今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

羨望のPEN-FT(B)+パンケーキの巻

2021年01月26日 14時45分00秒 | ブログ

有るところには有るものでPEN-FT(B)+パンケーキが2セットです。私はマニアではないので所有していませんが羨ましいですね。で、どちらも現用機で作動はしますが、30万台機としては光学系の状態がよろしくないのでハーフミラーなどの交換もして行きます。

 

「最近ピントが甘くなった」とのご指摘でしたが、このファインダーですと精密なピント調整は難しいかと・・

 

現用機ですので外観もかなり汚れていますので洗浄をして組み立てていきます。

 

 

昨日UPした分が消えてしまったようです。簡単に画像だけUPしておきます。分解前の点検で低速が遅めです。コントロールレバーがカムに接していません。

 

コントロールレバーにテンションを掛けるバネが飛び出していました。画像は正規の位置に戻したところ。

 

チャージギヤの内径が拡大気味です。極端な軸の摩耗はありませんが、摩耗が進むと1回の巻上げではチャージが完了しなくなります。

 

34万台としては保管がよくなかったようでプリズムのコーティングに軽い曇りが発生しています。後期なのでプリズムホルダーの留めネジは1本です。

 

前板を本体に取り付けます。

 

 

アイビース枠は片方に欠けがありますが再使用とします。しかし、汚れが付着していて白い汚れが中々取れません。

 

ハーフミラーの腐食も進んでいます。34万代に使われているハーフミラーではなく20万代のハーフミラーの仕様のようです。過去に修理歴がありますので何か事情があったのでしょう。

 

付属の38mmパンケーキを清掃したおきます。スリ割りを確認すると、過去に何度か分解を受けているようです。

 

パンケーキはヘリコイドが短いですからグリス抜けが多いです。早めのメンテナンスが必要です。かなり劣化していますね。

 

前群レンズを清掃して取り付けます。

 

 

カメラ本体に取付けて作動をチェックします。やはり似合いますね。

 

 

こちらは2台目ですけど、やはり34万台の個体です。外観のコンデションは1台目よりかなり良く、消耗も少ないのではと思われます。未分解機ですね。問題は巻上げのゴリツキが大きいことです。

 

使用は少ないと思われますのでチャージギヤの摩耗は少ないですが、軸側に軽微ですが摩耗による段付きが確認出来ます。

 

問題はテンションシャフトです。軸受け部分が荒れています。ここは無給油で回っていますので線状痕が付いた個体は多くありますが、それだけではないようです。

 

ピントが合いませんが、こちらの方が分かり易いかと思います。中央付近のメッキが剥離しています。メッキの剥離まで症状が悪化している個体は稀ですので、使用頻度から見てメッキ不良でしょうね。外注のメッキ屋さんの品質不良です。

 

こちらが良品のテンションシャフトです。軸受け部に傷や剥がれはありません。しかし、今回はオリジナルを再使用することで組みました。

 

ハーフミラーは新品と交換します。

 

 

2台共 同じ1970年3月製とは珍しいです。こちらとセットのパンケーキはすでに清掃とグリス交換をしてあります。

 

時期の生産ですが、保管方法によって特に電子部品の劣化具合に差が出るのが良く分かる事例。1台目は露出計感度の低下が激しかったですが、2台目のこの個体は非常に優秀で、ほぼ調整なしで良好となりました。

 

パンケーキは20年前に銀座のお店で入手されたそうですが、現在、ブラックFTとパンケーキのセットを2セットも所有するとなると相当な出費になりますね。旧車のスカGやフェアレディーZなどが知らない間に相場が上がっていて、とても手が出ないようですが、日本車が海外で評価されているのだそうです。フィルムカメラも再び評価される時代が来ると良いですけどね。

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輸出向けのPEN-Wの巻

2021年01月24日 21時40分00秒 | ブログ

PEN系のオーバーホールが溜まっていますので始めて行きます。「遅れて来たペンマニア」さんは一体何台のPEN-Wを所有されているのだろう? 元箱付きを中心にコレクションされていますが、この個体も元箱付きです。オークションでの入手のようでしたが、この個体は輸出用でft機になります。トップカバーの背面には「PASSEDシール」が剥がされた痕が残っています。

残念ながら元箱以外の取説類は失われていますが英文取説はすでにお持ちのはずです。たぶん北米にあったものと思われてレンズの状態は良い方です。塗装の劣化も国内にあったものよりは良いコンディションですが美品とまでは行きません。ピントリングにft表示が確認出来ます。

