今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

金に目がくらんだTAXONA

2012年11月29日 22時20分54秒 | インポート

Dscf030713 少し前にやりましたTAXONAが悲惨な状態で戻ってきましたよ。なんでも、大公秀吉の金の茶室の前で落下させてしまったとのことです。あ~ぁ、金に目がくらんだのでしょうね。小さくても重くて、アイレットもないので、手持ちですから落としやすいのでしょう。シャッターも巻上げが出来なくなっています。さて、どうするか・・

Dscf030826 トップカバーを分離してみると・・・こりゃひどいね。特徴的な四角いファインダー窓が菱形になっていて、全体の形が狂ってしまっています。

Dscf030913 このように、全体が変形を起こした場合、どこから修正をしたら元に戻るかを想像できないと、益々変形を進めてしまいます。何とか修正をして、ファインダーをセットしたところ。

Dscf031114 まぁ、この程度で一杯ですね。巻上げのリンケージにも損傷があって修正で正常に作動するようにしています。同梱で、数年前にビールのおまけPENのストラップが出ましたが、抽選で当ったPENの(銀めっき?)ミニチュアをプレゼントして頂きました。ありがとうございました。今度は、金に目がくらまないように、しっかりとカメラをお持ちください。


ないないづくしのPEN-D3

2012年11月27日 23時17分52秒 | インポート

Dscf029618 一見きれいに見えるPEN-D3 #2639XXですけどね。「シャッターが動かない」「シボリリングが動かない」「露出計が動かない」おまけに↑のようにへこみがあって、駒数ガラス縁が陥没してガラスも割れています。過去に分解歴もありますね。オーナーさんは「何とか」とのことですので、やりますけどね。

Dscf029748 駒数ガラスを分離しています。前面縁が陥没しているのが分かりますね。

Dscf029847 前面からレンズを覗きます。あらら、シャッター羽根がバラバラになっていますね。分解後の組立が不完全な場合は、このようになる可能性が高いのです。この状態でシャッターを切られると羽根が損傷してしまいます。たぶんしています。

Dscf029954 そこで、このように修正をしておきました。この後、駒数ガラスを接着しておきます。

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ダイカスト本体もかなり手垢などの汚れが多くありましたね。洗浄のうえ、組立をして行きます。

Dscf030124 露出計はダウンしています。何とか治せとのことですから、うちのCdsと交換をするとして、電池回路を新製して行きます。電池室も過去に電池の液漏れを起こしていて、リード線は交換です。

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電池室と取付けビスなどを磨き出して組み立てています。

Dscf030322 シャッターの部品も全て洗浄しています。懸念していたとおり、シャッター羽根は損傷がありましたが、今回は修正のうえ、再使用としました。

Dscf030412 完成したシャッターユニットを、本体に搭載しようとしましたら・・あれ? シャッターの位置決めの為のピンが欠落していますね。うちの良品を取りつけておきます。

Dscf030323_2 シャッターユニットを搭載してシボ革を接着しました。故障をして固着した状態で無理に巻上げダイヤルを回したため、チャージのリンケージを大きな力が掛かって変形しています。修正をしながら組んでいます。シャッター自体は疲労は少ないと思います。カム板を取り付けて、レンズ周りを組み立てて行きます。

Dscf030414_2 露出メーターは正常でした。Cds素子が不良ですので、在庫から良品と交換してあります。ファインダーの清掃をして終了。

Dscf030507_2 露出計は正常に作動しています。修正をしたトップカバーに新品の駒数ガラスを付けましたので、腐食が激しいカニ目ビスも新品とさせて頂いています。

Dscf030616 と言うことで、完成です。ご苦労様でした。元の個体はそれほど使い込まれていないもので、それを分解した人が下手っぴいのため、ガタガタになってしまったと言う個体です。普通はジャンクとなる状態でしたが、救出してくれたオーナーさんに出会えて幸運だったカメラですね。今度は大切にしてもらえるでしょう。


タイマーフリーズのPEN-FTとセイコー・ユニーク

2012年11月25日 14時21分44秒 | インポート

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30万台の程度は悪くは無いFTですが、この状態でフリーズをしてしまって、巻上げも出来ない状態で来ました。これは、良く見る景色です。巻上げが不完全な状態でセルフタイマーを掛けてしまったのでしょう。或いはセルフタイマーを掛けている時に、無意識に巻上げレバーを巻いてしまったとかね。すると、動作がかち合ってしまい、にっちもさっちも動けなくなります。過去にも何回かご紹介していますので、FT使いの方たちは空シャッターで遊んでいる時には気をつけてください。

Dscf029245 ちょっとイヤなのは、アンダーカバーを外すとアルミのような切り粉がパラパラと落ちて来ましたよ。どこからでしょうね。ダイカストかな?

