今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

タカノ2題の巻き

2019年07月29日 21時01分41秒 | ブログ

相変わらず光り物が良く写らないデジカメです。珍しいタカノですが、ずいぶんときれいですよ。完全オリジナルなのか、途中でケースや文字盤が入れ替えられている個体も多いですからね。タカノのモデルは良く分かりませんがプレッション、シャトー・スーペリオ・デラックスとか書いてあります。

 

たぶん新品のベルトだと思いますけど、腕に嵌めたわけでもないのに遊革の接着が剥がれましたよ。し~らないっと。気温が高いので接着剤が緩んだようです。

 

 

機械は世界一薄いキャリバーと言われたCal.535(21J)。サイズは実測25.95mmぐらい。1960年代初期ぐらいでしょうか。この頃は文字盤の大型化が流行りで、セイコーで言うとスーパーなどと同じで、ケースを大型化したために縁が厚くなっていますね。

 

機械は前回のクラウンなどとよく似た構成ですので同じような画像になりますね。

 

 

摩耗は少なく分解は1~2度ぐらいでしょう。21石ですので香箱受けに石が入っています。

 

 

基本配置はセオリー通りですが地板や受けを薄く作ってありますね。

 

 

セイコーに慣れていると耐震装置のバネが非常にやりにくかったです。これはスイスの部品なのかな?

 

 

裏側のバネはまた違います。これ三か所を同時に押さえないとセット出来ません。専用の工具が無いと苦労します。

 

 

まぁ、何とか組立完了。分解前の測定ではゼンマイ半分以下では測定不能になっていました。片振りが大きいですが、みなさん片振り修正装置の無いモデルはどう調整をしているのでしょう?

 

こちらも異常に状態が良いですね。タカノでも前期のモデルかと思いますが、アンチマグネチック 17J というのかな? タカノのペットネームは良く分かりません。デッドストックか新品の部品組みなのでしょうか?

 

 ムーブメントにTAKANOと記入がありますのでラコーを国産化したしたものでしょうか。コンディションは殆ど疲労していないのですが、リューズの作動や巻上げ感触は良くありません。セイコーで言うとスーパーよりもその前の新10型あたりの感触に似ています。

 

あっ、ミッキーが居るんだぁ。

 

 

輪列受けがごつくて特徴的です。例によってアンクル受けや耐震装置が組みにくいです。天輪は古典的なチラネジ付。やはり設計は古いようです。

 

 

日ノ裏側もきれいですね。筒車をセットして完成かな。

 

 

で、問題がありまして、この個体には筒車の上に載る針座が入っていないのです。なぜか筒車の針座の載る部分に油が着けられていて、文字盤の裏側に筒車が貼り付いていました。ネットで調べてみると、なんと私のブログでドンピタの画像がありました。(本人忘れています)針座はちゃんと入っているのでした。最近、ネット検索をするとうちのブログにたどり着くことが多くなりました。他に書いている人がいないというだけですけど・・https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/ef/d84081534934d026f1c2eba83c200e9e.jpg

入らない機械もありますからね。で、モリス型と新10型の針座を持って来て・・新10型の方を使います。

 

 

まぁ、きれいなケースですね。20ミクロン金メッキとなっていますが、部分的に剥離があるのが惜しい。

 

 

タカノは現存数は少ないと思うのですが、なぜかこのようなデッド級の個体が出て来るのですよ。オリジナルなのかストック部品で仕上げられたものかは分かりませんけどね。

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SEIKO クラウン・スペシャルの巻

2019年07月27日 19時50分09秒 | ブログ

その前に、先日やりましたセイコーマチック6216-9000ですが、回転錘のベアリングが摩耗していて地板に当たっていたのですが、オーナーさんが執念で純正部品を入手されて来ました。良く見つけましたね。交換すると回転錘の回転する「ゴロゴロ」という音がしません。これが本来の姿なんですね。

 

で、本題のクラウン・スペシャルです。初代キングセイコーより小ぶりですが、風格のあるモデルで人気がありますね。ケースはJ14100金張り80ミクロンですが、流石に摩耗も激しく良好とは言えません。

 

人気モデルなので、何度も修復をうけていますね。SD文字盤にもキズか多く乱暴に分解をされて来たようです。チリの混入も確認できます。風防は当然交換されています。

 

ラグの摩耗も進んでいます。当時は流行った金属ベルトを着けたようです。

 

 

80ミクロンでも地金が露出しています。

 

