自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

戦後68年 いま、"ニッポンの平和"を考える(2)

2013-09-23 08:12:38 | NHK

NHKスペシャル 「戦後68年 いま、"ニッポンの平和"を考える」

アメリカとの関係は (後編 40分)

司会A「ここで日米同盟を巡る両国の最新の動き、そしてそれを受けた市民の討論をご覧いただいて、再び話をしようと思います。」

ナレーション「今年6月、自衛隊とアメリカ軍による大規模な上陸訓練が行われました。今回は陸上自衛隊に加え、初めて海上自衛隊が参加。過去最大のおよそ千人の隊員が派遣されました。離島の防衛に必要な作戦のノウハウを学ぶのが目的です。背景にあるのは台頭する中国の存在です。見直しが進む防衛計画の大綱。その中間報告では、中国の軍事力の急速な近代化や海洋活動の活発化が、地域の安全保障上の懸念となっている、としています。現在、安倍総理大臣はこれまで歴代の政府が憲法解釈上許されないとしてきた集団的自衛権の行使について、それを可能とする憲法解釈の見直しに意欲を示しています。第一次安倍内閣の時に設けた有識者による懇談会を5年ぶりに再会しました。」

安倍首相「東シナ海や南シナ海の情勢も変化している。日米同盟の責任はますます重たくなってきている。」

ナレーション「有識者懇談会では、共同で活動中のアメリカ軍の艦艇が公海上で攻撃された場合、自衛隊が守れるようにすることなど様々な検討を進めています。こうした日本の動きを同盟国アメリカはどう見ているのか。ケリー国務長官に政策提言を行っているケント・カルダー氏、日本が集団的自衛権の行使を可能にすることは日米同盟を強化するために重要だと考えています。」

ケント・カルダー「実際の紛争でアメリカ軍が攻撃を受けた時に日本の自衛隊が助けてくれるかどうかは、日米同盟の根幹に関わる問題です。それができないとなれば、日米同盟はうまく機能しなくなると思います。」

ナレーション「一方、アメリカにとって国際社会での影響力を強める中国は無視できない存在になっています。中国との新たな関係を模索するオバマ政権はアジア外交の重要なパートナーである日本が中国と過度に対立することを望んでいないとカルダーさんは指摘します。」

ケント・カルダー「日本はアメリカにとって重要な同盟国で、アメリカのアジア戦略において大きな役割を果たす要石です。ただ、アメリカとしては国益にそれほど関係のない理由で不必要な紛争に引きずり込まれることを望んではいないのです。

ナレーション「国際情勢が大きく変化していく中、アメリカとの同盟関係をどうしていくのか。番組が行った世論調査では、今より強めるべきが26%、今のままで良い50%、今より弱めるべきが8%、解消すべき5%という結果でした。」

Heiwa18 司会B「アメリカとの付き合い方、どういう風にしていったら良いと思いますか。」

Aさん・同盟関係を強化すべき(66)「今、アメリカの発言をみると、日米同盟もこのままでは危ないんじゃないかと思う。アメリカも自分の国の国益が一番だと思う。日米同盟ももう少し深化させていく努力が必要。」

Lさん・このままでよい(22)「今日まで自衛隊の戦死者がゼロであったのは9条のお蔭というよりも、米国との同盟関係に守ってもらっているということも忘れてはいけない。」

司会B「Mさんはアメリカにお住まいだったのですね。」

Mさん・同盟関係を弱めるべき(48)「私ごとになりますが、テロに巻き込まれて主人は亡くなっている。テロ事件が起きてからのアメリカの迷走ぶりというか、一気にアメリカの名の下に我々は集結していくんだという感じで、殆ど戦争ムード、もしかしたら本当に大きな戦争が起きて日本も巻き込まれていくんじゃないかという恐怖感が今でも残っている。本当に道を誤って欲しくないと、それはものすごく感じた。」

Nさん・同盟関係を弱めるべき(58)「アメリカに、しっかり自立したというか距離を置くことが必要だ。例えば、中国と韓国、周りの国々との関係をきっちりと作っていくことが、アメリカとの対等な関係を作ることに重要なことだと思う。」

