27日(水)。昨夕、X部長の唐突な「30分だけ」という誘いに、結局6時半まで地下のRで飲みました 私は虎の門のJTアートホールに行かなくてはならないので、時間厳守で付き合うことにしました
X部長がお店にカンパした北海道産帆立貝をつまみにビールと日本酒をしこたま飲んだので、身体がポカポカと火照って頭がもうろうとします
仕上げそばを一人だけ先に食べて、なんとか胃を落ち着かせてから徒歩でコンサートホールに向かいました
閑話休題
7時からJTアートホール”アフィニス”でリュミエール・カルテットのコンサートを聴きました この公演は「JTが育てるアンサンブルシリーズ」の一環として開かれるもので、第67回のこの公演はチェロの岩崎洸がプロデュースしました。リュミエール・カルテット全員が桐朋学園大学の在学生で、ヴァイオリン=篠原悠那(紅一点)、横島礼理、ヴィオラ=桐原宗生、チェロ=横田誠治というメンバーです
岩崎洸は桐朋学園大学の特任教授なので、彼の教え子たちなのでしょう。篠原悠那は黒を基調としたドレスです
”リュミエール”とはどういう意味なのか、どういう理由でその名前を付けたのかを知りたいと思って、プログラムを端から端まで探してみたのですが、どこにもその説明が見当たりません これはちょっと不親切かと思いますが、どうでしょうか
プログラムは①ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第12番ヘ長調”アメリカ”」、②ブラームス「弦楽四重奏曲第2番イ短調」、③グラズノフ「弦楽五重奏曲イ長調」です
会場には開演10分前の6時50分に着きましたが、コーヒーを飲んでいる余裕はなさそうです 自席は10列12番、センターブロック右通路側です
1曲目のドヴォルザーク「弦楽四重奏曲ヘ長調」はドヴォルザークがアメリカにナショナル学院の院長として招かれた頃に作曲されました 紅一点の篠原悠那を中心に第1楽章が始まります。最初のうちはちょっとぎこちなさを感じましたが徐々に調子を上げてきた感じです
第2楽章「レント」は聴かせどころですね
第3楽章が生き生きと演奏され、次の第4楽章に移ろうとした時に、後方で、コツコツと靴音が聞こえました このため4人は弓を下ろして、その”常識外れ”が着席するまで待たなければなりませんでした
歩くのなら音を立てずに歩く方法はあるのです。演奏者が学生だからといって甘くみるのは彼らに対して失礼です。二度と来るなと言っておきます
正直言って、2曲目のブラームスの「弦楽四重奏曲第2番イ短調」は期待していませんでした。20代前半の彼らが取り組むには10年以上早いのではないのか、と思ったからです ところが、この演奏が良かったのです。とくに第2楽章「アンダンテ・モデラート」は心に沁みました。若いなりにブラームスに挑戦するのもいいものだ、と思いました
15分間の休憩時間にホットコーヒーを飲んで、やっと酔いを覚ましました これがアイスコーヒーやジュースではだめなのです。ホットを飲んで汗をかいて酔いをすっ飛ばすのです
グラズノフの弦楽五重奏曲イ長調は1892年に作曲されました。彼は9歳でピアノを、13歳で作曲を始めた”神童”でした 4人に加え、チェロの岩崎洸が入ります。第1ヴァイオリンの篠原悠那は萌木色のドレスに衣裳替えをしての登場です
分かります。晴れの舞台ですもんね
第1楽章は冒頭ヴィオラの独奏から入りますが、なかなか悠然とした良い曲です 第2楽章は一転、ピッツィカートで奏でられる面白い音楽です。第3楽章は憂いに満ちた楽想で、第4楽章に至ってやっとロシア風のメロディーが認められました
この曲は初めて聴きましたが、なかなか面白い曲でした
アンコールに、4人でチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」を実に美しく弾きました とくに第1ヴァイオリンの音色が素晴らしいので、あらためて演奏者のプロフィールをみると、篠原悠那の使用楽器は1753年製ガダニー二とありました
このアンコールこそガダニー二の本領が発揮された演奏と言っても過言ではないほど美しい音色でした
ガダニー二といえば千万円単位の高額な楽器です。彼女は楽器をどのような経緯で手に入れたのか、どこかの財団から貸与されているのか、親に買ってもらったのか、まったく分かりませんが、「大学生がガダニー二かよ
」と言いたくなりました。余計なお世話かもしれませんが
この日の収穫は「ブラームスは年齢を重ねてから演奏すべきだ」といった先入観をもって聴いてはいけないということです