今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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これは困ったぞPEN-FT(B)の巻

2016年08月31日 19時19分27秒 | ブログ

1964年の東京オリンピックの体操競技で活躍したチェコスロバキアのベラ・チャスラフスカ(当時も正確に言えなかった)さんがお亡くなりになったとニュースが伝えていますね。僕らの記憶では、「きれいなおねえさんが優美に体操している」という感じでしたが、映画「東京オリンピック」の中でも、大画面で舞う姿を記憶しています。今、改めて写真を見ても、やはり大人の女性ですね。現代の子供のような体型の体操とは全く違っていました。この頃の共産圏の選手は決まって赤いコスチュームでしたね。男子は白いランニングに白い長タイツ。現代の短パンよりも脚のシルエットがきれいでした。十字懸垂脚前挙とかね。4年後の東京オリンピックに招待出来ないのが残念ですね。ご冥福をお祈りします。

で、PEN-FTを入手された。とのことでしたが、到着してみるとブラックモデルで34万台。しかも42mm付。羨ましいセットです。

 

しかし、かなり使い込まれたヤレ加減と、チェックをして行くうちに、気になるところが出て来ましたよ。まず、巻上げを繰り返すとレバーがカムに掛からず、プラプラしてしまう。チャージ機構が摩耗気味のようですね。

 

42mmも絞りの作動が非常に重く、トルクの弱い本体ではフリーズをしてしまうでしょう。

 

トップカバーを分離すると・・例のターミナルネジですよ。スリ割りが破壊状態です。相当の乱暴分解を受けていますね。

 

駒数板が曲がっていますね。いつも言ってますよね。この部品は分解の時は一番先に取り外して、組立は最後に着ける。

 

#3445XXの個体にしては疑問の点。画像で分かる人はするどい。ルーペが変です。

 

このルーペのレンズはねじ込み式になっています。この方式はPEN-Fの全部とPEN-FTの大よそ18万台付近まで。その後はサークリップ式になっています。この個体は34万台なので明らかな付け替えです。交換の事情はあったのでしょうけどね。

シャッターダイヤルと露出計との連動が全くデタラメ。

 

 

巻上げのロックがカムに掛かっていません。

 

 

一番の問題はこれですね。シャッター幕が折り曲がっていて本体側と接触しています。また、クラックも入っていますので、扇のように、いつ破壊しても不思議ではありません。う~む、最近こういうの来ないよね。君は何をされて来たんだい?

オーナーさんから「費用が掛かっても直して欲しい」とのご希望ですので・・しかし、損切り決断も必要な時が・・まぁ、ご指示ですので始めます。巻上げレバーユニットですが、地板Cを留めるネジが緩んでいました。このネジは緩み止めが塗布されているので通常は緩まないのですが、過去に数例は見ています。

それによって、上下6個づつのベアリングの下側から2個脱落して無くなっています。すべて洗浄をして足りないベアリングを追加で地板Cを取り付けるとレバーが固着する。稀にはレバー中心のベアリングアウターが緩んで総高さが高くなって接触をするケースはあるのですが、増し締めでも殆ど緩んでいない。同じロットの部品構成であれば、部品公差の範囲で組立高さがマイナスになることは無いのですが、他の部品との組み合わせなのか? その状態を回避するために地板Cの留めネジを故意に緩めた? このぐらいしか推測は出来ません。

組立上のマイナスを補正してレバーがスムーズに動くようにしました。

 

 

清掃してみると、本体側のギヤカムに傷が付いていますね。ということは、前回の組立者は苦労していたことが分かるのです。

 

最初からこれですからね。取りあえずスプロケット軸とスプール軸の組立は終了。先が長くなるような予感がします。では、問題のシャッターユニットをどうするか・・

 

洗浄組立が終わったシャッターユニット。幸い悪くはありませんでしたよ。

 

 

で、シャッター幕はストックのものを使いました。ちょっとヤレっているけどね。貴重な交換部品ですので、実用上問題のない程度は使います。時限爆弾を抱えているシャッターよりは良いです。

 

簡単に組み上がったように見えますけど、2つ問題がありました。まず、露出計の感度が非常に悪いこと。この頃の露出計としては珍しいぐらいです。それで甘く見ていました。完全にダウンしているのならストックを使いますけどね。観察すると露出メーターのローターピポットをいじられた形跡があります。過去にも苦労したようで、それでシャッターダイヤルとの連動を変えて、あたかも正常に作動しているように見せていたものでした。調整抵抗のゲインを吐き出して、何とかしましたけど・・もう一つは例の巻き上げレバーユニットに付属するレバーがネジで固定されないトラブル。これも考えられないことで、不思議な個体でした。

付属の42mmですが、ピントリングも摩耗気味で、手垢も蓄積してかなり使い込まれています。絞りの作動が非常に重く、動きも緩慢です。

 

分解して行きます。ヘリコイドグリスが流れてベトベトになっています。

 

 

各部に分離しました。洗浄・脱脂とレンズのクリーニングをします。

 

 