Oさん・このままで良い(65)「結局、アメリカともアジアとも仲良くしていかねばならないということですね。」

Nさん・同盟関係を弱めるべき(58)「もちろん、そうでないとダメだと思います。」

Pさん・同盟関係を強化すべき(36)「正直、アメリカしかないんじゃないの。いろいろやらかしているし、100%信任はできないけど、周りを見たときにしょうがないからアメリカを選ぶという、そういった使い方をしていくしかないと思っている。」

Heiwa19 司会B「現実的な選択肢として日米同盟の強化が必要なのではないか、という声の一方でアメリカの戦争に巻き込まれる恐れもあるのではないかという声もありました。アメリカとの関係をどう考えていくべきか、岡本さん、どうお考えですか。」

岡本「日本の防衛費はGDP比では世界で130番目以下です。本当の軽負担で済んでいる。日本は戦後、防衛費にお金を使わないで、その分を全部、経済発展につぎ込んでくることができたから今日の繁栄がある。それはアメリカ軍という抑止力があるから日本は誰からも攻撃される心配がなかった。でも今の集団的自衛権というのは、同盟国としてやらないといけない最小限のことはある。例えば、今も議論していますが、今の法制局の見解では、北朝鮮がミサイルを発射した。日本に向かっている。撃ち落そうかと思ったら、あれはサンフランシスコに向かっている。アー、万歳。と言って日本は何もしない。行ってらっしゃいてなもんですよ。そんなことで同盟関係が成り立つ訳がない。だって、結局は人間の心理の問題ですからね。我々は安全というものを痛みを伴うことなく貰うことはずーっと慣れてきていますが、少しでも痛み、つまり集団的自衛権に関わる部分が出てくるといやだいやだと、それは通用しなくなってきている。それくらい国際情勢が今、緊迫化してきているということだと思います。」

司会A「一方、市民討論でも、アメリカに巻き込まれていくんではないかという心配が出ていましたが、半藤さん、いかがお考えですか。」

半藤「私は集団的自衛権というのを、何のためにやるのかいつも思っている。岡本さんの話は、よく例にあがる話ですからそうだろうなとは思いますが、安保条約をよく読んだってアメリカが日本を守ることは書いてありますが、日本がアメリカを守るとは1行も書いてないですよ。アメリカ議会は上院も下院も批准している。アメリカは安保条約を見る限り日本に守ってもらおうということなんて何も考えていないと思いますよ。ですから例としては分かり易いが、本当に日本が集団的自衛権をやるとなると決めると、一番喜ぶのは中国だと思います。中国の軍部が一番喜ぶんではないか。日本はやっと昔の日本らしく平和主義を棄てたと中国国民に言える訳ですよ。大ぴらに、今度はね。」

司会A「岡本さん、今の指摘どうでしょうか。アメリカを守るとはもともと書いてないし、アメリカも納得していたんではないかという指摘ですが。」

岡本「事実としては、その通りですね。韓米相互防衛条約はアメリカと韓国の間、あれは両方共が集団的自衛権を持っていますからお互いに守り合う。日本は集団的自衛権を持っているけど、それを憲法のもとで行使しない、という不思議な法制局の結論がありますから日本はアメリカを守れない。その代わりに日本はアメリカに120ヵ所以上の施設区域 、基地を提供して日米の義務と権利をバランスさしているというこういう感じですね。日本は全然お腹を痛めることなくアメリカにやっぱり守ってもらっている、とこういう仕組みですね。これは別に悪いことではない。日本が守られているという意味では大変に得な制度だと思います。」

司会A「伊勢崎さん、如何でしょうか。」

伊勢崎「アメリカは火力(兵器)という意味で日本に貢献を期待しているかどうか、それは政治的な局面では、これは外交ですから、絶対それを要求してきますが、現場のレベルではあまりそういう感じは億は受けていない。」

司会A「どういうことですか。」

伊勢崎「海上自衛隊(海自)を例にとっていますが、日本はご存知のように単年度予算でイージス艦一隻も作れませんよね。ご存知のように、防衛庁の枠がありますから。それを一番分かっているのはアメリカで、だから海自は米をいかに補完するか、例えば哨戒能力は日本は大変優れていますから、それは米も頼っている。偵察能力ですね。そういった意味で米が持っていないものを、日本も現場では海自も補完して来ている。それで同盟を築いて、このままいくことに何も不満はない。米も日本が防衛費を今以上に何十倍も割いてイージス艦を一杯持てとか、原潜も作れ、空母も作れという風にはなっていない、現場の人間の理解では。」

