人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

朝日新聞・吉田純子編集委員の文章術を読んで思うこと / 「警官の道」を読む ~ 柚月裕子、中山七里、葉真中顕、呉勝浩、深町秋生、下村敦史、長浦京による警察小説アンソロジー

2024年04月03日 01時17分58秒 | 日記

3日(水)。昨日の朝日新聞朝刊のコラム「新聞記者の文章術」に同社編集委員・吉田純子さんによる「己の本心 深く掘り下げた末に」という見出しの文章が掲載されていました 彼女が取り上げた自身の記事は2012年7月14日付朝日新聞夕刊に掲載された音楽評論家・吉田秀和氏への「惜別」の文章です その前半で次のように書いています

「音楽家は、言葉からこぼれ落ちる思いを音にする。その音の数々に追いすがり、ふたたび言葉へと導く。音楽について書くことは、永遠に矛盾を追うようなものだ。その矛盾を心豊かに戯れた、不世出の才人だった

吉田さんは、この記事を書いた背景や「『音楽』を書くことに対する考え」を書いています その冒頭は次の通りです

「スマホにあふれる多種多様なコメントを眺めながら、ああ、私もこんなにすらすらモノが書けたらなあ、と思うことがあります すらすら書けない人間だからです。ひとつの文章を書こうとしては、すぐ現実逃避。当然SNSもやっていません。舌がもつれるので、しゃべるのもあまり得意ではありません 自分の中にある黒とも白ともつかない複雑な感情をそのまま伝えてくれる音楽に、子供の頃から救われてきた気がします

ひねくれものの私などは、「この文章を読んで、文字通り信じる人はどれくらいいるだろうか?」と疑問符が浮かびます 記事のプロフィールによると、吉田さんは1971年、和歌山市生まれ。ピアニスト、音楽ライターを経て97年に朝日新聞社入社。仙台支局、地方版編集、広告局などを経て、音楽・舞踏担当の編集委員ーとあります ここでは触れていませんが、その前に「1993年 東京藝術大学音楽学部学理科卒、96年 同大大学院音楽研究科(西洋音楽史)修了」という経歴があります

私が疑問に思ったのは、東京藝大大学院まで修了して、音楽ライターの経験もあり、朝日新聞社で記者として20年以上も記事を書いてきた、いわば”文章のプロ”が、SNS上のコメントを見て「私もこんなにすらすらモノが書けたらなあ」と思うことがあるとは到底思えないからです 私の頭に浮かぶのは”謙遜”です もう一つは、朝日の看板をしょって文章を書いている立場からは、思いついたことをSNSに気軽にコメントするようなことは”立場上できない”ということだろう、ということです

さて、吉田さんの真意は?  彼女は文章の末尾で次のように書いています

「SNSは、そのとき感じた喜びや憤りを、すぐに多くの人に伝えられます 世界の様々な人たちと響き合えるのはすてきなことです 一方で、己の本心を深く掘り下げぬまま、世の中の気分にただ同調して出してしまった言葉は、実は他人以上に、自分自身の尊厳を傷つけたりするものです 文章を書くということは、自分だけの歩幅や速度で、自分自身の人生を豊かにしていくプロセスそのものです

そして、彼女は「文章術」として次の言葉を掲げます

「他の誰より、自分自身に対してウソのない言葉を諦めずに探す」

正式な文章だろうが、SNSの文章だろうが、後で後悔しないように よく考えて自分の言葉で書け、ということだと受け止めました

ということで、わが家に来てから今日で3368日目を迎え、米国のトランプ前大統領は1日、民事裁判での控訴に必要な保証金1億7500万ドル(約265億円)を支払ったが、一方、1日の株式市場で、トランプ氏が立ち上げた新興メディア企業トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループの株式が前週末比21%安に急落した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     4つも訴訟を抱えていると資金繰りが大変だね 誰のせいでそうなったんだろうね?

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉のアスパラ巻き焼き」「生野菜とアボカドのサラダ」「ブナピーの味噌汁」を作りました アスパラは細身のを4本ずつ巻きましたが、とても美味しかったです

 

     

 

         

 

柚月裕子、中山七里ほか著「警官の道」(角川文庫)を読み終わりました 本書は現代の注目作家7人による警官小説アンソロジーです

 

     

 

本書に収録されているのは次の7篇です

①上級国民(葉真中 顕)

②許されざる者(中山 七里)

③Vに捧げる行進(呉 勝浩)

④クローゼット(深町 秋生)

⑤見えない刃(下村 敦史)

⑥シスター・レイ(長浦 京)

⑦聖(あきら)(柚月 裕子)

葉真中顕著「上級国民」は、ひき逃げに遭い死亡した老人の遺族に関する極秘調査を上司から命じられた公安刑事・渡会の物語です 加害者は県知事の甥で、翌年に引退する現知事の後釜とされていた。遺族の弱みを握り、交渉を有利に進め、起訴を免れようという目論見があり、渡会は内心忸怩たる思いを抱きながら任務を遂行していきます これは、2019年に東京・池袋で起きた元高級官僚による暴走事故を思い出させます

中山七里著「許されざる者」は、東京オリンピック開会式の日に、八王子の森で有名な演出家の他殺体が発見されるが、彼は閉会式の演出チームの中心人物だった 警視庁捜査一課の犬養隼人刑事は故人のアルバムの1枚の写真から犯人の手がかりを掴みます これも、開幕前にいくつものスキャンダルがあった東京オリンピックを思い出させます

呉勝浩著「Vに捧げる行進」は、コロナ禍による自粛生活が続くなか、寂れた商店街のシャッターに、黄色と赤のペンキで円の中にV字を描く落書きが繰り返される 交番勤務のモルオは現場に駆けつけるたびに被害者である商店主の矢面に立つが、商店主自らもシャッターの落書きに手を加えるようになる・・・というシュールな展開が待っています これを読むと「自粛警察」という言葉を思い出します

深町秋生著「クローゼット」は、警察という多様性を認める職場とは言い難い組織の中で、同性愛者の刑事が同性愛者同士の事件に対峙し、差別を告発するというストーリーです

下村敦史著「見えない刃」は、上司から性犯罪専従を命じられた女性警察官が、夜の公園で襲われた22歳の女性が、SNS上の動画サイトにセクシーな服装で料理をする姿をアップしていたことから、それを手掛かりに犯人を捜し出していくという内容です

長浦京著「シスター・レイ」は、フランス帰りのバツイチの女性・玲が、母親のヘルパーである友人のフィリピン出身の女性から、特殊詐欺の疑いをかけられて行方不明になった息子の救出を頼まれ、行動に移し無事に救出するというストーリーです 実は、玲はフランスにいた時、警察組織である国家憲兵隊治安介入部隊のサブリーダーを務めていたという経歴の持ち主で、頭が切れ、腕力も強いという設定です そのため、反グレ集団からの救出劇は爽快感があります

柚月裕子著「聖」は、町の中華料理店で出前持ちのバイトをする高校生の有田聖(あきら)が、母と自分に暴力を振るうチンピラの父へ復讐するため暴力団に入ろうとするが、暴力団事務所で見たある人物との出会いがきっかけとなり警察官を目指すというストーリーです 柚月裕子らしい希望を持たせるストーリー展開です

本書は2021年12月という新型コロナウイルス蔓延の時期に角川書店から単行本として刊行されたため、内容的にコロナ禍の日本が舞台になっている作品が目立ちます 「小説はその時代を反映する」ということでしょうか

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