今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

珍しいお客様 ミノルタ オートコードCds

2011年09月28日 21時36分42秒 | インポート

Dscf292964 その前に、また56キングセイコーを入手してしまいました。前回のものより後期の1973年製 5626-7121です。キングセイコーの特徴である、剣型の針が普通のタイプになって、ケースは裏蓋ねじ込み式、しかもメダリオンも省略されているので、相場は多少安めに入手が出来ます。しかも不動品ですから・・裏蓋を開けて、テンプをピンセットでアシストしてみると、ヨタヨタながら動き始めました。単に油切れだとこの時は思ったのでした。

Dscf293154組立を終えて、調子を見ていますが、どうも遅れ気味です。緩急針を一杯に振っても追いつきません。輪列のほぞやテンプには目視では問題はないように見えます。さ~て、何が原因でしょうか? 時間を掛けて検証していく以外にありませんね。

Dscf293277ご常連さんから、あら珍しや、ロボット三等兵(若い人は知らないでしょうね)みたいなCds露出計を頭に載せたミノルタのオートコードCds最終型だそうです。何故か、最近はPEN-F系の修理のご依頼が減っていまして、この方も私の目の状態をお気使い頂いてご依頼を控えていたそうです。ご報告が遅れましたが、お陰さまで、治療の効果が上がりまして、視力は元の状態まで回復しておりまして、作業への支障は無くなりました。安心してご依頼頂ければと思います。

で、PENが少ないので二眼レフなどを見ています。現状で特に不具合は無い個体ですから、清掃とメンテナンスをしますが、Cdsの指示が不調とのことでしたので観察しています。オーナーさんからはこのカメラはMR-9を二個使用とお聞きしましたが、調べてると水銀電池のMPタイプという、普通の乾電池型をした電池を使用するのですね。前所有者が電池の凸側の接点を接着して改造をしてありましたが、厚みが足りませんし、ゴム系接着剤で留めては絶縁されてしまいますね。仮に、画像のように、これホンダ純正のS800用ホロのボタンを車体に取り付けるための「座」ですが、ニッケルメッキだし、直径がちょうど良い。これを二個セットしてみましたら、メーター指示は安定しています。探せばMPの代替電池もあるようですけどね。

Dscf293387 二眼レフのピント板はガラス製が多いですけど、この機種は樹脂製のフレネルレンズを装備していますね。内部にはCdsから露出メーターに配線されているリード線が見えています。ところで、私のヒコーキプラモ好きをご存知で、食玩のプラモが同梱されておりました。おっ、二式大艇か? と思ったら、3機種のうち1つが入っているというもので、ドイツのハインケルHe177という、まぁ、レアな機体ですねぇ。急降下爆撃が出来る爆撃機というコンセプトで開発された機体ですが、無理な要求をすれば失敗機となるのは日本も一緒ですな。四式重爆の飛龍などは比較的成功した機体で、緩降下爆撃や陸軍機でありながら雷撃までこなす優秀な機体ですね。国内に現存する二式大艇は現在は自衛隊の鹿屋基地に保存されていますが、アメリカから返還された当時は、開館したばかりの東京の船の科学館前に展示されていて、ホンダZで見に行ったものです。当時は、草ボウボウの埋立地、夢の島にポツンと建っていましたっけ。その船の科学館も明日(29日)で閉館だそうです。あそこには、南極観測船の宗谷もあったよね。宗谷と言えば、僕たちの年代ではヒーローですよ。あの頃はプラモデルではなくて、木製モデルの宗谷を作ったものです。似ても似つかなかったモデルでしたが・・

Dscf293456 二眼レフ機を修理する場合は、必ず前面のシボ革を剥離しなくてはなりませんが、すでに何度かの分解を受けていますので、細長い形状ゆえ、無事なことはまずありませんね。この個体も5ピースぐらいに切れた状態で、しかも、古い接着剤を取り除かないまま再接着をしているため、接着厚さが厚くなってシボ革は密着していないのです。

Dscf293515おっと、この機種は、レンズカバーを分離する前に、ストロボ切り替えのノブを外しておかなければ分離できませんね。よくよく観察すると、過去に直接ペンチで銜えたようで、ローレットが傷だらけですね。その下が、この機種の特徴の横レバー式の距離レバーです。手持ちの場合、意外に理に叶っているのかもしれません。

