自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

地方をどう創生するのか~アベノミクスと日本経済の未来①

2014-10-11 21:30:01 | NHK
 2014年1月25日、NHK,BSの「グローバルディベートWISDOM」という番組で「日本経済“未来型モデル”を求めて」 が放送された。
 司会 20年以上にわたり停滞し、デフレが続いてきた日本経済。安倍政権の経済政策「アベノミクス」で、今年景気は本格的に回復するのでしょうか。さらに、長期的な視点から超高齢化社会を迎える日本にはどのような経済モデルが必要なのでしょうか。今日は「日本経済“未来型モデル”」と題して議論していきます。
  賃上げ(動画)), 財政問題(動画), 構造改革(動画), 生活インフラ(動画)

 NHKでオンラインの双方向番組が多くなってきているように、視聴者にとっては電波もインターネットも同じ環境となりつつある。全番組の公開と受信料を考慮したNHKオンデマンドになって欲しいものだ。それはNHKがそれぞれの時代に何をどう報道したかの軌跡を歴史に残すことでもあり、それによって政治家等がNHKを批判したり支配しようとしてもその痕跡を国民が知ることが出来る。国は国民に対して、NHKは視聴者に対してある意味での情報開示の義務がある。

 藻谷氏の「里山資本主義」は、地方(里山、里海)再生の動きの事例をNHKの番組を通して紹介されてきた。藻谷氏は、マネー資本主義から里山資本主義への転換を主張され、アベノミクスも批判されているが、「アベノミクス有害」の批判に首相が激怒(湯沢平和の輪,2014.9.30)しているそうだ。地方再生の動きを知ろうとしないで、どのような地方創生を目指すのであろうか。

 実は、首相が激怒する前に、冒頭に示した番組「日本経済“未来型モデル”を求めて」で、安倍内閣の官房参与としてアベノミクスを指導している浜田宏一氏(エール大学名誉教授)が藻谷氏とは初対面、白川元日銀総裁は大学の教え子ながら、両者ともに経済学を知らないと激怒している。経済の一面しか表せない経済学が現実の経済より優れていると言うのであろうか。ここでは浜田氏の発言を中心に書き起こしておいた。私も経済学は学んでいないので、浜田氏の発言、ことに単語には聞き取れないところが多い。その場所は(○○○?)としている。

参考:白川方明・日本銀行総裁への公開書簡(浜田宏一氏から)
    :市場を思い通り動かそうとする政策に危うさ=退任会見で白川日銀総裁

以下は番組から浜田氏の発言を書き起こしたものです。
アベノミクスの1年(動画)

司会 アベノミクスが打ち出されてから1年、まずは皆さんにこの1年を振り返ってその評価を出していただきたいと思います。始めに、アベノミクスで日本経済はどのような変化を見せているのか、そこから見ていきたいと思います。

VTR:日経平均株価は16291円と56.7%上昇、1ドルは87.65円から105.31円と20円の円安、GDP成長率は0.7%から 2.6%に増加、完全失業率は4.3%から4.0%(11月)と減少。

安倍首相講演(一部)「日本経済は長引くデフレからぬけだそうとしている。今年は春に賃上げもある。久しぶりの賃金上昇で消費が伸びる。日本の財政状況も着実に改善し、財政健全化の軌道に乗りつつある。」  参考:外務省:安倍総理大臣のダボス会議出席(概要)
司会 安倍総理大臣は今週ダボス会議で日本の総理大臣として初めて基調講演を行い、アベノミクスの成果を世界に向けてアピールしました。  安倍総理大臣の基調講演と浜田氏の評価(動画)

司会「まずはダボス会議に出席していらっしゃる浜田さんに伺いたいと思います。今、VTRでご覧いただいたように、ダボス会議に安倍総理大臣が出席して日本経済の復活をアピールした訳ですけれど、海外の受け止めはどうなのでしょう。」

浜田1「私も会場におりましたし、皆の言うところによれば大変力のこもった講演である。特に第3の矢、構造改革に対して日本政府の決意がちゃんとあるんだよということを示された、ということで海外のメディアからも非常に高い評価を得られていると思います。つい総理の施政方針演説等では、お役所の人の書いた文章というか、非常に硬ぐるしい形の講演が多いが、この場合は聴衆の心に迫る講演であったということです。
 あの、靖国のことについても、僕はアメリカの知人にちょっと聞いてみたんですけれど、自分の思っておられることを非常に素直に真剣に訴えかけられたということで、靖国問題に対しては賛否両論のある方面からも着実にメッセージが伝わったという風に反響が帰ってきているようです。」

