今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

重症かな? PEN-FVの巻

2017年10月31日 21時30分12秒 | ブログ

続いてPEN-FV #1120XXですが、こちらは各部のユニットが設計変更前の個体でして、ちょっと厄介なことになりそうです。トップカバーを開けるとレリーズボタンの押し板のネジが緩んでグラグラです。その他、裏蓋ラッチの飛越しなどが気になります。

全反射ミラーは腐植は少なくきれいに見えますが、反射率低下によりオーナーさんのご希望て交換することにします。

 

セルフタイマーユニットも変更前のもので、作動途中で止まります。

 

 

シャッターは低速で止まります。スローガバナーも変更前のタイプで、故障が多いです。これは油切れではなく低速1/8から1/4で切り替わる歯車(薄い)でのガンギ車を損傷しているのです。

 

こちらの画像でも分かりますでしょうか? 従来はユニット交換をしていましたが、良品ユニットの調達も困難になっていますのでガンギ車を交換することにします。

 

左が交換のためのガンギ車。

 

 

画像を撮り忘れたので別の個体です。組立は困難ですので、みなさんは分解されない方がよろしいです。

 

なんとガンギ車だけではなく、相手の歯車の歯も損傷しています。これは、シャッターダイヤルを1/8から1/4へ回す時に抵抗があっても強引に回してしまったためです。錆もありますが、これは作動には直接的な影響はありません。(多少はあります)こちらも交換することにします。

シャッターユニットに仮組をして作動を見ます。作動は良好ですので、これからすべて分解をして洗浄をします。

 

 ハンマーの留めネジが緩んでいました。

 

 

コントロールレバーにガタがあるので点検してみると、フライホイールのダブルナットが緩んでいました。

 

完成したシャッターユニットにスローガバナーを取り付けます。

 

 

シャッター幕を取り付けてシャッターユニット完成です。

 

 

完成した前板と本体側を組み立てて作動を見ます。

 

 

しばらく巻上げも軽くシャッターの調子も良好で作動していましたが・・ミラーユニットがダメでした。チャージをするとのギヤ(カム)が時計回りに回転して中央のスパナ状の部分が下に動きのバネが方向に動いてチャージを完了する構造ですが、ロック爪が外れてチャージが固定されない。この故障は改良前の使い込まれたユニットに多く発生します。原因はのカムの摩耗によるリフト量減少、スパナ部分が開いて押し切らないなどの他に、軸のカシメ緩みなどが複合的に関連して発生します。要するに作りが弱いのです。

このユニットは殆どの部分(ネジ)は緩み止めのカシメ加工がされていて、本来は分解不可です。不良の場合はSSでは問題なく交換になっていたと思います。しかし、そんな新品部品はありませんので修理をすることになります。力が掛かる部分ですので、長い時間の間に緩み止めが緩んでいるものが多いです。増し締めと緩み止めの再カシメをしておきます。

この個体はレンズマウントの左側上に調整ワッシャーが入っていました。セルフタイマーも改良前のタイプで、改良前は調子の悪いものが多くあります。時計修理の知識があれば修理は出来ます。

 

やれやれ、#1120XXは1967年5月の製造ですが、FTで言うと20万代の初期の頃と同じですので、各部のユニットは改良前のものが使われていて、経時劣化もあって非常に故障や不安定な個体が多いのです。FVでも、先日の#1274XXなどになると1969年2月の製造となり、各部のユニットは改良後の仕様になりますから、入手の時はなるべくこの辺りの個体を選ばれた方がよろしいかもしれません。生産台数は少ないことが分かりますね。

 

世の中三連休だそうですね。今日は航空自衛隊入間基地の航空祭ですが、先日の百里基地と違って青空が広がっています。ブルーインパルスの展示飛行も空に映えるでしょうけど、例年より飛行展示が縮小されているようで、うちの上空には飛来していませんね。残念。と思ったら上空に飛行機の音が・・入間はアクセスも混雑するので行きませんけどね。で、駒数板を留める方法も変更になっているんですよ。この個体(右)は設計変更前のタイプで、スリ割付の異形ナットで留めていますが、変更後は普通のスリ割ネジになっています。ちょうど逆の設計になっているわけですが、なんで? 異形ナットなど使わずに標準化で問題ないじゃん。というところでは?

セルフタイマーの作動を確認しておきます。

 

 

ご希望によって接眼枠を中古のものと交換しておきました。この個体は色々な問題を抱えていましたね。前期型の個体としては珍しくはなく、巷ではジャンクとなっている個体でしょう。まさしく重修理というところでしょうか?

