人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

大鹿靖明著「メルトダウン~ドキュメント 福島第一原発事故」を読む

2013年03月28日 07時00分04秒 | 日記

28日(木)。昨夕は予定していた飲み会が急きょキャンセルになり、早く家に帰りました あらためて思うのですが、寝るまでの時間っていっぱいあるのですね。コンサートに行ったり、同僚とアホなことを言い合いながら飲んだりしていると、あっという間に時は過ぎてしまいますが、家に帰って子供たちとゆっくり夕食を取って、夕刊を読んで、読書をして(テレビは観ない)、ブログのネタを考えて、といろいろ行動していても、なかなか時間は過ぎません 時間は誰に対しても平等に与えられているわけですが、その使い方は人それぞれです 最近特に考えるのは「今でなければ出来ないことは、今やろう」ということです。あと何年自分の足で歩いてコンサート会場まで行けるのか分かりません。元気なうちに聴きたいコンサートに出来るだけ多く行きたいと思っています それは映画も、読書も同じです。目が見えるうちに出来るだけ多くの映画を観て、できるだけ多くの本を読みたいと思います。今年の目標はこのブログの自己紹介欄に書いているとおり、クラシックコンサート160回、映画65本、読書75冊で、合計300です。この目標は年末まで変えるつもりはありません

 

  閑話休題  

 

一昨日の朝日朝刊に「ネズミが原因と断定 福島第一の停電の東電」という小さな記事が載りました先日、東電福島第一原発で停電が発生して冷却装置が止まった問題で、東電はネズミが仮設配電盤の端子に触れショートを起こしたのが原因と断定したという内容です

数日前に、各紙にそのネズミの写真が載っていましたが、写真だけでは大きさが判りません。そこで、果敢にもそのネズミにあの世でインタビューを試みました

     「君は大きいの?それとも小さいの?」

     「中!」

   

  も一度、閑話休題  

 

大鹿靖明著「メルトダウン~ドキュメント 福島第一原発事故」(講談社文庫)を読み終わりました 著者の大鹿靖明氏は1965年、東京生まれ。早稲田大学卒業。朝日新聞社勤務。本書で第34回講談社ノンフィクション賞を受賞しています

第1部「悪夢の1週間」、第2部「覇者の救済」、第3部「電力闘争」、第4部「静かなる反動」、第5部「ゼロの攻防」から成りますが、「あとがき」「参考文献」を含めて653ページの大書です これを読むに当たり覚悟が要りました。全ページ読破に結局8日間もかかってしまいました 生物学者の福岡伸一さんが昨年3月11日の朝日新聞の書評で「あのとき一体、為されるべきことの何が為されなかったのかを知るための一級資料」と絶賛した本です

とくに第1部の「悪夢の1週間」は緊迫感に満ちています。当時の真相が赤裸々に書かれています 第1章「3月11日午後2時46分」、第2章「全電源喪失」、第3章「放射能放出」、第4章「原発爆発」、第5章「日本崩壊の瀬戸際」、第6章「まだそこにある危機」に分けて書かれています

第5章「日本崩壊の瀬戸際」の中で著者は次のように書いています。

「あてにならないのは、東電だけではなかった。官邸に送られてくる原子力のエキスパートは、首相の信任の厚い下村健一内閣審議官をして『どいつもこいつも、この程度かよ』と思わせるものだった 何を聞いても、もじもじするだけ。13日午前、下村はノートにこう書きとめている。『批判されても、うつむいて固まって黙り込むだけ。解決策や再発防止策をまったく示さない技術者、科学者、経営者』。東電と経産省保安院、原子力安全委員会を指した言葉だった

「福島第一原発事故は3.11大震災の天変地異による自然災害であり、東電は被害者だ」という立場・主張を変えようとしない東電の会長、社長の態度にはただあきれるほかありません

当時、「海水を注入して原発を冷やす行動を、菅首相が中止命令を出したために無駄な時間を費やした」とする報道がなされていましたが、5月26日の記者会見で東電が明らかにしたところによると、菅首相による海水注入の停止は、それ自体が一切なかったことが判明しています。

会見によると「19:04頃、海水注入を開始。19:25頃、当社(東電)の官邸派遣者からの状況判断として”官邸では海水注入について首相の了解が得られていない”との連絡が本店本部、発電所にあり、本店本部、発電所で協議の結果、いったん注入を停止することとした。しかし、発電所長の判断で海水注入を継続した」ということになっています。

つまり、首相官邸のことを慮って東電が自主的に海水注入中止の命令を出したというのです ところが、現場は命がけですから、”中止なんてとんでもない。こっちは命がけでやっているのだ”として、吉田所長は中止したように見せかけて注入を継続していたのです

管首相が現地に乗り込んで「東電は逃げるな」と怒鳴りつけたことに対しては賛否両論があるでしょうが、国のトップがああでもしなかったら”原子力村”東電のトップはあくまでも”被害者” ”保身”の態度に終始していたことでしょう

また、著者は原発事故報道について「文庫版あとがき」に次のように書いています

「いくつかの例外を除けば、報道の質は決して満足できるものとはいえないだろう しかも、能力の欠如と保身、責任転嫁、さらには志の喪失は、現場の記者たちよりもむしろ大手報道機関の幹部たちに顕著にあらわれている メルトダウンしていたものに、大手報道機関も加えねばなるまい。それは残念ながら私の勤務先も例外ではない

”私の勤務先”というのは言う間でもなく朝日新聞社です。朝日新聞は毎日、朝刊で「プロメテウスの罠」というシリーズを連載し3.11以降の東北を中心とする日本の動きを現在進行形で報道しています この報道は優れた報道を顕彰する「新聞協会賞」を昨年受賞しています。そのような新聞社に身を置く著者が、自社もメルトダウンしている、と書いていることは深刻な状況だと思います。この本は朝日新聞出版社ではなく講談社から出版されています

この本には「ああ、そうだったのか!」という事実が盛りだくさん紹介されています。まだ、原発の後処理は終わっているわけではありません。是非、一人でも多くの人に読んでいただき、原発の現実に向き合ってほしい本です

 

          

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