今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PETRI Color 35のメンテナンスの巻

2016年10月30日 19時39分09秒 | ブログ

ハーフカメラではないのであまり来ませんが、ファンの多いペトリのカラー35ですね。私のペトリのイメージは、緑色のファインダーやオリエンタル風のデザインの安価なカメラという感じでしたが、これは良いですね。デザインも垢抜けていて高級感もある。和製ローライ35などと言われているようですが、圧板方式以外はオリジナル設計ですね。で、外観は悪くはない個体ですが、電池を入れると露出計は生きていました。しかし、レンズの繰り出し(沈胴)をさせるための背面のダイヤルが小径な上に、油切れのような感じでギシギシと回転が重いです。レンズが動いているのが分かりますか?

これです。ファインダーを覗きながらダイヤルを回して距離を合わせられるということでしょうけど、如何にも小径で時間が掛かりますね。

 

カバー横のスリ割ネジは傷んでいるので分解歴ありです。吊環は内面からEリングで留められており,回転するのは親切な設計。

 

トップカバーを開けました。保持して右端の上下に並んでいるシャッターダイヤル(中心がレリーズボタン)と絞りダイヤルはセンスの良いデザインで操作感も悪くないですね。フィルムカウンターが巻き戻し側にあるのは、狭いスペースで苦労した設計です。

清掃のためファインダーを分離しました。裏側のリンケージは距離指針の機構。

 

 

レンズのヘリコイドグリスが切れているのも原因ですが、このアイドラーギヤの潤滑が無く、すでに軸とギヤ内径が摩耗をしていて、かなりバックラッシュガタがあります。この機構がこのカメラの売りなんですけど、作りとしてはやはりペトリというところ。

かなり汚れています。PENと違って対物レンズに隙間がありますので、分離せずに清掃をします。

 

きれいになりました。防塵用モルトも貼り換えておきました。

 

 

これは苦労の設計ですね。ピンセット先のピンを押すと(裏蓋を閉めると)フィルムカウンターがロックされます。

 

裏蓋も洗浄をしてモルトを貼っておきます。

 

 

二つのダイヤルの間に、電池のチェッカーボタンがあります。(接片)ファインダーを組み込んだところ。ローライ35と違って、巻上げレバーを普通の位置にあります。ホコリの侵入を防ぐシャッターも付いていて芸が細かい。

 

レンズを沈胴させるとピンセット先のレバーが左に動いて、シャッターが切れないようになっています。

 

ビューファインダーの表示。指針を右縦の中央にシャッターダイヤルと絞りダイヤルを調整すれば適正露出。下横は距離指針。

 

シャッターですけどね。低速域のシャッタースピードが変化しない。たぶんスローガバナーが固着しているのでしょう。ということで分解をしてみました。PENと同じようにガバナーはユニット化されておらず、地板の軸にギヤをセットするタイプです。設計上の制約なんでしょうね。で、各ギヤとアンクルの動きが緩慢です。

すべて分解洗浄をして組み直したところ。軽快に作動しています。

 

 

ASA設定リングを取付けました。知らない人にはピントリングに見えますね。

 

 

ケースはPENのものより上質な感じです。レンズキャップ、ストラップもすべてオリジナルで揃っている好ましい個体。1台は所有していたいカメラですね。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


SEIKO マーベル(1957年製)をレストアするの巻

2016年10月27日 23時17分30秒 | ブログ

時計です。1957年(昭和32年)生まれの方いらっしゃいますか? もうすぐ定年の世代なので、うちのブログは見て頂く方は少ないかもしれませんね。カメラもそうですが、腕時計も自分の生まれた年に作られたモデルは手にしたいものです。今回はもちろん同じお生まれ年でなくとも、ご希望の方にお譲りをします。セイコー・マーベルは1956年6月に発売された、それ以後のセイコー時計の基礎となった機械で、このモデルで舶来品に追いついたと言われた名機です。

これ以後のセイコーは裏蓋の打刻数字で製造年月が分かるのですが、この頃はそのように形式となっていないため、正確な製造年月は不明ですが、耐震装置が製造時期によって種類があり、それによって特定することが出来ます。まず、発売当初は耐震装置なし、半年後に輸入耐震装置U型付、1年後にE-2耐震装置付、2年後にセイコー製のS-1耐震装置付、その後S-2耐震装置付となります。この個体はE-2耐震装置付のことから1957年製と推測できます。

ケースのサイズはまだ小さく、現在で言えばボーイズサイズですね。当時は金ケースが主流でしたが、消耗をして現在は程度の良いものは少ないのですが、ステンレスケースの場合は、比較的良好なコンディションを保ったものがあります。今回も軽く研磨をした状態。しかし、困るのがトキライトと言われるドーム風防です。サイズの種類が多く、適合するデッドストックを見つけることは難しいのです。現在、作られているドーム風防を流用することになりますが、ほとんどのものが縁の部分が角ばった形状で、当時の丸みがありません。仕方ありませんので、旋盤で角部分の形状を修正してみました。

