鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

鉄線唐草図鐔 美濃 Mino Tsuba

2015-08-03 | 鍔の歴史
鉄線唐草図鐔 美濃




鉄線唐草図鐔 美濃

 これも同様の表現手法。耳を高く仕立て、文様もまた肉高く、それらの周囲を深く彫り下げて魚子地を打ち施している。特に耳によって切り出された空間は、まさに外部とは一線を画した装剣具の主体であり、耳の筋によって文様が際立っている。
 下の室町時代の太刀鐔が良い例だ。決して文様部分は肉高くないのだが、太い耳で構成された金具は、その外と内なる空間性を明確にしている。古く、この鐔が掛けられていたであろう太刀拵は、最高級武将の持ち物であり、存在意義が一般の武具とは異なっていたはず。これが掛けられていた拵は、特別な意味を持っていたのである。
 最後の鐔は美濃彫様式を伝える江戸時代の作。耳際を特殊な構造とし、装飾性を高めている。太刀鐔ではないが、太刀鐔が備えている二重構造を想わせるものがある。