totoroの小道

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白いぼうし 三の場面

2009-06-06 17:25:57 | 4年 国語

T先生と、それから4年の学年主任のO先生と一緒に3の場面の教材研究を行いました。

T先生が子ども達と一緒に考えためあては
「松井さんと女の子の様子を読み取ろう」
でした。

まず、しばらく教材を何度か読んでみて、そして、
「う~ん。」
とうなってしまいました。

この3の場面は2つの意味で特殊なのです。
果たして目当てをたてて、話し合える場面なのかどうか、困ってしまったのです。

まず3の場面の特殊性①
1・2・4が現実の世界の話しであるのに比べ、この3の場面は松井さんが異次元の絵本の世界に入り込んだお話となっています。この異次元の世界は、現実の世界と重なっています。現実の世界の上に、透明なOHPのシートをかぶせるように構成されているのです。
女の子は、そのシート上の登場人物です。それは、その下地になる松井さんと男の子、お母さんのいる現実の世界の上に重なっているのです。そして、そのシートの上に描かれた世界は、松井さんにしか見えないのです。

3の場面の特殊性②
松井さんの物語。男の子の物語。女の子の物語の3つの物語が、まとわりついて展開しています。つまり、松井さんの気持ち、男の子の気持ち、女の子の気持ちが、見えてきます。しかし、その気持ちの強さは、強弱があるようです。

・女の子の気持ちが分かりそうな所は、「道に迷ったの。」「疲れたような声」「え。――ええ、あの、あのね..........」「身を乗り出してせかせかと」「早く。おじちゃん。早く行ってちょうだい。」が考えられます。

・男の子の気持ちが分かりそうな所は、「あのぼうしの下さあ。お母ちゃん本当だよ。本当のちょうちょが、いたんだもん。」「ぼくが、あのぼうしを....あれっ、石が乗せてあらあ。」が考えられます。

・松井さんの気持ちが分かりそうな所は、「おかっぱのかわいい女の子がちょこんと....」「あわてて、アクセルをふみました。」
が考えられます。

すると、一番直接的に調べて分かる気持ちは、男の子の気持ちだと分かります。「本当のちょうちょ」なんて言っているのだから、きっと生きた蝶を捕まえるのは初めてなのです。
それに引きかえ、主人公であるはずの松井さんの気持ちは、「もっと聞き耳を立て、見ていたいけど、かわいい女の子が急ぐから、しょうがない発車しよう...程度しか見あたりません。


こうして3の場面の特殊性考えてみると、この場面は松井さんの気持ちを考えてもあまり意味がないことが分かります。だから、子ども達と先生で作っためあては、とてもよい目当てだと思えてきます。この場面で女の子、男の子、松井さんの関係をしっかり把握することが、4の場面の課題解決へとつながっていくのです。

しかし、子ども達の作っためあて
「松井さんと女の子の様子を読み取ろう」
では、話し合いをする授業としては、成立しないように思えます。
女の子の様子が分かるところに線を引き、それをノートに記入します。そして、ひどく疲れ、あわてていると書き込みます。
松井さんの様子も、同様な作業で終わりです。

せっかく1時間、貴重な時間を使って国語の授業を行うのですから、友達の意見を聞き、感化され、考えさせられる授業を行いたいものです。脳みそに汗をかくような授業にしたいのです。

 


国語の得意なO先生は、すでにこの場面を終えているはずです。
O先生は、この場面をどのように学習したのでしょう。聞いてみたくなります。
「O先生は、この場面、どのように流しましたか?」
とO先生の実践を聞いてみます。

「私は、実は、四の場面の場面の前半部分を、この三の場面にくっつけて、松井さんが男の子の様子を見ながら、そして想像しながら楽しみにしている気持ちを読み取らせました。」と教えてくださいました。
「だって、四のばめんの『よかったね』『よかったよ』をやると、この四の場面の前半は扱わなくなってしまうでしょ。」
と付け足して教えてくださいました。

「四の場面のどこまでを、三の場面に付け足したのですか?」
と聞いてみました。
「.........『ふふふ。』とひとりでに笑いがこみ上げてきました。でも、次に『おや。』」のでもの前までですとお答えになります。

それを聞いて、また質問します。
「女の子は、どこで消えたのですか?」
O先生と、T先生は
「.........『ふふふ。』とひとりでに笑いがこみ上げてきました。でも」のでもの前で消えたんではないでしょうかと答えます。
なるほど、女の子がいるか、居ないかで、場面を分けたのだなと分かりました。

しかし、私は女の子の消えた場面は、ここではないと思います。

ここは、女の子がいなくなったのに気付いた地点です。しかし、どこで消えたかは明記してないのです。
私は、作者が、段落の途中、しかも行の途中で女の子を消すことはしないと思います。女の子が消え、蝶に変身するというのは、この物語の「起承転結」のいわば「転」の部分です。とても重要なところです。それが、段落の途中、しかも改行もなしに行われるはずは無いと思います。

