今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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今年もお世話になりましたの巻

2018年12月29日 21時56分25秒 | ブログ

懐中時計はご希望の方のお手元に届いたと思います。不定期にストックしている腕時計をお譲りするご案内を致しますので、チェックしておいてくださいね。

 

今日は朝から定期健診に行って来ました。流石に今日は患者さんの数は少なめでしたね。まぁ、取りあえずは安心して新年を迎えられそうです。で、帰宅して作業を始めようかと思ったらお茶タイムですよ。まぁ、世間様は御用納めも終わったので、ゆっくり作業をして行きます。

このPEN-FTは珍しいリターンミラーにクラックが入ってしまいましたね。実はこれが厄介なのです。FTのリターンミラー剥離は持病ですが、剥がれたものを貼り直すのは大して問題はありません。この個体のように、剥がそうとしても剥がれないミラーをミラーホルダーにダメージを与えずに取り除くことは非常に難しいのです。これから先、正月休みの期間中の更新は気が向いた時に不定期にするかも知れません。

みなさんが毎日クリックして頂くことで、お陰様でgooブログ285万件のうち常時1000番代のアクセス順位を記録させて頂いています。今年も一年お付き合いを頂きましてありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。では、みなさん良いお年をお迎えください。

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TAVANNES 懐中時計欲しい人いる?の巻

2018年12月26日 20時43分28秒 | ブログ

今朝の関東地方は冷え込んで氷点下だったようです。日中は日差しで暖かくなったので、年の暮れですから床屋さんに行って来ました。若い職人さんがバイク乗りで話が盛り上がってしまいました。やっぱりバイク乗りたいな。

で、タバンの懐中時計です。ニッケルのオープンケース入りで、外径はセイコーの鉄道時計よりも少し小ぶりで約41mmほどのポケットに入れておくのにちょうど良い大きさです。文字盤はちゃんとホーロー製で、針はブルースチールとお約束です。保管中に不注意でガラスの風防を割ってしまいましたので、ぴったりのサイズの新品を用意しました。懐中時計が欲しい方にお安くお譲りをします。

機械もあまり分解されていないようできれいですね。オーバーホールをして行きます。

 

 

腕時計から懐中時計になるとサイズが大きいので目に楽だわぁ・・すべて分解洗浄しました。

 

では、リューズ周りから注油をして組み立てます。

 

 

輪列を置いたところ。

 

 

受ケの位置決めダボがすごく固いので、ホゾがホゾ穴に完全に入っているか注意が必要です。

 

何の問題も無いので文字盤と針を取り付けました。

 

 

カメラのレンズもそうなんですけど、レンズに付着した指紋などが原因でレンズ自体が曇ったり浸食されたりしますね。ガラスは個体ではなく液体だ。とも聞いたことがありますが、原子が金属のように規則正しく並んでいない物質とか、まぁ、ガラスというものは不思議なものといつも作業で感じていますが、時計の風防ガラスも同じなんですね。大正から昭和初期のデッドストックでは、メーカーや寸法を表すラベルがガラスの中央に貼ってありまして、現在入手が出来るものの多くはラベルの糊が原因で腐食しているのですね。この風防ガラスも同じですので、ガラスを研磨してから使います。

ニッケルケースは年代を考慮すれば程度は良好だと思います。裏蓋の使用による小キズは仕方ありません。ちゃんと犬印のケースです。

 

機械をケーシングしました。

 

 

右がセイコーの鉄道時計ですね。運転席の計器盤にセットしているやつ。直径は50mmあります。流石にこれをポケットウォッチとして使うのはガサばりますね。その意味では左のタバンは41.5mmと小ぶりで、初めて懐中時計を持って見たいという方には良いのではないでしょうかね。

昨日、組立て、まだ調整をしていませんが、安定した精度を示していて調整の必要が無いくらいです。タバンは大正昭和の頃にウォルサムと並んで人気がありスイスから輸入されていた時計です。ご希望の方がいらっしゃればお譲りを致します。

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SEIKO ジャイロマーベルの巻

2018年12月24日 19時43分07秒 | ブログ

みなさん、メリークリスマス。と言っても何も楽しいことも無いけど・・ケーキを食べ終わってから写真を撮っていないことに気がつきました。この焼き物はドライバー立てに使おうかな?