過去に分解は受けていますね。カニ目ネジに傷があります。

 

 

また以前に見たような状態ですね。ダストカバーを剥がそうとして剥がせなかった? ようです。

 

 

画像はヘリコイドネジのリングを緩めたところですが、これが例の親の仇のように強く締まっていて難儀しました。

 

リングを強く締め過ぎると地板の部分にクラックが入り易いのです。ご覧のように、コンパクトに設計するため非常に薄く出来ています。

 

では、本体も洗浄後に組み立てていきます。

 

 

トップカバーの上面はきれいですが、指を触れる前後に塗装劣化があるのが残念なところ。ほどほどに使用されたいたということです。

 

対物レンズの裏側1枚が割れていました。交換して接着しました。

 

 

レンズの状態は国内にあった物とは明らかに状態は良いと思います。バルサム劣化(黄変)が少なく、コーティングの劣化も軽微です。画像は分離した直後の状態でコーティングの拭き上げをしていない状態。尚、コーティングは弱っていますのでアルコール系のクリーナーは使用しない方が安全です。

絞りクリックの改善をしてヘリコイドグリスを塗布して組み立てます。

 

 

裏蓋の洗浄と圧板の研磨、モルトの交換をしてあります。巻き戻しダイヤル側にPASSEDシールの痕が残っています。

 

良くチェックをすると吊環の右上に打痕があって、それを裏から叩いて板金をした形跡があります。叩きすぎて吊環右側が膨れています。何もしてくれなかった方がやりようがありましたが・・ファインダーを付けたままで叩いたことで衝撃により対物レンズの割れに繋がったものかも知れません。

塗装やシャッターリングのメッキの状態とレンズのコンデションが明らかに国内物とは違います。しかし、国内にあるものでも、もっと良いコンディションの個体も確認しています。どのような保存をしていたのでしょうね。#1180XX コパルにてシャッター完成 昭和40年3月、 本体完成1965年3月(記載の通り)

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外観は良いのにローライ35の巻

2021年01月21日 20時20分00秒 | ブログ

外観の当たりも無く一見きれいなブラックモデルですが、そう簡単ではなさそうです。ヘリコイドグリスは完全に抜けています。こんな仕様もあるんですね。絞りとシャッターダイヤル中心のネジが一般的なクロームメッキではなく梨地メッキになっています。

 

まず、シャッターは切れる音はしてものトグルレバーが動いていません。シャッターが固着状態のようです。

 

電池室は液漏れの痕があります。メーターは作動しません。

 

 

あ~、ダメですね。高底両方の半固定抵抗まで腐食して、リンケージも固着しています。

 

 

半固定抵抗は分解時に破壊となりました。

 

 

沈胴のロックを外すSST工具。うそです。時計ベルトの簡易工具がちょうど良いのです。

 

 

今日は午前中から通院やホームセンター買い出しで時間を取られて作業が進みません。まず、昨夜作業を終わっていた定番作業のファインダー清掃済みユニットを取り付けます。

 

露出計ユニットですが、電池の液漏れによる損傷はひどいものがあります。特にローライ35系は電池室に液漏れの形跡がある個体は避けた方が良いと思います。コンパクトスペースにメカがぎっしりと詰まっているため、損傷が大きくなるのです。で、このオリジナルのユニットは電池室とCdsを含む回路の損傷が激しいため、ストックのユニットに交換することにします。回路のチェックをして問題ないので組み込みます。

本体に組み込んむと作動しない? 原因は2つ。1つ目は、回路のアースはこのネジで取っていますが、液漏れのガスによってダイカストが腐食していて電気的導通が不安定。

 

もう1つは意外にも電池蓋です。ローライ35の電池蓋は接点部が別パーツになっていて、液漏れにより蓋本体と絶縁された状態になっていました。これは良品と交換します。

 

最後に絶縁フィルムを貼って終了。

 

 

シャッターは羽根の貼り付き、レンズカビ、ヘリコンドグリス抜けを改善させて完成したところ。

 

 

調整用のシムが合計6枚(0.88mm)入っていました。

 

 

シャツターの低速も快調に切れます。今日はここまでです。

 

 

トルクレバーが正確に連動して快調にシャッターが切れています。

 

 

トップカバー背面の巻上げレバーアテを製作して取り付けました。

 

 

