鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

七夕図目貫 古後藤 Kogoto Menuki

2014-09-26 | 鍔の歴史
七夕図目貫 古後藤


七夕図目貫 古後藤

 桃山時代以前の後藤家の作と極められた目貫。ふっくらとした高彫の表面に丁寧な彫刻を施しており、最後の仕上げとして金の色絵を施したもの。際端の観察から、かなり金の板が剥がれてはいるものの、高彫の端部において金の板が固着されていることが判るであろう。しかも高彫部分では銀鑞による焼き付けがない。うっとり色絵の手法である。さて、この高彫の表面を観察してほしい。特にうっとり色絵が剥がれた部分。この目貫に限らず、うっとり色絵が処方された作は、うっとりの下に隠れるはずの部分にさえ、精巧な彫刻が施されているのが常である。即ち、金を総て剥がしてしまっても充分に高彫処理に精密な彫刻が加えられており、言わば一つの作品として完成しているのである。先に紹介したうっとりがほとんど剥がれてしまった秋草図鐔の菊花の様子などは、丁寧な毛彫によって、普通にある菊花に仕上げられている。色絵が無くても充分に秋草の様子が楽しめるのである。