マーベルには17石 19石 21石がありますが、当時は17石が圧倒的でこの個体の19石は少数です。17石の地板はニッケルメッキですが、19石は赤機械で、これも少ないです。すべて洗浄をしたところ。

 

う~ん、なんですがスイス製の機械みたいですね。香箱も同じ色です。

 

 

この時代のものは、殆ど裏押えが折れていることが多いのですが、この個体は健在でした。この時代の時計は疲労しきった個体が多いのですが、ホゾも偏摩耗をしているところはありませんね。

 

歩度調整が極端に+方向に振られていましたが、それを戻していくと・・60年前の時計としては悪くないデータですね。元々、機械の素性が良いのですけど・・

 

非防水ですから実用された個体はケース内に汗などか侵入してしまいます。この個体も下側の汚れ腐食があって残念ですが、手持ちのストックは17石ばかりなのでこのまま使用します。まぁ、この時計の歴史ですから。剣型の針を磨き出して取り付けます。

良い眺めです。機械のサイズは25.6mmで、ケース外径は32mmです。前モデルのスーパー23.3mmから大型化したのに、ケースの大きさはそのままなのでギリギリに見えますね。この後、ケースは大型化して行きます。

 

 テンプが動いているので分かりずらいですが、テン輪の外周にネジ状のウエイトを付けて質量を調整して精度を上げるチラネジ付ですが、以後はチラネジ無しのテン輪(現在も)になります。耐震装置の無い機械は、落下などの衝撃で天真が折れる(私も経験しています)危険性が高く、耐震装置付は非常に有用な進歩でしたね。初期は「アンチショック」と称し、その後はこの個体も「ダイヤショック」と称されるのもおもしろいところ。

 ベルトは現在の主流18mmからすると細い16mmですので選択肢は少ないのです。厚みも厚いものが多いですので、出来るだけ厚みの薄いベルトということになるとセイコーの補修用ベルトになりました。

 

バネ棒も新品を使ってスカッと取り付けます。

 

 

セイコーの各モデルのデッドストック文字板は見つけた時に入手するように心がけていますが、同じモデルでもケースによってサイズは多種ありますし石数の違いもあるのでドンピタで適合するものは稀ですね。

 

左は今回の個体より1年後のマーベルです。ケースが大型化されていますね。じつは、新品のケースと新品文字板、竜頭を使って、私が作った個体です(非売品)。金ケースでここまできれいなものは少なく、専門店で高額で販売されている美品も同様なものがあるのでは? とか思っています。実用上十分な精度を持っていますので電車通勤でも大丈夫です。ご希望の方があればお譲りをします。但し、現在の感覚からすると小ぶりな時計になりますので、腕の細い方向きかなぁ? と思いますね。下記までお問合せください。

tomytmzk@titan.ocn.ne.jp

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


PEN-S 2.8後期型の巻

2016年10月25日 17時05分50秒 | ブログ

何故かPEN-S系が続きますね。コンパクトペンの良さが見直されているようです。この個体はPEN-S 2.8 #4233XXと1966-6月製の個体です。すでに1965-1月からPEN-S 3.5が発売されいますので併売の時期になりますね。45万台の個体も確認していますが、最後期の製造個体になります。

生産が新しい(と言っても古いですが)ため、外観やレンズの状態はきれいです。大径のレンズキャップを装着するために、フィルターを素通しで取り付けいます。アイディアですね。

スプールは3.5と同様にEL(イージーローディング)タイプが使われています。(ナットも樹脂製)これはオリジナルで改造ではありません。

 

中古屋さんで購入直後とのことで、普通に使うのには問題は無いのですが、ファインダーのフレーム枠の倒れのお訴えがありました。PEN系の場合、ファインダーはトップカバー側に付いているため、本体が完成した後でトップカバーとドッキングするため、どうしてもカメラ本体に対してのフレーム枠の(垂直)精度は悪いのですね、私の実感としては殆どの個体はフレーム枠が曲がって(倒れて)います。また、このファインダーは接眼を覗く人の瞳の位置によっても倒れが変化するので調整は難儀します。これは、各ミラーの取付角度がアバウトなせいもありますね。

で、普通、倒れの大きな場合は、フレーム枠(ガラス)が脱落して、それを再接着をしてある(PENに多い)ケースがありますが、今回の場合はフレーム枠は剥離した形跡がありません。ということは・・あっこれだ。ハーフミラーが再接着をされていまして、ミラーが本体の接着面に対して垂直に貼られていないためです。

過去にファインダーの清掃のために前面ガラスと対物レンズを分離して、再接着をされていましたが、粘度の低い接着剤を使われたため、隙間の奥に接着剤が流れてしまい分離に苦労しました。無理をすると簡単に割れてしまいます。しかし、前面ガラスは分離困難のため(支障がない)そのままとしました。私はエポキシ接着剤が硬化を始めた時に接着をします。そうすれば次回の清掃の時に容易に分離することが出来るからです。自分の時だけよければ良いという修理はダメです。ハーフミラーを分離して接着面を観察します。古い接着剤が残った上に密着させずに貼ってありました。古い接着剤をすべて削り落とします。目に見えない地道な作業をするかしないかということです。

