鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

葡萄に栗鼠図鐔 長崎七宝 Nagasaki-Shipo Tsuba

2010-06-29 | 
葡萄に栗鼠図鐔 長崎七宝


葡萄に栗鼠図鐔 無銘長崎七宝

 真鍮地に肉彫手法で、たわわにさがる葡萄を彫り出し、これに栗鼠を加えて実りの秋を描き出している。七宝は透明感がなく、むしろ沈んで泥土のようであることから泥七宝(どろしっぽう)と呼ばれている。この泥七宝こそ古い手法を活かしているもので、平田初代道仁も最初はこのような風合いの七宝であったと推測される。確かに、透明感のある七宝は平田家でも代が下がるに従って美しくなる傾向にあり、道仁の製作した富岳図などには透明感に乏しい七宝が多々みられる。道仁の作では、このような古風な七宝の方がむしろ味わい深く尊ばれているようだ。
 この鐔では、青緑から白へのグラデーションのある七宝を葉と葡萄の一部に施している。時代の下がる、透明で宝石のような七宝にはない魅力が詰まっている。七宝の技術は中国大陸渡来のものと、西洋からのものとがある。貿易の要である長崎には、どちらからも七宝技術が入って来る可能性がある。


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