鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

合戦図小柄 後藤程乗 Teijo Kozuka

2019-11-11 | 鍔の歴史
「加賀後藤」と分類される作品群がある。銘に「加賀後藤何某」と記されているわけではなく、後藤家の中でも加賀前田家に出仕し、加賀金工の発展に貢献した後藤程乗など後藤家の諸工、およびその影響を受けた加賀の金工の手になるもので後藤風の作品を指す。造り込みなど後藤の作風であることが基本だが、後藤本家の作風に比較して華やかであるという特徴がある。それゆえ、無銘の後藤の作で華やかだと加賀後藤と極められることが多い。
加賀前田家に出仕した後藤家の金工を挙げると、以下のようになる。
琢乗:宗家五代徳乗の子で、喜兵衛家二代目。覚乗:宗家四代光乗の孫で勘兵衛家初。演乗:勘兵衛家二代目。
顕乗:徳乗の子で理兵衛家の初代。後に宗家八代目を継ぐ。程乗:理兵衛家の二代目で、後に宗家の九代目を継ぐ。悦乗:程乗の子で理兵衛家の三代目。
 比較的作品の多いのが程乗で、しかも頗る上手。人物描写に優れており、顔などは後藤風を下敷きにはしているが、その中にも表情が窺える。後藤の伝統を守りながらも、個性を示した金工である。

合戦図小柄 後藤程乗


合戦図小柄 後藤程乗

 上の小柄は源平時代の合戦の一つ、木曽義仲勢の巴が奮戦している場面。下の小柄は、源平合戦の中の、「箙の梅」と題される梶原景季奮戦の場面。主題である人物だけでなく、背景も描き、合戦の状況を説明している。このため比較的華やかに感じられる。特に箙の梅は、裏板にも工夫し、金の削継を施してより華やかに仕上げている。普通、裏板は見えないところ。ここにまで装飾を施しているのである。





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