今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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大切な方から譲られたPEN-FTの巻

2014年11月03日 22時45分21秒 | ブログ

オーナーさんはPEN初心者さんで、大切な方から譲られたPEN-FT #2555XXだそうで、中期頃の生産機ですね。セルフタイマーが動かないとのことでしたが、固着していたボタンを裏ワザで緩めてからカバーを分離して原因を探りましたが・・セルフタイマーは確かに固着ですが、これは作動しなくなって思わずセルフタイマーを巻き上げるというPENオーナーの習性ですね。原因は他にあります。シャッターユニットが完全にロックした状態のため、巻き上げレバーも動かず、全くお手上げの状態となっています。大切な方から申し送りは無かったのでしょうか? 経験的にはテンションシャフトのハンマーにトラブルが有るような気がします。シボ革の接着具合から分解歴があることが分かります。

トップカバーを分離しようとしても固着していて、バリッと外れて来たので、嫌な予感がしたのが的中。再接着の接着剤が弱くて剥離して来たので、「それじゃあ強力な瞬間接着剤で」と考えて貼ってしまったのでしょう。溶剤では剥離してきませんので削って行くしかありません。

シャツターユニットを分離しましたが、原因はブレーキナットの緩みで予想は的中でした。

 

しかし、まだ問題が有りそうです。巻き上げギヤにガタが大く、二回巻き上げになっています。しかも、修正のしにくい悪質なヤツ。この状態で譲られたってことですよね。

 

本体とカバーを洗浄する前にシボ革の接着剤を落しておきますが、オリジナルの接着層の上にベタベタに劣化をした茶色のニカワのような接着層、三層目にカチカチに硬化をする接着剤ですからシボ革がバリバリに硬化しています。組立最後の接着時に苦労をしますので、ペーパーで削り落としておきます。後ろのトップカバー前面に接着剤が付着していますね。裏側にも大量に回り込んでいて、本体と固着していました。

分解洗浄をしたシャッターユニット。#2555XXはすでにシャッタースプリングは改良タイプが使われています。低速不調のため、スローガバナーを調整しました。

 

チャージギヤは摩耗のため交換して組みます。

 

 

性質の良くない接着剤が使われています。溶剤では除去できないため、削り落として清掃をしておきます。

 

本体側と前板側が完成しました。シャッター単体でのテストでは、巻上げは非常に滑らかに仕上がっています。

 

譲られたこのカメラの元のオーナーさんはすでに他界されていると現オーナーさんからお聞きしました。そんな経緯が多くなっていますね。私がPEN-Fに憧れたのは中学生の時でした。その時は手に入れることは出来ませんでしたが・・で、いつものお決まり画像です。ハーフミラーとアイビース枠を交換しています。調子がね、当初の惨状からしたらびっくり。巻上げも滑らかでシャッターも調子が良いです。25万代というのは過渡期的な個体で、30万代以降にはない滑らかさというのがあるんですね。しかし、その分、生産が古いのでリスクは増える。ですから、この個体のようなケースは最高なんですね。

38mmレンズの曇りと羽根の洗浄をして完成です。現役当時からと思われるハードケースを見ると、元のオーナーさんが愛用されていたことが忍ばれますね。但し、長期にハードケースに入っていた関係で、スチール製の裏蓋の錆など劣化が進んでいます。保管はハードケースから出しておいてください。当初の状態では、受け継いだ方は途方に暮れる状態でしたが、仕上げてみると中々素性の良い個体であることが分かりました。巻上げがガリガリが普通と思っていらっしゃるFTオーナーさんがびっくりするような感触です。これから大切に使って行きたいとのことですので、良い後継者に巡り合えた幸運な一台であると思います。

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