 

今年も残り少ないですが、私は暮に精密検査が入っているので気が重いです。では、時計を続けちゃいます。セイコーのジャイロマーベルです。私もSSケースの良品を探していたのですが、中々ないですね。当時は金ケースの方が圧倒的に多かった時代ですから。ジャイロマーベルは1959年の発売だそうで、この個体は裏蓋打刻から1960年2月の製造のようです。極初期だけ、文字盤12時に独楽のマークが入っているのですが、この個体はすでに普通のインデックスになっています。で、正常に動きませんね。ヨタヨタと動く程度です。これは油切れだけではないと思います。

セイコーの自動巻腕時計はスイス製のコピーの11A(インジケーター付き)が初代ですが、高価のため一般には普及しなかったようで、マーベル(ローレル)の機械にマジックレバー式の自動巻機構を載せたジャイロマーベルが2代目として発売されました。二階建て構造ですから裏蓋が盛り上がって厚いです。「GM」と打刻されているのはジャイロマーベルの機種略号。

キャリバー名は290.回転錘にはベアリングを採用されましたので、耐久性は向上した? ようです。

 

回転錘を外したところ。ベアリングが見えますね。

 

 

針を外して文字盤を取ります。

 

 

すべて洗浄しました。では組立です。

 

 

まずはリューズを取付けないと輪列を制御できませんので・・

 

 

香箱(ゼンマイ)を洗浄組み込みをして注油をします。

 

 

輪列を置いて、ここまでは良かったのです。

 

 

左がジャイロマーベル用、右がマーベル用。受けを甘締めで取り付けるとホゾ穴から外れてしまいます。摩耗が進んでいるようです。右のマーベル用と比べてみるとマーベル用の方が全長が僅かに長いです。試しに組んでみましたが、やはりアガキが取れません。

二階建て構造とするため、輪列の受けを薄くしてありますが、それだけではなく、ガンギ車などの寸法も詰めてあるようです。

 

テンプはダイヤショックが組み込まれています。すべて洗浄をして石に注油しますが、ルビーなのに細かな荒れがあります。

 

天真とアンクルへの注油で、やっと大きな振りで動きだしました。

 

 

 組んだままの未調整データ。まともになったね。かなり進み加減ですけど、これは調子が悪くて遅れ気味の時計を無理して進み方向に調整使用していたということ。じつは、裏蓋記載から前回のO/Hはそんなに昔じゃないんだよね。

 

マジックレバー式の元祖ですね。マジックレバーの形状が後期のものと違います。ベアリングは別部品の組立式です。後には地板にカシメとなって、少しでも厚みを薄くするための改良でしょう。しかし、別部品の方が、ベアリングが摩耗をした場合、ベアリングのみ交換が可能なんですね。

自動巻き機構を取付けて回転錘を付けました。摩耗は少なく作動は良好です。

 

 

SSケースは珍しいです。軽く研磨をしてあります。あら、0時下に小さく独楽が入ってましたね。歩度調整をして裏蓋を閉めます。非防水の頃の雰囲気で自動巻きというのが良いですね。過渡期的なモデルです。この機械が以後のセイコー自動巻きの基本となって行きます。

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SEIKO LMスペシャルの巻

2018年12月22日 23時11分19秒 | ブログ

しばらく時計をやっていませんでしたので作業待ちが溜まってしまいました。私所有の時計も2つ仕上げたいのですが時間が取れませんね。セイコーLMスペシャル5206-6130です。通好みのモデルですが、オーバーホール時期不明とのことで作業のご依頼です。風防ガラスに欠けがあるのでヨシダの風防ガラスが付いて来ましたが、インナーリングが金色ですから金ケース用ですね。組んで良いのかなぁ?

12時付近が欠けています。

 

 

データ的には悪くはありませんが振り角が小さいようです。

 

 

きれいな機械ですね。ということは過去に分解は少ないということでしょう。

 

5206Aは諏訪の機械に慣れていると組みにくいですが、カッチリとして精度の出る優秀な機械です。

 

では二番車ホゾ穴にS-4グリスを塗布して組立始めます。

 

 

ガンギ車を組んで秒針規正装置とバネを取り付けます。

 

 

輪列を置いて受ケを取付けます。

 

 

天真の摩耗は少ない方だと思います。アンクル石に注油をしないとスムーズに動きません。

 

海外の高級機の場合、カレンダーの送りが瞬間送りを採用しているモデルが多いですが、この機械も瞬間送りです。しかし、それによって部品点数は増えてメカも精密複雑化しています。諏訪の機械は高級機でも、だらだら切り替えが多いですけとね。

注油はマニュアル通りに実施しないと作動の不具合が出ることがあり間ます。

 

文字盤はきれいな方ですが、6時のLM部分にシミのようなものが発生しています。

 

風防ガラスは金ケース用をそのまま使用してくださいとのことです。ケースは傷が多く、研磨のご依頼はありませんが、ベゼルは軽く磨いておきます。

 

ケーシングをしてベアリングに注油をした回転錘を取り付けます。

 

 

ワンポイントで金が入るデザインもありますのでね。ガラスがダイヤカットで同径の風防ガラスもありますから、リングが銀色仕様の製品を見つけられても良いと思います。洗浄をしたメッシュベルトを取付けて完成。