注:唐突に靖国とは何だ?と思ったが、首相の基調講演後にシュワブ会長が、「安倍晋三首相は講演でアジアの安定の話をしたが、首相の靖国参拝によって近隣国との関係を悪化させているのではないか」(2)(3)と質問したことに対する首相の回答の評価のようだ。それにしても浜田氏は、この番組における発言からは質問に誠実に答える学者というよりも、自分の考えや主張が先に出る自己主張の強い人に見える。

司会「ちなみに浜田さんはこれまでのアベノミクスの成果をどう見ていらっしゃいますか。」

浜田2「これは半ば冗談でもありますが、金融政策は当然効くことである訳ですが、それが思った以上に効いている。そういう意味でA+であろう。財政政策は財政を使うということは財政長期収支にマイナスにも効くから、まあ、AではなくてB。そして問題は第3の矢になりますけれども、これは政府のできることは今限られていて、一番なすべきことは規制改革である。しかし、規制があるので喜んでいるのはどちらかと言えば官僚である。そういうお役人に自分が利益を得ているようなことを止めさせることは、侍に鎧を脱げと言うことでなかなか厳しいということで私はEとつける。そうするとA,B,Eとなってアベノミクスがまた戻ってくるというのが私の評価です。」

注:第3の矢(構造改革)の評価は、官僚の反対で規制改革ができないのでEとし、「アベノミクスがまた戻ってくる」と言うのは内閣官房参与として無責任な発言である。それこそ「政府のできることは今限られていている」のではなく、役人が利益を得ているようなことを止めさせることは、「政府がやるべきこと」ではないか。冗談にしても、これではアベノミクスの失敗を始めから認めているようなものだ。

VTR:アベノミクスの評価について出席者や内外からの意見を聞いた後に

司会「はい、世界の声でも様々な課題が指摘をされてきている訳ですけれども、果たして今年、2014年、アベノミクスに死角はないのでしょうか。」

VTR&司会:アベノミクスの今後を左右する賃上げ、財政問題、構造改革。日本経済はこの3つの課題を乗り越えて順調に成長できるのか議論していきます。

賃上げ(動画)
司会「まずは、賃上げについてです。安倍総理大臣はダボス会議の基調講演の中で、先ほどお聞きいただいたように、今年の春には賃上げもある。久かたの賃金上昇で消費が伸びると述べています。賃金の上昇は経済の好循環につながるというのは分かるんですが、問題はそれが一部に留まらず広く拡がっていくのかどうかだということだと思います。そこで、浜田さんにお伺いします。浜田さんは日本での賃金上昇の動きが拡がっていくとお考えでしょうか。」

浜田3「はい、思います。もし、アベノミクスが証券市場とか円の為替市場だけに留まっているのであれば、それはいろいろ投資家の心理とかそういう問題にも影響されるので、本当に回復に結びつくとは必ずしも考えられません。しかし、現在、有効求人倍率、どのくらいの雇用が求職者に対してあるかというのが1を越えるような状態になってきている。それからデフレギャップが1.5%以下になってきている。そういう実質に移っている訳です。ですから、(マツノ?)さんがよく言われるように(トリックダウン?)の政策であることは事実なのですが、それが滴り落ちているということが、だんだん実際のデータから出ている。特に(FT?)で読んだんですけれど、景気の先行指標であるところの「機械受注」というのは大幅に昨年度もだし、今もずっと伸びている。そういう事実を見るとアベノミクスに対する批判者の方は事実を見ているのであろうかどうだろうかと考えます。理屈でいろいろ言ってそれが働かないと、言われることは勝手ですけれど、20年間近く続いた不況気味の日本経済が変わって、それで世界の主要(新聞?)、ニューヨークタイムズとかウオールジャーナルで安倍首相の演説の効果もありますけれども、全面的に取り上げられる。そういう時代になってきたということは積極的に評価していただきたいものだと思います。」

注:(マツノ?)、(トリックダウン?)、(FT?)は、素人には聞き取れない言葉。「マツノ」は民主党議員の松野信夫氏、「FT」は「フィナンシャル・タイムズ」のことか?「トリックダウン」と聞こえたのは司会者が説明している「トリクルダウン」のことで、続く話にも聞き取れない言葉が多く出てくる。

司会「今、トリクルダウンという言葉が出てきましたが、(これは、)まずは富裕層中心に富を得て、それが次第に低所得者層にも拡がっていく。つまり、大企業がまずは利潤を手にして、それが賃金という形で、最終的には中小企業、中小企業で働いている人たちも拡がっていくという考えですけれども。」