 

問題は裏蓋です。右側が激しく摩耗していますが、本来はリューズの位置に来る部分で、リューズを巻く時の摩擦で削れたものでしょう。手巻きはこれがありますね。

 

困ったのは摩耗が進んで穴開き状態になっています。

 

 

外気と遮断できていないのは問題です。

 

 

時計師さんはどのように修復されるのか知りませんが、カメラ屋がやると半田で塞いでおきます。(応急処置)

 

 

Cal.340の機械は意外にきれいです。しかし一難去って、あれれ、機械留めネジの頭が折れていますね。ネジは入ったままです。

 

 

何とか除去に成功。

 

 

文字盤の脚が折れていましての両面テープで固定してあります。

 

 

香箱は金メッキ仕様なんですね。フタが何度も分解を受けて緩いです。

 

 

超音波洗浄をして組み立てて行きます。とくに普通のクラウンと変わりませんので簡単に。

 

 

香箱穴に摩耗が認められます。

 

 

普通のクラウンと違い点は秒針規正装置が追加されていること。

 

 

歩度調整後、ケーシングをしますが、このベゼルはすごいね。歪というより曲がっているレベルです。分解か風防を入れる時に無理をしたのでしょう。修正はほぼ出来ませんので、衝撃でベゼルが外れてしまう危険があります。

 

ストックのクラウンから機械留めネジを調達して留めます。

 

 

このケースでは意味はないかも知れませんが、パッキンをセットして裏蓋を閉じます。

 

 

私が所有の普通のクラウンと。あら返ってケースは小ぶりなんですね。

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RICOH CADDYをやってますの巻

2019年07月23日 19時28分48秒 | ブログ

しかし、梅雨明けはいつになるのでしょうね。庭仕事も1カ月止まったままです。で、特に書くことも無いと思いますが、アクセス解析を見ると、毎日約千人のみなさんが律儀にクリックしてくださっているので申し訳ないので簡単に・・たまに来ますね。リコー・キャディーです。程度は悪くは無さそうですが、露出計がダウンです。

 

オーナーさんからストラップの吊環がグラグラしているとのことでしたが、このカメラはストラップの捻じれ防止のために固定してなくてEリングで抜け止めされているだけなのでグラグラはしますね。一応、ガタ分のワッシャーを追加しておきますけど、たぶん変わらないと思います。

 

シャッターユニットを分離するためにストロボのリード線の半田を外しますが、何故かアース側(黒)の半田が溶けません。強度を必要とする部分でもないのに?

 

 

セイコーシャッターは特に不具合は無いですが分解洗浄をして組みます。

 

 

スローガバナーはユニット式ではなく、地板の軸に組み立てるタイプ。

 

 

冨岡光学のレンズは曇りませんね。

 

 

シャッターを組み込んで清掃した絞りリングなどを組んで行きます。

 

 

何故かヘリコイドの回転が非常の重かったですので、ネジのラップ作業をしてから一番軽いヘリコイドグリスを入れておきます。

 

 

アンダーカバーの三脚ネジ部分の陥没があります。修正をしておきます。

 

 

PENと酷似したブライトフレーム付きファインダーはPENのものより金型がシャープでコンパクトです。カバーもちゃんと金属製です。

 

 

で、清掃のために対物レンズと前面ガラスの接着を外すのですが、微妙にPENとは要領が違っていて外しにくいです。前面ガラスのブライト側はPENでは磨りガラスですが、リコーはオートハーフも同様にマットのフィルムを挟んであります。RICOHのロゴを入れるための処理でしょう。PENでは対物レンズは同じものが2枚重ねで使用されますが、キャディーはレンズのサイズが異なっています。タイトなスペースに収めるための設計でしょう。

 清掃をした対物レンズと前面ガラスを接着しました。この時代はハーフミラーが金コートですので劣化が進んで剥離し易いので注意が必要です。

 

 

セレンは殆ど起電していませんので、他の個体から調達しますが、並べてみるとサイズが違いますね。(上が今回修理機で下が調達機)上の方が製造は後になります。今回は集光レンズも含めてセットで交換することで解決します。しかし、下のセレンは昭和36.7.3製造と記載がありますから、このカメラの製造開始1961年7月と正に製造開始直後のセレンが元気に生きていて後期のセレンがダウンをするという。単に環境のせいとばかり言えない原因があるのではと考えています。

