totoroの小道

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なぜゾウはネズミより長生きか

2017-08-12 18:17:18 | 理科

東京大学 ゲノム再生研究分野教授 小林武彦さんの講演を聴く機会があった。

長寿についての講演だった。

生き物にはそれぞれ固有の寿命がある。
例えば、
酵母は2日
虫は1~7年
ネズミは3年
ゾウは70年

原則として、体の大きさと寿命は相関関係にある。
同じネズミでも
ハツカネズミは小さいので2年
ハリネズミは大きいので10年

同じ鳥でもジュウシマツは7年
アヒルは20年 ・・・・・・・・・・といったように。

成長年齢の5~6倍の寿命が遺伝子の中に組み込まれている。
人は20才までが成長年齢なので、寿命は100~120才。
ハツカネズミはすぐに大人になるので、寿命は短い。

 

 

全ての生き物の細胞は、同じ遺伝子を持っている。
DNAが正確に複製され、同じ細胞ができる。

実は、DNAは複製されるときに、ごくまれに間違ったり、こんがらがったりすることがある。
しかし直す酵素が働き、おかしな遺伝子がコピーされないようになっている。

おかしな遺伝子がコピーされると、異常な細胞が増えてガンとなり、命がなくなる。

 

この遺伝子の異常をなおす仕組みを研究することで、長寿の秘密を見つけることができる。



どの生物をつかってその研究に取り組むかが問題だ。
ネズミは成長が早いので、実験に向くように思われるが、実はそうではなかった。

ネズミは、弱い生き物。
絶えず他の生物のえさとなる。
寿命を全うできる個体は限られている。
ネズミの戦略は、早く大人になってどんどん子どもを生む。
どんどん捕食されるが、それを上回るスピードで子孫を残す。

寿命を全うすることはない。
「異常な遺伝子を修正する」仕組みが必要なく、そのような仕組みがない。
実験室で飼育すると、外敵に捕食されないので、どんどんガンになって死んでいく。
体を、老化から守るシステムがないのだ。

 

では、ゾウはどうだろう。
ゾウは、敵に襲われない。
寿命を全うする
寿命が来るまで、異常な細胞ができては困る。
だから、ゾウの細胞は、ネズミの細胞と比べて数百万倍ガンになりにくい。

ゾウはネズミより長生きする。
進化のために、抗老化を獲得したのだ。(長寿遺伝子)

ただしゾウで研究すると、結果がでるまえに研究者が老化してしまう。

 

遺伝子の異常を直す機能があり、かつ短時間で結果がでる生き物
注目されているのが、酵母だ。

酵母は、20回発芽して子細胞を作る。
1~17回目までは、子細胞は正常。
18~20回目までは、親細胞が老化し遺伝子に異常が生じる。
この18~20回目に発芽した子細胞は死滅する。
自然界では、遺伝子的におかしな生き物は淘汰される。

酵母の遺伝子の中に、ヒト早老症遺伝子と同様の遺伝子がある。
これを破壊すると酵母の寿命はさらに短くなった。
遺伝子修復酵素を加えると、20回以上正常に発芽して分裂をすることも分かった。
酵母とヒトとの老化のメカニズムは、同様だということが分かった。

 

酵母のゲノムの一番壊れやすいところ、それは「リボゾームRNA」
同じ遺伝子が百回以上繰り返して存在していて、安定性が低い。
遺伝子がからまってしまう。
老化が始まると一番最初に不安定になる。
リボゾームは全ての生命がもっている。
ここが壊れると、老化が始まる。
進化の過程で{Sir2}という「リボゾームRNA」を安定化させるタンパク質が作られるようになった。

このSir2をノックアウトすると、寿命は半分になる。
遺伝子の異常が生じて、生命を作る細胞が正常に作られなくなるのだ。
逆に、Sir2を増やすと逆に酵母の寿命は30%のびることが分かった。

 

 

 

Sir2の働きを強めるには、
1 カロリーを制限する。
2 ポリフェノールの摂取
3 ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの摂取

ゲノムの安定性が寿命を決定することが分かってきた。
しかし、メカニズムはまだまだ不明だ。

 

 

なぜ生き物に寿命があるのか?
寿命が延びると幸せなのか?
生物の寿命には理由があるのではないか?
そのように遺伝子が設計されている。

 

人間の赤ちゃんはとても手がかかる。
母親一人では育てられない。
そこで、祖母も、子育てに参加する。
子どもが思春期になると、祖母は子育てを手伝わなくてもよくなる。
それが、およそ60才だ。
だから、生物学的には、人間の寿命は60才と設計されている。

そこまでは、遺伝子修正酵素が働き、ゲノムの安定化が図られる。
60才をすぎると働かなくなり、老化が進む。
実際に100年前まで人間の寿命は50年だった。
それが、栄養の改善と、公衆衛生の改善で、寿命が80才になった。

 

 

酵母にSir2を与えると、寿命を30%のばすことができる。
しかし、ゲノムの色々なところに異常が生じ、異変が起きる。
ガンに苦しみながら、長生きするのだ。

 

人間も、長寿になるに従って、ガンが増え、認知症が増えた。
それまでは、60才まではたらき、ある日ぽっくり亡くなった。
寿命がなぜあるのか。
・生理的にガンを防ぐため。(悲惨な死に方、迷惑をかける死に方をしない)
・世代交代による多様性の選択
壊れて亡くなった方が、都合がいいのだ。
無理に修復しないことだ。

 

多くの人がガンで亡くなる時代はこれからも続く。
しかも、85才以上の4人に1人は認知症を患う。
社会的コストのかかる死に方は少子化対策にも悪影響になる。
何でもいいから、長生きをさせるという価値観が果たしてよいのか。

 

全ての世代がバランス良く関われる社会の構築が急がれる。

 

 

そんな内容だった。

 

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