Dscf293834 二眼レフの場合、機械と言うのはこのシャッターユニット部分だけですね。今回は特に不調もありませんので、清掃と注油だけに留めておきます。

Dscf293785 レンズカバーの裏側。左側のギヤはシャッタースピードとシボリに連動しています。右は、連動して表示窓にシャッタースピードとシボリ値を表示します。ギヤ回転部のグリスが抜けている状態ですので、洗浄してダンピンググリスを入れてシボリレバーの動きを規制しておきます。

Dscf293687 二眼レフには多いですが、表示窓はモールド樹脂ではなくて、塩ビなどのセル板を型抜き折り曲げしたもの。これでしたら、劣化して黄ばんでも製作するのは簡単ですね。接着ではなく、セル板の切り欠きに、上面からのリベットで引っ掛けているだけです。塩ビ板ですと、接着が困難のためでしょう。今回はコンパウンドにより研磨して再使用します。

Dscf293997 側面の巻上げレバー側。レバー取り付けのカニ目ビスが緩んでいます。こちらのシボ革も外周より剥離しています。よくよく見ると、両面テープで貼ってありますね。これじゃダメじゃん、春風亭・・・。一度剥離して、古い糊を除去後、洗浄したシボ革を接着します。

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フレネルレンズはすでに何度か拭き上げをされていまして、溝の部分に汚れが入り込んでシミとなっています。拭き傷もありますね。このような古い樹脂製の場合、拭き上げをしても溝に入った汚れは取れませんし、マットが光ってしまう可能性があります。そこで、洗浄をして見ましたが、だいぶ汚れは薄くなりましたが完全には無理ですね。この辺りはガラス製の方が作業は楽です。

Dscf294161分割されたオリジナルのシボ革も何とかきれいに貼ることが出来ました。この個体は最終の生産の頃の製品で、保存状態も良いですから程度は良いですね。作りもしっかりとしており、さすが人気の二眼レフだと思いました。


片耳PEN+C35パンダ?

2011年09月19日 22時53分58秒 | インポート

Dscf291957 ちょっとブレーク。キングセイコーの歩度調整をしていましたが、2日で+1秒まで詰めましたので良しとしましょう。このケースはワンピースケースで裏蓋は開かないために、画像の位置に歩度調整用のビス孔があります。密閉用のビスを取り付けますが、防水用のパッキンかOリングが風化して無くなっています。とりあえず、ゴムシートからパッキンを作ってビスを取り付けます。

Dscf2920881 そこでこれもINOBOOさん所有の片耳PENですけどね。トップカバーと巻き上げダイヤルカバーの位置関係がおかしいとのことです。吊環を外して観察していますが、確かにのダイヤルカバーとトップカバーの下面が揃っていませんね。しかし、を見るとダイカスト本体との接合部分は一杯ですから、これ以上はトップカバーは下に下がりません。そもそも、巻き上げダイヤルとトップカバーの隙間も空き過ぎのような気もしますが、三光やこの片耳辺りまでは、このような個体も存在はします。私は、このダイヤルカバーはオリジナルではない気がします。

Dscf292277 トップカバーを分離してみると・・・すごい砂ですね。海砂だと思うのですけど、海水浴に行って砂浜にカメラを落としたのかも知れませんね。あれだけ隙間が空いていれば当然ですけど。

Dscf292454 カメラを引いて撮影します。砂の他にホコリや油汚れがひどいですね。すべて分解して洗浄します。

Dscf2925541 すでにシャッターユニットをO/Hして洗浄した本体に組み込んでいます。巻き上げダイヤルのカバーですが、普通に組立てるとのようにカバーと密着せず大きく隙間が空いてしまいます。部品を観察すると、このカバーは後期のオリンパスで製造されていた頃の部品だと思いますね。三光PENの頃は横からの熱カシメでしたが、この片耳PENの頃になると上部からのビス留めになります。しかし、部品自体は肉厚で金型は別のものです。画像の部品は、金型の改良により、非常にシャープな仕上がりとなっています。よって、留めビスの位置が微妙に異なるので、そのまま組むと合わないのです。これは修正をして合わせることになります。

