今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年最後のPEN-FT

2014年12月29日 13時00分37秒 | ブログ

いよいよ巷では年の瀬ということで慌ただしくなってきました。旅行や帰省に出かけた方も多いことでしょうね。私も一応は正月休みモードなんですけど、普段よりは多少は少なめとは言え、訪問してくださる方も多いので、正月モードでUPすることにしましょうかね。腕時計の方は、作業待ちも多いのですが、カメラも並行して進めてはいるのです。すでにO/Hは済ましたところからですが、最近、リペイントのご希望が多いのですね。タイミングが良ければお受けして差し上げられますけど、工数の掛かる作業ですからね。で、塗装をしたダイカスト本体に同じく塗装をした小物部品を取り付けていきます。

反対側のラッチもグリスを塗布してからラッチカバーを取り付けます。

 

 

すでにO/Hを終えていたシャッターユニットを組み込んでいます。#2216XXと前期型の個体ですが、シャッターの低速が極端に遅い現象があって、スローガバナーを点検しても原因が特定できない。今までに経験したことのない症状でしたが、解ってみればメインスプリングが斜めに巻き上がる癖により、解放時、ハンマー軸にスムーズな回転トルクが伝わらないためと判明。形状を修正して解決でした。

シャッター幕保護のため、塗装をした裏蓋を着けておきます。

 

 

ターミナル接点を着けて、シャッター側と半田付けをしておきます。

 

 

メカ部分は完成。

 

 

22万台としては標準的な劣化具合のハーフミラーです。ご希望により新品と交換することにします。

 

スーパーに行きましたら、正月用の買い出し客で混雑していましたよ。わぁ、今年中って明日一日しかないの? 除夜の鐘までに仕上がるのかなぁ・・二年越しになりそうな予感です。メッキと塗装では嵌合寸法が変わりますので、仮組みをして様子を見ています。

ちょっと間に合わないね。しかし、大晦日まで手を荒らして仕事をしているのは私ぐらいかなぁ? それだけ見えないところに手間の掛かる作業です。シャッターダイヤルのASA感度の色入れをして本体に組み込みます。

 

露出メーターとの連動を合わせてダイカスト本体に取り付けます。

 

 

トップカバー、巻き戻しダイヤル、セルフタイマーASSYを完成させます。今年はここまでにしますね。今年も一年お付き合いを頂きましてありがとうございました。皆様良いお年をお迎えください。

 

皆様、新年あめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。遅い朝の目覚めでしたが、こちら関東地方は朝方は日差しもあって、良い元日になるかなと思いましたが、昼前から曇って寒い一日となりました。皆様の地方はどんな元日をお迎えになられたでしょうか。二年越しの作業ですが、このカメラのご依頼は隣町の立川市にご在住の方でして、私も立川市の出身で、氏神様は諏訪神社になりますので、早めに初詣に行こうかと思っています。で、お屠蘇モードでぼちぼちと作業を進めています。シボ革は洗浄をしてそのまま使用しますが、早めに接着をしませんと、どんどん縮んでしまい寸法が足りなくなってしまいます。この頃は、ダイカスト本体とカバーとの合い(段さ)が悪く、ご覧のようにテープや紙片などで段差調整をしてありますね。

PEN-F系はライカなどと同じで、上下カバーの間に挟まれる構造ですので、個体によって隙間が開くことがあります。工場では黒マジック様でごまかしてあります。よって、接着には上下カバーを仮組みをしてから隙間の開かないように(開きますが)調整をしながら貼っていきます。

裏蓋のシボ革は長いので、時間を置くと1mm程度縮んでしまいます。

 

 

本体の組立は完成です。

 

 

付属の38mmは設計変更後のタイプなので、この個体にセットで出たものではありませんね。清掃をしてあります。画像はどうしても明るく写ってしまいますが、本当はもう少し暗い色です。これで二年越しのPEN-FTオリーブは完成とします。

おまけ。PEN-FTのカタログから。

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SEIKO マーベル14045をレストアするの巻

2014年12月26日 12時30分13秒 | ブログ

ついでなので、私物で仕上げ待ちであったセイコー・マーベルをレストアしちゃいますね。マーベルは1956年から発売されたモデルで、それまでのスーパーなどに比べてスイス時計の精度に追いついた優秀な機械で、当時爆発的に売れたようです。石数、耐震装置の違いで多くの種類が存在しますが、この個体は1958年5月製造の14045 17石、チラネジ付テンプと耐震装置はダイヤショックとなっています。現状は油切れで停止状態。風防ガラス(トキライト)には内部崩壊の細かな傷が多く入っています。

