今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

限定修理のはずがPEN-Wの巻

2018年09月29日 17時33分33秒 | ブログ

腕時計はもう1つやっていましたが、部品が欠品していてペンディングとなりました。今日も早朝から新宿に行きましたが、雨が続い外国人観光客さんも可哀想でしたね。明日はまた台風が来るようで、まっ、今年は自然災害の多い年です。各地に被害が出ないように祈ります。そんなことで予定が変更になりまして、中古カメラ店様からのPEN-W #1020XXですが、当初は一部の手直しのご依頼でしたが、拝見すると色々問題が・・で、O/Hとなってしまいました。ボディーの塗装は非常にきれいな個体ですが、長期放置された個体は裏蓋底部のモルト変質によって塗装とダイカストが侵されてしまいます。モルトと変質した塗料を拭き取っていくと・・

オリジナルのままの未分解機かと思いましたが、ファインダーの清掃を受けていまして、シャッターも何やら緩み止めのネジを開けようとして全てのスリ割りが壊されています。

 

関東地方に接近する台風は決まって夜半が多いです。しかし、いつも言ってますけど、何で日本列島に沿って来るのかな? 貿易風で沖縄まで行って偏西風で戻ってくることは知ってるけど、何千キロの彼方からちゃんと私の住んでいるところに来るんだから自然の正確な力が働いているんだね。シャッターは洗浄組み立てをしてハウジングをセットすれば完成です。

レンズは後玉のカビが多くありましたが清掃出来ました。完成したファインダーを取付けてトップカバーをドッキングします。

 

この個体は放置期間が長かったようで、変質したモルトと密着をしていたダイカスト底面の塗装を侵していますが、劣化部分を取り除いてみると、剥離の範囲が普通の個体よりも大きいです。これではタッチアップという範囲を超えています。

仕方がないので、費用は出ませんが自然乾燥塗料で補修塗装をしておきました。

 

 

焼付ではないので、完全乾燥をするまで裏蓋は取り付けません。これで完成になります。

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SEIKO スピードタイマーを仕上げるの巻

2018年09月23日 23時25分16秒 | ブログ

夏前に北海道のINOBOOさんからスピードタイマーが来ていたのでした。スピードタイマーは文字盤、針、ベゼルリングなどの劣化が進み、リプロ部品に交換されている個体が多いのですが、右の6139-6032はそれらを交換されています。機械としてはこちらの方が良いとのことで、こちらをメインにして左の6139-6000の部品を移植して仕上げることにします。

風防ガラスも交換されているようですが、ベゼルが完全に圧入されていませんね。

 

 

何かだるい研磨を受けていまして、稜線が消えて丸っこいケースになってしまっています。すでに相当研磨されていますので修正は非常に困難です。

 

夜から朝の温度変化で先月の風邪が良くなったと思いましたら、また風邪を引いてしまいました。関東地方は気温が上がって蒸し暑くて仕方ありません。まっ、エアコンを入れると変に寒いんだよね。で、調子の良い方の機械でしたが、結構分解をされていて汚れも多いです。油っけは殆どありません。では分解をして行きますが、曜車押エが表裏逆に入っていますよ。ケースをリプロ部品で仕上げる程度の知識はある方のようですが、基本的なことを勉強した方が良いです。

分解洗浄をしましたが、何度洗っても汚れが落ちてきました。洗ってないということでしょう。

 

クロノですから部品点数が多いのでパッパといきます。香箱真にはルビーが入っていないためホゾ穴は拡大傾向です。ガンギ車を載せて一番受を載せます。

 

三番車のホゾを入れるのがちょっと厄介。

 

 

動きだしたのでクロノグラフ車の動きを見ます。おっと持病の58秒止まりになりましたよ。ゼンマイ一杯では動きますが、この場合、香箱半回転の巻き量で作動しなければならないのです。しかし、ゼンマイのトルクも落ちていますので少し余裕を見ます。分送ツメ(中央クロノグラフ車下のツメ)のくい合いと分躍レバーの強さとのバランスで解決します。

