鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋海棠図鐔 七宝

2010-06-02 | 
秋海棠図鐔 七宝 (shipo tsuba)

  
秋海棠図鐔 無銘

 少し時期は早いが、装剣金工としては珍しい図柄を紹介する。秋海棠(しゅうかいどう)である。木陰に咲く下草の一つで、近代に多品種が西洋から持ち込まれているベゴニアの一種と言えばわかりやすい。そもそも秋海棠は純粋な日本産であろうか。外来種であれば、いつ頃日本に入ったのであろうか。だが、現在良くみるベゴニアと違って秋海棠は控えめな存在感を示す、なんとなく日本的な風情があると感じるのは筆者だけであろうか。
 さてこの鐔は、色絵部分が七宝象嵌(しっぽうぞうがん)による手法である。七宝とはガラス質の素材を溶融させて作品の一部に固着させる技法。色合いに多様性があり、透明感があることから、江戸時代以降に発達している。七宝の技術は古く、奈良時代には優れた作品を製作している。
 この鐔は、透明感を抑えて素材の色合いを鮮明に出す手法を採っている。下地は赤銅で、表面に石目を打ち施して光沢を抑え、金で縁取りされた図に青緑の葉、花と茎はこの植物独特の赤味のある華やかな色合いで表わしている。
 七宝象嵌を得意とした江戸時代の金工は、幕府に仕えた道仁(どうにん)を初代とする平田(ひらた)家が有名。肥後の平田家との関係は不明。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