Dscf029313 結局、巻上げのゴリツキ以外は特に問題の無い個体でしたね。ハーフミラーは交換して、通常のオーバーホールで終了しています。巻上げの感触も改善しています。トップカバーのシリアル№の色入れが抜けていましたので、入れ直して完成しています。

Dscf029413 セイコー・ユニークというモデルをオーバーホールします。ユニークは、いつもやっているスーパーの機械を改良した製品で、スーパーは諏訪精工舎の製造でしたが、このユニークは第二精工舎(亀戸)へ製造が移りました。1955年からの生産ですが、この個体は1956-9月の製造です。全体のコンディションは良好で、風防と文字盤に劣化が感じられる程度で、機械は未分解か、一度の分解を受けた程度でしょう。受けの留めビスが長短、使われるところが間違っていたので・・

Dscf029523 基本的にスーパーと同じ構造のため、眺めは全く一緒でしょ。リューズを巻く鼓車なども全く磨耗をしていません。洗浄した二番車、三番車から組み込んで行きます。スーパーの機械より、カッチリきつめの感覚で、精度はピタッと決まる感じがします。

Dscf029617 リューズの巻き芯の錆加減を見れば、使われていた状況が想像できますが、洗浄した巻き芯は全く錆が無くきれいです。製造がスーパーより新しいせいか、テンプの振りも大きく、確実な動きをしています。

Dscf029747文字盤の程度はまぁまぁで、S入りのレトロっぽい雰囲気はこのましいと思います。次に針を入れます。この表面が丸い針も、スーパーならプレスの折り曲げですが、こちらは裏面はフラットで無垢の作りです。

Dscf029846 この個体も記念品の彫刻入りでした。「船工協記念」となっています。船の竣工記念でしょうか? どちらにしても、必要で購入された時計ではないので、あまり継続的に使用はされなかったのだと思います。

Dscf030012 最後にベルトを付けて完成。中々良い雰囲気ですね。現在の加工方法では、このような味が出せないのは不思議です。スーパーよりは新しいと言っても56年前の製品ですから、保存状態はかなり良いと思います。

Dscf029414 今日は忙しいな。またカメラに戻りますよ。20mm、25mmなどが付属してきましたが、どれも中々程度がよろしい。しかし、分解組立が不完全で、どことしてがっちりと組まれていないので、鏡胴がグラグラしているのですね。全て分解をして、グリスも含めて組み直しとなりますね。


国鉄勤続表彰のセイコー・スーパー(その二)

2012年11月19日 22時36分38秒 | インポート

Dscf028368 前回レストアしました国鉄勤続表彰のセイコー・スーパーと同じものが入手できました。すでに風防のみ現行部品を加工して仕上げてあります。全く同じ仕様のモデルですが、ケースの仕上がり寸法を計測すると、微妙にサイズが異なっています。研磨職人さんのその日の調子なんでしょうかね? 文字盤は外周部分に汚れが目立ちましたが、清掃を試み、多少はきれいに見えますが、シミや傷は多くあります。まぁ、時代物の味ということで・・・ケースの研磨もしますが、とりあえず不動の機械をO/Hしておきましょう。

Dscf028448 過去にかなり時計油が多く使われたO/Hを受けていたと見えて、超音波洗浄では油汚れが目立ちました。機械は特に問題もなく組み上がって再び鼓動を始めました。組み直した機械は、しばらくエージングをしてフリクションを取り除くようにします。次は、ケースを仕上げます。

Dscf47091 北海道のINOBOOさんから冬に入った北海道の雄大な景色を撮影した最新画像が届きましたのでご覧ください。こんな景色を眺めていたら、ストレスなどは無くなってしまうでしょうね。

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こちらはピントを合わせたところと大きなボケが思い通りに撮影出来たとのことです。撮影データなどは、コメント欄でお聞きしてください。

Dscf028516 ケースを研磨しました。この時代のケースがピカピカなのも不自然ですので、細かな傷を消す程度に軽く磨いてあります。とは言ってもピカピカになっちゃいましたね。しばらく使った方が落ち着くでしょう。

