鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2014-09-25 | 鍔の歴史
秋草図鐔 古金工


秋草図鐔 古金工

 山銅魚子地高彫金うっとり色絵。古調ながら丁寧な高彫とされている。すり減りもあるのだろうか、高彫された植物の表面の毛彫などは良く見えない。最も興味深いのは、金うっとり色絵が施されていた痕跡が明瞭に窺えるのである。花の部分の高彫の周囲を観察してほしい。ごくわずかに金が残っているところもある。いずれも高彫に沿って筋状の細い溝が切り施されていることが判る。葉の部分の少し幅広の溝とは明らかに異なる。おそらくすべての花と幾つかの葉に金のうっとり色絵が施されていた。高彫の周囲の細い溝は、うっとり色絵の特長でもある金薄板の端部を固着する部分。しかもうっとり色絵とは、高彫部分を銀鑞などで焼き付けしないのが特徴でもある。では金処理されているすべてがうっとり色絵かというと、露のように金色絵が施された素銅地の球が象嵌され、菊花の中心のみ金色絵とされているようだ。室町時代の作と推考されている、頗る面白い資料である。
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