鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

ススキに鈴虫図鐔 加賀象嵌 Kaga Tsuba

2020-09-11 | 鍔の歴史
ススキに鈴虫図鐔 加賀象嵌


ススキに鈴虫図鐔 加賀象嵌

 秋草に虫の図というと加賀の平象嵌による繊細な表現を忘れることができない。0.1ミリの細い線を平象嵌している。平面の部分には細い毛彫が加えられている。金が鮮やかに浮かび上がるように赤銅地は微細な石目地処理がなされている。この鐔では露が光るススキが見どころ。もう一つ、裏の月が銀でおぼろなところが魅力。

鈴虫図小柄 佐野胤好Taneyoshi Kozuka

2020-09-10 | 鍔の歴史
鈴虫図小柄 佐野胤好


鈴虫図小柄 佐野胤好

 ゆったりと流れるような曲線的構成で彫り描いたススキに鈴虫。翅の文様まで描いている。すうっと伸びた長い触覚が特徴的だが、その風に流されているような構成が面白い。

秋草に虫図鐔 金英  Kanehide Tsuba

2020-09-09 | 鍔の歴史
秋草に虫図鐔 金英


秋草に虫図鐔 金英

 金英は彦根の金工。彦根には美濃彫様式の秋草図鐔などを遺している宗典がいる。この鐔では、秋草図を美濃彫の文様風に表現するのではなく、絵画の要素として秋草や虫を描いている。また、鄙びた野の風景ではなく、武骨な武士の死生観を示した図でもなく、何となく雅な香りが感じられるのは、『源氏物語』など古典を題材にしているからではないかと思う。作品をみないので、このような金工がいたんだと、改めて感じ入った。

蟷螂図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2020-09-08 | 鍔の歴史
蟷螂図目貫 古金工


蟷螂図目貫 古金工

 古金工と分類したが、作風は時代の上がる美濃彫によく似ている。



秋草に虫図鐔 美濃

 粗見すると時代の上がる古美濃のように感じられるが、江戸時代中頃以降の美濃。描かれている各々の植物や虫などの題材に新趣が感じられる。

秋草に虫図鐔 美濃 Mino Tsuba

2020-09-07 | 鍔の歴史
秋草に虫図鐔 美濃


秋草に虫図鐔 美濃

 江戸時代の美濃鐔の典型。全面に秋草を散し配し、ここでは蟷螂と鈴虫であろうか、特に蟷螂の顔を目玉が大きく飛び出したかのように彫り描いている。美濃彫の蟷螂の特徴でもある。


秋草に蟷螂図縁頭 美濃住光仲

 美濃彫は、江戸時代にこのような作風に銘を「美濃住光仲」などと刻したことから美濃彫金工と呼び倣わされ、この風合いの作で桃山時代以前にまで時代の遡る作品を「古美濃」と呼び分けている。古美濃には在銘作がないことから、果たして古美濃が美濃で製作されたものかは断定できない。この縁頭は江戸時代の作。主題である秋草に虫は肉高く、地面は極端に深く処理されている。


車に蟷螂図鐔 Tsuba

2020-09-04 | 鍔の歴史
車に蟷螂図鐔


車に蟷螂図鐔 
 この図が、まさに野に打ち捨てられた車と、これに絡みつく野瓜の蔓、そしてカマを振り上げる蟷螂。車の車軸が壊れているのも構成として面白い。植物などは正確な描写だが、蟷螂に少し古典的な雰囲気が感じられるのも面白い。


衝立に蟷螂図鐔

 背景に萩が花を咲かせている。戦場ではない。どこか瀟洒な庭の片すみ。涼やかな風情がある。

車に蟷螂図鐔 包考 Kanetaka Tsuba

2020-09-03 | 鍔の歴史
車に蟷螂図鐔 包考


車に蟷螂図鐔 包考

 包考は会津正阿弥派の金工。江戸時代後期の田中清寿門で学んだとあるが、この鐔は東龍斎風ではない。精巧な高彫、正確な構成。車を背景にして両者の関係性を文様として完成させている。蟷螂は、巨大な相手にさえカマを振りかざして立ち向かう。武士はその行動を見習うべきであるとされたもの。さてこの図では、車のあいだにススキが生えている。どうやらしばらくの間は車も使われずにあったようだ。あるいは野に捨てられた車であろうか。車が戦のためのものでなければ、平和な時代を意味しているようである。

鉄線花に勝虫図鐔 宗政 Munemasa Tsuba

2020-09-02 | 鍔の歴史
鉄線花に勝虫図鐔 宗政


鉄線花に勝虫図鐔 宗政

 宗政は伊勢藤堂家の金工。緊張感に満ち満ちた鉄地を巧みに彫り出した、鉄の風合いを活かした迫力ある作風を得意とする。単なる夏の風景ではないようだ。鉄線花も縦横に蔓を伸ばして異風の花を咲かせる生命力と存在感の強い植物で、勝虫はその名の通り強さを示す生き物。武骨な印象がある。

勝虫図小柄 後藤光孝 Mitsutaka Kozuka

2020-09-01 | 鍔の歴史
勝虫図小柄 後藤光孝


勝虫図小柄 後藤光孝

 先に紹介した勝虫とは雰囲気がずいぶん異なる。その違いの面白さがポイントだ。赤銅魚子地に高彫された勝虫を据紋している。綺麗に揃えて打たれた魚子地の背景を含め、写実ではないが印象的な構成、彫口、三という数、全てにおいて整った後藤家らしい作風である。