今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ローライB35のメンテナンス2題の巻

2021年10月24日 11時20分00秒 | ブログ

最近は同じ機種の整備が続く傾向にありますのでブログへのUPが少なくなる傾向にあります。今回はローライ35の廉価版なのかな、B35を2台メンテナンスをして行きます。セレン露出計のダイヤルが特異なデザインです。内部の部品構成は樹脂部品が多いので、ローライ35のようなずっしりとした重量感はないですね。

レバーアテはローライ35と共通ですので破損しているものが多いです。これは交換します。

 

巻上げ機構はすべて樹脂製です。巻上げレバーはローライ35の3本のネジ留めではなく、3穴に差し込んであるだけ。

 

作業前のチェックでヘリコイドグリスが回転の途中でズルっと抜ける症状がありましたので分解します。しかし、グリスは大量に入っていますねぇ・・

 

レンズの清掃とヘリコイドグリスを交換して組み立てましたが・・

 

 

ズッと感はヘリコイド抜けではなく、レンズ側と完全に固定出来ていないのでした。

 

固定には距離リングも含めてC型のストップリングで締め付けているのですが、原因はネジのタップを切った部分が盛り上がっていて、ねじ込んでも完全に密着しないためでした。そこで、このストップリングはローライ35と共通のため、そちらの部品と交換をして解決しました。ローライ35用のストップリングはネジ穴周辺の盛り上がりなどはなく、正確な加工がされています。

こちらは2台目です。トップカバーの強度が弱いので簡単にへこんでいます。また、カウンター窓の透明樹脂が傷で曇っています。1台目も同様でしたので研磨をしておきました。ローライ35のカウンター窓より材質が柔らかいのかも知れません。

角が大きくへこんでいます。これを修正しておきます。

 

 

巻上げ時点でレバーがロックして作動不良となっていたようです。巻上げ部はすべて樹脂部品で、特に破損は無いですね。ジュラコン材は自己潤滑性がありますので、注油は不要(してはいけない)ですが、古くなると噛み込みのような症状が稀に出て来ます。

フィルムカウンターの作動部分。こちらの固着が多いようです。

 

 

こちらもレンズの清掃とヘリコイドグリスを交換しました。こちらの個体はレンズ側との固定に問題ありませんでした。

 

ft表示でしたのでmにして組みます。

 

 

問題は、露出メーターのダイヤルが固着していて回転しない。原因は・・

 

ははぁ、シャッタースピードのプレートが再接着されていますね。

 

 

内部にあるクリック機構が接着されて動かない状態です。

 

 

曲げないようにプレートを取り外してみると・・後ろ側のリーフスプリングまで接着剤が回っています。

 

慎重に接着剤を除去しました。これでダイヤルが回転できます。しかし、アバウトな修理をする人もいるものです。ft機ではから北米ですかね。

 

B35の操作の慣れて来ると、これはこれで良いかな?と思えて来ます。前面に貼られてい[B35]のプレートはどの個体も文字が消えてしまうのは残念です。せめてエッチングにしてくれれば再現できるのに・・

 

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PEN-FT中期のメンテナンスの巻

2021年10月18日 17時00分00秒 | ブログ

革ケース入りのPEN-FT #1747XX の買い取り機を整備せよとのことです。ケースに入っていたにしては汚れ放題でシボ革が茶色になっていてトップカバーの傷も多いです。道具として使われたのでしょう。ケースはF用で三脚ネジ部をFTに合わせて穴開けされたようです。それによって微妙に穴位置が合わず、アンダーカバーを傷にしています。

38mmが付属していますが、レンズの汚れがあります。このレンズはカメラとセットで出荷されたものではなく、レンズは後期の生産(設計変更後)後年買い足されたものですね。ほぼ普通には動きますが巻上げのゴリツキは大きいです。大人の事情で修理工賃を節約した簡略メンテナンスをする予定でしたが・・

これを見ちゃうとね。内部のギヤ列も古いグリスとホコリでぐちゃぐちゃです。仕方がないので完全分解で洗浄から始めることに変更します。

 

