今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ラドー・グリーンホースのメンテナンス

2014年01月25日 19時03分34秒 | インポート

Img_345522 笹原ペンさんから腕時計とカメラが来ていますね。まず腕時計ですが、ラドー・グリーンホース2点です。グリーンホースはゴールデンホースのバリエーションらしいですが、タツノオトシゴマークの色がグリーンとなっているだけですね。左のステンレスケースはKING SIZEの文字が入っています。両方とも、かなり使い込まれた個体で、金めっきケースは腐食磨耗が進んでいます。似合わないやっつけのSSベルトが付いています。風防も傷が多く、本来は交換ですが、今回は研磨として傷落としに削っているところ。


Img_345645 ざっと手垢を超音波洗浄をして軽く磨いたところ。SSケースのベゼルにクラックが入っていますので風防は外しません。










Img_345755 機械は両方とも同じでスイスAS1789です。外観の印象よりはそれほど悪くは無いですね。ラドーの特徴的な赤字のカレンダー。










Img_346115 カレンダーは0時に瞬時に切り替わる機構で、歯車のカムによって行います。











Img_345999 各部に注油をしながら組立てて行きます。テンプの天真の石に注油をします。











Img_346024 文字盤で回転するイカリマークの裏側。子供の頃は、このイカリが動くのがすごく精密な機械という気がして「どんな仕掛けになっているのだろう?」と思っていましたが、なんのことはない、軸にパイプが圧入してあるだけでした。








Img_346253 歩度調整をしていますが、中々良い精度です。ただし、両機ともアオリとヒゲモチが緩く、ピンセットで触れただけで動いてしまう状態です。落下などの衝撃で歩度が狂ってしまう危険性がありますね。








Img_346332 金めっきケースの方は裏蓋に43.11.11と赤で捺印されています。昭和43年の意味でしょうから1968年に国内に輸入された時に記されたものでしょうかね。私のS800Mも同じ43年8月大阪での初年度登録です。関係ないか・・裏蓋は通常のねじ込み式ではなく、30°回転させて外す設計。うっかりして強く緩めようとする場合があります。





Img_346461 こんな感じですね。部品交換をしない制約の中ではきれいなほうだと思いますよ。しかし、SSケースの9時位置のインデックス代わりのタツノオトシゴは、何だか取って付けたようなデザインですね。ゴールデンホースが日本に輸入されたのが1958年ですから、何代目かのモデルでしょうね。当時の紳士が好んで腕にはめていたのを覚えています。舶来時計ですからね。





Img_346625 同じ方のご依頼なので続けますよ。おっ、またイコンタが来たと思ったら違いますね。WELMY 6というブローニー判のスプリングカメラで、大成光機というメーカーが昭和28年に作ったカメラだそうですね。そう分かると私と同じ歳なので何となく愛おしく見えて来るのが不思議です。イコンタを参考にしているようですが、コストを安く作るために内部の構造やシャッターなどはかなり安い作りのようです。




Img_346751 状態は、長期に放置されたもので廃棄寸前に救われたという感じ。シャッター、レンズ、絞りなどすべて固着して動きません。取りあえず、シャッターが飛び出すようにしますが、この辺りは本物も同じような症状でしたね。トップカバーを開けると簡易的なファインダーがあるだけです。巻き止めや二重露光防止装置などがないので潔い構造? この頃のレンズは、変にコーティングがないので、意外に清掃できれいになりますね。



Img_346812 トップカバーとの接触で、シボ革が剥離しています。この頃のシボ革は紙ですよね。子供の頃、駄菓子屋さんで買った日光写真機も同じ材質だったよね。補修接着をしておきます。









Img_346949 あっちこっち剥がれていますので、ひたすら補修です。











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プロンターとはどうのと言っても始まりません。最初からそのつもりで作られた製品ですから。シャッターと絞り羽根は作動するようにしました。レンズもあまり期待できないTerionar 75mmですが、コーティングが無いので清掃できれいになります。






Img_347488 前玉の清掃と新しいヘリコイドグリスを塗布して組立完成。ピント板で見る限りはそこそこ写りそうな感じですけど、果たしてどんな写りをするのでしょう。









Img_347577 痛んでいますけど、専用の革ケースも付属しています。構造が単純なために、メンテナンスをすれば充分に実用となるカメラになりました。当時、ドイツ製カメラには手が届かない一般大衆の写真熱を支えたカメラなのでしょうね。