司会A「半藤さんは協力していくことそのものに心配しているということですが、伊勢崎さんはちょっと違っていて、もっと日本にできることが日米関係の中でもあるかもしれないということですね。」

伊勢崎「そうですね。」

司会A「今の指摘はどうでしょうか。」

半藤「まあ、あると言えばあるかも知れませんね。でもなにも日本の国そのものを不利にするような拡張をする必要はない。」

伊勢崎「そうです、そうです。」

司会A「岡本さん、今の指摘、いかがでしょうか。」

岡本「例えば、インド洋に日本は海上自衛隊の補給艦を提供して給油活動をした。あれはアフガニスタンにいるタリバンやアルカイーダが麻薬を持ってイエメンとかソマリアとか対岸にインド洋を越えて行こうとする。それをインターセプト(遮断)するというミッション(使命)を持ったのは日本の補給艦ではなくて、各国がやっている警備部隊なんですね。日本は安全なところにいて、その警備部隊に油を提供する。これだけでも各国は非情に喜んだし、日本自身はテロとの戦いに安全な形で参加したんですね。ですから伊勢崎さんも仰ったように、日本ができる範囲で、もちろん憲法なんかと全く抵触しないやりかたで、国際的な協力に参加することはいくらでもできる。」

司会A「伊勢崎さん、アメリカとの関係を強めるということが、他の国の人達が日本を見る目にどういう影響を与えると思いますか。」

伊勢崎「これは僕の個人的な経験ですが、アフガニスタンでの対テロ戦で米軍(後にはNATO軍)による占領政策に国の代表として2002年、2003年頃関わったが、その時の現場レベルでの感覚ですが、僕の付き合いのある米軍の将軍の人達は、日本の良さを火力での期待ではなくて、日本の持っている平和的なイメージを米が占領政策、人心掌握のためにうまく使ったという例がある。それが武装解除だったんですけど、これが対米協力という意味で非情に米が利用した。これも米が持ってない資質なんですね。米は火力を圧倒的に内在しているから現地社会では嫌われる。それをいかに受け入れさすかで日本を使った。その補完関係が非情にうまくいった例が一番アフガニスタンなんですね。

司会A「それでも相手から見れば日本とアメリカが一体と、いうそういう感じは。」

伊勢崎「一応、米の占領下ですから、アフガニスタンは。米と仲がいいとは分かっている訳です。だけど沖縄の状況、アフガニスタン人を沖縄につれていくとびっくりするでしょうね。日本はアメリカの軍事基地ですから。あそこに連れて行けば分かっちゃう訳ですが、そういう感覚は彼らは知らない。米の司令官が僕に言ったことですが、日本は美しく誤解されていると。」

司会A「美しく誤解されている?」

伊勢崎「はい、実態は知らなくて日本のイメージがある訳ですね。」

司会A「半藤さん、アメリカと一緒になる、それは世界から見られることは、半藤さんはどう思われますか?」

半藤「だってもう、世界はそう見ていますよ。私がどう見るより何よりも、伊勢崎さんが言うように世界中がアメリカのために働いているというのは見てますよ。それは良いですよ。日米同盟というか条約を評価するためには悪いことではないので、それは結構だと思いますよ。だけど、今度は日本自らが条約の先を言って、条約以上のことをやって、日本が世界中に嫌われるような形になる不利なことをする必要は全くないということなんです。」

司会A「条約以上のことをやると何故嫌われる?」

半藤「だって、日本が平和国家であるということを止めることを表明するみたいなもんですから。」

司会A「・・・・」

半藤「つまり集団的自衛権を行使するということは、例に上がりましたように北朝鮮の弾が(ミサイルが上がって)くるかどうかは別にして、日本は攻撃的になる訳ですから。」

司会A「・・・・」

半藤「日本は攻撃国家になる訳ですから。」

司会A「宇野さん、どう受け止められますか。」

宇野「皆さんの議論を聴いていて、この問題って本質的な対立はないですよ。どう考えても短、中期的にはアメリカとの同盟を前提にしながら、どうやっていくかの問題だけですよ。かと言って100%言いなりになるのは馬鹿じゃないですか。だから9条でもなんでもいいし、カードを使いながら駆け引きをして、どう日本人の安全と国際平和への貢献を獲得していくかという問題があるだけですよ。長期的にはアメリカだけではなくて中国とか韓国とかを含めて包括的な東アジアの安全保障の枠組みを作っていきましょうという問題があるだけで、あとは技術論だと思うんですよ。逆に言うと、なんでこういう議論を今まで70年近く出来てこなかったのかという問題ですね。」

