今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ブラックが続きますねPEN-FT(B)の巻

2017年11月28日 20時16分38秒 | ブログ

来ない時には全然来ないPEN-FTブラックモデル#3349XXですが、ここのところ続いてますね。この個体は塗装の磨滅も少なく程度は良好に見えます。ブラックには42mm付が多いですね。豪華仕様ということで。作動は特に問題はないようですけど、巻き上げがゴリゴリですね。

トップカバーを開けて見ると・・光学系のメンテナンスを受けています。このパターンは多いですね。ハーフミラーは交換されていますので、このまま使いましょう。

 

42mmは清掃のために分解歴があります。カニ目やネジが傷になっています。

 

 

お約束の周辺曇りがありますね。

 

 

巻上げのゴリツキを改善するためか、モリブデングリスを塗りたくってありますね。意味はありませんけど・・

 

ロアーギヤにも大量のグリスです。

 

 

おなじのが続くので途中飛ばしますね。すべて洗浄をして組み立てて行きます。

 

33万台だとチャージギヤが組立式ですね。ナットの緩み止めが塗布されているのが分かります。

 

テンションシャフトの摩耗が変ですね。通常は線状痕状に傷が付くはずですが、ヤスリ掛けされたようになっています。ちょっと意味不明?

 

完成したシャッターユニットを本体にセットしてロアーギヤを取り付けます。(グリス塗布です)

 

巻上げギヤは多少摩耗気味でブレーキ軸と地板のクリアランスも大きめ。後期の個体で使用頻度が少ないからと言って摩耗も少ないとは限らない。

 

基本的にオリジナル性の高いしっかりとした個体ですから特に書くこともありません。組立は終了です。巻上げもが依然しています。これから調整作業に入ります。

 

並行で42mmを見ていきます。こちらも基本的には使用頻度の少なかった個体ですが、分解が乱暴だったのが残念なところです。

 

すみません。他のカメラと時計に緊急対応していましたので作業が遅れました。ネームリングは過去に分離されて工具を掛ける部分が痛んでいますね。黒アルマイトも剥離していますので脱地アップをしておきます。レンズも清掃します。

 

何故か続くFTブラック+42mmの豪華仕様。この個体は過去に光学系の整備を受けていましたが、オリジナル性は保たれていましたので作業はスムーズでした。非常に好ましい個体です。

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OMEGA デビルなのだがの巻

2017年11月23日 21時20分27秒 | ブログ

時計3個の修理依頼です。2個は現在のクォーツ時計。シチズンのクロノグラフは日窓枠が外れているのとプッシャーボタンの固着です。

 

本来は文字盤を分離してから接着するのですが、工数を掛けられないのでそのまま接着しています。

 

2個目はJ・CREWとかいうブランドですが、中身はセイコーエプソンです。こちらもプッシャーボタンが錆びついて動きませんので改善します。その他は、電池のストックが無いので入荷後の作業とします。

 

これはご依頼者さんのお祖父さんが所有されていた時計だそうです。オメガ・デビルcal711という2針の薄型時計ですね。薄いのに自動巻きです。程度はあまり良くありませんね。現在は不動になります。

 

オメガらしい赤機械。かなり何度も分解を受けていて傷が多いです。油脂汚れも多いですが水の侵入はありません。なら何とかなるかなぁ?

 

20μの金メッキケースは薄いですね。ベゼルとあまり変わらないぐらいです。切り欠きがありますが、故意に切り取ったのでしょうか? まさかオリジナルではないでしょうね。防水性能は無しです。

 

 自動巻きのローターを取り去ったところ。残念ながら文字盤留めネジの1本はすでにスリ割りが無く、ネジの分離は不可能です。では、検証しながら分解して行きます。

 

ローターを含めて3mm弱という薄型設計のため、香箱とゼンマイも自動巻きとしては薄くて華奢です。ゼンマイは、かなりくたびれていますが切れてはいませんでした。

 

輪列を組んで行きます。流石に受けはピタッと収まり精度は良いと思います。

 

 

この部分が自動巻きユニットになります。

 

 

テンプを載せると動きだしました。ローターを取り付けてこちら側は終了。

 

 

今日は定期健診で新宿の病院に行って来ましたので作業はしていません。日中は穏やかに晴れて暖かだったですね。現在の新宿駅舎は1964年の東京オリンピック直前に完成した建物で、当時は画像の高架道路やタコの口のような空気取入口が近未来的で子供心にも素晴らしいなぁと感じたものでしたが、さすがに50年以上経過したコンクリート建築は老朽化が激しいですね。現在盛んに工事が進められていますが、今度のオリンピックまでには完成するのでしょうか?