PEN-Sなどとは違って露出メーターとASA表示機を内蔵させるためにファインダーが極力コンパクトに設計されているんですね。裏蓋も蝶番式だし、PEN-Sなどより先進的なモデルと思いますが、それだけでは販売が伸びないところが難しいところですね。

 

なかなかカメラらしいデザインではありますが、もう一ひねりデザインのコンセプトが弱い気がしますね。距離や絞りリングなどは表面処理はPENなどより上質で腐食劣化がないのも特筆しておきます。

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生き延びた初期型PEN-Fの巻

2019年07月16日 19時52分43秒 | ブログ

初期生産分のPEN-Fですねぇ。この個体#1084XXは1963年10月の製造ですが、1.8付PEN-Fの生産開始は1963年9月となっていますので、生産開始翌月の、まだまだ安定していない混乱期の製造となりますね。マウントのレンズ合マークは初期型以降のではなくΙとなっているのが特徴です。

 

ファインダーに腐食のようなものがありますね。接眼枠は破損のため交換をご希望です。

 

 

腐食は全反射ミラーではなく、接眼プリズムでした。これは修正は出来ません。

 

 

スプロケットはアルマイト地でスプールはグレーが初期の仕様です。フィルムレールなどは製造時期を考慮するときれいだと思います。

 

 

年代相応で汚れが積もっていますね。

 

 

この個体は未分解機でした。巻き上げが重いですが、初期型としては低速も正常に作動はています。

 

 

裏蓋内側にはカビが発生していますね。まずは、すべて分解洗浄をして部品の点検をして行きます。

 

 

昨日はスローガバナーに問題が発生して(初期型は弱い)久しぶりに夜中の1時過ぎまでやっていまして昨日分のUPが出来ませんでした。本体の裏蓋モルトを剥がして洗浄しましたが、のレール部分には最初からモルトが貼られていませんでした。極初期には貼っていなかったようです。

 

組み立てて行きますが、スプロケットとスプロケット軸の嵌合がきつくて入りません。どうも両方の設計公差内で大きいものと小さいものが組み合わされたようです。たぶん公差を変更したはずです。

 

スプール軸も組み立てて行きます。

 

 

この頃は嵌合寸法が安定しないようで、巻上げレバー軸にも薄いシムワッシャーを入れて微調整をしています。

 

 

初期型の特徴でもありますピカピカ光ったチタン幕。補強と肉抜き目的の外周のリプ(段付き)もありません。

 

 

初期型では珍しくブレーキは利いています。ただし、分解洗浄をして再組立をすると利かなくなるでしょうね(笑)。オーナーさんとご連絡が取れませんので、Oリングは交換せずこのままとします。ご自身のカメラがUPされている時は作業指示の確認をお願いすることがありますのでメールチェックを怠らないようにお願いします。

 

プリズムを保持するスプリングがありませんね。この後すぐにスプリングが追加されて、FTの中期まで継続されてその後廃止されたという、最初からいらなかったんじゃないの?

 

ここからが問題だわさ。シャッターテストをすると、どうもスピードが不安定になる。FやFTでもスローガバナーが弱いカメラですが、特に初期の#12型ユニットは安定しないものが多いです。夜遅くまで原因を探りましたが目が見えなくなってやめました。で、翌朝、分解をして点検していくと・・あら~、一番車の歯が1枚欠けていました。これではスムーズに動くはずがありません。教訓、年寄りは夜中の作業をしないこと。

分かりますかね。小歯車の歯が欠けています。ここは、ハンマーからの力を強く受ける歯車で強度が足りないのです。

 

 

で、初期型の#12型ユニットの良品は探せばあるのですが時間が掛かるので、このユニットを直すことにします。左は#14型の一番車ですが、微妙に違うのが分かりますか? 歯が厚くて横から見るとベベルギヤのように長く伸びています。少しでも強度を上げたい強化対策の変更でしょう。一番車だけ交換したのでは動きませんので、関連をセットで交換します。

 

私は時計もやっていますので問題ありませんが、カメラ用のピンセットでは細かなバネの組立は困難です。

 

 

初期の#12型と以後の#14型で大きく異なる点はアンクルの制御方式で後継互換がありません。その他、初期のユニットの歯車は加工精度が良くないと感じます。FTの後期などは加工も良くなり摩耗対策のための材質処理も変更されていると思います。

 

