人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京交響楽団「第89回名曲全集」を聴く~「トリプル・コンチェルト」「幻想交響曲」

2013年09月02日 07時00分07秒 | 日記

2日(月)。昨日は9月だというのに真夏の暑さでしたね。外に出かける意欲もなくなります と言う訳で午後、ミューザ川崎まで東京交響楽団「第89回名曲全集」を聴きに出かけました プログラムは①ベートーヴェン「ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための三重奏曲ハ長調」、②ベルリオーズ「幻想交響曲」で、指揮は小林研一郎、①のソリストは、ヴァイオリン=大谷康子、チェロ=横坂源、ピアノ=小林亜矢乃です

実は今年2月9日にサントリーホールで開かれた「フィルハーモニック・アンサンブル」のコンサートは、プログラムも指揮者もソリストの一部も同じでした 指揮は小林研一郎、ピアノは小林亜矢乃(二人は親娘)で、ベートーヴェンの「三重奏曲」とベルリオーズの「幻想交響曲」を演奏しました。あの日の演奏は今回のリハーサルだったのでしょうか

 

          

ベートーヴェンの「トリプル・コンチェルト」は、作曲者が34~35歳の時に書かれました。ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲はあっても、オーケストラ伴奏付の「ヴァイオリン、チェロ、ピアノの三重奏曲」は聞いたことがありません あまりにも革新的な楽器編成だったせいか、楽譜出版社は出版を断ったそうです

指揮者に伴われてソリストの登場です。ヴァイオリンの大谷康子は黄緑色の鮮やかなドレス 小林亜矢乃は上が黒、下がブルーのシックなドレス 横坂源は黒のスーツ姿です

第1楽章は低弦楽器によっておもむろに始まります。独奏チェロが、次いで独奏ヴァイオリンがテーマを奏で、ピアノが加わってアンサンブルを奏でます ベートーヴェン初期に属する曲ですが、すでに堂々たるベートーヴェン節が聴こえます 立ち位置がピアノに近い大谷康子は時に小林亜矢乃とアイコンタクトを取り、お互いに「楽しいね」という表情で演奏します。二人からやや離れた位置に座る横坂源は、クールに曲と対峙し、時に大谷の方をちらっと見て間合いを取ります

第2楽章「ラルゴ」はヴァイオリンとチェロが美しい旋律を奏でます。ベートーヴェンはどの曲も緩徐楽章が素晴らしいと思います

第3楽章は「ポロネーズ風のロンド」とある通り、軽快でリズミカルな舞曲のメロディーが心地よく奏でられます

指揮者・小林研一郎は3人のソリストを立て、舞台中央に集めて拍手を求めます 一番うれしそうだったのは親娘共演を果たした小林亜矢乃、次いで大谷康子だったでしょう 横坂源はあくまでもクールに歓声に応えていました

ベルリオーズの「幻想交響曲」を聴くのは今年何回目でしょうか・・・・・

ベルリオーズは、まだ学生だった1827年に、イギリスの劇団による「ハムレット」を観て、劇団の看板女優ハリエット・スミッソンに一目ぼれしますが、相手にされませんでした 転んでもただでは起きないベルリオーズはこの失恋を「幻想交響曲」の作曲に結びつけたのです 物語の内容は「女性に振られた若い芸術家が、絶望のあまりアヘンで自殺を図るものの死にきれず、その時に夢を見る」というものです

第1楽章「夢ー情熱」、第2楽章「舞踏会」、第3楽章「野の風景」、第4楽章「断頭台への行進」、第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」から成りますが、最初から最後まで聴きどころ満載の曲です 私が特に好きなのは第2楽章「舞踏会」の音楽です。聴いていると思わず身体を揺らしてしまいそうになります

また、第3楽章「野の風景」での、舞台上のイングリッシュ・ホルンと舞台裏のオーボエの掛けあいが何とも言えず郷愁を誘います 通常、オーボエは舞台袖の裏側にスタンバイしてドアの隙間から指揮者を見て演奏するのですが、小林は2階席か3階席にスタンバイさせていました 私は通常のスタイルの方が天からと地からの掛け合いのように聴こえて良いと思うのですが、どうでしょうか?

第4楽章「断頭台への行進」は勇ましく賑やかな音楽ですが、バックで奏でるファゴットのキザミが何とも素晴らしく、ベルリオーズはどこも手を抜かないなと思ったりしました

ベートーヴェンの最後の交響曲である「第9」が完成したのは1824年。そのわずか6年後の1830年にベルリオーズが「幻想交響曲」が作曲したことに、驚きを隠せません ベートーヴェンは交響曲に人間の声を登場させ、古典派の集大成を築き上げましたが、ベルリオーズは”私小説”を音楽に仕立て上げ、ロマン派音楽を牽引しました

小林は”いつものように”セクションごとに立たせて拍手を求め、”いつものように”拍手を制し次のようにスピーチしました

「今日は皆さまのオーラが・・・・・幻想交響曲を演奏することができました。マスカー二生誕150年を記念して歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』の間奏曲を演奏します

弦楽器とハープ、そしてオーボエ、最後にフルートが加わり、美しいメロディーを静かに奏でます 知人に「私が死んだら、この曲を流してほしい」という人がいますが、気持ちは分かります ロマンティックで天国的に美しい曲です

小林研一郎の指示により、オケのメンバー全員で前に向かって一礼、後ろを向いて一礼、左を向いて一礼、右を向いて一礼し会場の拍手に応えました これは”コバケン流”の終わりのあいさつです。オーケストラは東響に限りませんが、会場はサントリーホールかミューザ川崎に限られます なぜなら舞台が四方の客席で囲まれているのはこの2つのコンサートホールしかないからです 「オーケストラあっての指揮者、お客さんあってのオーケストラだろう」というのがコバケン一流の哲学なのだと思います。彼の態度を見ていて「いかに何でもやりすぎだろう」と思うこともしばしばですが、その基本にある哲学は決して間違っていないと思います

 

          

 

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