鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

時鳥図小柄 政随 Masayuki Kozuka

2012-03-12 | 鍔の歴史
時鳥図小柄 (鍔の歴史)


時鳥図小柄 政随 行年七十三才

 時鳥を題に得た作は、鎌倉時代の歌人藤原定家が詠んだ和歌花鳥十二ヵ月図の一つとして、ウツギの花と組み合わせて描いた例が多い。ところがこの小柄には、その雅な風景観が全く存在しない。時鳥の表情は何か思いつめているように、哀しいほどに強く力がある。背景の川、その中に置かれた逆茂木などは戦の場面を思わせよう。平安王朝の美意識の再現ではないことは明白である。
 部分の写真をご覧いただきたい。くっきりと高彫にした時鳥の身体は石目地仕上げの背景に浮かび上がって見える。微妙な色合いの朧銀地に毛彫を加えており、拡大観察しても耐え得る繊細な描法により、殊に目玉の表現が素晴しい。