自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

TBS「サンデーモーニング」とフジテレビ「新報道2001」

2015-06-08 17:46:56 | 憲法を考える
 これまでは世論に及ぼす新聞の影響が大きかったが、今ではテレビやネットの影響が大きくなっているらしい。ネットは一般の方は読むだけだが、意見の書き込みとしてはこれも国民性なのか右翼系の書き込みが多いのが気になる。テレビと新聞は「日本テレビと読売新聞」、「フジテレビと産経新聞」、「テレビ朝日と朝日新聞」の関係があるようだが、TBSと毎日新聞社は他の新聞社とテレビの様な関係はなく、論説委員等の交流や、業務上の提携などの関係だけらしい。「朝日新聞」は革新系と自民党の政治家には嫌われていたが、「テレビ朝日」の「報道ステーション」は古賀降板事件以来信頼できなくなってしまった。私はTBSの「サンデーモーニング」を最も信頼し毎週録画しているが、このような良識的番組が安倍政権により絶滅危惧種にならないように多くの方にも応援していただきたい。

 昨日(2015年6月7日)のTBS「サンデーモーニング」は「安保法制が憲法違反」をトップに取り上げていたが、フジサンケイグループの中核企業であるフジテレビ「新報道2001」では「北朝鮮拉致」に海上保安庁や自衛隊では対応できなかったことを報じていた。このことと「集団的自衛権」は別の問題だと思うが、今なぜ「安保法制が憲法違反」のニュースを大きく取り上げないのであろうか。産経新聞は「国民の憲法」を公表しているのだから、解釈改憲による「安保法制が憲法違反」に対する態度も明確に報道すべきではなかろうか。報道番組の姿勢に誠実さがなく国民を扇動することに熱心だと、国民が共有すべき憲法に対する認識も大きく違ってくるのが心配だ。そこで先週の「サンデーモーニング”風をよむ”~自衛隊のリスク」の伊勢崎賢治さんの意見、今週の「サンデーモーニング」で報道された「安保法制が憲法違反」に対する自民党議員の態度とコメンテイター寺島実郎さんの意見を紹介しておきたい。

2015年5月31日「サンデーモーニング”風をよむ”~自衛隊のリスク」
 国連PKOの上級幹部として、紛争地帯の武装解除等に従事してきた伊勢崎賢治さん。自衛隊のリスク拡大は、今回(検討されている)PKO協力法の改正に加え、最近の国連の変化も大きな影響を及ぼすと言います。

伊勢崎「停戦合意の監視とそれを和平につなげるのが従来の(国連の)筆頭の任務だった。ここ7~8年のことですかね、「住民の保護」がその筆頭の任務になり始めました。でも保護するためには武力を行使しなければいけない。そうすると自衛隊が紛争の当事者になる。今後リスクは格段に高まる。命を落とす自衛隊員も出てくるかも知れない。」


 近年、国連には武器を使ってでも住民を保護する責任があるという考えが広まり、2013年にはコンゴ民主共和国での平和維持活動(PKO)のために武装勢力に対抗する戦闘部隊の創設を認めました。かつて紛争当事者の間に立って停戦を監視し、双方の対話を通して紛争解決を促してきたPKO。ところが、最近は戦闘部隊を創設するなど本来の役割が変化しているのではないかといった指摘もある。伊勢崎さんは武力行使と距離をおいてきた自衛隊には国際貢献につながる自衛隊ならではの役割があると言います。

伊勢崎「国連の最後に残された中立性を保つ部署として非武装のチームがある。ここに自衛隊を使う。日本は非武装とは言わないまでも、戦後、戦争をしていません。こういうイメージを持った国があえて非武装で国連で最も希求している役割を担うことは日本の国益になる。中立性が今、失われつつある国連のジレンマを救う鍵にもなる。これは自衛隊こそできる貢献だと思う。


2015年6月7日「サンデーモーニング」
1.憲法審査会で「安保法制が憲法違反」と憲法学者全員の意見
 安保法制を巡る国会、ここに来て政府与党にとっては想定外の展開となって来ました。4日(木)に開かれた衆議院の憲法審査会、各党が参考人として推薦した3人の憲法学者に民主党中川議員からこんな質問が。「今の(国会で審議中の)安保法制、憲法違反だと思われますか?」

自民、公明などが推薦した長谷部氏はこのように答えたのです。

長谷部「集団的自衛権の行使が許されるという点については、憲法違反であると考えております。従来の政府見解の基本的論理の枠内では説明がつきませんし、法的な安定性を大きく揺るがすものであると考えております。」
 さらに民主党が推薦した小林節氏と維新の党が推薦した笹田栄司氏も

