人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングでヴェルディ「椿姫」を新演出で観る~ディアナ・ダムラウ(Sp)、フアン・ディエゴ・フローレス(Tr)、クイン・ケルシー(Br)、指揮のヤニック・ネゼ=セガンにブラボー!

2019年02月13日 07時22分11秒 | 日記

13日(水)。わが家に来てから今日で1594日目を迎え、安倍晋三首相は12日午前の衆院予算委員会で、1956年の日ソ共同宣言を基礎としたロシアとの平和条約について「平和条約の対象は4島の帰属の問題だと一貫した日本の立場に変わりはない。これから後退していることは全くない」と理解を求めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      建前と本音を使い分けるのは難しい 建前は大工さんに任せておいた方が良くね?

 

         

 

昨日、夕食に「ポーク・カレー」と「生野菜サラダ」を作りました カレーは時々食べたくなりますね

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ヴェルディ「椿姫」を観ました これは昨年12月15日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演は、ヴィオレッタ=ディアナ・ダムラウ、アルフレート=フアン・ディエゴ・フローレス、ジェルモン=クイン・ケイシー、演出=マイケル・メイヤー、指揮=MET新音楽監督 ヤニック・ネゼ=セガンです

 

     

 

オペラ「椿姫」はジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)が1853年に作曲、同年ヴェネツィアで初演されました。原作はアレクサンドル・デュマ・フィスの戯曲「椿を持つ女」ですが、ヴェルディはタイトルを「ラ・トラヴィアータ」(道を踏み外した女)と変えました 物語のあらすじは以下の通りです

パリの高級娼婦ヴィオレッタは、ある夜自邸で催した夜会で青年アルフレートと出会う。青年は彼女に熱烈な愛を告白する 胸の病を抱えているヴィオレッタは戸惑うが、本当の愛情に目覚める(以上 第1幕)

二人は2人で田舎暮らしを始める。ある日、アルフレートの父ジェルモンがやってきて、娘の結婚に支障があるので息子と別れて欲しいと懇願する。愛するアルフレートのために身を引く決意をしたヴィオレッタは置手紙をして姿を消す それをアルフレートは、彼女が裏切ったと誤解し、父の説得も聞かずパリまで追いかけていく 夜会に現れた彼は逆上し、人々の前でヴィオレッタを罵倒する。ヴィオレッタはその場に崩れ落ちる(以上 第2幕)

時が流れ2月。ヴィオレッタは絶望の病の床にある ジェルモンからは息子と共に許しを請いに伺うという手紙が届くが、彼女は「遅すぎる」と嘆く その直後、父から真実を知らされたアルフレートが駆け付け、再会を喜ぶが、もはや彼女に生きる力は残されていなかった(以上 第3幕)

今回の演出は、2007年「春のめざめ」でトニー賞を受賞したマイケル・メイヤーによる新制作です 私が知っている演出の多くは、悲しい旋律の「前奏曲」が流れる間は幕が降りたままなのですが、今回の演出では、ステージにすべての登場人物が現われています 舞台中央にベッドが置かれ、ヴィオレッタが横たわっており、周りにアルフレート、ジェルモン、アンニーナ(ヴィオレッタの女中)、医師ブランヴィルらが立ち尽くしています。つまり、これから始まる物語はヴィオレッタの回想であることを暗示しているのです。さらに、舞台中央のベッドは全3幕を通して同じ位置に置かれています。これはヴィオレッタには常に死の床が付きまとっているということを暗示しています

「前奏曲」が終わると、照明がパッと明るくなり、ヴィオレッタ邸の賑やかな夜会のシーンが繰り広げられ、「乾杯の歌」が歌われます 「暗から明へ」というヤニック・ネゼ=セガンの指揮は鮮やかです

演出で従来のものと異なる2つ目の点は、第2幕で父ジェルモンが田舎で暮らすヴィオレッタを訪ね、アルフレートの妹が結婚を控えているが、(兄が高級娼婦と一緒に暮らしているのは都合が悪いので)別れて欲しいと訴える歌を歌う時に、その「妹」が姿を現すところです 通常の演出では出てきません

演出上で気が付いた3つ目の点は、第2幕でアルフレートがフローラ(ヴィオレッタの友人)の夜会に現れ、ヴィオレッタを罵倒するシーンで、普通の演出ではヴィオレッタは嘆き悲しむばかりですが、ダムラウは笑ってさえいました。「愛する人からこれほどまでに罵倒されたら、もう笑うしかない」といった心境だと思いますが、思い切った演出だと思います