さて、洗浄をして組み立てていきます。巻上げ機構のリンケージはユニクロメッキのため劣化が激しいです。

 

シャツターユニットは未分解でした。最後期なので正常に作動をしていたのでしょう。ただし、スローガバナーは作動不良でした。

 

シャッター羽根の状態は赤錆の発生も無く良好です。

 

 

これ、多いのですが、シャッターユニットを分離する時、シンクロターミナルの半田付けが取れます。

 

カム板を取り付けていきます。

 

 

結局、フレーム枠には手を付けず、ハーフミラーのみで調整をしました。元々、諏訪の内職屋さんで作られたようなアバウトなファインダーなので、あまり精度を要求されても厳しいところはあります。

 

後玉のコーティングが劣化し易いのですが、非常に状態は良いです。清掃をして組み立てます。ヘリコイドグリスは抜け気味ですので、すべて洗浄のうえ、新しいグリスを塗布します。

 

この頃は、明らかにプレスの金型が更新されています。巻き戻し部の落とし込みが非常にシャープになっています。

 

それが災いしてか、本体側と合わないのです。そのまま本体に取り付けると巻き上げダイヤルとカバーが接触します。そこで、シュー下の取付け部にワッシャーが入っています。これは、前回のPEN-S3.5もすべて同じです。これによってもファインダーの精度に影響があるのです。

まぁ、そうは言っても製造が新しい分、状態の良い個体でしたね。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 


Zuiko 20mmとSEIKO 56GSの巻

2016年10月22日 17時24分59秒 | ブログ

短めの作業など・・Zuiko 20mm f3.5ですけどね。オーナーさんはきれいとのことでしたが、結構曇っていますよ。20mmはレンズ枚数が多いですから、各レンズが薄く曇っていても、全体的には、かなりの曇りになっちゃいますね。

 

カビは無いのですが、各面に曇りがあります。三段ロケットを分離して清掃をしていきます。

 

きれいになりました。付属のキャップ類とケース付ですね。

 

 

次です。北海道のINOBOOさんのセイコー56GSですが、以前に左の個体をO/Hしていますが、何故か秒針が短いので、右のドナーから交換をご希望です。

 

これね。確かに秒針軸に取り付けるパイプ部分のカシメが見えないGS用の針なんですが、少し短い気がしますね。

 

ドナーの裏蓋が固着して開きません。強力オープナーでやっと開きました。

 

 

ガラスは内側が曇りが激しいです。

 

 

両方から秒針を取り外しました。長さが違いますね。腐食を研磨しておきます。しかし、長い方の秒針の取付孔が拡大しており、軸に留まらない状態でしたので、ピンバイスで締め込んで取り付けてあります。

 

機械押えのウェーブワッシャーが折れていましたので、ドナーから交換をして使います。

 

ケースのパッキンが規格外の幅が広いものが使われており、裏蓋が嵌りません。劣化も激しいので新しいパッキンに交換して裏蓋を閉めます。

 

めでたく、秒針は文字盤のインデックスまで届いています。

 

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 


PEN-S3.5が続きますが・・の巻

2016年10月20日 19時39分33秒 | ブログ

PEN-S3.5が続きます。#1808XXと、前回の個体より僅かに後に製造された個体なのですが、大きな違いがあるのです。

 

シャッターは非常に緩慢な作動をしています。

 

 

なぜかヘリコイドナットのスリ割りが細くなっています。測定すると0.7mmです。PEN-S2.8は1.4mmで生産の早かったPENは1.07mmと製造時期によってまちまちです。2.8用に合わせてある工具が入らないのです。因みにPEN-S3.5用とPEN用は同じ寸法で流用は可能です。

 

このような感じですね。しかし、前回のPEN-S3.5#1767XXと製造時期は近いのに、シャッターユニットは設計変更を受けています。シャッター羽根を駆動するカムの表面処理が変更されており(地板も)、コーティングタイプとなっているため、摩耗による剥離が起きると正常に作動しなくなるという問題が起きます。今回はちょうど#17万台のユニットがストックしてありましたので、ユニットを換装することにしました。

 シリアル№でいくと約3000台(実際の生産数はもっと少ない)の近いロットのユニットですが、変更前と変更後のちょうど切替の頃ですね。PEN-S3.5も後半に入って何故ユニットの改良をしたのでしょう? 製造元のコパルとしては、長く生産が続くと思っていたのでしょうかね。しかし、厄介な変更をしてくれたものです。

同じ機種が続くので簡単にします。シャッターユニットはオーバーホールで快調となっています。本体のシャッターユニットが付くプレートやリンケージ関係、カムの正面処理は全てクロメート処理になっています。ここまでコストダウンするんですね。

ファインダーブロックは樹脂製のため、研磨で光沢を復活させています。

 

 

完成してみると、ずいぶんきれいな個体だったんですね。PEN-S系の中では生産が新しいこともあってピカピカです。これで永く使うことが出来ます。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/