Img_347656 もう1台は1枚画像だけUPしておきます。おっ、ニコンSに似ているカメラはNEOCA 35Aというカメラ。㈱ネオカというメーカーが昭和32年に発売したシリーズ最初のモデルのようです。当時定番のデザインを取り入れていますが、シャッキっとした印象で私は好きですね。トップカバーが特徴的ですが、よく見ると、ダイカスト一体の構造で、カバーは梨地メッキ部分だけです。(下部も同じ)距離計の調整窓が貨物車の荷台の点検口のようで、防水性能は良くないのではと感じます。二重像合致式の距離計連動は立派ですが、ファインダー接眼部が小さく見やすいとは言えない。レンズはNEOKOR45mm f3.5でシャッターはRECTUSと自社製のようですね。完動しますが、ダイカストの塗装劣化が惜しい個体です。
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PEN-S 3.5の通常オーバーホールをするの巻

2014年01月23日 13時53分19秒 | インポート

Img_345134 珍しくPEN-S3.5が来ましたね。#1213XXで、トップカバー横の留めビスが-(スリ割り)の前期タイプです。元はそれほど悪くはなかったはずですが、保管が悪かったと見えてトップカバーに腐食が多く発生しています。シャッターチャージミス、シャッタースピード遅い、ファインダー曇り、各リングの作動不良などがありますね。





Img_344951 よくよく見ると、腐食部分を銀塗料でタッチアップしてありますね。吊環取付け部には緑青が発生していますので、保管が良くなかった証拠です。









Img_344626 シャッターは・・・眠く開いていますね。












Img_345243 分解点検のところ、シャッターには特に部品の損傷は無いようです。シャッター羽根も比較的きれいです。では、組立てて行きます。










Img_345323 組立には特に問題はありませんでしたね。ご覧のとおり、本体内部も非常にきれいな状態です。距離リングの磨耗具合からみて、あまり使用されなかった個体ですね。









Img_345464 これで完成ですが、とにかく保存状態が悪かったですね。上下カバーの劣化(駒数ダイヤル付近に水浸入)が残念な個体でした。オーナーさんからはファインダーの光枠のズレ。をご指摘頂いていましたが、PENは構造的にファインダーが本体側ではなく、トップカバー側に付いている関係で、どうしても左右ズレや倒れの目立つ個体が多いのです。(光枠の接着もかなりアバウト)左右ズレの場合は、撮影者の癖によっても見え方が変化しますが、この個体の場合、若干の倒れがありました。しかし、光枠の接着が強固なため、許容範囲としてそのままとします。http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/






かなりきびしい三光PEN

2014年01月19日 21時36分20秒 | インポート

Img_341631 少し前にPEN-Fからファンになられた初心者さんが、こともあろうに三光PENを買って来ましたよ。「どうせなら一気に三光PEN」とのことのようです。まぁ、それも考え方ではありますが、状態を良く見て買わないとね。修理する人間が難儀をするので・・で、この個体。外観は目立つ欠点は少ないですが、前面シボ革角の欠落、駒数ノブとカニ目ネジの欠落、巻上げ不良、ファインダーブロックのフレーム折れなどがありますね。#1242XXと、初期タイプではありません。

Img_341851 巻上げダイヤルカバーがネジ留めですね。初期は熱カシメで、ダイカスト本体の形状も異なります。三光当時は巻上げカムが小さいですね。

Img_342145 トップカバー裏のファインダーブロック。紙製カバーはオリジナルではなく作ったものです。なんでも良いけど、接着剤でごってりと固められています。

Img_342277 紙カバーを剥がしてみます。うぁ、これは困ったな。対物レンズと樹脂製のファインダー本体が有機溶剤系の接着剤で貼られています。対物レンズは樹脂製ですから、この接着剤では溶けてしまうのです。

Img_342329 接着剤と本体が一体に溶け合っていますので、きれいに剥離は出来ません。せっせと削るだけです。対物レンズ2枚は完全に一体化して分離が出来ません。ちょっと考えれば解りそうなものですけどね。

Img_342434 底蓋にへこみがありますね。出来るだけ修正をしておきます。

Img_342564 すべて分解をして洗浄を終えたところ。シャッターはスピードがちょうど半分で、全速で1/100です。バネが弱っていますので、この程度が普通です。