この個体は、ケースのラグが1個所曲がっていて、それでオークションで入札がないものを入手しました。ラグは修正しましたが、14kケースのため、真鍮の腐食が少ないのが幸いしたか、文字盤への汗の侵入などがなく比較的良い状態を保っていました。現在は、部品の入れ替え個体も多いですが、この個体はオリジナル状態ではないかと思われます。

クラウンやグランドセイコーに通じる妥当な設計と仕上げですから、それ以前のスーパーと比較して組立精度は良好です。酷使された個体は、丸穴車などの摩耗が進んでいますが、この個体は摩耗は少ないですね。

 

初期の耐震装置なしからU型、E-2型、S-2型と頻繁に耐震装置が変更されたようですが、この個体はどれなんでしょうね。良く知りません。丁度、腕時計に耐震装置が付き始めた頃の試行錯誤が見て取れます。

 

12時下の「S」は初期型の印。6時にDIASHOCKと印刷がありますが、極初期の耐震装置なしには印刷されていません。太めの剣型針は私のお気に入りです。しかし、文字盤はまだ小さく、現在の目にはボーイズサイズで、後期になるとケースを大型化した製品となっていきます。私はこのサイズで丁度良い感じですが・・

組立中に気になっていたのは、磁気帯びのため角穴車などがドライバーに着いてくる状態でした。方位磁石を近づけると、やはり竜頭付近が磁気を帯びていることが分かりました。この後、消磁をしましたら、方位磁石には無反応となりました。帯磁は精度不安定となります。

裏蓋は中央がへこみ気味(裏蓋を閉めようとして?)でしたので修正をして軽くヘアラインを再生してあります。チラネジ付テンプですが、作動は安定して素性は良いと思います。

 

風防ガラスは交換ですが、ベゼルの接合面の研磨により、痩せた分を計算してワンサイズ大き目の風防を選んでおきました。よって、器具で絞って挿入してがっちりと嵌りました。

 

私がマーベルのイメージと言えば、チープな茶色のカーフベルトですね。小学6年の時に腕にしていたことがあるからです。と言うことで、デッドストックの茶ベルトを選択しました。この頃の手巻モデルを仕上げる時に、一番困るのが竜頭ですね。金メッキの竜頭は磨滅しているものが殆どで、交換の需要も多いと見えて、オークションなどでドンピタのものを見つけるのも至難になっています。14045は防汗竜頭ではなく、それ以前の防塵竜頭なので余計に現存数が少ないです。また、何故か、入手出来た竜頭のネジピッチが合わないことも多く、今回も合いません。巻芯はM1 ピッチ0.25mmですが、規格には0.2mmもあるようです。製造の時代によってなのか、亀戸のモデルとも違うこともあって、この辺りについては知識が無く判然としません。何用か不明ですが巻上げ性能の観点から直径が大きめの竜頭をつけておきます。一度も歩度調整をしていないのに、現在日差は平置きで+数秒以内と非常に優秀で、ゼンマイの持続時間も申し分ありません。腕に嵌めていても重さを感じず違和感もない。人の動きにフィットしたこの時代の時計は人間的で心が和みます。

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SEIKO 初代グランドセイコーを救出するの巻

2014年12月24日 14時04分44秒 | ブログ

竜頭(巻芯)が欠落して放置され、不動状態の個体は1960年より発売されたグランドセイコーのファーストモデルですぞ。う~ん、もう少し程度の良い時にお会いしたかったですね。クロノメーターとなっていますが、スイスのクロノメーター優秀規格と同一の社内検定に合格して歩度証明書付で世の中に出た個体ですね。

ケースは14Kの金張りですが、残念ながら母材の真鍮の腐食は如何ともしがたく、特にベゼルと裏蓋の接合面が激しく腐食をして側の金のみが残っているという状態。よって部品の嵌合精度が変化をして圧入にならないのです。キャリバーはcal3180で、セイコー・クラウンベースですから、取りあえずクラウンから竜頭(巻芯)借りてO/Hをしていきます。

流石、腐っても鯛。ケースが厚めのためか機械に水の侵入などがないのはラッキーでした。証明書付の高級機ですから機械には個体番号が刻印されています。

 

では、洗浄をして組み立てをしていきますよ。基本的にクラウンと同様ですが、秒針規正装置が付いています。

 

手巻き機械で25石ですから、香箱にも石が使われています。

 

 

追加された秒針規正装置。テンワではなく、直接四番車を止める構造です。

 

