今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

元箱(№違い)のPEN-FT(B)すげぇの巻

2017年02月28日 19時23分21秒 | ブログ

いやぁ、セイコーGSにてごずってましてね。遅れて来たペンマニアさんが、いよいよPEN-F系に進出して来たようですよ。銀座松屋での「世界の中古カメラ市」で、狙ったPEN-S(B)は惜しくも直前で逃されたようですけど、代わりにGETして来たのがこの個体。#3299XXで、№違いの元箱付きです。久しぶりに素晴らしいコンディションの個体を見ました。あるところにはあるんですね。中古業界恐るべしです。私にとっては、新品時の艶の程度を見るのに大変参考になりますね。プライスタックには38,880円と書かれています。安いなぁ。ブームの頃だったらもっと高かったですね。

全体的にはこんな感じ。みなさんはブラックモデルと言うとピカピカの黒を想像されると思いますが、新品時の塗装はかなり艶消しで、私のリペイント機に近いのでホッとしたりして。

 

光を反射させると艶消しの程度が分かりますね。巻き戻しレバーは塗装ではなく黒メッキですが、艶は合っています。

 

白の色入れも劣化が無いので参考になります。完全な艶消しではなく、むしろ艶ありです。

 

内部も当然きれい。圧板は殆どすり傷らしいものはありません。

 

 

ただし、長期保管のためか、32万台にしてはハーフミラーの腐食が進んでいます。

 

電池蓋には傷がないので・・腕時計の針を外す時に用いる方法。ビニールを被せて回すと傷が付きません。

 

見慣れない電池が入っていますが、現在流通しているものでしょうか? 電圧は1.3Vありますね。

 

アンダーカバーの塗装も製造での限度見本的な価値があります。これ使うのでしょうか? 資料的価値が大きいですので、このままの方が・・

 

こんな可愛いPEN用ソフトケースもGETされたようです。

 

 

 裏で腕時計も進めているのですが、色々と問題がありましてPENに戻ります。この個体は資料的価値が高いので、このまま保存とも思いましたが、光学系やモルトの劣化は進んでいくし、使用していなくても画像の巻上げが「カクカクッ」という最悪な感触なので、O/Hをして保存した方がよろしいと判断しました。巻上げ感触は使っても使わなくても関係なく劣化するということが分かります。

 シャッターダイヤルのASA表示の白が変ですね。色が抜けてタッチアップしたのかな? そんなことは無いはず・・シャッターは元気に切れますが、シャッタースピードは全速1/350程度で、使用機と変わりませんね。

 

殆どの場合、ピンセットのリード線は接眼枠のモルト部分を通るのですけど、この個体は遮光テープ下を通っています。組立作業者の好みですかね。露出計ユニットを留めるネジと巻き上げユニットを留めるネジにネジロックがありません。不完全な作業者だな。

32万台で、ほぼ未使用の個体としてはハーフミラーの劣化が進んでいます。返って使用していた方が劣化が少ないかな?

 

古いモルトは取り除いておかないと塗装を侵してしまいます。

 

 

 当然と言えば当然ですが、シャッターユニットは素晴らしい。今、組み上がって来たようなコンディション。チャージギヤ(ウォーム)間のバックラッシュも、使われた個体に比べて少ないと感じます。そうか、使用過程で摩耗して来たんだね。

 湿気の多い日本での長期保管は、光学系のダメージは逃れられないようです。プリズムのコーティングは一見きれいですが、僅かに曇りがありますね。

 

シャッターダイヤル。何したんだろうね。殆ど使用されていない個体の色入れが抜けることは考えられませんが・・

 

接眼プリズムのコーティング。気を付けて清掃をしても剥離しますね。まぁ、残っている方でしょう。殆どの個体は無くなっていますから・・

 