こういう時に限って厄介が起こります。スプールシャフトを留めている3本のネジのうち1本が折れていました。この頃は真鍮ネジが使われていて折れやすいのです。画像はドリルでネジを削り取り、M1.7のタップを立て直したところ。ではスプロケット軸から組み立てて行きます。

シャッターユニットなどは変更前のユニットですが、幸い不具合は無くメンテナンスを終えています。プリズムのコーティングも良好でした。電池室からのリード線は交換してあります。

 

セルフタイマーのリンケージレバーを取付けてタイマーを作動させてみると・・レバーが上昇せずレリーズに追従しません。これはセルフ側のバネの張力劣化とレバーの取付ネジを締め込むと動きが重くなるためです。両方を改善させます。

 

ちゃんと追従してセルフタイマーが作動するようになりました。セルフレバーがお辞儀をしています。

 

調整をしておきます。

 

 

付属の38mmはフィルターリングにアタリがあり変形をしています。

 

 

専用工具で修正をしておきます。

 

 

前群の汚れ。

 

 

後群は曇りがあります。

 

 

レズを装着して作動を確認します。光学系はハーフミラーは交換しました。あとは露出計の調整やピント調整をします。

 

一緒に来たPEN-EEですけど、汚れ具合がPEN-FTと一緒なので同じ所有者さんだったのでしょう。針押えを見ると1/30.1/250の2速タイプですからEENです。露出メーターにカバーが付いているタイプは古いので、セレンが生きているか・・あっ生きてましたね。それでしたら直します。現状はシャッター不動、絞りも不動です。

レンズと絞りユニットを分離します。

 

 

シャッターの不動の原因はシャッター羽根ではなく、ガバナーなどの軸の作動不良です。分解して洗浄します。

 

EE精度を点検して真鍮製のカバー(以後は省略)を取り付けます。

 

 

EEはセレンが生きている個体が少なくなっていますのでラッキーでしたね。PEN-FTは17万台という微妙な時期の個体で、使われているユニットが改良前の仕様なのと、とにかく製造が古いので露出計の精度に不安がありますが、この個体は感度は良好でした。2台共露出計に恵まれましたね。

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ローライ35系の整備日記の巻

2021年10月11日 20時20分00秒 | ブログ

今日の関東地方は気温が上がり夜になっても蒸し暑いです。日中はクロスパイクのリアディレイラーの交換をしていましたが、やぶ蚊に刺されて日焼けしてしまいました。しかし、座りっぱなしのカメラ修理で、自転車の修理は身体を動かせてストレス解消になりますね。今度はブレーキの交換をしたいと思います。で、いつものローライ35系整備なので書くことも無いのですけど間が空きますので・・このカメラは小さくて重いので落下事故が多いと思います。特に角がへこんでいるものは修復はまず出来ません。クローム層は硬いので、叩き出すと割れが発生してしまうのです。

このジャーマニーはトップカバーを外すと接眼枠がポロッと取れました。え~・・

 

 

こういうことです。バラバラですし、そもそもピースが足りません。過去に分解された時に落ちたのでしょう。

 

この個体もトップ面に凹みがあります。この程度でしたら気にならない程度には修復します。また、何故かメーターの樹脂レンズが曇っていて針が見えにくいです。

 

実際にはもっと黄変していて曇りもあります。ローライ35の樹脂レンズは比較的に透明度が良いのですが、中にはこんなのもあるんですね。研磨をして再使用します。

 

この個体も黒い樹脂の「レバーアテ」が破損して、それに代わるものを接着されていたようです。それも剥がれて接着剤のみ残っています。レバーアテが無い状態で使い続けると、画像のように梨地面に傷が付いてしまいます。このような状態で使っている方は早めに修復された方が良いです。当方でお受けします。

ジャーマニーはファインダーがプリズムですが、押さえにバネが使われています。この個体は初期なのか単純な板バネの形ですが、殆どの個体は上面の接眼枠(ガイド)の隙間に差し込まれて、プリズムを片方に押さえつける役目をしています。しかし、それによって、ガイド部分にストレスが掛かって割れてしまうのです。この個体は板バネですけど、やはり割れていますね。

このような単純な割れなら接着で再使用出来ますが・・中華辺りでリプロ部品作ってくれないかなぁ?

