6日(日)。毎週土曜日はほぼ同じパターンで生活しています いつもより遅く起きてブログを書き,朝食をとります.そして,1週間分の自分のワイシャツと娘のブラウス計10枚ほどと,息子の分も含めたハンカチ5~6枚にアイロンがけをします
CDを聴きながらアイロンをかけるのですが,今聴いているのはアルド・チッコリー二の弾く「ワルツ選集」です
これは,いつか朝日夕刊のCD紹介コーナーで取り上げられていて,さっそくタワーレコードに行った時にはすでにソルド・アウトになっていたCDです その後,1か月くらい後に行ってみたら山積みになって売られていました.おそらく朝日を見た多くの音楽好きが予約電話を入れたのでしょう
チッコリー二は残念ながら今年2月に89歳で亡くなりましたが,録音当時はすでに87歳でした どの曲も深みのある静かな感動を呼ぶ演奏です
とくに1曲目のシャブリエの「アルバムの綴り」は2分少しの短い曲ですが,ロマンに溢れています
また,5曲目に収められたサティの「お前がほしい」は,メロディーを聴けば「ああ,この曲が・・」と分かる有名な曲ですが,チッコリーには何気にエスプリを効かせて淡々と弾いています
半分以上の曲はあまり知られていない曲ですが,どれもが印象に残る名演奏です
さて,CDを聴きながらのアイロンがけも30分もあれば終わってしまうので,その後はすべての部屋と廊下に掃除機をかけます 毎晩,モコタロがあちこちを這いずり回っているので,甘納豆のようなフンと細かい抜け毛が目立ちます
それが終わってやっと自分のための時間になり,ベッドに寝転んでチッコリー二を聴きながら朝日と日経を読むのです
この時が一番リラックスできる至福のひと時です
そして午後にはコンサートに出かけます
閑話休題
ということで昨日午後、初台の東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団のオペラシティ・シリーズ第88回演奏会を聴きました プログラムは①ラヴェル「組曲:クープランの墓」、②コルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」、③シベリウス「交響曲第6番ニ短調」で、②のヴァイオリン独奏は2005年ロン=ティボー国際音楽コンクールに第2位入賞の南紫音、指揮は大友直人です
1曲目はラヴェルの組曲「クープランの墓」です.この曲は元々ピアノ曲ですが,ラヴェル自身により管弦楽曲に編曲されています 第1曲「前奏曲」,第2曲「フォルラーヌ」,第3曲「メヌエット」,第4曲「リゴードン」から成ります.コンマスは水谷晃.第1曲目は冒頭からオーボエの速いパッセージが奏でられますが,この日のオーボエは首席の荒絵理子ではありません
プログラムに掲載の名簿を見ると荒木奏美とあり「首席奏者」と「研究員」の印が付いています.ということは首席見習いといったところでしょうか.初めて聴く人ですが,演奏はかなり上手です
この曲を最後まで聴いて思うのは,ラヴェルはやっぱり管弦楽法の天才だな,ということです
オケが拡大し,2曲目のコルンゴルトの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」の演奏に備えます.大友直人に伴われて,ソリストの南紫音が黒を基調とし,スリットから金色の生地が見え隠れするエレガントなドレスで登場します これを見て私は唸りました.コルンゴルト(Korngold)は英語読みではコーンゴールドです.南紫音は名前が紫にも関わらず,衣装は金(gold)を選んだわけです
南紫音を最後に見たのはいつだったか思い出せませんが,随分大人っぽくなったな,と感じました
顔の表情が引き締まったように思います
作曲者の名前は正確にはエーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルトです.この「ウォルフガング」はモーツアルトの名前「ウォルフガング・アマデウス・モーツアルト」から採られています 同じオーストリアで生まれた天才作曲家に因んで付けられた名前です