本体の組立はほぼ完成。ハーフミラーの腐食が一番大きなダメージですね。

あのぅ、下⇣のフィルムカメラのボタン、クリックお願いしますね。最近順位が下降気味なので・・

では、各部の作動チェックと測定をして行きますが、まずセルフタイマーの作動がシャッターと連動しません。リンケージのレバーは変更後の帯板タイプで、シャッターとの連動調整は変更前のネジ式ではなく、レバー自体のスリットを開いて調整するタイプですが、すでにいっぱいに開かれていて、これ以上開く(曲げる)とクラックが入ってしまいます。そこで2回目のシャッターを切ったところ・・あ~、リターンミラーが剥がれたぁ・・使用されなくとも接着は劣化をして剥がれてしまうということ。また、分解です。

リターンミラーは再接着しました。最後にレバーカバーとカウンター関係を組み立てます。この後、ファインダーのピント調整、露出計調整などを行います。

 

組み上がってみると、やはり美品ですねぇ。実使用は当然可能ですが、ここまで使用感のない個体は珍しくなっていますので、私的には貴重な資料として保存して頂きたいとも思います。

あっ、ボタンのクリックありがとうございました。クリック数が倍になりました。思い出した時で結構ですから、定期的にポチッとお願いします。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


SEIKO 56GSなのだがの巻

2017年02月25日 20時04分20秒 | ブログ

少し更新が遅れました。先日セイコー56KSをやりましたが、今回は56GSをやり始めたのですが・・難儀をしておりますぅ~。GS専用のSSベルトのコマを外して欲しいとのご依頼でしたが、高級機の場合連結ピンがネジ式なんですね。それが内部のネジ部分が錆ついて緩んでくれないのです。結局、2日掛かりで緩めましたら、先端のネジ部分で折れてしまったようで万事休す。ステンレスでも錆びますし、ネジ部が錆びるとステンレス鋼でもネジ切れるぐらいに固着してしまいます。このベルトは残念ですが放棄・・ドライバーを2本壊しました。

ケースも研磨をしましたが、ここでもひと悶着あって、とても恥ずかしいので書けません。気を取り直して機械のO/Hをします。前回と一緒なので書くこともないですが・・KSもそうでしたが、洗浄のベンジンがかなり濁りました。相当汚れていましたね。事前の精度は極端な遅れでした。GSの香箱は金の蓋ですね。

過去に何度かO/Hを受けていますね。特に問題は無く、一番受けはすんなりとホゾが入ってくれました。

 

で、最後にカレンダー機構を組んで行きますが、ここで問題あり。56系はカレンダー早送りの揺動レバーが不良となって早送りが出来ない個体が多いのですが、この個体も竜頭をゆっくり回すとギリギリのところで送れない感じです。本質的には揺動レバーの交換が望ましいのですか、今回はピンセット先の日曜制レバーのバネを弱めることで調整をしました。

文字盤と針を付けましたが・・秒針が文字盤の位置によって上下に振れている。どうも四番車のホゾが微妙に曲がっている気がしますね。

 

自動巻きの回転錘の状態は最悪ではないものの、樹液のような液が噴出しています。これは何なのでしょうね? そもそも金属の材質は??

 

今日は新宿の病院に検診で行ってましたので作業はしていません。昨夜、ケースに九面カットの純正風防を取り付けました。オリジナルは普通の(と言っても中央が僅かな高いドーム)平面風防ですが、少し事情がありましてその・・しかし、中央線のホームに降りたら外国人観光客だらけ。「なんじゃこれは」買い物の予定もありましたが、さっさと帰って来ました。

朝、テレビをつけましたら東京マラソンをやってました。あぁ、昨日の新宿の外国人観光客はこれだったんですね。では、作業をします。自動巻きの一番仲介車に指定のS-4モリブデングリスを塗布してセットします。

 

 腐食を磨いた回転錘のボールベアリングに注油をして取り付けました。

 

 

貴重なデッドの九面カットガラスに交換して、なかなか豪華な雰囲気になりましたね。

 

純正ベルトは2本来ていますが、上はコマ間に伸びがあって、下は伸びは無いのですが、良く見ると右側のコマが割れている。う~ん、困りましたね。

 

