とデザイン」のテーマである。

 左脳の脳出血から8年のリハビリを経て日常生活に復帰したジル・テーラーに生まれた自他同一の感性は、NHK総合番組「君が僕の息子について教えてくれたこと」(動画)でも認めることができる。脳機能はあらゆる生きていく機能に関係しているので、脳卒中と一言に云っても脳出血や脳梗塞の場所や範囲によって症状が異なるように、脳の言語機能の障害に関係する自閉症についても様々な症状があろう。これを「知的障害」とか知能指数と一言で論じるのは、知識社会に浸っている我々の偏見だと思う。

 NHK総合番組「君が僕の息子について教えてくれたこと」は、東田直樹さんが中学生の時(2007年)に書いた「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」をアイルランド在住の自閉症の息子さんがいる作家デイヴィッド・ミッチェル氏が翻訳(2013年)して世界に知られるようになり、今年、2014年8月にNHKで放送された。
 その中で東田直樹さんが気持ちのままに、あるがままに書かれた2つの文章が紹介されている。文章と言うよりこれは自他同一の感性溢れる詩だ。

 「僕は飛びはねている時、気持ちは空に向かっています。
  空に吸い込まれてしまいたい思いが僕の心を揺さぶるのです。
  空に向かって体が揺れ動くのは、そのまま鳥になって
  どこか遠くに飛んで行きたい気持ちにつながるからだと思います。
  どこか遠くの青い空の下で、僕は思いっきり羽ばたきたいのです。」

 「絵具で色を塗っている時、僕は色そのものになります。
  目で見ている色になりきってしまうのです。
  筆で色を塗っているのに、画用紙の上を自分が縦横無尽に
  駆けめぐっている感覚に浸ります。
  物はすべて美しさを持っています。
  僕はその美しさを自分のことのように
  喜ぶことができるのです。」

 東田直樹さんは言葉を話すのが苦手だが、感性の動きを素直に言葉にする能力は秀でている。それは言葉を話すブローカ野と言葉を理解するウェルニッケル野をつなぐ弓状束に障害があるからだそうだが、私には自他分離の言葉(理性)が自他同一の感性を邪魔していたのが、その障害によって取り除かれて、あるがままの感性が自由に溢れ出ているように思える。

 障害と個性の堺はどこにあるのだろう。自他分離の理性は、ときには争いや支配の凶器となる。自他分離の理性と自他同一の感性のバランスをとるよう、「君あり、故に我あり」と毎日を送りたいものである。

参考:
 東田直樹オフィシャルサイト 自閉症の僕が飛び跳ねる理由
 テンプル・グランディン: 世界はあらゆる頭脳を必要としている 動画
 ロージー・キング: 自閉症がいかに私を解き放ち、私らしく感じさせてくれるか 動画

初稿 2014.9.1 更新 2018.9.8(動画)

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