今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

嫁入り道具多過ぎグレーのPEN-Fの巻

2014年11月15日 12時13分27秒 | ブログ

とうとうブログランキングが4位になってしまいましたよ。最終コーナーを立ち上がって行くトップの背中が見えて来ました。1コーナーで突っ込みのブレーキを遅らせれば1~2台喰えるかも知れませんね。で、本題の前に私の時計を・・。部品がそろったら改めてアップしますけどね。終了間際に発見した出品の入札には気をつけろ、という教訓です。以前から欲しいと思っていたセイコー・スピードタイマー6138-0030ですが、ブルーがきれいなモデルです。しかし、水入りでした。裏蓋を開けた画像は、意識的?にベルトで見えにくくしてありました。部品取り用の機械を用意しなければなりません。

このモデルは世界的に人気で、いろいろなアフターパーツが存在しますが、風防もその一つです。硬質ガラスなのに、どうやったらこんなに傷だらけに出来るのかという状態でしたが、貴重な純正のハードレックスですので研磨を始めたところです。画像は荒研磨から中研磨になったところ。

軽く仕上げ研磨をした状態でセットしてみます。古いガラスはどうしても黄ばみはありますが、じっくり研磨を繰り返せば使えそうです。インナーベゼルは研磨で復活させました。文字盤とTACHYMETWRベゼル、針もアフターパーツが入手できます。取りあえずパーツ集めですが、いつの間にか、レストア待ちの時計が20個ぐらいになっています。時間が欲しい・・。

では、ここからは本題です。重い段ボールだなぁと思いましたら、何台ものPEN-Fジャンク付でグレーにリペイントをされたPEN-Fが出てきましたよ。

 

なんでも、オークションで不動の状態で入手をされたそうですから、出品を見ていらした方もいるかもしれませんね。ウレタンでメッキの上から塗装をした感じです。もちろん私の仕業ではありません。塗膜がボテッと厚く、1回の塗装厚が厚すぎるのですね。ウレタン塗料の特性でもありますけどね。まぁ、人様に批判はしないことにしています。

あら~、シャッター幕がフラフラですね。これはアイドラーギヤが脱落しているようです。(ビニール袋内) ここは緩み止めのカシメ加工が施されているので、ネジを緩めてはいけません。では、分解していきますよ。

 

1コーナーで1台差して3位になりましたよ。でも現役の時は万年3位でしたから、ここまででしょうね。トップカバーを開けます。思った通りメッキの上から塗っていますね。車用のサーフェサーを入れてない? ターミナルの配線などは、初めから省略しています。

とにかく汚いのです。技術以前の問題ですから掃除ぐらい出来るでしょう。

 

洗浄前に、古いモルトカスや接着剤を取り除いておきます。

 

 

やっぱりアイドラーギヤが無くなっていますが、シャフト(ネジ軸)が折れたのですね。珍しい不具合です。それと、まだ不良個所があります。画像を見て分かった方はするどい。スローガバナーのコントロールレバーが折れています。ここは金属疲労で折れます。

ハンマーの留めビスがエポキシ接着剤で接着されています。自分だけ良ければ後は知らないという修理はしないこと。

 

超音波洗浄をしたシャッターユニット。これから注油をしていきます。

 

 

ダイカスト本体は洗浄後、モルト貼り、巻上げ関係を組んであります。完成したシャッターユニット。結局、シャッター幕とスローガバナーを交換しました。嫁入り道具は多くなかったかも知れませんよ。じつは、まだ続きがあるのです。

ブログランキングは2位になっています。しかし、トップはぶっちぎりのようですから逆転は無理ですね。で、今回も長い巻になってしまいますね。PEN-Fのプリズムは腐食が多いですが、この個体はメッキを剥離してミラーシートを貼り付けてありますね。これも考えた方でしょうが・・

すべて分解清掃をして、嫁入りから程度の良さそうなプリズムを選択して組みます。

 

これでメカ部は一応完成したことになります。

 

 

一度、前板をセットして作動見ました。不具合が2つ。スローガバナーを交換しているので、ミラーユニットとの連動具合が適正でなく、微調整をしています。また、バルブでレリーズボタンを開放してもシャッターが閉じないという不具合。原因は、画像のBレバー(ハンマーの回転を一時的に止める役割)の先端の中央がV字形に変形をしており、ロックが解除されないもの。バルブを使う頻度からして普通は摩耗することは考えられませんが、故意に何らかの理由で部品を加工したものか、或は特殊用途にバルブを多用したのか? 嫁入りがら良品と交換して組んでいます。