Dscf292627巻上げダイヤルカバーはトップカバーに合わせて位置を修正しています。この頃の駒数ガラスはモールド製ではなく挽き物ですので持病のクラックは起きません。両面を研磨して使用しています。駒数針は三光と同じ金めっき仕様ですね。腐食がありましたので、再めっきをするつもりでしたが、研磨をしたところ部分はほぼ良好となったので、このまま再使用としています。針のつまみなどは画像のように腐食が進んでいます。すべて研磨をしてから組み込みます。

Dscf292751この個体はft表示ですから里帰り機ですね。ローレット部分のアルマイト剥離が激しいです。再アルマイトの方法もありますが、メッキと違い再アルマイトはきれいには上がりません(特に彫刻文字のつぶれ)のでローレットの谷部分に堆積するアルマイトの酸化粉を削り取って塗装をします。

Dscf292855 タッチアップ塗装をしたピントリング。彫刻文字と絞り指標▼の塗料が劣化していますので、入れ直してあります。三光PENからすでにレリーズボタン、フィルム位置彫刻、巻き戻しダイヤルノブなどの変更点があります。

Dscf292955昨日の台風は近年にない風の強さでした。今日はホンダライフとバイクを見てやりました。またまたブレークタイムをしています。ユニットを入れ替えたペンダントウォッチですが、風防にクラックが多数入っているので交換をします。たぶん中国辺りの組立で、無理にはめ込んだのでしょう。φ20mmの新品の風防です。そのままでは入らないので、画像のようなグラスヒッターという挿入工具を使いますが、この工具を使うと爪でつまんだところが傷になる場合があるのであまり使いません。セイコーの防水モデルの場合は専用にリングを締め込むタイプのSSTがありますので傷を付けることはないのですが。

Dscf293100 風防はこのように挿入が出来ました。これで完成ですが、デッドストック品なのでプライスタグが付いたままですね。中身のユニットの価格からしてすごい値段だなぁと思います。

Dscf293066

ではカメラに戻ります。コニカC35のブラックとシルバー(アルマイトなのでクロームではない)ですね。これをM6ライカのパンダ仕様にせよ。とのご指示ですねぇ。では始めますよ。

Dscf2932551 とは言っても、通常の修理とは勝手が違います。一見後ろに写っていたシルバーの個体に見えますが、じつはブラックの個体にシルバーの裏蓋と底蓋を取付けて茶色のシボ革をはがした状態です。は、ライカレンズに雰囲気を似せるために赤いボッチを取り付けるため、真鍮のダボを植え込んだところです。以前はボッチに差し込みの突起がありましたので孔加工だけで済んだのですが、今回のボッチは逆のタイプなので、位置決めと接着のためのダボが必要なのです。しかし、このボッチに意味はありません。ただの飾りです。

Dscf293388 で、赤ボッチを接着してあります。この部品はいつも支給して頂くのですが、なんの部品でしょうね? 距離の彫刻文字の色を変えています。ライカとは白と黄色の順番が逆のようですがmとftの表示が逆なので・・黄色の色は本当は違うでしょうが、私のところには本物が無いので雰囲気ということで。セルフタイマーレバーですが、今回の2台の製造時期の違いで材質が変更されています。左が真鍮にクロームメッキ、右はアルミのワンパンチにアルマイトです。どっちがどっちだったかなぁ? ブラックに塗装しますので真鍮のものをめっきを剥離して使用します。

Dscf293466シボ革をオリジナルに戻して接着しました。C35はブラックモデルであっても何故かセルフタイマーレバーはクローム仕様となっていますので、めっきを剥離してブラックに塗装してあります。

Dscf293564 え~と、ご指示とおりに組立ててみましたがイメージとおりになりましたでしょうかね? M6のパンダとは、トップカバー上のレバーやダイヤルがパンダの目に見えると言うことかな? 良く分かりませんが、ノーマルの個体と比較して、ちょっとインパクトが強くなっているようですね。いつもながらINOBOOさんの想像力と遊び心には関心しますね。これでC35パンダの完成です。9/26

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


久びさPEN-Wリペイント

2011年09月15日 18時42分53秒 | インポート

Dscf290757 このPEN-W #1150XXのオーナーはご常連の北海道はINOBOOさん。過去にオーバーホールを実施していますが、彼の美的感覚からしてトップカバーの剥げが気になるとのこと。う~ん、PEN-Wとしては剥げはこの部分だけですので、ずいぶんきれいな方だと思いますけどね。しかし、トウモロコシ送って頂いちゃってますからやらない訳には行きませんね。

