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鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

遊行柳図鐔 三題

2023-06-07 | 鍔の歴史

遊行柳図鐔 三題

 

この辺りから奥州路。

「歌枕」でしか知らぬ、まだ見ぬ憧れの異国を前にする西行。

 

「道の辺に清水流るる柳陰 しばしとてこそ立ちどまりつれ」

柳の陰にうたた寝をしている図が多い 長義

 

しばしの休憩から腰を上げて・・・

正光

 

奥州への想いをふかめているのであろうか 宜時

 

西行と思われる僧が佇むこの場面はどこであろうか。奥州のいずれか・・・小柄と同じ宜時の作。

 

 


富士見西行図縁頭 二題

2023-06-03 | 鍔の歴史

富士見西行図縁頭 二題

 

歌枕を訪ねての旅の途中、雄大な富岳を前にする西行の一首。自らの行く末を想って詠んだもの。

 

「風になびく富士の煙の空に消えて ゆくへもしらぬわが思ひかな」

 

富士見西行は、装剣小道具では好まれて描かれた。

この後に奥州へと足を運んだのであ


吉野桜図鐔 加賀

2023-06-02 | 鍔の歴史

吉野桜図鐔 加賀

 

吉野に暮らした西行は桜の和歌をたくさん遺している

「吉野山人に心を付けがほに 花より先にかかる白雲」

 

「空はただ雲なりけりな吉野山 花もて渡る風と見たれば」

 

「山人よ吉野の奥にしるべせよ 花も尋ねんまた思ひあり」

 

「何となく春になりぬと聞く日より 心にかかるみ吉野の山」

 

「深く入るは月ゆゑとしもなきものを 憂き世忍ばんみ吉野の山」

 

「吉野山花の散りにし木の本に とめし心はわれを待つらん」

 

「吉野山高嶺の桜咲きそめば 懸からんものか花の薄雲」

 

「人はみな吉野の山へいりぬめり 都の花にわれはとまらん」

 

 

 


柳竹に鶯図小柄 堀江興成

2023-06-01 | 鍔の歴史

柳竹に鶯図小柄 堀江興成

 

藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。

花鳥十二ヶ月図揃い小柄より一月

 

花 「うちなびき春くるかぜの色なれや 日をへてそむる青柳のいと」

 

鳥 「春きてはいく夜も過ぎぬ朝といでに 鶯なきゐる里のむらたけ」

 

 


筒井筒図縁頭 夏雄

2023-05-31 | 鍔の歴史

筒井筒図縁頭 夏雄

 

恋物語である『伊勢物語』に取材した一首。幼馴染の恋歌だが・・・

 

男 「筒井筒井筒にかけしまろがたけ 過ぎにけらしな妹見ざるまに]

 

女 「比べ来し振り分け髪も肩過ぎぬ 君ならずして誰か上ぐべき」

 

金工作品としては余りにも有名であることから、敢えて説明しないでおこう。

 


桜に雉図小柄 堀江興成

2023-05-30 | 鍔の歴史

桜に雉図小柄 堀江興成

 

藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。二

花鳥十二ヶ月図揃い小柄より二月

 

花 「かざしをる道行く人のたもとまで 桜に匂うきさらぎの空」

 

鳥 「かり人のかすみにたどる春の日を つまどふ雉のこゑにたるらん」

 


藤壺に雲雀図小柄 堀江興成

2023-05-29 | 鍔の歴史

藤壺に雲雀図小柄 堀江興成

 

藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。

花鳥十二ヶ月図揃い小柄より三月

 

花 「ゆく春のかたみとやさく藤の花 そをだに後の色のゆかりに」

 

鳥 「すみれさくひばりの床にやどかりて 野をなつかしみくらす春かな」

 


三夕図小柄

2023-05-28 | 鍔の歴史

三夕図小柄

 

『新古今和歌集』に取材した、夕暮れ時を描いた小柄。

寂蓮「さびしさは其の色としもなかりけり まき立つ山の秋の夕暮」

西行「心なき身にもあはれはしられけり 鴫立つ沢の秋の夕暮」

藤原定家「み渡せば花ももみぢもなかりけり 浦の苫屋の秋の夕ぐれ」


江ノ島図縁頭 二題

2023-05-27 | 鍔の歴史

江ノ島図縁頭 

 

