人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ジョルジュ・プレートルの訃報に接し 功績を讃える / イオセリア―二監督「皆さま,ごきげんよう」を観る

2017年01月07日 08時22分17秒 | 日記

7日(土).昨日の朝日朝刊の死亡記事欄を見て驚きました 次のように書かれていました

「AFP通信などによると,フランスの指揮者ジョルジュ・プレートル氏が4日,フランス南部ナーブの邸宅で死去した.92歳だった.フランス音楽ならではの華とウィットを感じさせる演奏で親しまれた.パリ・オペラ座音楽監督などを歴任.ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートに08年,10年の2回登壇した」

記事にもあるニューイヤーコンサートは素晴らしかったですね テレビで観ただけですが,ウィーン・フィルの面々がプレートルに全幅の信頼をおいて 喜々として演奏している姿が印象的でした 当時の音楽仲間の間ではカルロス・クライバー以来の素晴らしい演奏だったというのが共通の感想でした

ジョルジュ・プレートルは1924年8月14日フランス生まれ.パリ音楽院でトランペットと作曲を学び,指揮法をアンドレ・クリュイタンスに師事しました 私はクリュイタンスが大好きで,ベルリン・フィルを振ったベートーヴェンの交響曲,特に第7番は最高に気に入っている演奏です そのクリュイタンスに師事していたからプレートルも好きになったのかも知れません プレートルの指揮によるCDのうち,私の愛聴盤はウィーン交響楽団を振った「カミーユ・サン=サーンス 交響曲全集」(交響曲第1番~第3番,交響詩”ヘラクレスの青年時代”」(2枚組:1990年5月録音)です

 

          

 

          

 

昨夜は,久しぶりに上記CDの「交響曲第3番”オルガン付き”」を聴いて,故人を偲びました

ということで,わが家に来てから今日で830日目を迎え,トランプ次期米大統領が5日,トヨタ自動車がメキシコに新設する工場について「あり得ない!高い関税を払え」とツイッターで批判したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            今まで よその国のことだと思っていたら とうとう日本の企業も標的にされたな

 

                   

              「あっち向いてホイ」って ツイッターなんか無視しちゃえばいいんだよ

 

  閑話休題  

 

昨日,神保町の岩波ホールでジョージア(グルジア)出身のオタール・イオセリア―二監督による「皆さま,ごきげんよう」を観ました この映画は2015年 フランス・ジョージア合作映画(121分)です

 

          

 

舞台は現代のパリ.アパートの管理人を務める武器商人と,骸骨集めが趣味の人類学者の二人は腐れ縁で結ばれた悪友同士だった そんな彼らを取り巻く周囲には,覗きが趣味の警察署長,ローラースケート強盗団,没落貴族,黙々とレンガの家を建てる男,気ままに暮らすホームレスら,一癖も二癖もある人々が住んでいた ある日,大規模な取り締まりによりホームレスたちが立ち退きを強いられることになり,街の人たちは団結して抗議するが,責任者の警察署長は捉まらない ホームレスたちは小屋の残骸とともにゴミ捨て場に捨て置かれてしまう.ホームレスに冷たい署長はある日,マンホールの穴に落ちて下水に流されてしまう

映画はフランス革命時のギロチンのシーンで始まり,次に 時代も場所も不明の戦争シーンが映し出されます そして現代のパリに移ります.これは,いつの時代にも人々は殺戮と掠奪を飽きずに繰り返してきたことを印象づけようと意図したものだと思います 特に印象的なのは,最初のギロチンのシーンで,貴族の男がギロチンに架けられる時に「貴族を殺せ」と叫んでいるのは編み物をしている女性たちばかりで男性はいないところです いつの時代も女性の方が残酷だということでしょうか? もっとも戦争で殺戮と掠奪を繰り広げてきたのはほとんど男たちですが

 

          

 

いくつかのエピソードによってストーリーが展開しますが,面白かったのは,公園のベンチに座って会話をしている管理人と人類学者に,気弱な若者が ヴァイオリンを抱えた女性に恋してしまったが どう接近したらよいかと尋ねるシーンです  二人は「まず彼女のヴァイオリンをどうにかして奪え そしてそれを君から渡して話のキッカケを作るのだ」とアドヴァイスします.若者は「その後どうしたらよいでしょうか?」と訊ねます.二人は「『ワーグナーは嫌いだ.ベートーヴェンも嫌いだ.特に第九は最悪だ.シラーの詞は下手くそだ』と言え それをきっかけに仲良く話をするのさ」と答えます.若者はそれを実行すべく,ローラースケート強盗団のスリ姉妹に 相手の女性の後ろから接近してヴァイオリンを盗み,それを自分に渡すように頼みます 企みは成功し,彼女のヴァイオリンは彼の手から戻され,二人はデートすることになります 「ベートーヴェンは嫌いだ」と言うと相手の女性も「私も嫌いよ」と言うので「これは上手くいきそうだ」と思いきや,付け刃の知識はすぐにバレて「実は君をナンパのためにあんな話をしたんだ」と告白せざるを得なくなり,結局振られてしまいます  二人のアドヴァイザーは,ドイツ人の作曲家は嫌いだと言え,とアドヴァイスすると同時に,フランス人の作曲家(例えばラヴェルとかドビュッシーとか)が好きだと言え,と教えるべきでした 結局 彼はローラースケート強盗団のスリ姉妹に借りがあるので,スリの一味に加わり,彼女たちが盗んだ財布を受け取り それを隠す役割を担うことになりますが,運悪く現行犯で逮捕されてしまいます

ゴミを漁るホームレスたちが,お互いにあいさつする時に,「こんにちは,伯爵」「こんにちは,男爵」と呼び合っていたのが何とも可笑しかったです フランス革命で没落した貴族の末裔を皮肉っているのでしょう

この映画では,路上チェリストがJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」の何番かを弾いていました また,ロッシーニらしき軽快な音楽も流れていましたが,残念ながら題名は分かりませんでした 喜劇にはやっぱりロッシーニが似合います

この映画は,ピエール・ジュネ監督の「アメリ」みたいにエスプリ(ユーモア)にあふれています 思わずニヤリとするシーンがいくつもあります  最後のシーンは,二人がワインを飲み グラスとボトルを叩いて音楽を奏で,自転車に乗って別れる場面ですが,映画を観終わって すぐに頭に浮かんだのは「いろいろあるけど,人生は捨てたもんじゃない ああ,ワインが飲みたい」でした.人生に疲れた人に特にお薦めします

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