彼は1920年,23歳の時に歌劇「死の都」を発表,時代の寵児になりました.しかし,1930年代半ば,反ユダヤ主義が席巻する中,ユダヤ人であるコルンゴルトはアメリカに逃亡し,ハリウッドで映画音楽を作曲し,新たな境地を開きます
このヴァイオリン協奏曲は1945年に作曲されましたが,その曲想は”最後のロマン派音楽”とも”ハリウッドのゴージャスな映画音楽”とも言えるようなロマンに満ちた輝かしい音楽です
大友の合図で第1楽章「モデラート・ノーブル」に入ります 最初にヴァイオリンの音を聴いた時,これはいける
と思いました.まさに「ノーブル」な演奏です.コルンゴルトはこうでなくっちゃ,という演奏です
南紫音は1727年製ストラディヴァリウスを駆使しロマン豊かに気品の高い音楽を奏でます
さて,第1楽章から第2楽章を通じて,私の左前席の高齢夫人が,ヴァイオリンの演奏に合わせて歌を口ずさんでいたのには閉口しました 付添いの男性に「シーッ」と注意されたのに「何も言ってないよ
」と答えていました.「こりゃ駄目だ,痴呆が入ってる
」と思いました.自分が口ずさんでいることを意識していないのですから重症です
それにしても,コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲に合わせて歌を口ずさむということは,この曲をよく知っていることではないか,と思い,このおばあさんは相当クラシックを聴き込んでいるなぁ,と一瞬感心しました
しかし,迷惑は迷惑です.「私はお金を払ってあなたの歌を聴きにきたのではありません
」とはっきり言っておきます
休憩時間に近くの誰かが会場アテンダントに苦情を言ったのでしょう.後半の演奏に入る直前に,アテンダントの女性が前の列に対して「演奏中,話をしたり音を出すことはお止め下さい」と注意を促していました 直接,当該者に注意するのでなく,その列に向けて話しかけているので,言われた本人も大きく気分を害することなく聞くことが出来るのでしょう
”アウトロー”に対する注意法のノウハウが蓄積されているのを感じました
休憩後はシベリウスの「交響曲第6番ニ短調」です.4つの楽章から成りますが,全体を聴いて思うのは”内省的”で静かな音楽だということです 第1楽章は終わり方が突然で,中途半端に空中に放り出されるような感覚に陥ります
反対に最後の第4楽章は静かに蝋燭の火が消えて行くように音が少しずつ消えていきます
最後の音が消えても,大友はしばらくそのままの姿勢を崩しませんでした.ここで拍手をするような無粋な人は東響の定期会員には居ません
両手が下ろされて初めて大きな拍手とブラボーが会場一杯に広がりました
第1楽章と第2楽章で歌を口ずさんでいた高齢女性は,さすがに,あまり演奏される機会のないシベリウスの第6交響曲では歌で”合わせる”ことが出来なかったようで,とても静かでした もし定期会員だったら,これからもその線でよろしくお願いしたいと思います
閑話休題
コンサートが終わって買い物をして家に帰ると,子どもたちが「モコタロが居ない.どこかにいっちゃった」と大騒ぎしています.聞くところによると,娘がゲージを開けると出てきてリビングを出たり入ったりしていて,いつの間にか姿が見えなくなってしまった」ということでした
外に出ることはありえないので,3人でリビング,二段ベッドの部屋,娘の部屋,私の部屋,キッチン,化粧室,トイレ,玄関とあちこち探し回りましたが見つかりません
モコタロは鳴かないし,狭いところに入るとジッとしていて音を立てないので,どこにいるのかまったく分からないのです.私は取りあえずシャワーを浴びて夕食の支度をしていると,娘が「あっ,こんなところに居た
モコタロ,どうしてこんなところに入ったのよ,さんざん心配させて,もう
」と叫びました.リビングの端のいくつもの段ボール箱が置いてある奥に入り込んでいたようでした
ということで,わが家に来てから331日目を迎え,娘に叱られて一瞬シュンとして,一拍置いてからオヤツを精力的に食べるモコタロです
さんざん心配かけて,もう
心配かけたから 今日は出番を最後に回されちゃったよ