結局のところ、グレーと言ってもカバーだけのことですから、果たしてこの個体を生かす選択が正しかったのかです。これだけの故障を内包している個体も少ないです。接眼プリズムとアイビース枠も交換で、他の個体を仕上げた方が早かった気がしますね。

困った、とうとうブログランキング1位になってしまいました。当時のレースで間違ってトップに出てしまったことがありましたが、その後の走りがメロメロになってしまって、追われるより追う方が楽ですから・・で、シボ革を貼れですって。FとFTのシボ革は違うのですよ。

良く々見ると、メッキはクロームは剥離してあるようですね。ニッケルが残っています。

 

付属の38mmはFT用の中期以降のタイプです。プレビューボタンを押しても、絞り羽根が固着して動きませんね。あとはレンズの曇りがあります。

 

Fに装着ですから絞りリングは通常絞り値側にして・・結局、5台のジャンクから良いとこ取りのゴコイチということになってしまいましたね。工数も余計に掛かりましたが、調子はよろしいと思います。でも、私が作ったPEN-Fグレーではありませんよ。

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またパンケーキですよの巻き

2014年11月13日 17時35分56秒 | ブログ

なんですか、ランキングがシングルの5位になってますよ。で、パンケーキ38mmが続きますね。私はダイエットでパンケーキは止めていますけどね。経験的にこのレンズは使い込まれたものは少なくて、みな程度は悪くないですね。常用で使う方が少ないのでしょうか? 例によってヘリコイドグリスが抜けてスカスカになっています。前後のキャップは無くして来たんですね。

レンズを分離していきますよ。グリスが乾燥していますね。

 

 

レンズ構成は後ろの3枚だけです。ヘリコイドは洗浄をして、新しいグリスを塗布してあります。先日の個体よりはねじ部の損傷は軽微で、スムーズに作動します。

 

前玉も組み込みました。洗浄したマークカンにもグリスを塗布しておきます。1/16クリックボールをグリスで楊枝に付けてセットします。

 

今回はクロームボディーに装着しました。リング類の汚れも洗浄をしてきれいですね。カメラと装着した総厚みは47.5mmです。この個体はオークションでの入手とのことですが、やはり高値になるのでしょうね。私は所有していません。


レンズが3本も来てるぅ~の巻

2014年11月11日 13時22分15秒 | ブログ

いやはや、決して時計が簡単の意味ではなくて、カメラが続いたので息抜きと思ったのですが、とんでもないことになりましたね。で、少し前に到着していた段ボールですが、私は着手まで開梱しませんので失礼しました。同じ市内にご在住の方からPEN-Fの分解ジャンクのご提供を頂いておりました。誠にありがとうございました。年老いて傷ついたPENたちを少しでも健康にしてやりたい一心で治しています。この部品が多くの個体を救うことになります。お礼を申し上げます。

では、ズイコーレンズが3本ですねぇ。パンケーキ、20mm、150mm。癖のあるレンズばかりですね。

 

まずはパンケーキ(38mm)です。カビとヘリコイドガタですが、ご覧のようにヘリコイドネジが極端に短いのでグリスが抜けてスカスカになっているのです。ガタのあるレンズは、すぐにメンテナンスの要ありと認む。

 

 

レンズの状態は基本的には悪くはありませんが、ポツッと白カビがありますね。

 

裏側から。ヘリコイドグリスがカラカラですが、それ以外にピンセット部分に打痕があって、僅かに変形をしていることが引っかかりに影響を与えている可能性がります。

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あら~、ありがとうございます。ブログ村のランキングが、いきなり10位になっちゃいましたよ。みなさんのお力は偉大なり。で、38mmパンケーキは、ヘリコイド回転とガタ、それにカビを清掃してまずまずの状態になったと思いますよ。写りは知りませんが、希少なレンズには違いありませんので、大切にしてくださいね。

次はいわくつきの20mmですよ。レンズの中玉が曇っていますね。本来はこの時点で終了~です。曇りはレンズのガラス自体が曇っているもので、清掃はできません。

 

非常に合理的な設計で、3段ロケット式になっているわけですね。

 

 

このまま終了でも良いのですが、何とか使いたいですよね。ご批判を承知でレンズの曇りの表層だけ研磨しました。レンズの模写が変わっても、使えないよりはマシ。ということでご理解を・・

 