Dscf290887 何かきっちゃない画像ですみません。あまり出さない画像ですが、リペイントの作業の殆どはこんな作業をシコシコする連続なのです。一見きれいに見える塗膜ですが、エッチングプライマーの作用か、剥離剤で塗料を剥離してみると茶色い酸化層が出てきます。また、くぼみの部分は剥離剤では処理出来ませんので手作業で研磨をして行きます。サンドブラストを使用する場合もありますが、PEN-Wの場合は彫刻文字が浅いので、なるべく機械的な処理は掛けないようにしています。

Dscf291188 本体ダイカストと裏蓋(背)の部分は塗膜に「てかり」はありますが、剥離はしていませんので、今回はなるべくオリジナル部分を残すように作業をすることにします。塗装は上下カバー部分のみです。ご覧のようにピカピカに研磨して塗装を待ちます。幸い、この個体はへこみや汗によるピンポール腐食は殆どありません。ここまでで一日の作業です。リペイントは非常に手間隙の掛かる作業ですが、これをやってこそ私の特徴ですから頑張ってやります。

Dscf291355 今日も関東地方はきびしい残暑で、外出から帰宅したら疲れちゃって・・海水温が高いとのことで、台風だけは次から次と発生して日本を狙っている。紀伊半島の被災地の雨が心配です。で、PWN-Wの塗装は週末にするとして、今日はクオーツのペンダント時計をやっていました。身内のためにデッドストック不動品を入手したのですが、電池を交換しても作動しない。クォーツの電子回路は常に通電しておかないと故障するとか。しかし、クオーツは測定器も所有していないので分かりませんね。画像の左下が故障していたスイスのユニット(RONDA763)です。ユニットの左下の部分が発振回路で下の筒が水晶振動子。2の15乗(32768Hz/秒)で振動したものを分周回路によって1/秒に変換します。それを右側のステップモーター(コイル)によって磁気により中央の輪列を駆動します。と、まぁこう言う仕組みらしいです。今回は、同じユニットの新品が調達出来ましたので、すでに文字盤と針を組立てています。このユニットは1.000円でしたが、セイコーやシチズン(ミヨタ)などの量産品はネットで650円程度で入手することが出来ます。時計メーカー製でない、いわゆるブランド時計や雑貨時計には同じユニットが多く採用されており、とんでもない価格で販売されています。正確なクオーツ時計は70年代にセイコーが量産に成功したすばらしい製品ですが、消耗品的電化製品ですから、機械的な魅力などはなく、分解する楽しみもありませんね。あとは風防は未使用なのに中心に細かなクラックが多く走っています。何らかの強い圧力を受けたのでしょう。小径のためストックが無いので現在手配中です。

Dscf291292 アメリカの航空ショーでP-51が墜落して大勢の犠牲者が出ているとニュースで見ました。墜落の原因は不明とのことですが、ほぼ垂直に落下していることから尋常な落ち方ではないですね。パイロットは高齢のようなので、体調に異変があって失神したのかもしれません。しかし、運悪く観客席エリア落ちて大惨事となった模様。大戦機が現在でも飛行出来るのが欧米のすごさだと思いますが、貴重なP-51がまた失われてしまった。以前にもイギリスでモスキートが墜落しています。

PEN-Wは塗装をしました。底蓋には1ヵ所打痕がありましたね。研磨作業をしてみないと分からないような歪みも使用過程機ですからあるものです。トップカバーの母材の状態は悪くはありませんでしたの仕上がりはまずまずと思いますが、艶がちょっと計算よりも死んでしまいました。すべてリペイントであれば、これで良いと思いますが、本体と背の部分が使用による摩滅でひかり気味ですから、少し艶ありにしたかったのです。この辺りが焼付塗装の難しいところ。焼き上がってみなければ最終的な艶は分からないのです。コンスタントに作業をしていませんと感が鈍るのですね。まぁ、使用しているうちに光ってきますけどね。

