今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

オークション物のPEN-FTは如何に? の巻

2014年11月28日 20時46分38秒 | ブログ

オークションで入手をされたという初心者さまのPEN-FT #1935XXですよ。コンディションがご心配とのことでしたが悪くはないですね。比較的丁寧に使われて来た個体でしょう。全体で特に問題の部分はないと思いますが、巻上げのゴリつき感とファインダーが暗いとのご指摘があります。

FT本体の前に、38mmレンズですが、各面に盛大にカビが発生しています。34万代のレンズですから設計変更後のレンズで、このFTとはセットで出荷されたものではありませんね。過去に分解を受けていて、工具でキズだらけにしていますので、あまり上手な方ではないようです。不思議に後玉のコーティング曇りはなく、菌糸状のカビは珍しいところです。

今日は診察日で新宿まで出掛けたのですが、関東地方は予報では気温が上がるはずでしたが帰宅は雨になりました。帰りに中古屋街をパトロールと思っていましたが、寒いのでそのまま電車に乗って帰宅しましたよ。で、何もしていませんが、昨日までの画像です。この個体は未分解機で、特に問題の箇所はないとオーナーさんにも申し上げていましたが、本当に何も書くことがありませんね。しいて言えば、シンクロのリード線の通し方が普通と異なっていて、そのため、短くなってツンツルテンになっています。

この頃は、初期の専用部品から汎用部品に置き換わってくる頃で、アイビース枠を留めるビスが、専用の頭の大きなタイプから、頭の小さな汎用ビスに変更されています。良く見てくださいよ。この頭の大きさで締め込んだら孔に潜ってしまいます。結果的にクラックが入っている個体が非常に多いのです。ちょっと考えれば分かりそうなものですけどね。

勿論シャッターユニットも工場で組んだままですが、ハンマーのリベット部をヤスリ掛けした形跡がありますね。

 

組立上はこのようになるのですが、ご覧のように前板とのクリアランスが1.0mmも無いのです。設計は、各部分を大勢の技術者が分担して開発するので、0.1mm単位で寸法の奪い合いをするわけです。図面上では接触しないことになってはいるのですが、実際は部品の積み上げで接触をする個体が出てきます。ヤスリ掛けは、それを承知で対策をしていたということ。しかし、それにも拘わらず、接触をしている個体が見受けられるのです。当然、シャッタースピードに影響はあります。

また、都内江東区にお住まいの方よりジャンク部品のご提供を頂きました。ご本人様も分解修理を楽しまれていたそうですが、目が辛くなってお止めになられたとのことで、私も辛いのですよぉ。サンコパとお客様より頂戴した(貰い物ばっかりか)サプリメントで凌いでいます。私の使命が終わるまで、もう少し頑張らないと。有効に活用させて頂きます。ありがとうございました。

では、いつものように洗浄を終えたダイカスト本体に組立をしていきます。まだ、吊環などの留めビスはスリ割の真鍮ビス、スプロケット軸上端には規制用ワッシャーが入らない頃です。以前に、「トミーが組んだのにワッシャーが入っていない」とクレームを頂いたことがありました。あなたの選んだ個体(前期型)はワッシャーは入らないのですよぉ。もう少し勉強しましょうね。

シャッターユニットを点検してから洗浄しますが、何だろう?? 木端みたいなものが出て来ましたよ。こんなところに入るかなぁ?

 

基本的に問題のない個体とは思っても、先入観で見てはミスをします。この頃はブレーキのナットは真鍮製ですね。緩み易い部分なので。硬度の落ちる真鍮にすることによって緩みにくくした? 緩み易いと言えばここもそうです。ピンセット先のレバーの遊び(ガタ)が大きいようです。

裏側です。プーリーの隙間にある真鍮ナットが緩んでいます。これを放置すると、ある日突然シャッタースピードが変わらなくなります。スローガバナーとの連動が外れるからです。

 

まぁ、良好と思っても、何かあると思って点検することです。シャッターユニットを本体に組み込み完了。調子は良好、巻上げフィーリングも改善しています。

 

トップカバーは一度開けられてハーフミラーの拭き上げをされているようです。左が古いミラー、右が新品のミラー。違いは良く分からないかと思いますが、反射率が低下しているのがお判りになるでしょうか?

 

セルフタイマーユニットは、まだ改良前のタイプです。ユニットの固定方法は試行錯誤をされて行きますが、この頃は、巻き戻し軸左に真鍮の四角い部品を取付けて、ユニットが押されないように固定しています。この後、ユニット側にネジを切ってビスを貫通させて巻き戻し軸で固定する方法が取られます。最終的には、巻き戻し軸部のダイカスト形状を変更して、ユニットを広い面積で安定よく受ける設計に落ち着きます。(30万代以降)ユニットの固定には苦労をしたようですね。基本レイアウトのPEN-Fでは無かった部品ですから、やっつけの設計。ビスには緩み止めが塗布されています。

で、これで一応組立は完成ですね。シンクロのリード線はこのように通すのが正規です。たぶん新米の女工さんが組んだのでしょう? 10万代の特徴である、軽く滑らかな巻き上げ感が甦っています。

 

PEN-FT初心者のオーナーさんですから、幻滅して欲しくないので、なるべく良いコンディションの個体を使って頂きたいのです。オークションものは怖いという通説もありますが、現物を見れないことから不心得者も確かに存在はしますが、すべてではありません。その意味では、この個体は比較的丁寧に扱われて来た良い素材であったと言えると思います。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/