 欠けていた接眼枠は新品に交換してあります。因みにFTとはトップカバーとの嵌合方法と留めネジの位置が異なっていますので同一部品ではありません。真鍮のプリズム押えも初期は違います。リード線を保持するように折り曲げがありますが、その後はテープ留めとなって折り曲げがないタイプになります。カギバネの位置出しはカギ板部のプレスになっていますが、流石にこれでは組立時にバネが動いてしまうので、その後カギ柱というダボが接着されます。

 

 

で、やっとここまで組んだと思ったのですが、シャッターテストをすると稀に秒時をコントロールできない不具合が発生しました。初期のFに良く見られる不具合ですが、ユニットの信頼性が落ちていて、調整では改善出来ないのです。設計者の米谷さんからも「不良ユニットは直せないからスペアユニットを用意しておくこと」とお聞きしました。

カビが発生していた裏蓋は清掃できれいになっています。初期の個体は圧板の取付がそれ以後と上下逆になっています。

 

結局のところ、このような極初期型の個体を本気で動かそうとすることが間違いなのかと思わされるほど不安定なところがあります。改良される前の信頼性に劣るユニットが摩耗をしている状態ですので余計です。あとは付属の38mmを清掃します。

 

1964年制作のPEN-F取説ですから、この個体より少し後のものでしょうけど、中々凝った作りですね。使われている画像は当然初期型ですけど、良く見ると圧板の取付はこの個体とは逆の殆どの個体と同じ向きになっています。しかし、三光PENなども含めて、初期の製品はこの個体と同じ向きで組まれているものは確実にあります。(未分解と思われる個体からの推測)どちらでも同じと組立工の気まぐれだったりして・・そんなわけはありませんが。

わぁ、私が子供の頃に近所の優しいおねえさんもこんな雰囲気の人でした。60年代の九重佑三子さんが人気だった頃のペチコートのふわっとしたスカート履いてね。アメリカの風俗の影響が強かった時代。オートバイの後ろに乗る時は、スカートですから横乗りでした。今考えると怖くなかったですかね。で、形見と言うことで、本来はオブジェとなっていたカメラを無理に現役復帰させたような作業になってしまいました。初期型は設計・製作が熟成していない時期ですし古くて部品の消耗劣化も進んでいますから、安定した作動をさせるのは難しいところがありますね。かと言って、改良ユニットが使われた後期型ばかり残せば良いとも思っていません。生産全域の個体をまんべんなく残していきたいと思います。但し、同じO/H工賃ではチトきびしいかな・・

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標準劣化のPEN-Wの巻

2019年07月13日 20時44分55秒 | ブログ

世の中三連休だそうですね。私には関係はないですけど、今年の梅雨は梅雨の晴れ間というものが無いので応えますね。で、標準的に劣化をしているPEN-W #1198XXです。過去に何度か分解を受けていますね。シャッターが開かないのと、ファインダーも曇っています。まぁ、この個体もあまり書くことは無いと思います。

シャッターが切れない時は裏からシャッタ羽根を小指の爪で突いてみるとパシャッと切れるバスです。切れない時は本当に故障しているのです。

 

 

トップカバー横のネジが欠落しています。

 

 

トップカバーの側面に少しアルコールが着くと・・溶けました。これは通常塗料で塗られていますね。余計なことを・・

 

 

リング類に黒塗料が付着していますね。どこを塗ったのよ?

 

 

いつものように、すべて分解洗浄をしてから組み立てて行きます。

 

 

リング類の塗料もすべて拭き取って洗浄をしてあります。

 

 

ファインダーの対物レンズと保護ガラスを分離して清掃します。

 

 

PEN-Wの問題はレンズだよね。しかし、この個体は曇りはありますが良い方ですよ。

 

 

後玉を外して清掃をします。

 

 

前群の裏側に水滴状の汚れと曇りがあります。

 

 

水滴状のものは清掃しました。問題は前玉と後玉の両方、バルサムが黄変して曇っていることですね。画像で黄ばみが分かりますね。

 

 

清掃をして組み立てました。絞りのクリックはPEN-Wは画像の板バネによっています。ここの潤滑が切れるとギシギシしたような感触になります。モリブデングリスを塗布してあります。では、ヘリコイドグリスを塗布して本体に取り付けます。

 

接着の完了したファインダーをトップカバーに取り付けます。どうもシューは別個体から交換されたようです。記載が合いません。

 

 

トップカバーに余計な塗装をしてありますが、全体的には悪くはないコンディションの個体でした。調子は非常によろしいです。

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