今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

グランドセイコー 6146-8020 の不動を治すの巻

2015年03月31日 20時01分31秒 | インポート

見にくい画像ですみませんね。デジカメ代えないと・・変わった座布団型のケースはSEIKO グランドセイコー6146-8020ですね。憧れのGS 国産初の自動巻10振動(36.000/時)を搭載するモデルで、1968年からの製造(私のS800Mと同じ)で、この個体は1969-7月製です。基礎キャリバーは6106Aですが、10振動化に伴いガンギ車、四番車などが変更された別機械です。手巻きがあるのが便利ですね。で、譲られた個体とのことで、振れば少し動いて停止という状態ですから、致命的な部分はないのではと思います。しかし、風防ガラスの劣化やベゼルの傷が目立って、過去に分解されていますね。

裏蓋のメダリオンはきれいですが、オリジナルでしょうか? (だと思います)裏蓋は過去に工具を滑らせた痕があります。ようするに下手っぴいが分解したということ。

 

竜頭の上部にベゼルを開けようと苦労をした形跡があります。

 

 

しかし、このケースはベゼルのスリット(無いし)に工具を差し込んで開けるのではなく、裏から押し出すのでした。ハハハッ。過去に分解をされてパッキンが1/3無くなっています。

 

風防ガラスは純正は目が飛び出すほど高価なので、社外を手配してありますが、まだ到着しません。そこで、ケースを軽く研磨しておきます。

 

各部を点検しながら分解をして行きます。あら、アンクル受の留めネジの片方がありませんよ。

 

すべて超音波洗浄をした後組み立てていきます。この機械は香箱は開けてはいけないことになっています。ホゾ部分に注油です。

 

この真鍮製の腕がハック機能でテンプのテンワを止めます。

 

 

日の裏側は特に問題はありません。最後の曜車を取り付けます。

 

 

マジックレバー式の自動巻機構を取付けて完成。10振動ですからテンワは小径となっており、ゼンマイを巻いても最初の駆動はアシストが必要です。

 

水気が入っていたようで、針は腐食気味でしたので、軽く磨いておきます。明日、風防ガラスが届く予定です。

 

その前に。関東地方は急に気温が上がって桜が一気に満開となりましたね。仕事で国立市(くにたち)の桜通りを通りましたので、毎年恒例の百恵ちゃんち前の桜です。デジカメを持っていなかったので、古いガラケーの画像ですが、今のスマホならデジカメ顔負けの写真が撮れるのでしょうね。

で、社外の風防ガラスが到着しました。メッキなのか色が純正に比べてニッケルメッキのような金系の色です。ケースには軽圧入ではなく、パッキン(Oリング)だけで組立てる構造でした。純正のパッキンは入手出来ませんので、汎用で代用します。

機械は問題があって、秒針を止める規正レバーが過去の分解で曲げられており、テンワを正確にコントロールできない状態が判明して、再度分解で修正しました。また、自動巻きのマジックレバーにも不具合があって交換しています。歩度は測定不能な滅茶苦茶な状態でした。調整をして行きます。

仮のSSベルトを装着しています。ラグ部分のデザインが特殊のため、ベルト選びが難しいところですが、オーナーさんはオリジナルを探したいとのことです。

 

10振動ですから、秒針は滑らかに回っていて良い感じです。但し、チッチッチッと忙しない音は、私にはちょっと早すぎるかなぁ? マーベルの5振動が人間の生理にはホッとする気がします。負け惜しみかな?