司会A「岩田さん、どう思いますか。」

岩田「今、宇野さんが仰った通りだと思います。これは技術論だと思いますけど、技術論も大事な部分で、先ほど岡本さんが仰った通りミサイルが飛んできた時に、これを日本が打ち落とすというのは、半藤さんが攻撃的と仰ったが、飛んできたミサイルは飛ばした方が攻撃的なのであって、打ち落とす方は攻撃的ではないと思う。集団的自衛権をアメリカに巻き込まれる巻き込まれると極端な議論だけが先行していて、現実的にどういう風に貢献できるかをリアリズムの立場で考えることが一番大事だと思います。だから技術論といば技術論です。」

半藤「技術論なんです。今、仰るように。ですから、あんまりやっても意味がないんです。」

司会A「そこのところが次の重要な議論のテーマになると思います。これまでは、冷戦時代はアメリカと一緒にいることが一番大事な選択肢で疑いがなかったと思いますが、テロが多発していますし、世界が不安定化しています。

司会B「そういった不安定化している中で、ニッポンはこれからどうしていくべきか。宇野さん、どう思いますか。」

宇野「その点ですか。今、僕言ったと思いますが。ひとつ前に言ったことをそのままコピーして貼り付けたら答えになると思うけど。」

司会B「じゃあ伊勢崎さん、いかがですか。」

伊勢崎「あのー、テロとの戦いですね。テロというのは、これは概念との戦いなんですね。テロリストというのは、多分僕自身明日なるかも知れない。アメリカ自身の中にもいますし、、同盟諸国の中にもいますし、これは概念との戦い、やっかいな戦争に今、我々は突入して、多分これから半世紀ぐらいは続くのかなと思いますね。これに一番苦しんでいるのはアメリカなんです。で、同盟諸国もその被害を受けている。アメリカ自身が苦しんでいる例としてスノーデン事件がありましたね。国内に脅威があるからホームセキュリティと対テロ戦が一直線上にある。それが暴露されたのがスノーデン事件です。そういう問題です。概念というのはこういう厄介な問題、アメリカが一番考えているのは、いかに過激化を防ぐか、ご存知ですね、「Counterinsurgency」と言ってアメリカの軍事マニュアルにもなっている。つまり、人心をどう掌握するか、火力を使わないで、いかに信頼を増して対アメリカの激しい憎悪を抑えるかがアメリカの基本戦略なんです。でもアメリカにはできない。何故かというと火力を内在しているから。見えない訳ですね。これをセキュリティジレンマ、ジレンマとして捉えている。つまり自分たちの内在している実態と自分たちがやりたいことのギャップ、これをジレンマとして彼らは戦略的に意識している。」

司会A「そこは、日本はどうなんです。できるんですか?」

伊勢崎「日本は同盟国でありながらその対極にいる訳です。我々は火力を使わないで外交をやる、戦争はやらないと言っている訳ですから、そもそも日本みたいな国に国境問題がある方がおかしい訳です。この辺は外交して来なかった。半藤さんの意見に大賛成ですけど。とにかくアメリカが一番苦しんでいる。ジレンマを抱えながらジレンマを意識しながら今苦しんでいる問題がテロとの戦いで、これはこれからずーっと続く。その時に日本の立ち位置はどうなるのか。日米同盟を強化するのは当たり前、強化と逆の方になりようはないじゃあないですか。日本はアメリカの基地なんだから。そうではなくて、今、大切な同盟国が今、本当に苦しんでいる。その苦しんでいることをどうしたら良いかは彼らは分かっている。でもできない、この現実を我々が一番重要な同盟国としてどう理解するか。この感覚が政治家には全然達足りていない、右も左も全然足りていない。」