Img_3426251 古いタイプのスプール軸ですから挽物一体でスリップ機構は組み込まれていません。代りにスプールの内周に拡張バネが入っています。しかし、それが原因で、多くのスプールにはクラックが入っていますね。これですとスリップをし易くなってしまいます。

Img_342721 バリオタイプ2枚羽根のシャッターですから、シャッタースピードが上がりませんね。メインスプリングも張力低下をしているのでしょうけど、元々1/200が出たのでしょうか? この個体ではかなりきびしい・・スローガバナーはユニット化されておらず、地板に直接歯車をセットしていくタイプ。

Img_3428661 で、完成したシャッターを搭載してあります。問題は欠落部分のあるシボ革。

Img_343045 三光PENの補修用シボ革なんて、簡単にないですよ。当方の在庫機から調達していますが、なんと、補修用のシボ革の方が劣化が少なくきれいで目立ってしまいますね。(笑) まぁ、夜目遠目、指摘されなければ分からないでしょう。

Img_343133 ファインダーブロックの補修と保護ガラス、対物レンズの接着をしておきます。本体側は、2回に1回のサイクルでチャージ不良が発生する状態でした。基本的にはカムの磨耗によってリフト量が不足しているためで、リンケージ側で調整をしてあります。今日は体調がイマイチなのでここで終わり。

Img_343366 トップカバーにメンテナンスの終ったファインダーブロックを取り付けます。各ミラーの状態は良くありませんが、ガッチリと接着されているため、分離をすると傷めてしまいますので、今回は修復は断念します。3本ビスのうち、右の部分のモールドが欠落しているため、ビスも紛失していましたので追加してあります。この頃の遮光カバーは後のアルミ製と異なり、紙製で、このように貼られています。

Img_343477 駒数ダイヤルとカニ目ネジが欠落していましたので、この頃の仕様に合わせてカニ目孔非貫通のものを選んで取り付けます。尚、ネジはすでに左ネジに変更されています。

Img_343758 こんなところでしょうね。人の手が入って、返って荒れてしまったような個体でした。しかし、レンズとリング周りが不釣合いにきれいで、或いは交換されているのか?との疑問も抱かせるくらいです。ストラップは、この頃御用達の革編みタイプが似合いますね。

Img_343824 底部のへこみも修正してあります。付属の革ケースには、このようにセットして撮影するのが正規のようですね。これなら撮影に夢中になって革ケースを落とす心配も無いわけです。

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ゆで卵ケースみたいなWERRA 3

2014年01月18日 19時00分27秒 | インポート

Img_340051 ゆで卵ケースを付けたようなユニークなデザインのWERRA 3がPENと一緒について来ました。メンテナンスですが、トップカバーに前の所有者(海外)がシューを取り付けたくて、瞬間接着剤で接着された痕がありますね。接着だけなら良かったものを、接着力を強めようと梨地めっきに傷を着けてしまったのです。こんなことしても変わらないよ。外人は何をしでかすか理解に苦しみます。

Img_340255 東ドイツの当時は共産圏の製品だそうですが、その割にはデザインや仕上げが良いですね。やはりドイツ。中華とは違います。しかし、どこのネジもどうしてこんなに硬く締まっているのでしょう。製品に対する認識が違うのでしょうけど、ドイツ人は力持ちが多いのかな? とか思ってしまいます。

Img_340451 シャッターチャージは、基部のダイヤルを回す方式ですが、回転方向の力ですから変換がいらない理に叶った方式ですね。しかし、回転がスムーズではありませんので改善します。フィルムの巻取りが普通と逆なのはご覧の構造からスプロケットを駆動するため。

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ファインダーはガッチリとしたダイカストフレームにプリズム多数を使用した高級な作りですね。中級機でこの作りがドイツなんですね。

Img_340664 曇った保護ガラスを清掃して取り付けますが、接着ではなく、バネによってホールドしています。

Img_340732 トップカバーの取り付けは、吊環によります。レンチで締め込んでおきます。

Img_340811 レンズはテッサー50mm f2.8の標準レンズが付いています。しかし、かなり曇りがありますので、分解して清掃しておきます。

Img_341121 裏蓋を外した状態。視度補正付きの接眼レンズですが、トップカバー側の穴のセンターがずれており、それによって抜け止めになっているという単純ですが巧妙な設計ですね。ガタパシャさんに教えて頂きました。