江戸時代には観光地として隆盛した江ノ島。古くは鴨長明も詠んでいる。

「浦近き砥上ヶ原に駒止めて 固瀬の川の潮干をぞ待」『鴨長明集』

今はビルが建ち並んで見えないが、龍口寺門前の砂丘辺りから眺めた江ノ島。

 

 

 


柿本人麻呂図目貫

2023-05-26 | 鍔の歴史

柿本人麻呂図目貫 

 

「ほのぼのとあかしの浦の朝霧に 島がくれゆく舟をしぞ思ふ」

柿本人麻呂作と伝える和歌の一つで、装剣小道具では好んで採られた画題。絵画にも採られて有名。多くが人麻呂像と明石の海原を対比の構成とする。


武蔵野図鐔 三題

2023-05-25 | 鍔の歴史

武蔵野図鐔 三題

 

『続古今和歌集』に、源通方の「武蔵野は月の入るべき峯もなし 尾花が末にかかる白雲」がある。これを本歌とりに、江戸時代につくられたのが「武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて草にこそ入れ」

すすき野に沈む月を描いた作品が間々みられ、この図が大いに好まれたことが判る。古くからの東国の印象を、江戸時代においてもこのように表現していたのは面白い。

起伏のないススキ原といった景色を想定しているようだ。朧銀地に銀の平象嵌で三日月を描き、ススキは片切彫。図の下端に月を描いている。

亀眼の鐔は鉄地高彫、満月を同様に下方に描いている。

友直の鐔はススキのみの描写のようだが、鐔の外形が満月。耳に金覆輪を施して月の印象を高めている。

 


富士見業平図鐔 額川保則

2023-05-24 | 鍔の歴史

富士見業平図鐔 

 

『伊勢物語』の東下りから。

富岳を越えると異国。富士を眺める貴人(業平)の都への想い。

「時しらぬ山は富士のねいつとてか 鹿の子まだらに雪のふるらん」

 

『伊勢物語』は悲恋物語。壊れたハートを癒すために出た東国への旅だが、業平は都への想いをいっそう深めている。

この図もあまりにも有名であり、幾つかの作品を見ている。

 

 


蔦の細道図鐔 鵜飼清好

2023-05-23 | 鍔の歴史

蔦の細道図鐔 鵜飼清好

 

『伊勢物語』より。

「駿河なる宇津の山辺の現にも 夢にも人に逢はぬなりけり」

東国へと向かう在原業平が、宇津ノ谷峠(蔦の細道)を越える際に詠んだ歌。

蔦藪の茂る寂しい道を東国へと向かう。京への思いを深める作者だが、後の武士がなぜこの図を装剣小道具に採ったのだろう。

人物が描かれていない留守模様とされているのが気持ちいい。

 

 


八橋図鐔 京透

2023-05-22 | 鍔の歴史

八橋図鐔 京透

 

「唐衣着つつなれにしつましあれば はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」

『伊勢物語』より、在原業平が詠んだとされる和歌。この「かきつばた」を詠み込んだ、あまりにも有名な図。様々な文様にも表現されている。

ここでは写実味のある彫口の小柄と、簡潔な文様表現とされた京透の鐔を紹介する。

文様表現ながら八ッ橋が描かれている。

赤銅魚子地高彫金銀色絵の技法で写実味のある表現。

ただし八ッ橋は描かれていない。

 


芥川図目貫

2023-05-21 | 鍔の歴史

芥川図目貫

 

むかし男ありけり・・・と始まる『伊勢物語』。在原業平が昔を思い出して歌に詠んだものであろうか。喪失感の漂う一首である。

「白玉か何ぞと人の問ひし時 露と答へて消えなましものを」

目貫の図は、男が女を奪って逃げる場面。後に捕らえられてしまうのだが・・・なぜこの図を装剣小道具の図に採ったのであろうか、こちらの方も興味深い。