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水気の多いPEN-FVの巻

2017年10月27日 11時45分41秒 | ブログ

体調不良で半日寝ていましたらブログランキングが下がり過ぎです。やっぱりUPを続けないとダメですね。で、作業はしていますが、このPEN-FV #1274XXは、ほどほどきれいな個体に見えますが水がぁ~という感じです。全反射ミラーにも腐食がありますが、再使用が出来ない状態でもありません。しかし、オーナーさんのご希望により交換とします。

レンズマウントを分離すると・・腐食が激しいです。水が侵入していたのです。8時の位置に調整ワッシャーが入っている個体です。前板の中央部分が歪み傾向なんですね。

 

ダイカストの底部も腐食で粉を噴いています。

 

 

シャッターダイヤルのメッキも手遅れ状態です。

 

 

すべて腐食を研磨洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

テンションハンマーを留めるネジのスリ割りが痛んでいますが、これは工場で組んだままで多くの個体に見られます。それだけ緩みを恐れて強く締めていたということ。

 

テンションシャフトが良くありません。摺動部のメッキが完全に剥離しています。線状痕はありますが、これは異常でロットによるメッキのバラツキです。

 

 

上側のテンションシャフトギヤと下側の#2ギヤのクリアランスは元々大きめに取られているのですが、それにしてもバックラッシュはガタガタですね。テンションシャフトを受ける地板の孔の拡大と#2ギヤ下側の摩耗によりクリアランスは広がりつつあります。テンションギヤはピンセットで上方に力を掛けると上昇します。もう少しで歯と歯が外れてしまいそうです。何故ここは大きなクリアランスを取らなくてはならなかったのでしょうね。バックラッシュを詰めると巻上げ時のゴロツキ感が出るのか? 何か理由があるはずですが。

前板関係を分解してプリズム、スクリーンなどを清掃します。

 

 

 抑えバネにはモルトカスが付着しているので清掃をしておきます。

 

 

スクリーンにホコリの混入はないか、傷はないかを点検しています。

 

 

全反射ミラーは右側の新品と交換します。

 

 

これでメカ部分の組立は終了。調子は良いですね。

 

 

FVですから露出メーターはありませんので空間が大きく開いています。レバーカバーはFTより長いものが使われています。

 

調子は良好ですが、やはりテンションシャフトギヤのクリアランス過大により、7~8回に1回程度二回巻き上げになる傾向がありますので、症状の出ないように対策をしてあります。で、一緒に来た個体なので、このまま続けます。PEN-FT #3593XXと、かなり後期の生産終了近くの個体です。その割には、ハーフミラーの腐食が進んでいるのと、巻上げの感触がゴリゴリで最悪です。

ダイカスト本体は洗浄済み。シャッターユニットを点検して、巻き上げゴリツキなどの不具合を確認してから分解をして行きます。

 

しかし、二週続けての台風の来襲です。しかも私の持論通り必ず週末の夜半です。天気と雨の日が逆転したカレンダーにはうんざりしますね。お陰でバイクもS800も診てやれません。愚痴はほどほどにして作業に戻ります。ダイカスト本体を洗浄して点検します。ははぁ、電池室からのリード線が断線したために半田付けをしてありますが、だいぶ傷にして手こずったようです。

後期の個体ほどギヤ間のクリアランスは小さくなっている傾向があるようです。↑の画像と見比べてください。また、最後期の個体はギヤ(上)が真鍮のナットによる組立式であることがご理解頂けると思います。これによって摩耗をしたブレーキ軸の交換が可能になりました。今頃変更しても遅いですけどね。ナットの緩みを嫌ってカシメ設計としていたものが、修理で交換の必要が出て来たことによる変更なのかも知れません。

 

チャージギヤの軸に軽微ですが偏摩耗があります。これが巻上げのカクカクッに影響を与えていた可能性はありますね。原因はここだけではありませんが。

 

その他は、新しい個体なので問題はありませんでした。

 

 

露出メーターの光学系路を清掃します。←↓の経路を経てメーター指針がファインダー内に導かれます。

 

これは分解前の画像。ハーフミラーは35万代としては異常に腐食が進んでいます。

 

露出計の感度低下が激しい状態でした。経験的にハーフミラーの腐食が進んでいる個体は露出計の感度も低下していることが多いと感じます。Cdsとメーターも主に湿気による影響を多く受けているということでしょう。で、駒数ガラスですがオレンジのがにじんでいます。これは生産初期の10万代の個体に多い現象で、使用過程での時間の経過でにじんで来たものでしょう。その後は改善されたと思ったのですが、先祖返りもあるんですね。