取りあえず両方のベルトを研磨、ヘアライン・洗浄をして取り付けました。56GSは、あまり高級感はなくてLM(ロードマチック)と変わらない(裏蓋のメダリオンはある)雰囲気ですが、カットガラスに交換したことで、高級感が上がりましたね。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 


FV仕様のPEN-FT(B)の巻

2017年02月17日 20時09分48秒 | ブログ

露出計不動のPEN-FT(B) #3061XXですが、内蔵露出計での撮影はしないとのことでFV仕様をご希望です。直接的な原因は、電池室からのリード線の断線でしたが、露出計も精度不良でしたのでFV仕様とします。また、この個体は電池室の液漏れが有ったようで、巻き戻しボタンのボタンドメが固着しており、ボタンを押し込んでも留まらない状態になっています。

特に問題のない個体と思いましたので、簡単にUPと思いましたが、チャージギヤ#2の軸部にガタがあります。

 

あら~、軸受けの右側が偏摩耗していますね。圧板を点検すると、それほどフィルムを通した個体ではないようですが、じつは、使い込まれた個体だからと言って必ず軸受けやギヤが摩耗しているとは限らないと経験的に感じています。単純に潤滑の問題なのか、それとも部品の嵌合などの影響もあるのか、技術者ではないので解析できません。

拡大すると返って見にくいですかね? この状態が悪化すると、二回巻き上げの症状が現れます。

 

シャッターはその他の部分は問題ありません。#2プリズムですが、スクリーンの黒点汚れは、古いモルトカスがプリズムとの隙間に入り込んだものの他に、画像のような白点のカビのような生成物による場合があります。

 

清掃の結果、スクリーンの黒点は消えています。

 

 

ボタンドメとトメジクの腐食を磨いてスムーズに作動するように組み立てます。

 

今回は画像を撮り忘れたのですみませんね。オーナーさんのご希望により全反射ミラーに交換をして完成です。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


またまた発掘PEN-Wの巻

2017年02月15日 21時20分07秒 | ブログ

ご常連の遅れて来たペンマニアさんが、またまた発掘されて来ましたよ。もう何台所有されているのでしょう? 忘れてしまいました。PEN-W #1163XX (1965-5月製)で、未分解機になります。殆ど使用されなかった個体ですが、残念ながら保管が悪く、レンズはカビだらけ、シャッター不動の状態です。まずは、レンズが生きているかの検証です。

前玉、後玉の両方に盛大なカビがありますが、どちらかというと後玉の2枚レンズの前後です。

 

分かり易いように・・

 

 

これだけカビがひどいとコーティングは侵されていますので清掃で剥離するのは仕方がありません。しかし、剥離は少なめで、バルサム劣化は珍しくありませんので撮影は可能です。

 

オーナーさんはシャッターをご心配されていましたが、殆ど使用されなかったユニットですから問題は無いでしょう。ここのバネ1本で動いているシャッターですよ。

 

気になったのが、ファインダーの前面ガラスです。やけに薄いですよね。0.85mmしかありません。普通は1mm強ありますので目立ちます。工場で組んだのには間違いありませんが、私も長くやっていますが初めて出会いました。たぶん、納品会社で規格の板厚が欠品して「0.85mmでも良いですか?」「仕方ねぇなぁ、今回だけ特採だ」ということになったかどうかは知りません。

シャッターは全く問題ありません。新品同様です。

 

 

きれいなボディーですね。上側のモルトを接着してダイヤルカバーを取り付けます。

 

ダイヤル類もメッキの劣化がありません。

 

 

PEN-WはPEN-Sと違って絞りのクリック機構は板バネによっています。クリック感が乏しいので調整(グリス)をしておきます。

 

ファインダーの対物レンズは拭き上げではカビ痕が焼き付いて取れません。これは研磨になります。

 

左が普通のPEN-Sですが、前面ガラスは明らかに薄いでしょ。

 

 

部品はありますけど、それも特徴なのでそのまま再使用としました。で、一応完成で調子は良好ですが、ファインダー前面上の塗装ハゲが気になりますか?