 

この個体はレンズを清掃しようとしたものか、内部が分解キズが多いです。このストップリングは普通はメッキ処理ですが黒塗装されています。オリジナルか、後塗装なのか分かりませんが、塗装は雑に見えます。何の意味があるの?

 

こんな細かな修正復元をしながら1台づつ完成させて行きます。

 

 

この個体はジャーマニーですが、裏蓋開閉レバーが変更になった頃の個体です。背面の化粧ネジが規格外のスリ割りネジになっていて、レバーアテは別のものに修理をされています。まぁ色々ありそうです。

 

あぁ、これこれ。ファインダーのプリズム押えが単純な平板バネです。この方が後なのかな? 平板バネのお陰 ?で接眼枠は破損していませんる

 

巻上げの回転をスプール軸に伝えるギヤ軸のカシメ不良で、軸がギヤの回転と供回りをしています。ギヤと軸が固着しているからです。再カシメをして、洗浄グリス塗布をしておきます。また、地板の留めネジが1本無くなっていました。過去に分解歴がある個体ですからね。

シボ革が盛り上がって剥離していました。下部に鋼板のプレートが接着されている部分です。トップカバーを不用意に押し込んだため鋼板が曲がっています。すべて清掃をして鋼板の曲がり修正のうえ接着します。

 

背面の化粧ネジはうちのオリジナル新品ネジと交換しておきます。

 

 

すでに修正をしてしまいましたが、ローライ35は下部にシューが有るため、落下や乱暴な置き方によってシューのレールが容易に曲がってしまいます。

 

ローライ35Sですけど、過去に分解修理を受けています。距離リングを左右に回すと「カタカタッ」と異音がします。これはヘリコイドのアウター側のグリスが切れているためです。インナー側はしっかり重めに入っているのに、アウター側を忘れたのでしょう。シャッターを分解しますので交換します。

分解を受けた個体に多い、スプロケット軸上部の遮光紙の欠落。たぶん落ちたことも気づいていないのでしょう。追加して組みます。

 

圧板の取り付け部分が曲がっています。これは圧板を開いた状態でカメラに力を掛けたためです。修理に神経が行っていたのでしょう。修正をしておきます。

 

ローライ35Sシルバーです。モノの本によれば1978年に発売ヒット記念で限定数生産されたとのこと。シボ革は当時スキーウェアに有ったような銀ギラで派手ですね。「金属カバー部分は銀メッキ」と書かれていますが、普通の梨地クローム仕上げに見えますけど? 前面に月桂樹マークが無いのでヨーロッパ流通機か?

裏蓋のプレート部分は空欄となっていますが、購入者の名前を彫ったプレートが貼られていたのでしょうか? この後も、ゴールド、プラチナなどの特別仕様機が発売されて、収集されているマニアさんもいらっしゃるようですね。この仕様でしたら、シボ革の交換と前面プレートのシルバー塗装で作れると思いますけど・・

元々コレクション的な個体ですので、あまり使われてはいないようです。大きな不具合は無いですからメンテナンス的に作業をして行きます。レリーズのピンが固着しています。レリーズを使うことが無かったのでしょう。この部分はホワイトグリスが塗布されていますが、固着している個体も多いです。

トップカバー裏にシリアル№が入らない頃の個体ですね。レンズ部分#25235XXの記載があります。レバーアテもオリジナルのままで破損していませんので、あまり使われていませんね。巻上げの小ギヤが樹脂ではなく真鍮製となっています。使い込まれた樹脂ギヤが使われている個体はギヤの歯の磨滅(損傷)が見られますので対策されたのかな?