 

特に問題は無くスムーズに組立が進みます。あとはテンプを取り付けます。

 

 

ダイヤショックの受石に注油をしてバネをセットします。この作業が時計組立で一番難しいと思います。

 

めでたく再び動き出しました。普通のクラウンと異なり角穴車などの作りが高級ですね。

 

問題のケースです。画像は軽く研磨をしたところ、普及機の20ミクロンとは違いメッキは厚いですから、あまり角が出ることは心配せずに磨けます。裏蓋のメダリオンは完璧に残っています。

 

風防には細かな内部崩壊がありますが、純正品は入手出来ても極めて高価ですので研磨で再使用としますが、べセルが痩せた分、圧入とならないので接着をしておきます。

 

ロービート5振動ですが、歩度調整では流石に高精度の片鱗は見えました。しかし、現在の7S系ファイブの方が高精度でしょうね。文字盤は高級仕上げのSD文字盤(6時上のマーク)ですから、曇っていたインデックスを拭くと、ご覧のようにピカピカです。18金無垢ということらしいです。針も肉厚で立派です。(記述後の測定では平置きで日差0でした!)

裏蓋を閉めて組立終了。メダリオンが渋いですね。

 

 

意外にラグ幅は現在の主流18mmですので、ベルト選びには困らないでしょう。少し気張って良いベルトを着けて上げると良いでしょう。オリジナルの竜頭は探して是非交換をしたいところです。

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SEIKO 5 SPORTS をレストアするの巻

2014年12月21日 19時07分23秒 | ブログ

カメラの方は一息ついた感じですので久しぶりにレストア待ちの時計(10個ぐらいあります)をやらせて頂きますね。セイコー・ファイブスポーツ6119-8140ですが、紺の文字盤は、私が高校生の頃に所有していたファイブDXと似ていて目につきました。1968年製と同時期の製品です。入手した個体の程度はあまり良くなく、風防ガラスとケースに傷が多いコンディションでした。画像は風防ガラスを研磨してみたところですが、傷が深くて取り切れませんね。

この個体は21石ですが23石仕様の個体も存在するようです。また、ハック機能がありませんので、秒針を止めることができません。現代に使用するには、ちょっと物足りなさを感じるところです。そこで、手持ちのファイブ・アクタスSS用の改良型6106C(25石)と換装することにします。

ユニットを取り出したところ。カレンダーがブラックからシルバーになりますね。また、曜車は漢字表記にも出来ます。最近、遠視が進んで、ブラック仕様の文字が読みにくく感じていましたので、都合が良いかもしれません。

自動巻きの回転錘のビス留め方式が変更されています。

 

 

すべて分解洗浄をしたところ。一度も分解を受けていない機械でしたが、摩耗は殆ど無く、コンディションは大変良いですね。

 

この部分が改良点。真鍮の規正レバーが追加されています。竜頭を引くとテンワと接触をして止めるからくりです。

 

組立は省略。文字盤と針をオリジナルから移植しました。カレンダーも良く判読できます。

 

最近食べるのを自粛していたチョコレートを貰いましたので記念に撮影をしてみましたよ。中々きれいな文字盤でしょ。今見てもこの文字盤の色は好きです。

 

ケースは残念ながら比較的ラフに使われた個体で傷が多いです。画像は側面の鏡面研磨と上面のヘアーラインを入れたところ。今回は電動工具を使用せず、手磨きのみで仕上げています。風防ガラスは残念ながら、純正部品は入手出来ず、社外品を調達しました。社外と言っても汎用品ではなく、専用設計ではありますけどね。

新しい風防ガラスをセットしたところ。一段と文字盤のネイビーブルーが冴えて来ましたね。まだベゼルで固定していません。オリジナルの風防は、やはり黄ばみもありました。

 

特徴的なデザインのベゼルは、一番、傷のダメージが多く、軽く研磨をしてありますが、12等分の掘り込みがありますので研磨はほどほどにしないとね。文字盤のインデックスと正確に位置合わせをしなくてはなりませんので機械をセットしてあります。

回転錘を取り付けたアクタスSS用6106Cです。この後、タイムグラファーにて歩度調整を行いました。

 

今回はブルーの文字盤を生かして革ベルト仕様としましたが、現在はラグ幅19mmは少数派で、あまり選択肢がありませんが、今回はリオス・ニューオリンズのネービーブルーを選択しました。イメージよりも少し明るい色でしたが、まぁ良しとします。作りも丁寧で、大型の時計用には良いベルトと思います。カレンダーも判読が楽です。特に私のように、英字の曜日を月曜から数える語学力の人間には、漢字表記はありがたいです。若い頃はかっちょ悪いと思っていましたけどね。