 

では、タッチアップをして完成です。またきれいなコレクションが増えましたね。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


SEIKO 56KSの風防が外れただぁ? の巻

2017年02月11日 19時23分25秒 | ブログ

PEN-F系が長く続きましたね。では、九州のご常連さんからキングセイコーが来ていますのでやります。5626-7040(56系)は最後のKSですね。なんでも、腕に嵌めていたら風防ガラスがどこかに無くした。とのことです。う~ん、風防ガラスはベゼルで圧入されていますから、ベゼルがそのままでガラスだけ落ちることは無いはずですけどね?それと、SSベルトの上がKS用ですけど、半分しかないですね。下の別のモデル用(セイコー)のベルトにクラスプを移植して欲しいとのご依頼です。

しかし、簡単には移植出来ません。KS用のヒンジピンには抜け止め加工があります。また、寸法を計測してみると、下のベルトの取付巾が0.5mmほど広いです。

 

取りあえず分解して行きます。

 

 

この状態でそのまま接続出来れば問題は無いのですが、巾が合いません。クラスプ側の内寸を広げるか、ベルト側の外寸を削るかですが、ヒンジピンの保持を考慮してベルト側を削ることにします。

 

で、このように組み立てました。この後、ヘアーラインを入れてから洗浄をして仕上げます。次はKSのケースを見ます。

 

オーナーさんからは裏蓋式のツーピースケースとお聞きしていましたが、私の嫌いなワンピースケースですね。56系ロードマチックはワンピースケースが主流ですが、確かに新品で組んだ時は防水性能は良いのかも知れませんが、一度分解したら変わらないと思います。困るのは、ケースにキャリバーを固定すると地板に応力が掛かって調整をした歩度が変化してしまうことです。裏蓋と違って、何度もベゼルは開けたくないですからね。で、風防ガラスは金属リング部との接着が剥がれてガラスだけ落下したものでした。

この時代になると変に多角形のカットが多くなって、研磨はやりずらくなります。ベゼルも含めてけっこうなキズがあります。

 

思ったより深いキズが多いですよ。

 

 

愚痴を言っても始まりませんので、シコシコと研磨をして行きます。

 

 

では、機械を分解洗浄をして組んで行きます。特に問題の部分は無いと思いますが、過去に二度ほどO/Hを受けているようです。

 

日ノ裏車はバネで押されていますから注意をしてセットします。

 

 

香箱車を回しながら輪列の各ホゾが確実に入っているかを確認しながら一番受をセットします。

 

アンクル周辺。基本的に5606Aロードマチックと同じ機械ですが、振動数の違いからGS,KS,LMは部品が異なります。

 

日ノ裏側。幸い壊れやすい揺動レバーは正常に作動しました。日車押エをセットして曜車をセットします。

 

ここで問題が・・ゼンマイを巻くとコハゼが利かず角穴車のストッパーが掛からず戻ってしまう時あり。観察すると歯車との接触部分が摩耗気味です。ストックはありますが、今回は先端の形状を直して解決しました。

 

分解前の歩度測定で3分弱進み傾向でしたが、O/H後も同じ傾向でした。クロノメーターですからいけませんね。調整をしましたが、天真に摩耗がありますね。+10秒程度には入るように調整します。

 

研磨しておいたケースにケーシングします。

 

 

ワンピースケースは風防を圧入してしまうと歩度調整が出来ないため、KSではラグ間のネジを取り除くと歩度の調整が出来るようになっています。しかし、片振りなどの調整は機械を取り出さなくてはなりません。

 

文字盤には劣化と汚れがありますが不用意に拭くのは禁物です。塵をロディコで取り除いてから風防を圧入しました。

 

デッドストックの風防ガラスはリングとの接着剤が黄ばんで表面から見えてスカッとしません。現在はデッドストックは非常に高価になっています。先に仕上げておいたSSベルトはロードマチック用ですね。それを取り付けて完成です。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/