しかし、世界一の一日乗降客数を誇る駅で、外国人観光客も大幅に増えていますので常にホームは混雑しています。今日は日ごろのウォーキングの成果か、脚の調子は良かったのですが、雑踏は不得手なので早々に引き上げて来ました。

 

で、cal.711ですが、どうも手巻きと自動巻きの連動がスムーズでない。摩耗もあってコハゼの動きも悪く、コハゼバネの形状が変形していてオリジナルの形状でないようです。

 

 カレンダーは無いのでシンプルな日の裏ですが、2針で独特な設計になっています。歯車は摩耗気味で、過去の分解で傷だらけです。

 

タペストリー金文字盤は品があって豪華です。針をつけて針回しをしてみると、やはり歯車の摩耗かオメガらしくない粗い感じです。風防ガラスはフラットガラスが入っていますがΩマークはありません。オリジナルかは不明。

 

ケースに機械をケーシングしました。

 

 

151-0039は1970年初期のモデルのようです。裏蓋内側には沢山の修理履歴が書きこまれていますが、プロの時計師さんとしては仕事が雑のように感じます。

 

シチズンの方は電池を交換して秒針の0時停止セットをしておきました。時計が重いと見えてバネ棒が曲がり気味のため新品に交換しておきます。

 

J.CREWの方も電池をセットして裏蓋を圧入します。

 

 

他のサイトさんによれば、DE VILLEはフランス語で街角の意味だそうですね。自動巻きなのに薄型2針の洒落たドレスウォッチです。ご依頼のお祖父さんが所有されていた時計とのことですが、お父様の体調がよろしくないとのことで、力づけたいとの想いでご依頼になったようです。各部に問題のある個体ですが、なんとか復活出来てお役に立てたでしょうか。

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帰って来たPEN-FT(B)の巻

2017年11月22日 14時50分40秒 | ブログ

【業務連絡】昨日、PEN-FTのお問合せを頂きました都内の中〇さん。ご返事のメールが戻って来てしまいますが届いていますでしょうか?

運転免許証の更新に地元の警察署まで出向きました。眼鏡等の条件は付いていませんが、安全のため最近は補正メガネをして運転しています。確か5年前の更新の時の視力検査で、最後のCの開いている方向に確証がなく、しかし答えは正解で合格していましたので、今回は落ちるだろうなぁと予め申し出て検査を受けました。そして最後のCの答えはXで、これで終わりと思ったら、「これは?」と次の問題を出してもらって、これは見やすくて正解で合格を頂きました。ラッキーなのかどうなのか? まぁ、10年間ごまかして眼鏡等が付くのを免れているということ。潔く眼鏡等になれば楽になれるのに・・まだ矯正視力は1.2あるんですよ。小学生の頃は2.0が見えました。

で、過去にメンテナンスをした個体が戻りました。FTブラックが続きますね。この個体は現役で活躍中ですので劣化は免れません。露出計の感度が極端に落ちて、付属で付いて来た個体から移植しました。トップカバーの色入れ塗料が劣化をしていたのでやり直しと凹みの修正をしてあります。

2回巻上げになるとのことでしたが、フィルムを入れて負荷を掛けた状態で100回以上シャッターを切っても再現をしません。2回巻上げの原因は、チャージギヤとギヤ軸の摩耗ですけど、軽微なうちは5~7回程度に1回ぐらい発生し、悪化すると毎回巻上げが足りない状態になります。少しずつ巻き上げが不足していくので発生には規則性があります。

FTは巻き上げレバーの開度が大きいため、ツリカンにレバーの動きが制約されて結果的に巻き上げが不足するということもあります。

 

あれ、接眼枠はこんなに割れていたかなぁ。現役活躍中というところでしょうか。

 

42mmですが、ピントリングにガタが多く発生しています。ヘリコイドグリスの抜けもありますが・・

 