20mmはマウントベース側の腐食と油汚れがひどかったです。(画像忘れました)150mm f4ですねぇ。使用するケースがあるかなぁ? ヘリコイドグリスが流化をして絞り羽根を固着させています。ベトベトですよ。すべてレンズを分離してから洗浄脱脂をします。

洗浄が終わったところ。絞り羽根はスムーズに作動しています。レンズは清掃をして組み込みます。

 

 

全て組立は終了。やはり38mmの使用頻度が高く、150mmは殆ど使われなかったようですね。

 

38mmは個体数が少ないですから希少なレンズですが、薄く設計をしてあるので、着脱レバーも板材ですから脱着時は指に食い込んで、あまり操作感は良いとは言えませんが、装着したままで携帯性を生かしての撮影旅行などに重宝したのでしょう。

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墓参りの帰りに買ったスピードタイマーの巻

2014年11月06日 21時10分06秒 | ブログ

しばらくPENが続いたので、ちょっと時計を見させてください。大阪のご常連さんが、四国に墓参りに行った帰りに立ち寄った古い時計屋さんで購入して来たセイコー・スピードタイマー6139-7020です。左側は少し前にレストアした私所有の6139-7010です。似ていますが、7020はインナーベゼルが回転します。まぁ、少しずつ仕様を変えてバリエーションを増やす日本的な商法ってやつですかね。中身は同じです。で、2.3万円を2万円でお買い上げになったとか? まぁ、プロの時計屋さんですから適正な価格なんでしょうね。ちゃんとしていれば・・30分計とカレンダーが動かないとのことでしたが、30分計は動いていますね。

機械を取り出します。針の白塗装と夜光が劣化しています。まぁ、見なかったことに・・

 

殆どゼンマイが巻けていない状態では進み方向。片振りが大きめ。ゼンマイを巻いていくと遅れ方向となって、方振りは2.3MSとなって行きます。もう少し片振りは調整可能ではないかと思うのですが。カレンダー不動の原因を探りますが、O/Hはどうしましょうかね。

 今日は、Mazkenさんとお仲間の皆さんと一緒に八王子のオリンパス社内にある技術歴史館「瑞古洞」へ行ってきました。残念ながら撮影は禁止でしたので画像をUP出来ませんが、カメラ以外に発祥の顕微鏡と内視鏡など医療事業の歴史を語る製品が多数展示されていて、10年前に訪問した時とはまったく印象が異なりました。現在はカメラというより、私もお世話になっている内視鏡のメーカーさんですからね。訪問記念に帆布のバックを頂きました。OMのイラスト入りですぞ。

そんなことで、10年前に訪問した時の画像を1枚。結構ファイルが壊れていました。当時は、倉庫の1部屋にショーケースを並べただけの施設でしたが、本格的な展示施設になっていてびっくりです。当時と同じカメラも展示されていましたよ。というか、新しく加わった希少モデルは無かったようです。マニアの目からは、もっとレアものがあるはずなんですけどね。

スピードタイマーの方は、やはり見なかったことには出来なくて、白塗装の補修と蓄光塗料を塗布しておきました。この蓄光塗料、針のような薄く塗布する使い方ですと、あまり発光性能が良くありません。また違う塗料を研究します。

 

カレンダー機構ですが、特に部品の不良はありませんでしたので、再組立で正常に作動するようになりました。

 

この個体は、最近O/Hを受けた記録が書かれていますので、完全な分解はしないことにします。しかし、自動巻き機構などは指定のグリスではなく、軽い油が使われているようですので、すべて洗浄をしてやり直します。

針ですけどね。分解時、30分針の止まりが弱いので手持ちの針を使った関係で、秒針も再塗装をしたのです。ちょっと蛍光が強かったかも知れませんが、赤は退色の早い色素ですので、新品当時は鮮やかだったのではないかと想像して・・この時、その後の不幸を知る由も無かったのですが。

秒針を着けて作動をさせてみると、帰零で針がずれる。これは、軸と針孔の圧入が緩くて慣性に負けてしまうため。現存の個体は何度も分解を受けていますので、針孔が拡大してしまうのです。普通の時計は軸が丸ですので、針孔を絞れば固定できますが、グロノグラフの場合は、軸が四角なので、何度も抜き差しを繰り返すと止まらなくなるのです。本来は分解時は交換なんでしょうね。予め圧入テストも条件を悪化させることになるので出来ませんでした。秒針が調達できるまで作業は中止です。

と思ったのですけどね。調達の目途が立たないので私の手持ちから探してきました。すでに塗装を終えたところですが、色がちょっと違いますかね? 昨日の塗料なんて残っていませんので調色では下地色、色調、蛍光度、艶消し度によっても見え方の印象が変わりますので、全く同じは出来ないのです。