Img_340999 これでメンテナンス終了ですが、古いカメラなのに劣化の少ないカメラですね。シャッターはシンクロコンパー付きです。

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同じZeissのIKONTA 524/16のメンテナンスをしておきます。シャッターチャージが時々ミスをするということで、巻き止めのリンケージの作動がスムーズでありません。ファインダーの汚れもありますので、清掃、注油をしておきます。距離計はレンズと連動せず。

Img_341466 レンズはNover 75mm ですが、カビがありますね。清掃をしておきます。

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古いスプリングカメラはボタンを押してもカバーが開かず、自動で組み立たないものがありますね。リンケージに注油をしておきます。

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またまた10年放置のPEN-F

2014年01月14日 20時26分29秒 | インポート

Img_338161 前々回に10年ぶりのPEN-Fをやりましたが、この個体も不調となって10年間放置されていたという個体ですよ。リターンミラーのフリーズや巻上げ関係が変ですね。レリーズボタンが復帰しないなどありますが、これはどうしたのでしょう? 裏蓋が開かなくて、強引にドライバーなどでこじって開けてしまったようですね。これはまずいでしょ。

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ご覧のようにリターンミラーがフリーズしています。40mmレンズにも10年間のカビが見えますね。外観はかなりバッチイです。

Img_338325 トップカバーを開けてみると・・あれ? 未分解機なのかな? Fの場合は、レリーズボタンに汚れが付着するとスムーズに作動しなくなります。駒数板が固着して復帰していませんね。10年間の時間は長いですね。

Img_3384551 裏蓋と蝶番部がかなり錆が発生しています。→の小歯車が錆び付いて回転しません。

Img_338884 底部を見ると・・三脚環が一度分解された形跡がありますね。あれ、前回のFも同じようでしたよ。この部分だけ分解する意味は何だったのでしょう?

Img_338974 きびしいとは思いましたが、蝶番のシャフトは案の定抜けませんでした。CRCを入れてしばし放置で少しずつ動かして抜きます。ここが抜けないと、水洗い洗浄が出来ないのです。

Img_3390431 本体と上下カバーは完全に洗浄して汚れを取り除いてあります。裏蓋ですが、→のストライカが強く引っ張られたために変形をして、カシメのリベットが外れていました。再カシメと変形を直しておきます。

Img_339134 シャッターユニットの状態は悪くは無いですね。ブレーキが効いているかをチェックすると・・効いていますよ。今回は清掃で再使用とします。

Img_339325 しかし、スローガバナーはちょっと不安定な作動です。超音波洗浄をすると、細かな切り粉とチリが沢山出ます。これらが不調の原因となっている場合も多いのです。このユニットの場合は、歯車の損傷は軽微でしたが、ガンギ車とアンクルの関係が良くありません。

Img_339421 しかし、本体よりも前板関係の方が、文字通り10年寝かしたという劣化状態でした。前板の艶消塗装は汚れとカビがこびりついて拭き上げではきれいになりません。また、マウント部の腐食が進んでおり、ダイカストが粉となっています。すべて分解洗浄をしたところ。

Img_339577 で、注油をしながら組立てたところ。ミラーユニットは完全に粘って、作動不良の状態でした。

Img_339688 前板ASSYを本体とドッキングしたところ。プリズムには、細かな腐食があります。この頃の個体はファインダーハウジングの全反射ミラー取り付け面の右側にミラーの倒れ修正用の厚紙が貼られています。

Img_339799 #1913XXは1965年5月の製造ですから、すでに50年近く前に生産された精密機械です。さすがに汚れやカビで汚れ放題だった個体がすっきりきれいになりましたね。

Img_339855 付属のF用40mmの清掃をして完成です。10年ぶりに現役復帰です。しかし、当時この草刈正雄似の外人(ハーフ?)が構えるPEN-Fがハイセンスでカッコ良かった記憶があります。機能美から来る優れた工業デザインは決して古くならない。零戦にも通じる何かがあります。改めて思い知らされることです。ご両人共、縦位置の構えですね。親指でシャッターを切るのかぁ。。これがPEN-Fの通常スタイルなんですね。さて、次は腕時計をやりたいなぁ・・

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忘れていました。関東地方も寒波によって寒い日が続いていますが、もっと寒い北海道のINOBOOさんから写真の便りが届いていました。釧路川と木に付いた霧氷だそうです。幻想的なブルーですね。寒くても情熱を持って撮影されている方には頭が下がります。早朝は血圧に注意しましょうね。(フジX-E1+28mm相当の単焦点レンズにて撮影)

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