Dscf028723 機械のケーシングをしました。この個体は結構使い込まれたと見えて、リューズと秒針が後年のものに変えられています。そこで、秒針はストックのオリジナル型を使います。色は、焦げ茶に塗装してありますが、濃青がオリジナルかも知れません。どちらも存在するので・・・この時代のケースはリューズはやはりこの形でないといけません。大径ですからゼンマイを巻きやすいです。

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では、ベルトを付けてみます。レストアしていて一番楽しい時です。今回は焦げ茶のバイソン形を使います。

Dscf028901 これで最初の所有者が永年勤続記念品として受け取った時の姿に戻ったでしょうかね。左の個体も全く同型の国鉄永年勤続記念品ですが、文字盤の退色具合は異なりますね。中央は同じサイズのスーパー用文字盤デッドストックですが、文字盤の色は本来このような明るい色だったのでしょう。当時の国鉄職員数は30万人ぐらいだったのかなぁ? が、退職時に記念品として受け取ったとすると、相当の個体数があったはずです。私のところにも2個あるわけですし・・・


ミノルタレンズアダプター付きのPEN-F

2012年11月14日 21時35分46秒 | インポート

Dscf030321 ミノルタ用のレンズアダプターが付いたPEN-F #2617XXが来ました。オーナーさんからはPEN-F・FTの分解ジャンクが付属して来ましたので、ご自分でも分解をされているようです。この個体もPEN-Fですから、結構ヤレていますけど、「アダプターを外してレンズを装着するとミラーフリーズする。張力調整」というご依頼ですが、巻上げのゴリツキやシャッターの作動を見ますと、かなりフリクションが大きいと思います。このままテンション調整をしても、シャッタースピードやフリーズは改善されないと思いますね。まずは全体のO/Hをしてからのことだと思います。

Dscf030410 リターンミラーの交換をご希望ですが、このミラーはビス付の初期型が付いていますね。シリアル№の頃はビスは無くなっているハズですから、過去にホルダーごと交換されているのではないでしょうかね。とりあえず、内部がどうなっているか、分解して行きましょう。

Dscf030411 何かUPが長くなりそうな予感がするんですね。トップカバーをあけましたら、あらら・・ちょっと騙されちゃいましたね。この個体は#118000 辺りの極初期の個体で、それに26万代のトップカバーを付け替えたものでしょう。何度も分解を受けているようです。

Dscf030506 シボ革も古いので材質が硬化していまして、それを無理に剥離をしてピンセット側は生地が切れてしまっています。接着剤もてんこ盛りって言うんでしょうか・・

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とにかく分解をして行きます。巻上爪の潤滑が切れたところに水油を着けられて汚れと共にドロドロになっています。で、このセットスクリューが曲者。軸のネジ部を見て頂ければお分かりのとおり、ゆるみ止めを塗布されて締め込まれているため、緩めようとすると、「ポキッ」と折れてしまうことが多いのです。こんな細いネジに頭の大きなスリ割りですから、オーバートルクが掛かってしまうのです。みなさんは開けない方がよろしいです。

Dscf030712 要するに掃除屋だよね。ダイカスト本体から、全ての部品を分離しています。古い接着剤を溶剤で溶かしながら清掃して行きます。

Dscf030825 全て清掃をしてから洗浄を終えた状態。で、この個体は裏蓋を開ける時に、巻き戻しノブを引き上げても、非常に渋い動きが気になりました。下が、上下するカギ板。

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原因は画像で分かりますか? カギ板の付くダイカスト面が平面でないのが分かりますでしょうか? これによって、カギ板の昇降に抵抗となって作動不良となっているもの。どの個体にも、ダイカスト鋳造時のヒケと考えられるタワミがあるのですが、この個体はちょっと大き過ぎるようです。裏蓋があるため、外部からの衝撃とは考えられません。高さ調整をして改善しておきます。

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次はシャッターですが、これも問題ありですね。カムには水油が多量に付着して、ブレーキも全く利いていません。

Dscf031113 ピンボケの画像ではなくて、スローガバナーがグラグラしているのです。過去に分解或いは、他の個体から移植されたのかも知れません。締め込みが不完全な場合は、シャッターダイヤルの回転により、緩んでしまいます。

Dscf031223 リターンミラーを復帰させるタイミングを作るレリーズレバーが曲げられています。意味不明。推測するに、前板を取付ける時にレバーとの干渉をキャンセルせずに押し込んだ? のではないでしょうか?