日ノ裏側を組んでいきます。

 

 

現存の殆どの個体はリューズのパッキン不良による水の侵入でインナーリングを回転させる歯車が錆びています。この個体も錆でいますが、辛うじて歯車の嚙合いが出来る状態。ここだけ錆びやすい材質なんですね。ピンセット先はリプロ部品。リューズも含めて良く出来ていると思います。メーカーから部品が出ない以上、これらのリプロ部品が頼りです。

分解前は片振りもあり得ないセッティングになっていましたので、その時点で丁度ぐらいの調整をしておきましたが、組立後は+50秒ぐらいになりますね。油がカラカラだったのでしょう。

 

 もう1つの6139-6000からインナーリング、文字盤、針を調達します。機械は6139Aですので6139-6032の6139Bとは微妙に歯車の規格が異なっていて混用は出来ません。

 

文字盤と針を移植しました。長短針はオリジナルのメッキをサンドブラストで剥離してあるようです。みなさん色々考えますね。夜光は入れ直してあります。

 

レストアする時に一番必要となる部品。これらはすべてリプロ部品です。業者の方が海外へ出向いて仕入れてくださるもので、品切れが多いですから見つけたら入手をするようにしています。必要になってから探しても見つからないことが多いですからね。

ケースは回転式のインナーリング付きですから部品構成は多いです。インナーリングはオーナーさんのお好みにより交換して組みます。

 

ボタンが違うものがセットされています。バネのテンションが掛かっていません。機械留めも腐食していますので両方交換します。自動巻き機構を載せてローターを取付けて組立完成。

 

ベゼルプレートはゴム系接着剤で固定されていましたが、ベゼルを圧入した後で接着した方が位置合わせが正確ですので一度剥離をしておいたものを再接着します。

 

今回はオーナーさんのお好みによって、6139-6000の文字盤、インナーリング、針を交換しましたが、針はリプロ新品に交換した方が良かったかもしれません。ベゼルリングは本来は黒/赤がオリジナルだったと思いますね。

 

社外で流通しているステンレスベルト。取付け部の形状が特殊ですので汎用のベルトは似合わないので貴重なアイテムですが、値段もそこそこですので私はまだ買えていません。

 

え~と、オーナーさんから「やはり針を新品に変えて欲しい」とのご希望がありましたので交換をした画像を追加しておきます。ヤレた純正針よりリプロの新品。針は時計の顔だなぁと思いますね。

 

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SEIKO 61GSの巻

2018年09月23日 09時29分40秒 | ブログ

グランドセイコー 6145-8000です。カレンダーは日付けのみ(45)でケースは定番の8000です。かなりラフに使い込まれた個体でケースに傷が多く歩度も30秒以上遅れるようです。

 

テンションリング付の風防ガラスはプラ製ですので傷が多いです。交換します。

 

 

裏蓋のメダリオンは欠落していて、オーナーさんが仮のリプロ品を同梱してくれました。本来は「GS」となります。

 

裏蓋の刻印文字は非常に浅いので最低限の研磨に留めます。メダリオンを接着しました。サイズが少し小さいですね。

 

風防ガラスを外すために、まずベゼルを取り除きます。

 

 

機械の方を組み立てて行きます。61系ベースですから非常に組み易い機械です。機械には分解された形跡はなく、一度もO/Hを受けていないようです。それによって、香箱真に潤滑が無く強力なゼンマイによって摩耗しています。

 

最後にテンプを取り付けます。

 

 

カレンダーは日付けのみですのでシンプルで組み易いです。

 

 

テンションリング付風防を入れるためにはセイコー純正の押込コマを使いますが、私の所有するHOROTECとは孔径が異なり(HOROTEC 8mm SEIKO 5.9mm)そのままでは使えませんので、旋盤で変換コマを作ってみました。

