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自由が丘駅前のイタリアン、マダムのひとりごと

磯田道史著  無私の日本人

2016年01月27日 | マダムのひとりごと
武士の家計簿の磯田道史氏の本です。

武士の家計簿もそうだったのですが、有名な武将やら時代を変えた的な人にスポットを当てるわけではなく、庶民の日々の生活から歴史が積み上げられているということに
スポットライトを当てることができる稀有な歴史家だと思います。

今回は磯田氏がどうしても今記しておきたいと思った無名の3人(今は無名。知る人ぞ知るという方たちです)につして書いております。

きっかけは一通の手紙から。

その手紙は東北の吉岡に住む老人からでした。吉岡は仙台藩の助けなく、貧しい村で民家がどんどんつぶれ、いずれなくなってしまうだろう飢饉にあえいでいた村。
このままでは吉岡は滅ぶと絶望した9名の住人が資材を売り、身売り覚悟で千両という莫大な資金を作り、それを藩に貸し付け、この金利を村人全員に配って村の窮地を救おうとしたそうです。
所謂、千両の福祉基金を作ったわけです。

見上げた人達だと藩からの褒美金さえも、住民すべてに配り、末代まで自分たちがえらい、この村を救ったなどと奢ってはいけないと死の直前まで言い続けたといいます。

3人目は蓮月焼きで有名な蓮月尼。
彼女は幕末、官軍が徳川を打つと倒幕ののろしを上げると西郷隆盛宛歌を詠む。

「あだ味方 勝も負くるも 哀れなり おなじ御国の 人と思へば」

この国を焦土にし新しい国を作るという西郷の思いを変えたのは歴史的には勝海舟や山岡鉄舟の功績であるが、しかし江戸を火の海から救ったのは私ごとには一切の贅沢をせず周りの人に尽力し、人に食べものを与え、子に教え続けた、蓮月という人の感覚であったのかも知れないのです。

こういう人たちの哲学、感性、感覚が忘れ去られた後の経済成長。人より多くの物を持ち、お金がある。これが本当に日本人にとって一番良いことなのか?お隣さんと競いあうことが良いことなのか?無私の日本人を読んで改めて考えさせられましたし、とにかくきれいな涙が出ました。おすすめです。




昨日の賄い:鶏のハツとほうれん草の炒め物、揚げ出し豆腐、山なめこ餡


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