人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

老俳優たちの名演に酔う~岩波ホール創立45周年記念上映「八月の鯨」を観る

2013年03月04日 06時59分49秒 | 日記

4日(月)。昨日、神保町の岩波ホールで1987年、リンゼイ・アンダーソン監督作品のアメリカ映画「八月の鯨」を観ました

ホールに入ると正面に、2月9日に死去したホール総支配人・高野悦子さんの写真と花が飾られ、「お知らせ」が貼りだされていました 私も何度かこのホールで名画を観させていただきました。ありがとうございました。あらためてご冥福をお祈りいたします

 

          

          

 

「八月の鯨」は1988年11月に公開され、合計31週間、岩波ホールで上映され、連日満員を重ねて社会的にも大きな反響を呼んだ作品です 今回、岩波ホールが創立45周年を迎えたことからリバイバル上映されることになったものです この日も多くの人たちが詰めかけましたが、やはりシニアの方が多いようでした

この映画の特徴は、出演者がいずれも高齢の大ベテラン俳優で、静かに淡々と物語が進むことです

リビーとせーラの老姉妹は、毎年夏になるとメイン州の小さな島にあるセーラの別荘で過ごします。昔そこの入り江には8月になると鯨がやってきて、よく見に行ったものでした 姉のリビーは、第1次世界大戦でセーラの若い夫が亡くなった時に、彼女の面倒をました。そのリビーは今や目が不自由になり、セーラの世話を受けています そうした中で、リビーは不自由な自分に苛立つことが多くなり、セーラに当たるようになります。セーラは大きな窓を作って海が見えるようにしたいとリビーに提案しますが、リビーは”新しいことをするには年を取り過ぎたのよ”と言って拒否します 幼友達のティシャ、修理工のヨシュア、ロシアの亡命貴族マラノフらと交流していくうちに、リビーは大きな窓を作ることに賛成します

 

          

 

冒頭の場面はモノクロで、若き日の姉妹たちが、入江に表れた鯨を探して走って岬に行くシーンが映されます そして同じ場面がカラーに転じて本格的に物語に入っていきます その時の音楽の使い方が印象的です。若き姉妹たちが走るシーンではアップテンポの楽しげな音楽が流れ、鯨を見ることへの期待を現し、一転、場面が現代に変わると今の生活を現す落ち着いた雰囲気の音楽に変わります

一癖も二癖もある姉のリビーをベティ・デイヴィス(当時79歳)が、小まめに働く妹のセーラをリリアン・ギッシュ(91歳)が演じるほか、マラノフ役のヴィンセント・プライス(76歳)、修理工ヨシュア役のハリー・ケリー・ジュニア(66歳)が脇役として二人を支えます これらの俳優は往年の大女優、大男優とのことですが、私はこの映画で初めて知りました。しかし、すごい演技力、存在感です

とくに大きな事件が起きるわけでもなく、二人の会話を中心に淡々と物語が進むのですが、会話の中にはリビーの次のような言葉に思わずニヤリとしていまいます

「なぜ私が、公園のベンチで座り続けるか分かる?・・・・・・・若いカップルを座らせないためよ

最後は姉妹が手を携えて岬まで散歩に出かけるシーンですが、思わず、今では見られなくなった鯨がまた来てくれることを祈ってしまいました ”美しく老いる”とはどういうことなのか?この映画にその答えが出ています この映画に出演した老俳優たちのほとんどは21世紀の今、もはや存在しませんが、「八月の鯨」とともに人々の心に残ることでしょう

 

          

 

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