 

出来るだけガタのないような精度で作りましたので、コマの倒れはありません。

 

 

テンションリング付風防を圧入する時はドキドキですが、バキッという音と共に無事圧入が成功しました。

 

 

ベゼルは風防の固定には何ら関係がありません。飾りです。

 

 

自動巻き機構を載せてケーシングしました。香箱の外周が接触して真鍮地が出ているのが分かります。ローターにGS GRAND SEIKO と彫刻されていますので初期型のようです。キャリバーは日付のみですから6145Aです。

 

 

ワニ革のベルトを取付けると高級感がありますねぇ。文字盤の6時位置に GS GRAND SEIKO (諏訪マーク)ですから、やはり初期型でしょう。香箱のダメージはありますが、テンプは工場で調整したままで日差+3秒程度で動いています。流石にGS。

 

尾錠は本来、右側のものがオリジナルだと思いますね。

 

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さて、通常のお仕事PEN-FVの巻

2018年09月19日 15時36分52秒 | ブログ

昨日(火曜日)で「世界の中古カメラフェア」が終わりました。ちょっと疲れましたけど、ご来場頂いた方にはありがとうございました。ICSの主催ですから、国産カメラの出品は少なく、特にPEN系は数えるほどでしたが、私がO/HをしたPENも数台販売されたと出品店の方からお知らせ頂きました。特に若い女性の方が購入してくださったようでニコニコです。で、協賛店さんからPEN-Fを1台譲り受けて来ました。美品ではありませんが大きなダメージはなく、O/Hで良好な個体になると思います。完成しましたらご希望の方にお譲りをしますのでお待ちくださいね。

では、ボチボチやっていきますよ。PEN-FV #1248XXですが、販売のための光学系清掃のみ受けたという個体です。但し、シャッターユニットはバネを強化した改良後のユニットでリターンミラーユニットも改良後のタイプが付いてるので、外観も含めて程度はよろしいと思います。このまま使用も可能ですが、巻上げゴリツキなど、グリスの劣化はありますので、全体のO/Hをしていきます。

きれいなシャッター幕ですね。傷一つありません。普通は、アパーチァーの露出部分のみ油汚れがあるのが普通ですが、殆ど使われていないようです。

 

チャージギヤの内径と軸の外径にも摩耗は殆どありません。

 

 

特に書くことも無い個体ですが、オーナーさんが気にされていたのは、スクリーンに黒点のゴミ? これは、前回の光学系整備の時にスクリーン上下の劣化モルトを取り除く際、内部に入り込んでしまったようです。すべて分解清掃をしてあります。

 

全反射ミラーは多少のすり傷はありますが、再使用は可能ですが、オーナーさんのご希望により新品と交換しました。

 

メカ部組立完成。

 

 

付属の40mmは問題ありませんので未着手。変更後のユニットを搭載している個体を探すには、巻上げダイヤルのノブが丸のローレットではなく、タイコ型のノブが付いている個体が後期型ですから参考にしてください。

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ROBOT Ⅱaはスパイカメラ?の巻

2018年09月16日 21時53分15秒 | ブログ

昨日、土曜日のカメラ市には、遅れて来たペンマニアさんが来場されて、私を見つけて声を掛けて頂きました。普段お世話になっているご常連さんとお会い出来るのはうれしいですね。

で、今日はロボットⅡaをやっていました。Ⅱ形は1939年にドイツ空軍にも採用されたということですね。正式なガンカメラなのかは知りませんが、戦闘機に搭載されて、敵機を撃墜したことを証明する戦果確認用として使われたとか。メッサーシュミットのマウザー砲の発射と同調して自動的に撮影されたのかなぁ?知らんけど・・日本でも開戦の初頭はベテランの搭乗員ばかりですから、戦果確認は非常に正確にカウントされ、陸軍でも64戦隊の加藤部隊長などは、部下の撃墜申告を聞いて、完全に確認証言が取れないものは除外して申告していたほどですが、戦争末期では、経験の浅いパイロットは過大申告が多くなっていました。ドイツでも同様な事情があって、写真によって撃墜認定をするように改められたのかも知れませんね。

