鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

鉄拐仙人図小柄 乗意 Joui Kozuka

2011-09-22 | 鍔の歴史
鉄拐仙人図小柄 (鍔の歴史)


鉄拐仙人図小柄 乗意〔金印〕

 蝦蟇仙人も描かれることが多いのだが、これと対で描かれるのが鉄拐仙人。自らの身体から意識のみを遊離させ、遥か彼方に移動できるという術をもっていたが、あるとき、意識を身体から遊離させている間にその身体が葬られてしまった。返る身体をなくした鉄拐は困りはて、死人の身体を探してこれに戻ったという。仮死状態で夢でも見たんじゃないの、と言われそうだが、そうかもしれない。また、仙人とは薬種に関わる伝承が多いことから、薬で幻影を見たのではないか、とも考えられる。こうした背景には、天然の薬種の発見とその人体実験の繰り返しがあり、現代の漢方薬の完成に繋がっている。この伝承が生まれるまでには多くの人々が薬の人体実験で死んでいるのであろう。鉄拐とはそのような一人の可能性もある。漢方薬の発見と完成の歴史の一面だが、落語にでもまとめられそうな話で面白い。
 これも乗意の名品。朧銀地を微細な石目地とし、肉合彫に金と赤銅の色絵をわずかに加える程度。ここでも細かな点描で吐き出した気を表現し、遊離した意識を暈けた輪郭で色合いの濃い金属の象嵌で表現している。頗る手の込んだ描法である。とにかく身体描写が凄い。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