私は、女の子が消えたのは、三の場面と、四の場面の間の、空白の一行だと考えます。たった一行ですが、ここには時間的、空間的移動があります。三の場面では、車は「大通りを曲がった、細い裏通り」に止まっています。四の場面は、ほぼ「菜の花橋」の付近です。どのぐらい離れているのか分かりませんが、ある程度の距離が離れていると思います。そこまで移動するのに、いくらかの時間も掛かっているでしょう。

この三の場面から、四の場面に移る一行で、現実の世界に話しは戻ります。蝶の化けた女の子のシートは、はがされるのです。劇で言えば、暗転して背景が変わるのです。
この空白の一行で女の子は実は消えているのです。それに気付いたのが、「.........『ふふふ。』とひとりでに笑いがこみ上げてきました。でも」なのです。

そう考えると、少しずつ本時の(三の段落の授業)イメージができてきます。やはり、四の場面の10行を、3の場面に組み込んではいけないと思います。

その代わり、三の場面で女の子の様子と気持ちをきちんと抑えます。
そして、予定より一時間増やして、四の段落の最初の部分の、男の子の様子を予想する松井さんの気持ちを読み取ります。
つまり、三の異次元の世界の部分の主人公は、女の子なのです。そして、一・二・四の現実の場面の主人公は、松井さんなのです。

 

しかし、三の場面の主人公であるはずの女の子の気持ちが、いまひとつはっきりとはつかめません。

そのとき、T先生が言います。
「わたしのクラスの子ども達は、みんな、女の子の正体は白いちょうだと知っています。もうすでに、そういっているし、この三の場面でも『女の子は、蝶が化けたんだ。』と言うに決まっています。」と。

この瞬間、ぴんと来ました。
この授業の構想が見えてきます。
もう一度、T先生に聞き直します。
「本当に、先生のクラスの子ども達は、『女の子が白いちょうだ。』と言い張りますか?」
「はい、絶対にそういいます。」
こうした児童の実態がはっきり見えると、授業が組み立てやすくなります。

 

というのは、女の子の言葉を、まだ正体の分からない、おかっぱのかわいい女の子として扱うと、とても制限が多くなるけれど、この子を「もんしろちょう」だと決めつけるとしたら、話し合うことが山のように出てきます。
女の子の言葉、態度の一つ一つに意味が出てくるのです。

「疲れたような声でした。」
ただの女の子だとすると、道に迷って歩き疲れた様子の声という意味になります。
しかし、これが「ちょう」だとすると、男の子に追われて、菜の花橋から「大通りを曲がった、細い裏通り」まで逃げてきたのです。タクシーで数分かかる距離を必死に逃げてきて疲れた様子の声という意味になります。


せかせか =あわただしくて落ち着かないさま。
早く。早く行ってちょうだい。
ただの女の子=早く家に帰りたいという気持ち。
「ちょう」=心細い。また追いかけられるのではないか。何しろ、私を獲物として、しつこくいつまでも追い続けてきた恐ろしい人間が直ぐそばまで来ているのだ。きっと、また捕まえられてしまう.....

女の子がちょうだとすると、とてつもない恐怖を味わっているのです。
逃げても逃げても追いかけられます。疲れて飛べなくなり、地面に落ちます。その瞬間大きな音と共に白いドームが檻のように落ちてきて捕まります。狭い空間に閉じこめられます。逃げようともがきますが、出口はありません。今度男の子が戻ってきたす、今度は羽をむしり取られるかもしれないし、殺されてしまうかもしれません。お父さんやお母さんにはもう一生会えないかもしれません。.....

そんな、気持ちをいっぱい出させるのです。ここは、空想の世界、異次元の世界なのですから、自由にイメージをふくらめてもよいのではないでしょうか。

こうした、小さい女の子=蝶 の、恐怖や疲労困憊な様子を徹底的に理解しておくと、四bの場面の読みが変わります。
「よかったね」「よかったよ」の「よかったよ」がものすごく、リアルに読めると思うのです。だって、命が助かったのですから。すんでの所で、とらわれの身となり、死んでしまうかもしれなかった命が、助かったのですから。
九死に一生を得たというような、「よかったよ」という読みにさせたいものです。


つまり、この三のばめんのまとめは
「女の子は実は、正体はモンシロチョウです。モンシロチョウは、長い間男の子に追われて逃げ、くたくたです。その上、力尽きたときに狭い空間に閉じこめられ、つらく悲しくこわい気持ちでいっぱいです。だから、何としても男の子から早く逃れたかったのです。」
となります。

そこで、そこに至る発問は
「本当に、女の子はちょうだと思う?」
「蝶だとしたら、じゃあ、どうしてこんなにせかせかし、早くと急がせるの?」
「蝶だとしたら、ぼうしの中で、何を思っていたの?」
「蝶だとしたら、どうして疲れているの?」
これらの答えの根拠は「二の段落」に全て入っています。その言葉を使いながら、自由に語らせ、それを黒板に整理してあげたらよいのではないでしょうか?

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