鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

源氏物語浮舟図三所物 後藤程乗 Teijo Mitokoromono

2019-11-09 | 鍔の歴史
源氏物語浮舟図三所物 後藤程乗


源氏物語浮舟図三所物 後藤程乗

 いけないことと知りつつ今の想いに流されてしまう…。『源氏物語』は、そんな恋の話ばかりだ。ボクは、この浮舟の話が『源氏物語』の中でも一番興味深く感じられ、作者の思いが最も強く入った作品ではなかったかと考えている。光源氏没後の、薫、匂宮、浮舟などが主題。物語の展開としては心理描写が面白いのだが、図柄としては、月が印象的に描かれているのがいい。月が見ているぞ、といった意味合いがあるのではないだろうか。『源氏物語』の背景を成す華麗な文化や恋物語に憧れているのではなく、世界に知られた古典的小説の核となる場面を捉え、恋に苦悩する浮舟の心理までも浮かび上がらせている図としているところがいい。技量が優れ加賀前田家にも仕えた程乗の彫技が冴えた作である。


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