Dscf291361 P-51はどうも水平尾翼の破壊らしいね。殆ど新製の機体ではあっても、機齢的には古いので、エアレースのような飛び方は危険が大きいと思いますね。唯一の「栄」発動機を積んだ零戦52型などは、飛行制限があるので急激な機動の飛び方は出来ないのだけど、とにかく貴重な機体が失われることが無いように願いたいですね。

で、裏蓋です。画像では左右ひっくり返っていますが、底の内側もこのようにきれいに塗装をしてあります。これを新製のリベットで組立てて行きます。

Dscf291488 プレスでリベットをカシメたところ。三脚座のナット締め、巻き戻しボタンも付いて来ました。開閉鍵は古いグリスを洗浄してあります。新しいグリスを塗布して組立てて行きます。

Dscf291539 完成したところ。底の部分は、へこみや歪みなど程度の悪い個体はヨレっとした感じが残ったりしますが、この個体の場合は軽く研磨をした程度で非常にシャープに仕上がっていると思います。

Dscf2918781 トップカバー上面から。彫刻文字部分の程度はよく、殆ど研磨はしなくて済んでいますので彫刻文字もきれいに入っています。程度の悪い個体は殆ど彫刻文字の深さが無くなって(元々極端に浅い個体もあります)リペイント屋泣かせのものも多いのです。ダイカスト本体との艶の差がありますが、本体の方が使用過程で光っているもので、オリジナルのトップカバー程度の艶で正解です。無理に艶を合わせようとグロスで塗装をすると、艶消しが摩滅で光って来たものとは風合いが違ってしまいます。使用して行く過程で違和感は少なくなって行くものです。


40mm f1.4+25mm f2.8の清掃

2011年09月12日 22時15分34秒 | インポート

Dscf290337 レンズの清掃で2本来ていますが、その前にちょとブレークタイムで時計の組立をしていました。このモデルはセイコーLM(ロードマチック)25石の角型変形ケースですが、56系の機械で基本的に56キングセイコーと共通のため部品取りとして数台入手したジャンクの一つでしたが、テレビの画面のような形が面白く、治してみることにしました。セイコーの角型ケースは前面カバーをサイドのバネによって保持しているだけの構造のため、とても強力な防水性能は期待できません。よって、文字盤を見ると9時などの部分に腐食があって、ちよっと残念ですね。自動巻きのローターの縁は腐食が進んでいました。機械としては、リューズで針は全く動かない状態。この場合は、輪列に重大な問題を抱えていることが多いのです。結果は、ピンセット先の三番車の軸の先端が折れていました。落下などの衝撃で折れたのでしょう。他の個体から移植してあります。その他、この機械の持病である日曜日送りが出来ない。こちらも交換して作動状態としています。その他、傷だらけのカバーのヘアラインを修正して風防ガラスを研磨してあります。

Dscf290533 このように仕上がりました。今日一日、外出につけてみましたが、日差2秒という、大変優秀な精度でした。改めて56系の優秀性を実証したようです。付属でついて来たメッシュのバンドは似合うのですが、ちょっとヤレちゃっていますね。現在発売されているメッシュバンド(19mm)は一万円以上するようなので躊躇しちゃいます。本体は千円でしたので・・

Dscf290499 で、お仕事です。2本のレンズ共、防湿庫保管でしたが、カビが発生したとのことでしたが、こちらの40mmはカビは無いようで、ルーペで観察すると、ガラスに細かなクラックが入っているように見えます。これは、元々持っていた不具合が、長い時間の中で現れて来たものでしょうか? その他、塵の混入があります。しかし、翌々見ると、分解されていない群内のレンズも、結構すり傷がありますね。この程度の品質だったわけです。

Dscf290616 今年はいつまでも厳しい残暑が続きますね。昔に比べて、日本では私の好きな皮ベルトの腕時計が出来る期間が短くなっている気がします。皮ベルトには汗は大敵ですので・・

そこで、この25mmも最近の高温が影響しているのかなぁ? オーナーさんはカビとおっしゃいましたが、観察をしてみると・・・これは前玉を分離して裏から光線を当ててみたところですが、プツプツと気泡状のものが無数に見えます。これは、レンズの1枚目と2枚目を貼り合わせているバルサムが劣化したものと思われます。オーナーさんは防湿庫保管とのことで、異常は急に発生したようですので、湿気ではなくて高温が原因ではないかと思うのです。これは清掃できれいにすることは出来ません。取りあえず、みなさんのレンズも高温となるところに保管されないようにお気をつけください。