司会A「平和を看板にしてきたものだからできることがあるという今の指摘、土井さんどう受け取られます。」

土井「対テロ戦争まで話が広がるとは思っていませんでしたが、対テロ戦争の原因、テロの原因は人権問題ですよ。カシミール問題あり、パレスチナ問題あり、国内の問題もありましたが、どこにもかしこにも全部に不正義があり、人権の問題がありなので、そこを解決するべきですね。日本はその能力がありながら戦後、残念ですが外交の力をほとんど発揮してこなかったと私も思います。ただ、我々が今、現実に脅威として直面しているのは中国と北朝鮮ですよね。この国がもし自由と民主主義を基盤とする国であれば、日本にミサイルを飛ばして来たり、衝突をして来たりするでしょうか、多分しないでしょう。とすればこの国の人々が、まさに人権や民主主義や法の支配をすごく欲しているのですよ。中国の防衛費はすごく大きいですが、中国の治安、維持費、国内に向けて銃を向けている、この費用の方が高い。そういう国な訳ですね、中国の国民が欲している平和を日本が作る手助けすることこそが、新しい積極的平和外交とでも言うべきでしょうか、戦後もっとやって欲しかった。しかし最近、結構外務省も始めていますが、少しずつ。中国の民間に 働きかけ、中国で民主主義を欲し、法の支配を欲して闘っている人達がいますから、この人たちを支援する民間外交とへっぴり腰にならずにちゃんと中国政府に対して人権、民主主義をしっかりやりなさいと言う外交、二つの外交が本当は平和に直結すると思いますけど。」

司会A「岡本さん、日本の新しいありように対する提言だと思いますけど。」

岡本「テロの原因が人権問題というは僕は必ずしも賛成しない、それだけではない。アルカイダが9.11にワールドトレードセンターを攻撃したのは、文明というものに対する彼らの見方ですよ。預言者ムハンマドが来てからの千何百年間かの今の文明というのは全て悪であると彼らの書いたものにも出ていますけどね。そういうことで来ている。だけども人権問題を一生懸命やらなきゃいけない。それはその通りだと思いますね。中国の間でもそれをやらなければいけない。まあしかし、中国との間でもう40年以上日本はソフトパワーを一生懸命やってきたけど、どんどん状況が悪くなってきたから・・。」

土井「まだ、やって来てない。」

岡本「まだやって来ていない?そうですか。」

土井「だって、そういう風に言うべきでしょ。」

岡本「日本の生きていく道というのは、いろいろ安全保障も大事です。だけども自ずから制約がありますから、なんといっても経済協力が大事ですよ。ところが日本は軍事的な面では協力できないが平和的にやりますと世界に胸を張っていた。事実、1997年は日本は世界最大の援助供与国だったんですね。それがまあ、どんどんどんどんアメリカに抜かれ、イギリスに抜かれ、フランスに抜かれ、ドイツに抜かれ、当時の当初予算ベースでみれば半分になっている、日本の経済協力予算は。まずは日本は経済を復活させて強い日本になること、それが大事だと思いますね。そうするとさっきから申し上げているような軍事的な面での集団的自衛権で憲法に抵触しない部分も、いろんなことができるようになっていくと思います。」

司会A「日本は平和を表看板に掲げて外交で何か出来ることがあるんではないかという指摘、半藤さん、どう思われますか。」

半藤「その通りだと思います。外交は本当に岡本さんには申し訳ないが、もう少し磨いて欲しいですよ、外交力を。そうすれば武力ではなく経済力を背景において、もっと平和外交は出来ると思うんですよ、日本は。少々、不安であっても日本人は、不安であってもそれに耐えながら、戦後ずーと持ってきた平和主義、平和国家というものの理論を世界に広めていくと、それぐらいの意欲を持って、理想論かも知れませんが世界に発言していった方が日本の平和を守るためにもっと良くなると思います。」

司会A「岡本さん、いかがですか。」

岡本「全くその通りだと思いますね。でも、僕は別に外務省の代表ではないですが、彼らの気の毒なのは主要国の外務省の規模に比べて人員は半分以下なんですね。本当に苦労して良くいろんな所で良くやっていますよ。もう少し予算を増やして、人を増やしてやってください。」

司会A「日本の良さを生かす道というのが、あるかも知れませんね。」

司会B「それではここで市民討論をご覧ください。」

ナレーション「議論の終盤、市民の一人から日本という国の在り方をもっと考えるべきだという声が上がりました。」

Qさん・沖縄在住(41)「僕は細かいことは分かりません。ただ沖縄に住んでいるというだけですが、「私たちは何を目的に、日本という国を運営していきたいのか」、もっとそこの所を話し合わないと手段の部分がずれてくるんではないかと思う。「本当の日本らしさとは何なのか」、ここをもう一回戻った方が良いのかなと。難しいかも知れないけど、「絶対に戦争はしません」ここが基本じゃないかなと私は思います。」