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ちょっと怪しいPEN-EES2の巻

2015年03月28日 20時06分03秒 | ブログ

今日も新宿の病院まで出掛けていました。何とか大丈夫でした。新宿は外国人観光客で一杯です。並んでうどん食べて来ました。これから桜目当てで、もっと増えるでしょうね。で、2つ目の時計は部品が揃わないので後回し。このPEN-EES2は先日も瑞古洞にもご一緒したMazKenさんのところのグループの方がオーナーさんです。EE系はあまり使われずにきれいな個体がありますね。これもその1台ですが、画像を見て「んっ? 何か変しい」と思った方はするどい。

テスト撮影では写らなかった由。シャッターが固着していますからね。で、トップカバーを開けてみると・・あら、ストロボのターミナルが故意に配線されていませんね。

 

変なところは巻き戻しダイヤルが飛び出しているところです。(↑の画像をもう一度見る)原因は、巻き戻し軸のホルダーが天地逆さまにセットされているから。これでは、軸が回転しないのでは?

 

で、モルトをやり直していない個体は内部が汚らしく汚れていますね。

 

画像より実際の方がカビも発生して汚れています。ばっちいニダ。

 

 

結局のところ修理屋は殆ど掃除屋なんですね。この頃のモルトの接着剤は強力ですのでアルコールでは落せません。完全に取り除かないと新しいモルトがきれいに貼れないのです。で、こんな感じ。また手が荒れました。

モルトの貼り替えスプロケット軸とスプール軸を組み立てたところ。次はシャッターです。

 

絞りは完全に固着しており、開いても戻らない状態。

 

 

レンズも各面に盛大なカビが発生してます。すべてクリーニング。

 

その他、シャッター羽根関係は問題なく組み上げています。シャッターユニットを仕上げた本体に組み込みました。順調とこの時は思ったのでした。

 

どうも、赤マークの制御が変です。原因を探っていくと・・針オサエが上の真鍮受けに衝突して赤マークが上昇できない。(時がある)その時とは針オサオにガタが多く、カメラを上に向けた時に受けと衝突するようです。後ろのEE2と比較すると針オサエと受けの距離が少なすぎるのが原因です。また、レリーズ棒(後ろ)が後期のEES-2では板材に変更されており、使用過程でレリーズの圧力により変形(曲がる)したことによって、針オサエが受けに接近するように作用するためです。

針の受けには接触で出来た円弧状のキズがありますね。ピンセットの部分が平板なので曲がってしまうのです。コストダウンのための変更と思いますが、元々のレリーズ棒(パイプ)なら曲がることはないので、このような不具合も発生しなかったのです。

曲がりを調整をして、レリーズボタンを押した状態で不具合が出ないようにして解決しています。内部もきれいに仕上げてあります。特に圧板の腐食は研磨清掃しました。

 

比較的簡単に作業が終わるかと思ったのですが、そうは問屋が卸さない。EE系はベースの相場が崩壊していますので、なるべくお安くオーバーホールをして差し上げたいのですが、かといって、作業自体の工数は変わりませんので、そこに悩みがあります。費用を掛けてEE系を修理に出してくださるファンの方はえらいです。PEN-FTに代わる携帯カメラにしたいとのことですので活躍を願っております。

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里帰りのSEIKO 5ACTUS を治すの巻

2015年03月24日 20時20分00秒 | ブログ

ちょっと腕時計を2つほどやります。この時計は、以前に仕上げて「茶暮れ」さんのところに行ったセイコー5アクタス6106-8660ですよ。不注意で落下をさせてしまい動かなくなってしまったようです。テンプを見ると天真は折れていないようですが、ゼンマイのトルクが来ていないようです。輪列のどこかに問題があるのか・・

すべて分解をして点検しましたが、輪列のホゾには問題は無いようです。そこで、最初からオーバーホールで組んでいきます。香箱の歯車はご覧のような清掃します。

 

アンクルの動きを見ると、力強く弾く時と、そうでない時があるような・・

 

原因が判明しました。本来カシメられているアンクルの受け石が抜けていました。落下の衝撃で抜けたものでしょう。慎重にセットしておきます。

 

きれいに洗浄をしてお出ししたはずですが、裏蓋ネジ部やベルトも汚れが目立ちますね。実用で使っていただいている証拠ですのでうれしいですね。

 

