鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

雲に雁図小柄 後藤光来 Kourai Kozuka

2015-02-03 | 鍔の歴史
雲に雁図小柄 後藤光来


雲に雁図小柄 後藤光来作

 後藤光来は後藤一乗の子。光来もまた優れた技量の持ち主で、この小柄では平象嵌を巧みにしている。朧銀地を下地とし、雲間の太陽は金の平象嵌、雲は薄肉彫。ここまでは普通の平象嵌。霞む大気を金の梨子地象嵌で表しており、これも平象嵌の手法で、間々ある技法。拡大して観察すると、梨子地は大小粒の異なる円形で、しかも金の色合いが微妙に異なっているのだ。これによって微妙なグラデーションが生まれている。裏面も朧銀地だが、雁もまた微妙に色合いを違えた朧銀地の平象嵌。腹を見せていることから、水面に映った様子を描いている。即ち、実体でないことから朧なる描写としたのである。手が込んでいる。