Rさん・元船員(71)「あのー、ちょっとよろしですか。私の職業的体験から言いますと、海上輸送がないと日本という国は成り立たない。資源はない。資源を輸入して加工して輸出する。日本の生きる道はこれしかない。だから安全をどう維持するかを考えていかないといけない。」

Mさん・主婦(48)「ぶれない部分、ぶれない部分を持ってなさすぎるのが日本なのかなと、お話を伺っていて思ったのですが、日本って何をしたい、どうしていたい国際社会でというと、何か今一つはっきりしていないような気がするんですね。」

司会B「今の市民の方々の声をどうお聞きになったでしょうか、岩田さん、いかがですか。」

岩田「大変重要な指摘だと思います。これからの日本はどうあるべきかと言いますと、先ほどらい議論してきましたが、アメリカに助けてもらうことを前提として話してある。これは戦略戦術論として正しいのはその通りですが、基本的に独立自尊、自分の国は自分で守るという精神を持つことが第一に大事だと思う。第二にナショナリズムを正面から見直すことです。ナショナリズムが変な形で今の日本では出ているのではないかと思えてなりません。本来あるべきナショナリズムは何かと言ったら、私は今の日本では二つあると思う。一つは福島県民に対する思いはもう忘れているのではないかと思います。もう一つは沖縄です。沖縄は大東亜戦争で地上戦までやった。最期に後世格別のご高配をと言った。現在、現地にあるのは米軍基地ですよ。後世格別のご高配が米軍基地で良いのかというのは、日本人として心のどこかに持っているべきだと思う。したがって独立自尊の心を持つことと、健全なナショナリズムを復権させること、これが大事だと思います。」

司会A「土井さん、いかがですか。」

土井「日本の国を守るということは、最低限のことですよね。それにプラスして、日本が今後どういう国になるべきかという意味では、世界の平和、世界の人々の幸福に貢献する国でなくてはならない。そういった意味では先ほどもちょっと申し上げましたけど、今までの日本は自分が戦争をしなければ良いという発想でしたね。それだけでは全然足りなくて、何故なら世界中には本当に多くの紛争があって、今日もエジプトでは何百人も撃ち殺されたということもありました。シリアでも紛争が起きています。我々のビジネスマンが沢山行っているミャンマーでも内戦が続いています。北朝鮮では20万人の人が政治犯収容所にいます。様々な問題がある訳です。これに対して行動する新しい積極的な平和外交を、これは外務省ももちろんやるべきですが、民間もできることですね。民間の交流もあります。そして人権や民主主義について、今まで日本政府は基本的には黙っている、公の場ではあまり言わないという立場でしたが、そうではなくてしっかり現地と手を結んだ上で、はっきり声に出して世界に向かって政治力を使っていく外交、それが新しい日本の姿ではないかと思っています。」

司会A「外交に目を向けるべきだと皆さんから出ているのですが、宇野さん。」

宇野「今日ここに来て、特に左のお三方の話を聞いて、こんなに外交とか国際貢献でポジティブなことを日本はやってきたんだと勉強になった。もっとこういう話を伝えるべきだと思う。ジャーナリズムとか言論が、今までの日本の外交とか軍事に関する議論を硬直化させてきた。最たるのは憲法とかナショナリズムの論議で、僕は憲法もナショナリズムも道具だと思う。獲得すべきは日本人の安全とか日本社会の秩序とか、あとは国際平和だと思う。なのに、いつの間にか憲法を守ったり変えたりすることが目的になっている。そして文化論になってしまう。9条を守ること、変えることが自分探しと結びついていて、精神論ばかりして喧嘩して、ぐちゃぐちゃになって、結局、話は何も進まないことをこの50年とか、戦後ずっと繰り返してきた気がする。僕はゼロから考えれば良いと思う。今日も言ったように軍事と外交は一択だと思う。特に短期、中期的には。それをどう実現していくのははっきりしているので、そこから逆算して9条が使えれば残したら良いし、足を引っ張るのなら変える変えないの議論をしても良いし、そういうことをゼロからやらないで、かくあるべし、こうしないと日本人の誇りがといったところから入ると、また同じ形態を繰り返すと思う。」