財政問題に関する論争(動画)
--- 賃金問題、財政問題について出席者から意見が出た後に ---
司会「(藻谷さんの考えは、賃上げは大切だが、現場はそうはなっていない。また、国債発行して景気対策をするより、)財政再建、規律(医療・社会福祉システム)をしっかりすることが先で、(安心社会になれば)消費が回復するということですね。」

注:藻谷氏と浜田氏の意見がつながるように、()にまとめておいた。

司会「浜田さんはこの藻谷さんの考えをどう思われるのでしょうか。」

浜田4「よく現実は違うんだ。学者の考えていることは空論だと強く言われるが、逆に言うと経済学200年以上の歴史を全く無視して自分の考え方を述べておられる、という点で、経済は分かっているかもしれないが、経済学を分からないでしゃべっておられると思うぐらいおかしい。それからですね、今日も私、(ロゴフ?)とかジェイコブ・フランケルとか会って来ましたが、そういう人達と僕は何十年と研究している訳ですから、経済学をそんなに軽蔑しないでもいいじゃないかということを強く、初対面ですが申し上げたいと思います。しかも証拠はアベノミクスで経済の活況があるということは、・・・『藻谷:経常赤字ですけどね』・・・ 経常赤字も(ジジカーブ?)のことが分かっていないのですね。時間が経てば治るということはどこの経済学の教科書にも書いてある。・・・『藻谷:どのくらいの時間が経てばね』・・・それから銀行は確かに経済成長の重大な問題ですけれどもデフレに関係あるなんてのは、・・・『藻谷:今そのことを話していない』・・・(スリーウィ?)以下の知識だと思う。そういう知識を一般の人に向けて、しかも日本銀行元白川総裁がそれに乗って自分の言いたいことを言ったというのは大変不幸なことだったと思います。
 財政問題に変わりますが、僕も今日は興奮しないで来るつもりだったんですが、まあ議論が高まるのは良い。財政はIMF(国債通貨基金)にも行きますし、それからEC(ヨーロッパ委員会、すなわちEUの政府)にも行きました。日本は皆240%大変だ、大変だと言っている。しかし実際は、日本の財務省の考える財政収支というのは資産の点を全然考えないグロス等の概念で、純概念にすると日本の財務部門の状態はアメリカとあまり変わらないというのが、財務省を出た高橋洋一さんとか昔、財政政策をしていた宮本さんなんかが、そういう問題を実際に内部に(いてて市場?)で説明している。」その悪宣伝というか非常に巧妙な秀才技みたいな人が多い訳ですから、それが世界に過ぎている。過剰宣伝みたいなものがあると国民の皆さんには分かってもらいたいと思います。」

注:(ロゴフ?)はケネス・ロゴフ、(ジジカーブ?)はJカーブのことか?(スリーウィ?)は意味不明だが3流に近い意味か?「経済は分かっているかもしれないが、経済学を分からないでしゃべっておられる」というところに現場より理論が重要だという浜田氏の考えがよく出ている。しかも事柄よりも知人の名前が出てくるのもこの人の特徴だ。しかし、後半の(いてて市場?)は、高橋洋一さんとか、宮本一三さんが、内部にいる時は「巧妙な秀才技」で悪宣伝をしていたという意味なのか?

司会「かなり学問的に入り込んで来たなと感じがします。3つ目の課題「構造改革」に行かせていただきます。」

構造改革(動画)
--- 3人がサービス産業や労働市場の問題を指摘したが、浜田氏は指名されず。浜田氏の「構造改革」に関する意見は、浜田2「官僚が邪魔をしているので困難とE評価にした」ことに尽きるのか。

 ここまではアベノミクスの評価について浜田氏の考えを紹介してきた。アベノミクスはマクロ経済学の理論が正しいことが前提になっているようだが、経済学者の間にもリフレ政策を批判する人もいる。また、現場は理論についてくると考えて良いのだろうか。さらに、マクロ経済学と消費税増税の関係はどうなっているのであろうか。

 どのような日本経済“未来型モデル”であれば、「地方創生」ができるのであろうか。続けて「日本経済“未来型モデル”を求めて」を紹介しながら考えていきたいが、アベノミクスについては「アホノミクス」と明快な批判をされている浜矩子教授の動画を紹介させていただく。

参考:
アベノミクスの真相と国民本位の行財政のあり方:浜矩子
「何をどう選ぶのか:岐路に立つ我ら~「日本の今」の中にある福音:浜矩子
安倍政権の正体 - 妖怪は女性にしか倒せない - 浜矩子
浜矩子 (はま のりこ)さん アベノミクスについて語る

初稿 2014.10.11 更新 2017.12.21

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