片振り調整をしても正確な反応がない。分解して観察すると、ヒゲゼンマイがテンプ受けに接触をしているようです。分解の形跡がありましたが、ヒゲ持の固定位置が適正でなく接触をしていました。

 

ステンレスベルトは純正品が付いていました。珍しいですね。但し、バネ棒の1本は、20mm用(正規は19mm)を曲げて取り付けてありました。太さも細いので、適正なバネ棒と交換します。ベルトは汚れが激しいので超音波洗浄をしてあります。

振り角の上がらない、あまり良いテンプではありませんね。秒針は一発で固定出来ました。裏蓋にO/H履歴とイニシャルが記入してあって、意外に最近の日付でした。

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大切な方から譲られたPEN-FTの巻

2014年11月03日 22時45分21秒 | ブログ

オーナーさんはPEN初心者さんで、大切な方から譲られたPEN-FT #2555XXだそうで、中期頃の生産機ですね。セルフタイマーが動かないとのことでしたが、固着していたボタンを裏ワザで緩めてからカバーを分離して原因を探りましたが・・セルフタイマーは確かに固着ですが、これは作動しなくなって思わずセルフタイマーを巻き上げるというPENオーナーの習性ですね。原因は他にあります。シャッターユニットが完全にロックした状態のため、巻き上げレバーも動かず、全くお手上げの状態となっています。大切な方から申し送りは無かったのでしょうか? 経験的にはテンションシャフトのハンマーにトラブルが有るような気がします。シボ革の接着具合から分解歴があることが分かります。

トップカバーを分離しようとしても固着していて、バリッと外れて来たので、嫌な予感がしたのが的中。再接着の接着剤が弱くて剥離して来たので、「それじゃあ強力な瞬間接着剤で」と考えて貼ってしまったのでしょう。溶剤では剥離してきませんので削って行くしかありません。

シャツターユニットを分離しましたが、原因はブレーキナットの緩みで予想は的中でした。

 

しかし、まだ問題が有りそうです。巻き上げギヤにガタが大く、二回巻き上げになっています。しかも、修正のしにくい悪質なヤツ。この状態で譲られたってことですよね。

 

本体とカバーを洗浄する前にシボ革の接着剤を落しておきますが、オリジナルの接着層の上にベタベタに劣化をした茶色のニカワのような接着層、三層目にカチカチに硬化をする接着剤ですからシボ革がバリバリに硬化しています。組立最後の接着時に苦労をしますので、ペーパーで削り落としておきます。後ろのトップカバー前面に接着剤が付着していますね。裏側にも大量に回り込んでいて、本体と固着していました。

分解洗浄をしたシャッターユニット。#2555XXはすでにシャッタースプリングは改良タイプが使われています。低速不調のため、スローガバナーを調整しました。

 

チャージギヤは摩耗のため交換して組みます。

 

 

性質の良くない接着剤が使われています。溶剤では除去できないため、削り落として清掃をしておきます。

 

本体側と前板側が完成しました。シャッター単体でのテストでは、巻上げは非常に滑らかに仕上がっています。

 

譲られたこのカメラの元のオーナーさんはすでに他界されていると現オーナーさんからお聞きしました。そんな経緯が多くなっていますね。私がPEN-Fに憧れたのは中学生の時でした。その時は手に入れることは出来ませんでしたが・・で、いつものお決まり画像です。ハーフミラーとアイビース枠を交換しています。調子がね、当初の惨状からしたらびっくり。巻上げも滑らかでシャッターも調子が良いです。25万代というのは過渡期的な個体で、30万代以降にはない滑らかさというのがあるんですね。しかし、その分、生産が古いのでリスクは増える。ですから、この個体のようなケースは最高なんですね。

38mmレンズの曇りと羽根の洗浄をして完成です。現役当時からと思われるハードケースを見ると、元のオーナーさんが愛用されていたことが忍ばれますね。但し、長期にハードケースに入っていた関係で、スチール製の裏蓋の錆など劣化が進んでいます。保管はハードケースから出しておいてください。当初の状態では、受け継いだ方は途方に暮れる状態でしたが、仕上げてみると中々素性の良い個体であることが分かりました。巻上げがガリガリが普通と思っていらっしゃるFTオーナーさんがびっくりするような感触です。これから大切に使って行きたいとのことですので、良い後継者に巡り合えた幸運な一台であると思います。

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