直進ヘリコイドガイドと鏡胴のスライド部分の潤滑が切れて使用されていると摩耗が進んでしまい、結果的にピントリングの回転を戻そうとすると「コクッ」っとガタを感じます。摩耗と言っても僅かなのですが、ピントリングの回転運動に変換すると大きく感じるわけです。

ヘリコイドガイドとグリスでの調整をしてあります。中玉の周辺には持病のクモリが出始めています。また頑張って活躍してください。

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量産しているのかなPEN-FT(B)その2の巻

2017年11月18日 13時34分44秒 | ブログ

あ~ぁ、ストレスが解消しない間にその2になりそうです。PEN-FT(B) #3298XX ですが、この個体も整備済票付きで通販で購入されたそうです。貼り直されているシボ革の状態を見ると大体分かるのですが、色々ありそうな予感がします。

 

シボ革は前回の個体と同じで両面テープ貼りになっていますがトップカバー際が何故かカットされた形跡があります。なんで??

 

こちらもアクセサリーシューのゴムの影響で白が黄ばんでいます。例によってこの程度にしか写りませんが。。

 

トップカバーを開けると・・なんか怪しい雰囲気ですよ。どうもこの個体の露出計ユニットは基板別体タイプのようですが、この配線は何でしょう?

 

あらら、Cdsが汎用のものに置き換えられており、ハーフミラーも例によって汎用をカットして接着されています。

 

汎用のCdsを取り付けるのには、基板別体タイプのハウジングの方が都合が良いのは分かりますが、そもそも基板別体タイプをオリジナルで装備した個体は、生産の最後期のみで、その他はSSでの露出計不良によるユニット交換を受けている場合だと思います。とすると、Cdsを交換しなければならないような劣化は殆ど無いはずですが・・

ここに半固定抵抗が隠れていました。オリジナルの新品部品が無い現状で、このような修理方法も一つの選択肢であるのは理解しますが、私は電気的な知識がありませんし、基本的にはオリジナルにこだわりたいと思っています。

 

ん?。32万台の個体で、この部分の留めネジがスリ割りネジとは考えられませんが・・

 

あちこち接着剤でドロドロです。

 

 

まず、接着剤と汚れを完全に清掃してあります。

 

 

前板関係も分解を受けていまして、リターンミラーのピント調整に苦労した形跡があります。そんなことでスクリーンにもキズがついてしまったようです。

 

ハーフミラーを貼られていたハウジングの接着剤を丁寧に落としていきます。このような個体の修復作業には、未分解の個体の数倍の工数が掛かるのです。

 

ブレーキ軸と地板にはかなりのガタがあります。

 

 

この個体もチャージギヤ軸の摩耗があります。軸の右側が摩耗しているのが分かるでしょうか?

 

前板側を見ていますが、すべて分解をされていますね。いっそ、そのまま手をつけないでいてくれた方が良かったです。遮光幕がスクリーン抑えの内側に入っていません。

 

マエカバーの先端が切れています。貼り直されたということ。

 

 

はぁ、リターンミラーも良くなかったですね。今回は再使用で・・

 

 

最初から組み直します。前板は洗浄します。

 

 

フレネル・スクリーンは残念ながらキズだけではなく、接着剤が付着しています。しかし、溶剤では拭けないのです。この個体のように後期型はスクリーンは四角ですが、それ以前は上下に二か所づつの突起があり位置決めを確実にしています。まぁ、無くても良いとの判断でコストダウンされたのでしょう。

スクリーン抑えがクシャクシャに変形しています? 修正をして使います。

 

 

ミラーユニットを超音波洗浄をして注油します

 

 

本体と前板側が完成しました。

 

 

接眼プリズムの墨塗りが剥離したままです。モルトが悪さをして塗料を侵しているので、古いモルトの除去には注意が必要です。もう遅いみたいですけど・・再塗装をしてからモルトを貼ります。

 

露出計ユニットは同じ30万台のストックから選びました。ハーフミラーは新品と交換です。尚、露出計ユニットの良品は貴重で、当方にもストックが多くありません。

 

バネカケは180°取付角度が間違っていましたので正規の位置で組んであります。シンクロ接片を留めるネジが規格外⊕でしたのでオリジナルに変えてあります。白のリード線は再半田付けの時に短くされたようで、正規の配線をすると長さが足りないので新製してあります。

調整部のメクラネジも変えられています。オリジナルは⊖ネジです。という具合で、不具合の修理と言うよりは、オリジナルに戻す作業の方がはるかに多いのがお判りいただけるでしょうか?

