鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

宝珠図鐔 埋忠明寿 Myoju Tsuba

2020-02-26 | 鍔の歴史
宝珠図鐔 埋忠明寿


宝珠図鐔 埋忠明寿

 江戸時代における金工の発展は、後藤家やこの埋忠明寿などが基礎にあると言ってもよいだろう。殊に明寿は、桃山頃に登場した琳派の美意識を背景に文様美を追求した金工である。以前に紹介したことのある、素銅地に九年母を墨絵のように表現した鐔が良い例である。この鐔は鉄地だが、地に変化をつけてこれを景色とし、文様を片切彫と布目象嵌で表し、さらに陰影でも透かし表している。透かしを大きくとるのではなく、小透と呼ぶ程度なのだが、画面に活かしている。この組み合わせに妙趣が感じられる。ただ眺めているだけでも飽きない。地の動き、文様の動き。不思議に満ちた作品でもある。