私は、カラー文字盤初期のセイコーブルーが好きです。1968年という時代を考慮すれば派手なデザインのはずですが、セイコーのセンスは何故か品があります。最初に手にした腕時計がセイコーだったからそう感じるのでしょうか? そう言えば、自動車はホンダ(N360)だし、カメラはCanonに思い入れがありますね。人間の嗜好って面白いですね。70年代になると、文字盤の加工技術も進歩したものか、放射状に光る派手な文字盤が増えていきます。時代の流行りなのでしょうね。

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可愛いFUJICA Mini 2台の巻

2014年12月16日 15時04分40秒 | ブログ

久しぶりにフジカミニが2台来ていますよ。中古屋さんでも根強い人気のあるカメラで、程度の良いものは相場も高いですね。左側の貴重な純正のストラップ付が#2429XXで右側がそれより製造の早い#1530XXです。小さくて簡単なカメラに見えますが、分解修理は意外にやりにくいカメラです。

上が#1530XXですが、FUJI PHOTO・・・に白く色入れがされていますが、#2429XXには施されていません。これは、上は彫刻文字で下はプレス刻印のため、色入れが出来ないのです。元々工数低減が理由でしょう。

 

変な構図ですみません。上の#1530XXは露出計不動です。

 

 

それに絞りレバーがプラプラで絞りが変化しません。機能的には#2429XXは正常に作動するようですので、UPは#1513XXを中心に行います。2台続けても長くなるだけで、あまり意味がありませんし、どっちの事か分かりずらいですからね。

あまり良く分かりませんが、角にアタリというよりは陥没? があります。

 

 

両方に言えますが、巻き戻しダイヤル部のカバーがへこみ気味ですね。構造的に日さしのような部分ですから弱いのですね。

 

絞りが作動しないので絞り羽根を作動させるピンが脱落したためです。たぶん、絞り羽根の固着を無理に回したのでしょう。

 

露出計が作動しない直接的な原因はセレン光電池のリート線断線。テストでは、起電力は弱くても作動はさせることができそうです。

 

酸化したパターンへの半田付けは非常に困難で、成功しないことの方が多いですね。あまりやりたくはありませんが何とかやりました。

 

絞りユニットのピンを再カシメします。レバー部も捻じれていましたので、強い力で破壊されたようです。

 

最後に洗浄脱脂をして完成。

 

 

構造的にはPEN-EEと同様です。腐食が進んで真鍮ブラシで擦ると粉になってしまいます。

 

絞りユニットと露出計ユニットが完成しました。これで何とか治せる目途が立ちましたね。

 

単側1/125のビハインドシャッター。シャッター羽根の状態も良くありませんでした。洗浄、研磨をしたところ。

 

露出計+セレンを組み込んだところ。

 

 

ケラレを修正されたらしいファインダーユニットを組み込んだところ。

 

 

裏蓋のモルトを交換して組立完成。ダミーフィルムを装填してテストをすると、スプールが空転して巻き取りが出来ません。このカメラに多い不具合い。スリップ率を調整をしておきます。

 

シャッター羽根の錆がひどく、羽根が閉じない不具合があって、露出計不動、絞り不良とまさしくジャンク状態でした。生産数はあまり多くないモデルですから、復活出来て良かったですね。もう一台作業を致しますが、UPは省略するかもしれません。

こちら#2429XXの方が製造は後なんですけどカバーのへこみが多いですね。出来るだけ修正をしておきました。また、ファインダーの材質もアルミの加工から樹脂製に変わっていますね。

 

全体のオーバーホールとモルト交換をしてありますが、デザイン優先のカメラなので、モルトの形状も簡単ではなく厄介です。製造時期の違いによってトップカバーの彫刻文字の太さも微妙に変化していますね。発売は1964年とのことで東京オリンピックの年なんですね。「MINI」という単語はミニスカートの女王ツイッギーが流行らせたと思ったら、ツイッギーの来日は1967年だとか。車のミニなどが流行の語源でしょうか? 万年筆にも軸の短いミニというのがあった気がしますけど・・確かに小型でデザイン性に優れた意欲的な製品だと思いますけど、現代の目から見ると、とにかく重い。返って小さくて重いことがバランスが悪く、カメラの保持には逆効果な感じがします。全金属製とした当時の生産の流儀では仕方のないことでしょうけどね。

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