2台とも外観的にはすばらしい個体で、よく見つけられたと思いますが、年波には勝てず、いろいろと問題は抱えているものです。FTの巻上げゴリツキは、まぁ、及第点まで改善していますので良しとしましょう。

 

 

 良い機会なので画像を載せておきます。FVのシャッターダイヤルはFの仕様に準じていますが(共通部品ではない)Bの色入れはですね。FTのシャッターダイヤルはASA機構を組み込むため1mm厚くなっていて、Bオレンジ色になっています。ASA表示が赤なので、レンズで良く使われるオレンジになったのでしょうね。

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Canon Ⅳsのメンテナンスの巻

2017年10月25日 10時56分21秒 | ブログ

キヤノンのⅣsですかね。私もキヤノンのバルナック型も所有していますが、ライカの模倣の時代の方が、国産カメラもしっかりとした作りをしていましたね。その後の大量生産の時代となってはブリキ細工のようなペラペラな作りになってしまいました。低い生産コストで大量生産するにはそれが正解だったのは理解しますが・・で、比較的きれいな個体ですね。シャッター幕は大丈夫のようなお話でしたので、変な先入観を持ったのが失敗でした。

シャッターの低速不調とファインダー系の汚れなどについてメンテナンスをしていこうと思います。底部のカバーを外して配線を切り離しておきます。

 

シャッター幕は一見きれいの見えたので・・

 

 

スローガバナーの洗浄をするため分離します。

 

 

超音波洗浄と注油をして行きます。

 

 

ガーン、先に確認をしておくべきでした。シャッター幕はタタミイワシ状態でした。オーナーさんに確認のところ、予算の関係で修理は延期となりました。

 

付属の50mmは使用したいとのことで清掃をします。クモリ・カビとレンズの傷が多いです。また、ヘリコイドグリスが抜けています。

 

前玉の傷も多いですが年代を考慮すると居方が無いですかね。

 

 

清掃をして行きます。

 

 

スッキリしましたよ。ヘリコイドグリスも交換しました。Ⅳsの方は低速は快調になっていますが残念ですね。また、次の機械ということにします。

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CITIZEN ホーマー鉄道時計の巻

2017年10月22日 16時47分14秒 | ブログ

腕時計の方のリピーターさんからです。シチズン・ホーマーの鉄道時計ですね。非常にシンプルで正確な時計ですので、人気がありますね。20年ぐらい生産されましたので、放出品が多く出回っていて入手はそれほど難しくはありません。で、この個体はケースのキズや文字盤の劣化があって、あまり良いコンディションではありません。長短のドルフィン針の夜光塗料が取り除かれています。

片振りがありますが、精度については定評のある機械ですので問題はないようです。

 

拡大をしてみると、針と文字盤のコンディションは悪いですね。

 

 

針の裏側を見ると、自然に剥離したものではなく、故意に落とされています。針のキズと曇りもありますから、軽く磨いておきます。

 

残っている夜光塗料の除去と表面の清掃をして蓄光塗料を入れておきました。

 

 

機械はセイコーのクラウンと似ていて、セイコーに慣れた私には大変組み易い機械です。

 

今まで戦前のモリス型に悪戦苦闘していたのが何だったのかと思うぐらい楽ちんな機械です。技術の進歩はすごいなぁと思います。この機械には秒針規正装置が付いています。規正バネのネジを締めます。

 

文字盤の傷み具合とは裏腹に、機械は殆ど分解されていないようなきれいな状態です。定期的にO/Hは受けていたはずですが・・

 

シチズンの受石は四角で回しにくい・・

 

 

ひっくり返して何の問題もありません。摩耗も無しです。

 

 

文字盤と針を付けました。やっぱり文字盤の劣化が惜しいですね。

 

 

ちゃんと発光していますね。

 

 

で、ケースですが、昭和48年採用ですか。1973年は国鉄の順法闘争花盛りの頃で、電車の車体にビラをベタベタと貼って走っていましたね。私のような鉄道ファンからすると、鉄道が好きで国鉄職員になっているのだろうに電車が可哀想にならないかな?と感じていました。まあ、国鉄労組は過〇派・・何でもない。前のオーナーはNATOベルトを使用していたようです。

ケースはかなり傷だらけです。このケースは肉厚が細めなので削り代がありません。軽くバフ掛け程度にしておきます。

 