かと言って、過去に分解修理は受けていました。シャッターは開けられています。レンズの清掃をすると絞り機構がバラバラになるので再組立が面倒です。

 

発売は3000台限定ですか? 良く知りません。シボ革と前板でずいぶん印象が変わるものです。この手法でカラー物を作って見ましょうかね? この個体は販売イベントに出品されるそうです。

 

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改良ユニットのPEN-FVの巻

2021年10月05日 21時30分00秒 | ブログ

広島ご在住の方からPEN-FVが来ています。広島と言えばハーフムーンのCANさんのところですね。FVは改良前のユニットが使われている個体が多いので、信頼性に難があったりしますが、この個体は改良(変更)後のユニットが使われている良い頃の個体です。外観もきれいで申し分ありません。

内部もフィルムレールも腐食は無く大変きれいです。ただし、分解(整備)歴はあると思います。モルトは貼り替えられていました。

 

普段は登場しない巻上げレバーユニットの裏側。この個体は疲労は少ないですが使い込まれた個体はピンセット先のレバーが摩耗でガタが出ている個体もあります。巻上げゴリツキはこのユニットとは全く関係がありません。

 

このレバーが下の巻上げギヤのカムにロックされて巻き上げをします。カムが2か所しかありませんので、小刻み巻上げが出来ない設計です。

 

これも良く見るのですが、テンションハンマーを留めるネジのスリ割りが壊れています。これは工場での仕業で、それだけ緩みやすい部分なので、親の仇のように締めるように指示されていたのでしょう。

 

作動に問題はないと思いましたが、スローガバナーが完全に復帰しない状態です。スローガバナーの作動不良もありますが・・

 

この個体の場合、それに加えてプーリー部分にガタが認められます。分解をして組み直します。

 

ら暗いこと。正常に復帰するようになりました。

 

 

過去にリターンミラーフリーズの症状があったようで、リターンミラーユニットのテンションをいじられていました。その他、中々ギヤ鳴りが治まらない傾向があるユニットで、調整に時間が掛かりました。

 

全反射ミラーにはカビがあります。カビ自体は清掃でほぼ取れると思いますが、反射率は低下していますので新品に交換していきます。

 

じつは少し問題がありまして時間が掛かりました。これでメカは完成です。上下カバーを取り付けますが、画像を撮り忘れました。

 

 

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ローライ35の限定修理の巻

2021年10月03日 11時20分00秒 | ブログ

このローライ35は裏蓋ロックが変更された頃のジャーマニー製で、中古カメラ店様からのご依頼ではなく直接の作業ご依頼です。基本的な状態は良い方で、低速不調がないことから過去に修理歴があるようです。しかし、ジャーマニー製は古いですから、レンズの汚れ、ヘリコイドグリス抜けなどがあります。

もう一つのご希望はレバーアテの交換です。ローライ35は個体によって巻き上げレバーのリターンスプリングが強いものがあり、「パチン」と戻る時の衝撃はかなり大きいもので、樹脂製の部品は割れてしまうのです。

 

旋盤でジュラコン材から製作しましたが、自動機と違い、いちいちノギスで寸法を測りながらの極小加工は非常に手間が掛かり、とりあえず5個作りました。樹脂材の極小部品は機械的強度がありませんのでバイトで削るのは困難です。本来は成形部品です。

内部を見ると、やはり過去に修理歴があります。(年月日が記載)露出計の窓はトップカバー側とメーター側の2枚重ねですが、なぜか両面テープで2枚共貼られています。

 

で、熱カシメでレバーアテを取り付けました。このようにレバーアテが破損している個体が多いと思いますが、放置するとカバー側の梨地にレバーの接触痕が付いてしまいますから、早めに修復されることをお勧めします。この部分のみの限定修理もお受けします。

レバーアテを熱カシメ後、傷があったメーターの樹脂ガラスを研磨して接着、レリーズピンにホワイトグリスを塗布して差し込みます。

 

ジャーマニー製のレンズは汚れが出ている個体が多いです。絞り機構を分離してレンズの清掃をします。

 

絞り機構の外周に油が付着していますね。

 

 

レンズはきれいになりました。前玉の清掃とヘリコイドグリスを交換して適度な回転重さとなっています。

 

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