人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」を観る~ゾフィーを歌った南アフリカ出身のゴルダ・シュルツにブラボー!

2017年12月01日 08時01分17秒 | 日記

12月1日(金).今年のカレンダーも残り1枚になりました.月日の流れは速いものですね ということで,わが家に来てから今日で1157日目を迎え,トランプ米大統領が29日,弾道ミサイルを発射した北朝鮮の金正恩 朝鮮労働党委員長について「小さなロケットマン.彼は病んだ子犬だ」と批判した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 「小さなロケットマン」はいいけど  「病んだ子犬」は子犬に対して失礼だと思う

 

                                             

 

昨日,夕食に「ポトフ風スープ」と「生野菜と生ハムのサラダ」を作りました 「ポトフ風スープ」(自己流)は,ウィンナソーセージをメインに,ジャガイモ,人参,キャベツ,エノキダケを加えてコンソメスープの素で煮込み,塩コショウを振っただけの超簡単料理です 「シンプル・イズ・ベスト」と言っておきましょう

 

     

 

                                           

 

昨夕,初台のオペラパレスでリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」を観ました 新国立劇場のホワイエもクリスマス・モードです

 

     

 

当日のキャストは,元帥夫人=リカルダ・メルべート,オックス男爵=ユルゲン・リン,オクタヴィアン=ステファニー・アタナソフ(ダニエラ・シンドラムの代演),ファー二ナル=クレメンス・ウンターライナー,ゾフィー=ゴルダ・シュルツ,マリアンネ=増田のり子,ヴァルツァッキ=内山信吾,アンニーナ=加納悦子,警部=長谷川顕,テノール歌手=水口聡,帽子屋=佐藤路子ほか.合唱=新国立劇場合唱団,児童合唱=TOKYO FM少年合唱団,管弦楽=東京フィル,指揮=ウルフ・シルマー,演出=ジョナサン・ミラーです

 

     

 

時は20世紀初頭のウィーン.元帥夫人は夫の留守中に若き愛人オクタヴィアン伯爵と愛し合っている オクタヴィアンは,好色なオックス男爵の婚約者で新興貴族ファー二ナルの娘ゾフィーに結納品として銀の薔薇を届けるが,若い二人は恋に落ちてしまう オックスとオクタヴィアンは決闘することになるが,オックスが怪我を負い大騒ぎになる さらにオックスは,マリアンデル(=女装したオクタヴィアン)からの偽りの恋文で騙され,ゾフィーとの婚約は破棄となる 元帥夫人は若い愛人を諦め,若い二人の恋を祝福しながらその場を去っていく

 

     

 

私が新国立劇場でこのオペラを観るのは2007年6月,2011年4月,2015年5月に次いで今回が4回目です 主役級の歌手のうちオックス男爵を歌ったユルゲン・リン,オクタヴィアンを歌ったステファニー・アタナソフ,ファー二ナルを歌ったクレメンス・ウンターライナーの3人は前回に次いで2度目の出演です

最初に幕が下りたままの状態で,このオペラの導入曲が演奏されます この曲は,元帥夫人とオクタヴィアンの愛の一夜を暗示する,言ってみればワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」前奏曲のような官能的な音楽ですが,残念ながらウルフ・シルマー+東京フィルの演奏は,色気のない ただ先を急ぐだけの味気ない演奏に終始したのは残念です

第1幕が出ずっぱりの元帥夫人を歌ったリカルダ・メルべートはドイツ生まれのソプラノです  新国立オペラでは「コジ・ファン・トゥッテ」,「タンホイザー」,「ローエングリン」,「さまよえるオランダ人」,「ジークフリート」などで主役級の役柄を歌っているレギュラー級のソプラノで,声に力があり,歌唱に安定感があります 今回の「ばらの騎士」でも若い愛人を失う元帥夫人の悲哀をせつせつと歌い上げていました

オクタヴィアンを歌ったウィーン生まれのメゾ・ソプラノ,ステファニー・アタナソフは,当初発表されたダニエラ・シンドラムが健康上の理由で降板したため,結果的に前回に次いで2度目の出演となったものです 幸か不幸かこの代演は成功だったと思います オクタヴィアンのイメージに近い歌手です

ファー二ナルを歌ったウィーン出身のクレメンス・ウンターライナーは,前回同様魅力のあるバリトンを聴かせてくれました

「このオペラの本当の主役はこの人ではないか」と言われるオックス男爵を歌ったドイツ生まれのユルゲン・リンは”低音の魅力”のあるバスですが,どうも違和感を感じます 私のイメージするオックス男爵は,60年代に活躍したオットー・エーデルマンのような恰幅のいい”好色男”なのですが,ユルゲン・リンは体つきからして全く正反対です しかし,これはどうしようもないことです.ただ,演技力は大したもので,第3幕でカツラを脱いで正体を現すシーンでは思わず笑ってしまいました

今回このオペラを観て一番良かったと思ったのはゾフィーを歌った南アフリカ出身のソプラノ,ゴルダ・シュルツです 声が抜群に美しい上に,特に高音が良く伸び 歌唱に無理がありません  プロフィールを見ると,ジュリアード音楽院,バイエルン州立歌劇場オペラスタジオで学び,14年のバイエルン州立歌劇場「ばらの騎士」のゾフィー役が絶賛され,15年には同役でザルツブルク音楽祭に出演したとのことです  歌唱力に加えて素晴らしいと思ったのは,自然な演技力です   一例を挙げれば,第1幕で 世間知らずの娘が 未来の夫を待つソワソワした気持ちを表した演技などは,身体全体の動きからその心理状態がよく伝わってきました.ゴルダ・シュルツは私がこれまで聴いてきた中で最もゾフィーらしいゾフィーです

 

     

 

さて,このオペラのハイライトは,何と言っても第3幕フィナーレでしょう 罠に掛けられたオックス男爵が,元帥夫人の「すべては茶番劇だったのです.何もかも終わりです.貴族らしく静かにここから去りなさい」の言葉のもとに退場させられた後,若い愛人から身を引く決意をした元帥夫人,ゾフィーへの恋心を押さえ切れないオクタヴィアン,戸惑いを隠せないゾフィーの3人により,三者三様の想いが感動的な三重唱で歌われます この三重唱を聴くとき,とくに中高年女性は元帥夫人に我が身を重ねることでしょう 元帥夫人が立ち去ったあと,オクタヴィアンとゾフィーの二人きりになり 恋の二重唱が歌われますが,ステファニー・アタナソフとゴルダ・シュルツによるデュオは陶酔感に満ちた美しい歌声でした

このオペラのフィナーレは,ホフマンスタールの台本によると,ゾフィーが落としていったハンカチを,元帥夫人のお小姓が拾い上げて小走りで去っていく,というものですが,ジョナサン・ミラーの演出では,二人が去った部屋にお小姓がやってきて,テーブルの上に乗っていたお菓子をつまみ上げて去っていく,と変えられています これをお菓子な演出だとは言いません 

ウルフ・シルマー指揮東京フィルは,最初に躓いたものの,第1幕終盤からは本来の実力発揮となり,歌手に寄り添いながらリヒャルト・シュトラウス特有の,時に濃厚な,時に軽妙洒脱な演奏を展開しました

午後6時10分に開演した「ばらの騎士」初日公演は2回の休憩を挟んで10時20分過ぎにカーテンコールを終え幕を閉じました

「リヒャルト・シュトラウスの曲の中で最も好きな作品は何か」と問われたら,何の躊躇もなく「ばらの騎士」と答えるでしょう さらに言えば,第3幕を挙げるでしょう

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