 みなさんの地方は台風21号の被害はありませんでしたでしょうか?いつも言っています通り、最近の台風は関東地方に向かって北上するコースが多いと思います。しかも、こちらに接近するのは決まって夜半です。大雨が心配で寝られずに睡眠不足になりました。朝方、隣の八王子市を通過したとのことで、フィリピン沖から正確にコントロールされた進路は、北朝鮮の弾道ミサイルより正確なのではないかとか思います。隣りが米軍の横田基地なので、すでに照準には入っているでしょうから。台風通過によって北風が入った影響か、北海道のINOBOOさんからは積雪の画像が届いています。

で、ケースの状態はかなり消耗していましたので、軽く傷取りをした程度で留めて置きました。手巻きモデルのため竜頭のローレットが磨滅気味で、強いゼンマイを巻くのには少し滑り気味になります。新しい竜頭に交換すると尚良いですね。

左は私所有のホーマーで、昭和50年に国鉄に採用された個体ですから仕様は全く同じですね。実用本位の見やすい文字盤と針、それに秒針規正装置が付いていますので、現在でも実用に便利なモデルだと思います。放出された個体も多いですから、入手に苦労はしませんので、鉄ちゃん派の方は入手されては如何でしょうね。

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モリス型を追加でO/Hの巻

2017年10月19日 21時20分56秒 | ブログ

今朝は寒さと雨音で目が覚めました。一段と寒くなって来て、回復していた風邪の症状が再発しました。作業はお休みにして雨の中、家族で衆院選の期日前投票に市役所まで行って来ました。日曜日の投票日が台風接近の予報だからか、大勢の方が投票に見えていました。私はいつも期日前投票をします。この日に投票に来いと強制されるのがいやな天邪鬼なんですね。みなさんも棄権しないようにしましょうね。

でと、先日O/Hをしました精工舎のモリス型ですが、この時代の時計は元々の性能と摩耗のためか、平置きの時は良好な精度を示すのに、手に持つと途端にテンプの振りが安定しません。どうも、ガンギ車などの摩耗も進んでいるようです。そこで、先日部品取りをした個体を見て見ると、「あら、こっちの方が分解キズも少なく程度が良さそう」です。よって、急きょO/Hをすることにしました。

古いので普段よりも念入りに超音波洗浄をしました。特に摩耗の進んだホゾはないですね。

 

二つ目なのでチャッチャと組んで行きます。地板と受けの合いもかっちりとして、過去の分解は少ないようです。

 

中々きれいな機械ですね。

 

 

しかし、前回の個体も同様でしたが、天真の穴石を留めるネジ2本(画像ルビーの横)の片方はネジバカの状態でした。ここのネジは戦後の新10やスーパーなどより規格が細いネジが使われていて、このネジでは毎回のO/H時に開け締めしたら持たないと思いますね。ポンス台で締めてネジ穴を小さくすることも出来ますが、規格内で太目のネジに変えたところ何とか留まりました。

コハゼバネは折れていたので、前回の個体より移植して組立完成。

 

 

小径の天輪ですから、どうしても姿勢差に影響を受けやすい傾向にありますが、こちらの個体の方が安定していてテンプの振り角も大きいです。ただし、しばらく様子を見ていましたら、長針に置き回りの傾向があるようです。針回しが軽いと思ったのですが・・筒カナを締めて調整しないと。古い時計はいろいろありますね。

筒カナも緩めですが、置き回りの原因は長針が風防の内側に接触していたためでした。前オーナーさんがデッドの風防に交換されたとのことでしたが基準に合っているのかは分かりません。そもそも固定に瞬間接着剤が使われていたのには閉口しました。中央に「S」のプリントがありますが、この辺りの事情について知識がありません。 今回は針の曲がりを修正して解決しました。その他、ヒゲゼンマイの形状を修正したところ、非常に安定しました。平置きではなく1日経過したところで画像の状態。撮影角度によってモリス型の方が1分程度進んでいるよう見えますが、実際には30秒程度の進みで狙い通りです。やはり2号機を作って正解でした。戦前の機械でも、ここまでの精度が出ていることに考えを新たにしました。

次回は軍に納められた将校用の本物を入手したいですね。出来れば海軍航空隊がいいなぁ・・しかし、坂井三郎氏の最終階級は中尉だったと思いますが、兵学校出の将校ではなく特務中尉のような扱いだったんでしょうかね? 敵機を64機(その他不確実・撃破として撃墜と申告しなかったもの多数)撃墜してお国に貢献した搭乗員の最終階級が中尉とは・・「不撓不屈」撃墜王 坂井三郎氏直筆と。

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