Dscf031316 前板にも水油が回っており(スクリーンにも)洗浄してありますが、まだ、シリコーンのような滑りが落ちません。何を着けたのでしょう? 初期型ですから、留めビス付のリターンミラーを交換しています。中期以降は留めビスが省略されたため、後年ミラーの脱落事故が発生しています。FTでは付けられないのですけどね。この分で行くと、UP枚数が増えてしまいますから、適時省略することにします。

Dscf027322 オーナーさんからご連絡がありました。このカメラはオークションで購入して、巻上げに問題があって有名カメラチェーンを通じて修理に出されたとのことです。え~、嘘でしょ。たぶん、殆どアマチュアさんの分解が原因と思いますが、部分修理にしても、ここまで問題のある状態で修理完了とは理解が出来ませんね。まっいいや。で、オーナーさんのご希望でブレーキも交換しました。この部分に着けられていた水油はシリコン油でして、いくら脱脂をしてもつるつる滑るのには閉口しました。

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ミラーフリーズの原因はこのミラーユニットが原因のことが多いのです。洗浄して点検していくと・・まず、針先の裏からのビスが緩んでリンケージが飛び出し、干渉して作動不良となっています。ビスの緩み止めのポンチが甘かったものです。再カシメをしておきます。

Dscf027575 次の問題は、左側のメインスプリングです。右側がこの個体にセットされていたもの。左が良品。オーバーテンションを掛けられて変形していますね。これではトルクは出ないのです。右側のリターンミラー抑えスプリングもヘタリがあって外れる不具合がありますので、両方とも交換します。

Dscf027475 本体と前板関係の両方が完成したところ。

Dscf027674 メカ部は組み上がりました。作動トルクも大きくなって、レンズを装着した状態で快調に作動をしています。

Dscf027702 裏面からの眺め。しかし、極初期型とは言え、満身創痍の状態でよく動いていたと逆に関心しました。結局すべて不良だったようなカメラですね。さて、完成までもう一息です。

お話しは違いますが、ここのところ有名人がお亡くなりになる訃報が続いていますね。女優の森光子さんは92歳の天寿を全うされましたが、この方の記憶は、私たちの世代ではテレビドラマの「時間ですよ」のおかみさん役ですかね。戦史を読んでいると、この方は戦時中は外地の将兵を慰問されていて、内地に帰国す時には、海軍の用意した重爆に搭乗したのですが、すでに制空権をアメリカに奪われ、昨日、同じ時間帯に見方の重爆が喰われた空域を飛行している時、尾部銃座から後ろに付いている護衛戦闘機の搭乗員に無邪気に手を振っていたので、戦闘機の搭乗員は気が気ではなかったと記述した文章を読んだ記憶があります。運が悪ければ、その場で撃墜されて、後の森光子はなかったわけですから、死線を越えた波乱の人生を生きた方だと思います。

Dscf027952 問題山積の個体ですが、もう何も無いようにと思っているところへアイピース枠のカケです。古い個体ですから樹脂の強度が持たずに破損したものです。今回は接着で再使用としておきますので、アクセサリー類は取付けない方がよいです。

Dscf028048 で、本当は極初期型のFはやっと完成です。通常の2倍の工数が掛かっています。全反射ミラーは拭き傷と劣化がありましたので、交換したいところでしたが、今回は断念しました。まぁ、カメラには罪は無いのですが、シリコン油のベタベタには閉口しました。お陰で工具までツルツルです。リターンミラーボックス内にも油が浸透しており、艶消し黒塗装がやけに光っていましたよ。浸透拡散性の高い油は使用出来ません。

Dscf028114 時計の作業を進める時間が取れませんでしたので、風防の加工だけやっておきました。先日レストアした国鉄彫刻入りのセイコー・スーパーですが、全く同じ仕様と彫刻入りのスーパー(不動)が入手できました。この時代の同仕様モデルが見つかることは非常に珍しいのです。ただし、今回のスーパーは1955-6月製と前回の個体より一年以上後のものです。国鉄の退職者用に大量に調達されていたのでしょうね。で、付属の風防は黄ばみだけであれば味となるのですが、クラックがあるため、新品と交換をすることにしました。しかし、現在、手に入る風防(左)は、オリジナルに比べて外周の角の部分が角ばり過ぎています。そこで、オリジナルの形状に合わせて、削って成形をしてあります。