2日(土)。28日の朝日夕刊社会面に「冷戦の壁超えた人気ピアニスト、クライバ―ンさん死去」の記事が載りました 記事を要約すると、
「米国のピアニスト、バン・クライバーンさんが27日、骨肉腫のため、米テキサス州フォートワ―スの自宅で死去した 78歳。東西冷戦ただ中の1958年、モスクワで開かれた第1回チャイコフスキー国際コンクールで優勝 23歳にして国家間の対立を超えた人気ピアニストとなった。チャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏したレコードの売り上げは、クラシックとして初めて100万枚を超え、ファンの多さはエルビス・プレスリーをしのぐとさえ言われた 78年からコンサート活動を中断、87年にホワイトハウスにソ連のゴルバチョフ書記長が訪れた際の歓迎晩さん会で復帰し、米ソ友好を演出した 1962年にバン・クライバーン国際ピアノコンクールが創設され、2009年には日本人として初めて辻井伸行さんが優勝した」
ピアニスト中村紘子の書いたエッセイ「チャイコフスキー・コンクール」にテキサス生まれの無名の若者が「アメリカン・ドリーム」を実現するまでと、その後のスランプと挫折が書かれています この本については過去にブログで書きましたが、実に面白い本です ちなみに、同コンクールの組織委員会委員長は、かつて「人民の敵・形式主義者」と体制派から攻撃された、作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチでした。2009年の辻井伸行氏のクライヴァーン・コンクール優勝は、はっきり言ってマスコミの騒ぎすぎだと思います いかにクラシック界のニュースが乏しいかの証明です
先日のマリ―クレール・アランといい、今回のヴァン・クライヴァーンといい、訃報が続くと暗い気持ちになりがちですが、今夜はクライヴァーンの弾くチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いて、暗い晩にならないようにしたいと思います
閑話休題
湊かなえ著「夜行観覧車」(双葉文庫)を読み終わりました 湊かなえと言えば2008年に「告白」が読書界の話題をさらい映画化もされたお馴染みのミステリー作家です
高台の高級住宅地「ひばりが丘」のエリート一家で起きた、母親が父親を殺した事件を、残された高橋家の家族、向かいに住む遠藤家、街に古くから住む小島家の視点から描いた物語です この文庫の帯に著者の湊かなえさんが次のようなメッセージを寄せています
「”夜行観覧車”は家族の物語です。ここで起きる事件は、どこか遠い町、同じ地域、お隣さん、余所の家での出来事のようでいて、もしかすると、あなたの家で起きることかもしれません 見終えた後、いつもと同じはずの景色が少し違って見えるようなドラマになるはずです。ぜひ、ご期待ください」
この本を読んで思ったのは、殺人にしても、自殺にしても、誰かそばに”止め役”がいるかどうかで決まってしまうということです 湊さんが言われているように、この小説で書かれていることは、どこの家庭でも起こりうる事件だと思います