PEN-FT+PEN-F+PEN-W

2011年09月08日 22時33分43秒 | インポート

Dscf2893791 ご常連さんからいろいろ来ています。まず、PEN-FTですが、撮影した写真に光線漏れがあるとのことで、チェックをすると、シャッター幕にピンポールの穴が開いていますね。ルーペで観察すると、これは後天的についた傷ではなくて材料の巣ですね。エッチング工程での不良が後に剥れたように見えます。これは黒の接着剤で遮光しておきます。

Dscf289455 では本題です。このPEN-F #2153XXは外観などのコンディションはそこそこきれいですが、何故かリターンミラーが閉じたままで、応急復帰を試みてもビクともしませんね。このように固着している時は、経験的に何か大きな問題があるケースが多いですね。

Dscf2897781 そこで原因を追究して行くと・・・ガバナーのレバーが折れていましたよ。回転するハンマーに叩かれ続けていますから金属疲労で折れるものが増えています。良品のガバナー自体が非常に貴重となっていますので、それに付随するレバー(カシメ組立)も部品を確保するのには苦労します。今回は分解をして不良が判明したために当方で部品を調達していますが、修理ご依頼分を全て確保することは出来ません。その意味でも、部品調達用のジャンク機を確保して置かれることをお願いしておきます。

Dscf289646 その他、シャッターユニットに不具合はありません。ブレーキもまぁまぁ利いていますので、今回は交換しません。チャージギヤの潤滑不足による歯の損傷は多少ありますね。

Dscf289867 メカはそれほど消耗していませんでしたが、やはりプリズムに腐食が出ていますね。保管が悪いとは思えない個体でも、Fのプリズムは弱いようです。まぁ、撮影が出来ないわけではありませんが・・・全反射ミラーは汚れはありますが清掃で再使用としています。フレネルレンズのカバーを接着しておきます。

Dscf2900331 本体は完成。巻き上げも非常に良好です。付属のF用38mmは使用歴はあまりない個体ですが、とにかくレンズのカビがすごいことになっていますね。経験的にこのカビは比較的落としやすいカビだと思いますよ。では、全て分解洗浄から・・。

Dscf2901511 では、PEN-W #1225XX(1965-5月製)に掛かります。画像が見難いですが、とにかく汚らしくて塗装の剥離部分を筆塗りで塗装されている個体。分解を受けていますが、あまり上手とは言えませんね。↓の吊環部がへこんでいますが、この他にも巻き上げダイヤル上部が大きくへこんでおり、巻き上げダイヤルと干渉しています。その他、カウンターガラスのクラックやカバー横のビスがオリジナルでない+ビスなど、いろいろありますが、本来はリペイントをご希望でしたが、私の都合でオーバーホールのみとさせて頂いていますので、今回は細かなところには目をつぶって次回の作業とさせて頂きます。

Dscf290221 タッチアップ塗装は裏蓋の内部にまで及んでいます。余計なことを・・・圧板も腐食で汚れていますね。

Dscf290364 シャッターユニットはすでに分解を受けていました。しかし、作業が雑ですね。拭き上げ時の繊維片が残っていたりで感心しません。腕時計なら止まっているところですね。画像は、全ての部品を洗浄して組立てているところ。消耗は少ないが、シャッター羽根に腐食が多めですね。

Dscf2904841 本体は完成。清掃のためにレンズを分離したファインダーは接着して完成していますが、吊環部のへこみと部分のへこみ修正をしてあります。しかし、完全にはなっていませんね。まぁ、今回は機能優先で巻き上げダイヤルと干渉しなければ良しとしました。リペイントの場合は完全に修正しなくてはなりません。

Dscf290578 これで完成としています。本体は巻き上げも軽く、シャッターも快調です。但し、惜しいことにレンズの後玉にバルサム曇りがありますね。裏蓋ですが、ご覧のようにタッチアップをした塗料だけを溶かして清掃してあります。圧板もご覧のように研磨してあります。本来は、オーバーホールですから、ここまでの作業をする必要は無いと思いますが、このひどい状態を見れば、見て見ぬ振りは出来ない性分です。お願いですから、余計なことはしないで頂きたいのです。