機械は文字盤と針を取付けてあります。自動巻き機構はまだ付けません。ケースとベルトを洗浄しておきました。

 

ケーシングをして自動巻き機構と回転錘を取り付けます。裏蓋のパッキンは交換します。

 

比較的に姿勢差が少ない良い機械です。

 

 

鮮やかなブルーの文字盤はこの頃の特徴できれいですね。また現役復帰です。こんどは落とさないようにね。

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何台持っているのPEN-Wの巻

2015年03月21日 20時20分20秒 | ブログ

「遅れて来たPENマニア」さんから、またまた新しいPEN-W #1065XXが来ていますよ。いったい何台のPEN-Wをお持ちなのでしょう? (4台?) 一時期よりも相場は下がったとはいえ、まるでPEN-Wの保護がお役目の方のようです。まぁ、それによって程度の良い個体が残ることになりますけどね。

その前にと。。PENがお好きの方はローライ35もお好きの方も多いと思いますけど、実は私も嫌いではありませんが、外観はライカと同様な作りに見えますが、特にC35などはすべてプラスチック製のようなカメラですので、機械としてはがっかりしたりします。あまり状態はよろしくない個体ですが、巻上げが正常に出来ないようです。

見事にプラスチック部品のみですね。古くなると、プラ部品の材質が劣化をして、クラックが入ってしまう故障も多いです。まぁ、組み直していきます。

 

ファインダーブロックもプラ製です。清掃しにくい接眼レンズも清掃をしておきます。

 

シボ革も剥がれ気味ですから補修接着をしておきます。

 

 

次もライカのグッタペルカの補修。接着剤が粉状に風化をして、内側で剥がれが進行してぶかぶかに浮き上がってしまうやつですね。すでに表面にクラックが入っていて、いつ剥離をしても不思議はない状態。

補修は普通のビニール製シボ革のように剥がして接着剤を塗布することが出来ませんので、それぞれリペアマンのやり方があると思います。まぁ、こんなところで当分大丈夫でしょう。クラックも分かりませんね。

やっとPEN-W。その前に目が辛くなって来ましたので、お客様の歯医者さんから送って頂いたサプリメントを飲みます。これ、一般には入手は難しいようですね。いつもご心配を頂きましてありがとうございます。

で、分解歴ありですが、特に問題は無い個体のようですから書くことも無さそうですが、駒数ギヤの組立用孔が4つも開いていますね。後日加工をしたものかと観察しましたが、工場での加工です。これは始めて見ました。果たして何の目的なのか想像が付きません。2つあれば充分だからです。(三光ペンの頃は孔はありません)

底部のリベットの1か所がへこんでいますね。なるべく修正をしておきます。

 

オリジナルのままのモルトは母材の真鍮まで腐食させていますね。完全に取り去っておきます。

 

あら、こんどは「星野」さんですかぁ。同じところに同じシールって。企業で複数使用していたのでしょうか? しかし、テプラなどが発売された頃には、すでに現役ではなかったと思いますけど・・

 

シャッターは過去に分解を受けていました。特には問題はありませんが、シャッター羽根に赤錆が発生していました。

 

洗浄組立をした本体にシャッターユニットを組み込んでいます。

 

 

レンズは一連の中で一番劣化しているかな? バルサム黄変が分かります。

 

何はともあれ、お一人で多数のPEN-Wを保護しているみたいになって来ましたね。何ともうらやましいお話ではあります。

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ご遺品で頂いた初期型PEN-FTの巻

2015年03月17日 11時30分49秒 | ブログ

ぐしゅん! いえね、昨日から突然鼻がムズムズして来て、鼻水が出るんですね。以前からアレルギー性鼻炎の持病はあって治療はしているのですが、花粉症のような? 症状は初めてなんです。今年の春も寒い日が続いていましたが、気がつけば、まもなく桜が咲く時分ですよね。