司会A「大事な議論だけど、そういう議論がなかったよねというのが、宇野さんの指摘ですね。伊勢崎さん、どうですか」

伊勢崎「日本の領海内の平和の維持に関して、日米の協力は日本は補完、米も日本が経済的発展を犠牲にしてまで火力を増強するということは望んでいないと思う、そこまでは。いかに米がないものを補完していくか、そして日本の周辺を守っていくか。もちろん同盟国として一番大切なのは世界戦ですね。米が一番頭を悩ましている。アフガニスタンからも軍事的勝利なしで逃げ出したんですからね。これほど苦しんでいる。」

司会A「この国にとって何が国益かという議論がなかったのは、何故だ思います。」

伊勢崎「多分、リベラルとか左とか護憲派に属する我々の責任だと思う。国益という言葉を使うと、お前は右翼かという話になってしまうので国益の話を忌諱していた。そうではなくて、僕は9条をこのまま保った方が国益になるという議論を今しようとしているのですが、9条を失うことによって日本のブランディングの力が弱まることによって失う国益、そこをちゃんと国民に見せて最終的に判断してもらうことを我々がしないとダメですね。そこは半藤さんの意見と同じだと思うが、具体的に見せないといけない。それは私のアフガニスタンの小さな体験ですし、同盟国のアメリカが一番苦労していること、そこを補完するとうこと。」

司会A「なかなか議論がなかったということ、岡本さん、番組の始めの方で戦争を見つめ直すことがちゃんとできていないと仰ったが、私たちはどういう国にするかの議論がないのも、そこに関係していますか。」

岡本「はい、そう思います。皆さん、外交の重要性を仰るが、外交を推し進めても壁が常にあるのは、まず二つある。一つは戦争をどう総括するかという問題ですね。あの戦争、名前すら我々はつけてない。先の大戦とかね。第2次大戦とは言われるが、あれは第2次大戦のほんの一部ですからね。例えば、私はあれはアジア・太平洋戦争と命名すべきだと思いますが。皆が、なんとなくあの戦争のことはとね、先の大戦ということで、それ以上中に入っていかない。何が本当に悪かったのか、悪くなかった部分は何なのか、じゃあそれは今でも使っていいじゃあないか。それはいろんなことがあると思いますよ。そこを総括しない。それともう一つは歴史認識の問題なんですね。2006年に日本が安保理の常任理事国に立候補したときに、中国はアジア諸国に大キャンペーンを張って、日本を安保理の常任理事国にしてはいけないと、彼らの血には好戦的な血がDNAとして流れていると大キャンペーンをやったんですよね。それを聞いてしまったアジアの諸国もある。我々はそれに対して有効が反論できるように、歴史認識についても国論が割れているが、事実は一つなんですから、きちっともう一回見直すべきですね。」

司会A「半藤さん、一言、今私たちに一番求められていること、なんだと思いますか。」

半藤「私は歴史を一生懸命に学べ学べと言っている。日本の近代史をきちっと学べば自ずから日本がどう進めば良いのかは出て来ると思う。本当の話。世界中の国が日本は昔と同じ国かと思わせないためにもしっかりと学んで、平和主義を世界に拡げていく、国民がそういう気持ちになった方が日本の平和はまもれると思う。」

司会A「今日は市民の皆さんの議論も受けて、平和を守るためにどうしたら良いか話をしてきました。根源的な問いかけがあったと思います。ありがとうございます。」

司会B「ありがとうございました。最期に土井さん、母親でもありますが、今日の議論をどうお聞きになりましたか。」

土井「平和主義というのは非情に尊いもので、私のように世界を見ているものからしますと68年前だけではなくて今この瞬間にも、自分の子供の命を亡くしている母親、父親は沢山いるんですね。そのために日本ができることはたくさんある。平和的手段で今すぐできることもある。今、いろいろ議論されていることもありますが、それに向けて行動が必要なのが今だと思います。」

司会A「宇野さん、一言。」

宇野「リベラルの人達はもっと頑張るべきですね、僕らも含めて。重武装だけが答えではないというポジティブなビジョンが圧倒的に足りないですよ。」

司会A「そうですか、ありがとうございます。どういう国を目指すべきか、みんなの議論が問われている、ということが分かったと思います。今日はどうもありがとうございました。」

2013年8月15日  終り


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