小林「私も違憲と考えています。憲法9条に違反します。仲間の国を助けるために海外に戦争に行く。これは集団的自衛権ではないと言う人はいないはずです。これをやろうということですから憲法9条、といわけ第2項(交戦権の否認など)違反です。」
笹田「日本の内閣法制局は自民党政権と共に安保体制をずっと作って来た訳です。そのやり方は非常にガラス細工と言えなくもないギリギリのところで保ってきているんだなと考えておりました。今の言葉では定義では踏み越えてしまったということで違憲の考え方で立っております。」

2.「安保法制が憲法違反」の憲法学者意見への自民党の態度
 与党の推薦した参考人まで違憲との見解を示す想定外の展開。与党に衝撃が走りました。

船田「ちょっと予想を超えたところがあったと思います。参考人の皆さんのご発言、ご答弁はそれなりに一理あるというか」
 憲法調査会の自民党筆頭幹事長である船田氏は党幹部への事情説明に追われる立場に。一方政府は、
官房長「憲法解釈として法的安定性、論理的整合性は確定されている。従って、違憲というご指摘は当たらない。」
「自民党が推薦した参考人が違憲と言っているが」(という質問には)
官房長「全く違憲ではないという著名な憲法学者も沢山いらっしゃいますから。」

翌日、野党から追求の声が上がります。
「昨日の憲法審査会を受けて、3名違憲と言われたことを受けて本法案は一回政府は撤回させたほうが良い、と思いますがいかがですか?」

防衛大臣「現在の憲法、これをいかにこの法案に適用させていけば良いのかという議論を踏まえて閣議決定を行った訳でございますので。」

自民党幹部らは火消しに追われました。
憲法学者に対するこんな批判が、

高村「憲法学者はどうしても憲法9条2項(交戦権の否認)の字面に拘泥するということがある。」
また、別の自民党幹部からはこんな発言も、
「憲法学者は憲法の条文の方が国民の生命と安全よりも大切な連中だ。」

3.さらに「安保法制が憲法違反」の声が
 3日水曜日、憲法学者らが「安保法制」は憲法違反であるとして廃案を求める声明を発表。5日現在、180人以上が賛同しています。

 さらに、第一次安倍内閣で内閣法制局の長官を務めた宮崎氏も「憲法を改正しないかぎり集団的自衛権の行使は認められない」と述べました
宮崎「ここはもう憲法を改正するかどうかの問題で、部分的(容認)だから良いでしょうという理屈はいくら考えてもない。」


法案の根幹部分の正当性が揺らぐ異例の事態。今後の国会審議にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

司会「今のVTRで大体お分かりになったとは思いますが、もう一度(まとめると)」

参考人の方々の主な意見ですが、与党の推薦した長谷部教授を始め3人とも「違憲」であると述べられた訳ですね。さらに自衛隊の後方支援活動についてもこの法案に対して非常に否定的な見解を示しました。
司会「エー、寺島さんから行きましょうか。」

4.安保法制成立を推進する与党への寺島実郎さんの意見
コメンテイター寺島実郎「憲法を改正しないで、解釈を変えて「集団的自衛権」という名で外国の戦争に参加するということを憲法学者が真剣に考えたら、それを認めてしまっては現行憲法が存在する意義がないということに行き着くということは論理的に非常によく分かる。何故そこまでして安保法案を進めようとしているのか、その中心にいて支えている人達と議論する機会が何回かあった。私なりに考えると、(解釈改憲が)日本のためになると思っているその人達の理由は3つある。
1.湾岸戦争のトラウマ、お金だけ出しても世界が認めなかった。
2.中国の脅威
3.アメリカに対する不安と不満、今のアメリカでは心もとない、世界をガバナンスしていくことが。肩代わりとまで行かないけど、日本が(補完する)という思いが強くあると感じている。
 今、世界は大きく変わろうとしているのに対して、この考え方、つまり安保法制の背後にある思想は日米同盟を強化して世界と向き合うことにつきる。さてこの考え方が21世紀の世界を展望した時に正しいのか、どこまで正当なのかを国民としてしっかり考えないといけない。
 今、世界の国際政治学の世界で話題になっているキッシンジャーの「ワールド・オーダー」という本を気にしているが、次の世界の秩序はどうあるべきか、これは400年続いた近代化の政治の枠組み、例えば国民国家、民族自決、宗教という要素の排除とかが、また新たな秩序を求め始めている。ウエストファリア条約(1648年)以降400年目の大きな変化の機会が来ているとキッシンジャーが言い始めている。さらに冷戦後25年経ってアメリカの1極支配が終わって、G7をやっていますが、G7ではガバナンスが効かない時代になっている。そういう時代に対する日本外交の構想力、外交と軍事は2本柱であって軍事だけに力がいっているというのは、外交に対する対する日本が世界を見渡してどういう時代をつくるのか、例えば核なき世界を一つとっても、そういうものに対する構想力に欠けているから、我々を含めて安保体制の議論に躍起になるということなんだろうなと思っています。」

初稿 2015.6.8