で、本題です。お知り合いから遺品として頂いたカメラだそうです。PEN-FT #1262XXと初期型(1967-2製)ですが、外観は悪くはない個体です。カメラボックス保管ということで湿気はあったようですよ。電池室周辺の腐食が激しく、グリスも完全にカラカラの状態です。

過去の修理歴ありとのことでしたが、基本的なところは何も手を付けられていません。接眼プリズム周辺などのモルトは交換されていますので、限定の修理でしょう。しかし、当時、壮年の方が購入された個体とすれば、ご遺品として出て来る個体も多いのでしょう。私も仕事柄100台以上のFTは所有していると思いますが、この先どうしようと思うこともありますね。正直なところ・・

電池の液漏れがあったのでしょうね。この周辺が激しく劣化しています。電池室の片方のネジは規格外(頭大)で、絶縁用のビニールが挟んであります。修理はこの部分でしょうね。

 

湿気の管理が出来ていなかった個体は、裏蓋のヒンジピンが錆びているものが多いです。錆で太ってしまい、簡単には抜けなくなります。まぁ、ここを抜いて修理をする人はあまりいないでしょうけどね。

初期の生産に不慣れな頃は、「剥がれないように」「抜けないように」と接着剤を必要以上に多く使用している傾向にありますから、すべて接着剤を落して洗浄することが大変です。まぁ、基本ですから手を抜かずにゴシゴシします。

残念ながら、かなり腐食が進んでいます。電池の液漏れガスが上に上がって来て腐食させたものでしょう。

 

ちょうどピントが外れていてすみませんが、電池室横のスローガバナーも腐食が進んでいます。中央奥の青白い緑青を噴いたような部分がアンクルで、スローガバナーでは一番大切なところです。これは動きませんよ。

本来は交換のケースですが、何とか動かしています。前板関係を仕上げて組立。

 

巻上げのゴリツキも改善はしていますが、初期型はまた独特なフィーリングがあるのです。擦れるようにズーっと巻き上がってコクッという感じ。しかし、悪い感触ではありません。スローも1秒は何とか切れていますが、信頼性は不明です。

 今日は外出していましたので作業は進んでいません。昨日の残り画像。露出計ユニットを清掃しておきます。初期型としては湿気による素子の外観劣化は少ない方です。まぁ、作動しているだけでも希少ですが・・。初期はCds素子を抑える板バネの形状が異なっています。

ハーフミラーは新品と交換をして露出計ユニットとシャッターダイヤルを連動させます。初期の頃のメーター線は可動させる必要から極細の芯線に繊維を巻きつけたものを使用しています。そのため、トップカバーの内側には絶縁用のニスが塗布されています。現状では、この繊維が解れてきびしいところに来ています。この線はすぐに柔軟性のある細いビニール被覆線に代わっていて、カバー内のニス塗りも省略されています。調整抵抗は半固定抵抗で、状態は悪くはありませんね。BOX保管が幸いしたのでしょう。

良々観察をすると。。アイビース枠は一度破損(左)していますね。器用に接着補修をしてありました。元のオーナーさんの愛情が感じられる部分です。しかし、強度はありませんので、アクセサリーシューの取付けはお止めください。

特にセルフタイマーやレバーの交換は受けていないと思いますが、レバーがお辞儀をしていますね。

 

これで調整一杯ですがまだ水平になっていません。製造初期の頃は、各部品やユニットの寸法精度や公差管理が甘く、組み合わせのセットでは調整が取れないものがあります。仕方なく良品として通したものか? 良品の範囲だったのか? 知る由もありませんけどね。

こちらも良く見るとPEN-FTの凸角に向かって凹んでいるように見えます。後天的に凹ましたものか? 私には、プレスの絞りじわのように見えます。

 

軽く修正をしておきました。まぁ、初期型の突っ込みどころ満載という個体です。しかし、機械の疲労は少なく、大切に扱われていたであろうことは感じられます。次の世代に受け継がれた幸運な個体ということが出来ます。

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