ヒロインのヴィオレッタ・ヴァレリーを歌ったディアナ・ダムラウはドイツ生まれのソプラノですが、幕間の解説でMETライブ「アイーダ」でアムネリスを歌ったアニータ・ラチヴェリシュヴィリが彼女のことを「歌う女優」と表現したように、演技力が抜群の歌手です ダムラウはインタビューで「12歳の時にフランコ・ゼフィレッリ演出、テレサ・ストラータスのヴィオレッタによる映画版「椿姫」を観てオペラ歌手になる決心をしました」と語っていました。個人的には2011年のMET来日公演が東日本大震災と原発事故の影響でスター歌手のキャンセルが相次いだ中、ダムラウは予定通り来日しドニゼッティ「ランメルモールのルチア」のタイトルロールを歌ってくれたことを決して忘れません 

第1幕終了後に上映された「特典映像」の中で、ヤニック・ネゼ=セガンがダムラウに第1幕のアリア「花から花へ」の歌の指導をするシーンが映し出されます ダムラウの歌唱力の高さは言うまでもありませんが、ヤニック・ネゼ=セガンは、それぞれのフレーズに意味を持たせ 「そこは強く、そこは弱く」と表情付けをして歌うことを求めます。ダムラウはそれを納得したうえで振付を加えながらアリアを完成させていきます 私はこれを観て、ダムラウの凄さは分かっているけれど、ヤニック・ネゼ=セガンという指揮者も凄いな、と思いました

アルフレートを歌ったフアン・ディエゴ・フローレスは1973年ペルーのリマ生まれのテノールですが、これまでは主にロッシーニの「セヴィリアの理髪師」「オリ―伯爵」といった喜劇的なオペラを中心に活躍してきました その意味では「椿姫」のアルフレートはこれまでとは毛色の違う役柄です。しかし、そこはフローレスです。同じテノールでも軽やかで高音域で活躍する「レッジェーロ」健在です これについて彼は幕間のインタビューで「高音よりも、いかに美しく歌うかが大事です」と語っていましたが、彼の声の魅力は美しく輝く高音です

 

     

 

ジェルモンを歌ったクイン・ケルシーはハワイ出身のバリトンですが、今期METライブ「アイーダ」のアモナズロ役で出演しました どちらかというと明るいバリトンです。第2幕で アルフレードを慰め、美しい故郷に戻ろうと朗々と歌うアリア「プロヴァンスの海と土地」は聴きごたえがありました

指揮をとるヤニック・ネゼ=セガンは1975年カナダ・モントリオール生まれ(44歳)で、現在フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督も務めています 幕間のインタビューで「20年前に噴水広場からメトロポリタン歌劇場の建物を見上げて『いつかMETを制する』と言ったのは本当です。今その願いが叶って最高に幸せです」と語っていました。今回の「椿姫」は彼がMETの音楽監督に就任して初めてのオペラ公演ということで力が入ると思いますが、第2幕に入る時にアクシデントがありました 彼が指揮をしようとタクトを振り上げると、何とタクトがヴァイオリン奏者の方に飛んでいってしまったのです これには聴衆もオケの連中も驚きましたが、本人が一番驚いたようです ヴァイオリン奏者からタクトを受け取ると聴衆の方を振り返り、笑顔で「タクトは戻りました。さあ、第2幕を始めますよ」とでも言いたげにタクトを上げました。飛んだハプニングでしたが、聴衆は拍手喝さいです この後、幕間にインタビューがあり、MET総裁ピーター・ゲルブ氏から「次は飛ばない指揮棒を用意しますから」とジョークを言われると、彼は「演奏が始まってからタクトを飛ばすと大変なことになるので、演奏に入る前に飛ばしました」とジョークで返していました。この辺はさすがです

カーテンコールが繰り返されますが、オーケストラ・ピットの中の楽員が三々五々引き上げていくので、何か変だな と思っていたら、舞台袖からオケのメンバー全員が出てきてステージに勢ぞろいし、聴衆の拍手を受けました 新任音楽監督の心憎い配慮でしょう これを観て「METの新しい時代が始まったんだな」と思いました

 

     

 

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