余談ですが、真珠湾攻撃の時は雷撃機などは複座ですから、後席の爆撃手がカメラで撮影をしていました。蒼龍艦爆隊の生き残り森拾三は、カルフォルニア型戦艦を雷撃して大破させ写真撮影もしたが、被弾により脚が出ないため母艦への着艦が出来ず、護衛の駆逐艦横に不時着水をして収容されたため、撮影したカメラも機体と一緒に海没して証拠の写真を失ってしまった、零戦撃墜王の坂井三郎は単座ですから愛用のライカを常に携行していつでも撮影が出来る状態にしていたとのことです。日本軍にも正式な写真銃はあって、ガダルカナルを占領されてラバウルへの爆撃が激しくなった頃、内地から記録映画の撮影班が来て、敵機を邀撃撃墜するところを撮影したいと要望があり、その中で、「だれか20mmを1丁下して写真銃で撮影してくれないか」と司令が頼んだが、さすがに彼我の戦力差はいっぱいいっぱいのところに来ていて、だれも命を守る20mmを下すことには同意しなかったとのことです。人情司令の小園中佐ですから無理強いはしなかったのでしょう。その代り、敵機を基地の上空に誘い込んで撃墜する画像を撮らせることで撮影班を納得させたのでした。その時の映像は見ることが出来ます。

https://www.youtube.com/watch?v=QoDmXXK5rE8

シャッターはロータリー式でフォーマットは24X24mm おもしろいのはロータリーシャッター羽根の前に遮光用のシャッターが付いていて、まず遮光用シャッターが開いてからロータリーシャッターが開く構造です。

 

シャッターダイヤルのカム。今は1/500にセットされていて、後ろの強力なバネで引っ張られていることで、シャッターダイヤルの回転は非常に重いです。軽いと強力なゼンマイの振動によってシャッタースピードが変わってしまうということもあるようです。

中心がロータリーシャッター幕の軸です。今回は低速が不安定ですのでメンテナンスをしておきます。

 

シャッターダイヤルの回転が重いので、グリスを塗布しながら組んで行きます。

 

 

おもしろいのは、ファインダー部のミラーを切り替えると、横の接眼レンズから像を見ることが出来ます。なんの意味で? 知らないけど、撮影を気づかれないようにするスパイカメラとして? また、飛行機の翼に取り付けた時の視野を横から確認出来るように? とか聞きました。

各ギヤを注油してセットしました。

 

 

悩むのは、カウンターセット用のギヤが出っ張るので、トップカバーをそのまま被せてもセット出来ないこと。どうする・・

 

ちょっと暗いですけど、遮光用のシャッター羽根を開いたところ。

 

 

レンズは、ねじ込み式で交換可能です。Xenar 38mm f2.8は標準的なレンズです。レンズも清掃していきます。

 

 

フィルムレール部分のダイカストが分離出来るとは気が付きませんでしたね。スリ割り付ナットは専用のドライバーを作らないと・・

 

当初は繰り出し側と巻き取り側の両方に専用のマガジンを使用していたようですが、このモデルは巻き取り側用(NRと刻印)に専用のマガジンと普通のパトローネで使用出来るようです。

 

90°アングルファインダーの接眼部。

 

 

レンズキャップのテレンプを修理して専用革ケースにセットしました。サイズは小さいですが、重量はレンズとマガジン込みで620gとズシリと重いです。戦後も1951年まで生産されたとのことですので、この個体も戦後の民生用ということですね。しかし、アングルファインダーって、横から見ていたら撮影に気が付かれないですかね? 怪しい人ですよね。

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