ピント調整後、ft表示のピントリングをm表示にセットしてカバーリングを接着したら完成です。ご覧のように、元は大切に扱われていて外観に目立った傷も無い良い個体でしたが、電池の入れ忘れによって、どれだけ内部の特に電気系にダメージを与えるかの典型的な事例です。沈胴チューブのメッキにもすり傷一つない使用感の低い個体でした。私も欲しいですね。

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ローライフレックス・オリジナルっての巻

2021年01月18日 23時00分00秒 | ブログ

少し間が空きました。PENのO/Hも溜まっているのですが二眼レフを数台まとめてやっていたもので・・。で、ローライフレックスのオリジナルというモデルだそうです。資料本によると1929(昭和4年)とか出ていました。そんなに古いの? アメリカではニューヨーク証券所の大暴落やロンドン海軍軍縮会議で日本は対米比率7割となったり独飛行船ツェッペリン伯号が日本にやって来た年とのことです。流石に古すぎるので直せるのか? という感じです。シャッターは不動、レンズ曇り、レンズボードの繰り出し固着・・

裏蓋は丁番式ではなく取り外し式ですね。赤窓式。

 

 

シャッターはコンパーですのでしっかりしているようですが、シャッター羽根の劣化と固着があります。

 

全速用のバネは全く利いていないです。

 

 

スローガバナーは超音波洗浄と注油で使えると思いますが、シャッターバネが弱っているようで、低速が止まります。

 

ミラーは完全に劣化していて使えません。厚みは実測1.05mm程度です。

 

 

ファインダースクリーン隅に接着剤の痕がありました。内部を探すと水準器が見つかりました。

 

 

ストラップ部のネジが1本脱落しています。規格の合うスリ割りネジの頭を削って体裁を合わせて作ります。

 

塗装をしました。頭の直径が少し小さいですが、まぁ良しとします。

 

 

ファインダースクリーンは、かなり汚れています。

 

 

スクリーンの洗浄後、水準器(オリジナルだそうです)を裏側(マット面)から接着をしました。意外に良く見えますね。

 

シボ革はあちこち剥がれていますので接着をしておきます。

 

 

ミラーは社外のカット品が供給されましたのでそれをセットしました。

 

 

シャッターは同型のシャッーからバネを調達して比較すると全く弱いことが分かりましたので調達したバネを使い快調に作動しています。しかし、T(タイム)でシャッター羽根が閉じない不具合があり点検するとこのレバーが錆びて固着していました。

 

1/300(全速)痔のアシストバネを比較します。右がこの個体のもの。コイル上面が明らかに無理に捻じられていることが分かります。しかし、今回は交換せず、形状の修正で再使用としました。

 

まだまだ調整に時間が掛かりますのでUPはこれで終了します。ファインダーを留めるネジを塗装しましたのでセットしてありません。因みに、ムック本を見ると、このモデルは「ローライフレックス・オリジナル(1929年)」の前年に発売と記載されている「ローライフレックス・初期型(1928年)」の画像と同じに見えますがどうなんでしょうね。流石に戦前のカメラは良く分かりません。どちらにしても、零戦の正式採用は1940年ですから、それ以前に作られた工業製品が現役で動いていることに驚きます。ドイツのダイムラーDB-601エンジンを国産化したハ40が部品の材質不良や冶金技術の未熟により故障が多発したことを思うと、ドイツとの工業技術力の差を感じますねぇ。

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ローライコードⅤの修正の巻

2021年01月16日 14時48分50秒 | ブログ

しばらく定番の二眼レフをやっていますが・・このローライコードⅤはシャッター不調以外は程度は良いと思いましたが・・シンクロ接点レバーを取付けてみるとフロントカバーと接触をして動かない。あ~、曲がってますね。

 

レバーを修正してこれで良しと外観の清掃をしていると・・あれれ? 目がおかしいのかな?フォーカシングフードの外枠が陥没しているように見えました。実際にへこんでいました。

 

二眼レフは重量があるのでぶつけると自重でへこんでしまいます。かなり凹んでいますが、この部分はチャンネル構造なっているので簡単には戻りません。

 

衝撃により外枠も開いてしまっていますね。このような修正をする時は昔やっていた車の板金の考え方が役に立ちます。

 

枠が内側にも変形していてフードが面一まで上がってこない状態でした。画像は枠を修正してフードとのチリ合わせをしたところ。

 

まぁ、なんとか修正が出来ました。革ケース入りの個体でしたが良く点検をしないといけませんね。

 

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