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YASHICA Rapideのジャンクの巻

2018年12月20日 21時00分37秒 | ブログ

お願いをしていましたミノルタ・レポSのトップカバーは、大阪のご常連さんから供給のお申し出がありまして調達が出来そうです。ありがとうございました。

で、「チェックメイトキング2、こちらホワイトロック」コンバットの無線機みたいなカメラはヤシカ・ラピード。発売は1961年2月で価格は¥11,800だったようです。https://www.youtube.com/watch?v=0Z9eC-MHgAw

ハーフカメラですが、全金属製で重いですね。縦型とすることでハーフ判が横フォーマットになるわけです。キヤノンダイヤル35と同じようなアイディアですが、あちらは1963年11月の発売です。エンブレムバッチまで付けて、かなりの意欲作ですが、あまり売れなかったようですね。なんか分かる気がする・・

初めての人は必ず疑問に思う「巻き上げはどうするの?」実はストラップを引けば巻き上げが完了するのです。ということは、ストラップを持ってプラプラ歩いていると巻上げられてしまうということです。

 

内部は普通のレイアウトですね。スプロケットが無いので、スプールで引っ張るため、枚数が進んで行くとコマ間が開いてしまうという現象があるようです。

 

本当は、この時点で作業を中止しようかと思いました。レンズのヘリコイドネジが完全に固着していて回りません。捻じると全体が外れてしまいました。1961年当時でもグリスの質が悪かったですかね? 戦後すぐの蛇腹カメラには多い不具合ですけどね。

この時点で2時間ほど経過しています。「回らない~」とにかく銜えるところがなく、傷を付けるわけにも行きません。25mmのリングスパナで保持してダイヤル側を秘密の特殊工具で力いっぱい回すと僅かに動きました。手に固形となったグリスが落ちて来ました。「しめた」と思い逆に回すと、今度は完全に固着してしまいました。「あ~止めたい」

ここで止めると工賃を頂けないので、また2時間が経過しました。へへへ、意地で回してやったい。

 

一難去ってまた一難。あ~、後玉が完全に曇ってる・・止めようかな? しかし、折角レンズのヘリコイドを緩めたしなぁ。

 

後玉を取り出しました。ダメだこりゃ。

 

 

現存数の少ない貴重なカメラなので頑張って研磨しておきました。これで3時間。

 

 

シャッターダイヤルを取り外すとCOPAL-SVが現れます。

 

 

ハーフカメラ用のシャッターユニットが存在しない頃ですから仕方がないですが、完全にオーバースペックのユニットですね。1/500もあるし・・清掃注油で問題ありません。

 

特徴的なファインダーの対物レンズは四隅に金コートが施されていて、デザイン的にも印象が強いです。金コートは拭くと剥離をする危険性が高いので触らないこと。

 

やはり無線機の感度メーターのように見えますね。LV数値の露出計。受光部が先端にあって、撮影の前に受光部を対象物に向けてLV値を読み取ります。

 

普通はファインダーカバーなどは真鍮のプレス製で充分と思いますが、ダイカスト製にハンマートーン塗装を施し、窓縁はダイヤカット加工のうえシリアル№彫刻色入れと非常に手の込んだ作りです。

 

問題のレンズです。分解は知恵の輪のようでした。劣化したヘリコイドグリスはセメント粉のようになっていて溶剤にも溶けません。どんな成分のグリスが使われたのでしょうね。現存の個体はすべて同様になっていると思います。

 

すべて清掃をして組み立てます。

 

 

Pの位置にはクリックのための極小のスチールボール(スプリング)が仕込まれています。分解時には無くさないこと。

 

本体に取付けて無限の確認をしておきます。Cは0.8mのクローズアップ、Pは2mのポートレートです。

 

縦の画像が正式側になるんでしょうね。ロボット三等兵にも似てるな。子供の頃、貸本屋さんで良く借りて読んでいました。

 

宇宙飛行士のヘルメットシールドのように見えますね。枠は磨き出してあります。

 

 

設計にハーフカメラは小型軽量という発想はないですね。本体は板厚の厚い真鍮プレスのハンマートーン仕上げ。質量は540gと重いです。64枚撮れるというのがセールスポイントですかね。当時の人気グループ、リリオ・リズム、エアーズを使ったコマーシャルは、ヤシカとしても力を入れていたようです。この時代はヤシカは実業団のバレーボールチームを持っていて日立武蔵や日紡貝塚などとの試合をテレビで見た記憶があります。東京オリンピックの時は各チーム選抜のナショナルチームではなく日紡貝塚メンバー中心のチームで出場したと思います。まぁ、コレクション的には面白いカメラだと思います。

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