 

 1台に何日掛けているんだ。と思われるでしょうね。私も早く完成させたいのですが、次から次と修正ポイントが出て来るのです。オリジナルへの修復は手間が掛かるということ。で、トップ面がヨレヨレで凹みを内側から乱暴に叩き出して盛り上がっていますので修正をしておきます。

オーナーさんはシボ革はそのままと言われますが、左端の寸法も足りないので、このまま使うわけにはいかないのです。で、左のものを使います。

 

右側のシボ革の先端部が欠落していましたので、継ぎ足してあります。

 

 

本体側はセルフタイマー不調を修復してあります。トップカバーは文字の色入れをやり直してあります。

 

 

やっと終わりましたよ。オリジナルを崩されると修復には多くの工数が掛かるということ。

 

2台共同じオーナーさんです。ブラック2台とは豪華ですね。

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量産しているのかなPEN-FT(B)の巻

2017年11月15日 21時39分39秒 | ブログ

これ最近良く見ると思わない? 汎用のハーフミラーをカットして使っている個体。オーナーさんによると通販でO/H済みとして購入されたそうです。#2439XXと中期頃の個体ですが、外観はそこそこきれいですね。(画像撮り忘れ)上物には手が入っていますが、内部のシャッターユニットなどはそのままに見えます。

スプールバネが飛び出しています。これは故意にバネを伸ばした可能性があります。

 

 

上が取り外したバネで下がうちのオリジナルバネ。うちのも純正よりは自由長は長めに作ってあるのですが、それより長くなっていますね。まぁ、工場でも、数種類のバネを用意して、スリップ率を見ながら調整していた形跡はありますが、流石に、こんなに伸ばしたら端面の平面性がなくなって飛び出してしまいますよ。今回は下のバネを使います。

セルフタイマーが不調のため整備しました。レバーがお辞儀をしているので調整をしようと・・あらスリ割りの片側が無くなっていますよ。ネジ径に比べて頭の大きさが大きいスペシャルネジですので、強く締めると破損してしまうのです。

 

良品のネジに交換します。

 

 

あっ、忘れてた。チャージギヤに摩耗がありますが、比較的軽度です。

 

 

その他飛ばして組立完成。ハーフミラー、スプールバネ、タイマーネジを交換しています。

 

これでひと段落と思いましたら・・シンクロ接片の先端樹脂部のカシメが外れています。自然に外れるケースもありますが、トップカバーを締める時にシンクロソケットのMX位置を合わせずに無理に締めると壊れます。

 

接片を交換するためネジを緩めると・・ネジが固着して折れました。この部分は工場でも瞬間系の接着剤を使っていますが、リード線がやり直されているので、半田付け目的で分離し、固定に瞬間接着剤を使ったものかもしれません。

 

まったく世話の焼ける個体です。折れて残ったネジは完全に固着してダイカスト部と一体になっていますので、新しくタップを切ってねじを留めます。

 

接片一式を交換しています。その他、露出計があり得ない抵抗値に調整されていたり、ファインダーのピント調整をするイモネジのスリ割りの片側が壊されていたりで、いらいらし通しの個体です。

 

オーナーさんから色入れの白の黄ばみを言われていたのを思い出しました。実際はもっと黄ばんでいますが、このデジカメでは補正して写ります。色入れをやり直しておきますが、計時劣化はあるわけではから真っ白には入れませんよ。

 

ほとほと、人様のいじったカメラは、その意図が分からないのでやりにくいものです。つぎも似たような個体の予想です・・

 

 あっ、レンズを忘れていました。40mm f1.4ですけどF用ですからカビやヘリコイドグリスの劣化はありますね。

 

ヘリコイドグリスが流化して流れ出しています。これが絞り羽根に回るのです。グリスの入れ替えをします。

 

カビもきれいになりました。レンズのキズも少なく貴重な40mmです。では、これで完成です。

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