ヘリコイドグリスは殆ど無く、茶色に変色しています。この頃はホワイト系のグリスになっているはずです。これは入れ替えをします。

 

洗浄をしてヘリコイドグリスを入れ替えたところ。

 

 

後玉の内側端にカビがあります。湿気が入ってカビが発生するのでしょう。分解清掃をします。かなり状態はよろしくない個体でしたが、幸い、持病の中玉曇りが無いのがラッキーでした。

 

本体に装着して作動は良好です。結局、シャッター幕とハーフミラーが交換となりました。比較的感度良好な露出計が多い後期の34万台でも中には感度が低下している個体はありますが、半分はその後の分解で壊されたような個体でした。高価なブラックモデルでも状態の悪い個体もありますし、ジャンク扱いの個体でも、素性の良い個体もあるのです。アイテムの42mm付きFTブラックモデル、幾らで入手されたのか気になります。

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生産開始月のPEN-S3.5の巻

2016年08月30日 21時48分27秒 | ブログ

ペンスケッチ展にも参加されているご常連さんがPEN-S3.5を入手されたようです。実写の写真が添付されていますが、何やら二回巻き上げになってしまうようで、シャッターも相当眠いですね。しかし、レンズは前玉の傷はありますが、曇りが持病の後玉はすごくきれいです。1965-1月製。

巻き戻しダイヤル下のネジが1本変ですね。ということは分解されているということか・・

 

意外にファインダーもシャッターも未分解でした。二回巻き上げで分解されたものか。巻上げのストロークがギリギリの個体は、巻上げカム(S型2山)のどちらかで巻上げが足りなくなってミスをします。カム山は厳密には同じ高さの加工は出来ないためです。この個体の場合、それに加えて巻き止めの掛かりが非常に浅く、こちらでもミスをしていました。画像は掛かりを調整したところ。

シャッター組立の画像は割愛。組立後は快調になっています。レンズを清掃してヘリコイドグリスを塗布で取り付けます。

 

PEN-S2.8と異なり、ファインダーブロックは樹脂製で、材質が劣化して破損をしている個体が多いです。落下などに注意をしてください。

 

ネジは正規のものに交換をしておきます。

 

 

仕上げてみると、中々きれいな個体ですね。巻き上げもシャッターも快調です。初期の生産分ですから、トッフカバー横のネジはPEN-S2.8と同じスリ割りネジのままです。その後、+ネジになります。

 

生産開始は1965-1月のようですから、まさしく開始直後の製造のようです。また、素晴らしい作品を撮影してくださいね。

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やっと来たよPEN-Fの巻

2016年08月26日 21時25分04秒 | ブログ

台風10号の進路が気になりますが、今日は、関東地方は暑い一日でした。午前中は別の仕事で半舷上陸していまして、午後から作業開始です。コンパクトペン以外がやっと来てくれましたね。PEN-F #2524XX(1966-1月製)とPEN-FTの発売が近い頃の製造です。外観は非常にきれいで作動も問題なし。一見、未分解の個体と思ったのですが・・ボトムプレートを外してみると、水油が溜まっていますよ。このカメラは大量の水油は使っていませんので、工場生産のままではないことが予想されます。

トップカバーを開けて見ると・・分解された形跡が無い。変だなぁ??

 

 

いえいえ、分解されていますね。シボ革に破れた痕がありますね。乱暴に剥がすと生地が切れてしまうのです。

 

前板にピンセットのような傷が付いています。

 

 

結果的にシャッターユニットも本体から分離されていました。問題は、スローガバナーが油のお風呂に浸かった状態です。

 

見にくいですが、中央の丸いカシメ部分が光っているのは油貯まり。

 

 

昭和53年(1973年)に札幌のカメラ店で中古販売されたということ?

 

 

まっ、いいでしょう。本体を洗浄して組み立てて行きます。スプロケット軸の部品構成。

 

スプールギヤは対角に開いたカニ目孔で締め込みますが、すると下のカウンターギヤの歯に工具が当たるという難しい設計。

 

機械は疲労はしておらず、ブレーキも利いていますので再使用とします。

 

 

スローガバナーを分離。超音波洗浄をします。

 

 

メンテナンスの終わったシャッターユニットを本体に組み込みました。

 

 

底部の状態。古いグレー色のネジロックはすべて洗浄してから組み立てます。

 

今日の土曜日は雨の中、通院で新宿へ行きました。夏の旅行シーズンからか、新宿駅の外国人観光客がいつもより溢れていますね。中華系か韓国の若者が多いようです。帰りに中古屋さんに寄って、素性は良いのに残念な境遇に置かれた後期型のPEN-FTを救出して来ました。手が空いたら仕上げて欲しい方にお譲りしますので少し待っていてください。そんなことで作業は進んでいません。本体側のメカ部は完成していますので、前板関係をメンテナンスして行きます。PEN-Fはプリズムの黒点腐食が多いのですが、この個体はほぼ満点ですね。推測では、Fの後期になってプリズムの耐候性を上げるための製造工程の改良が行われたと思います。保存環境だけでは説明がつかないからです。(雨のため新宿の画像は撮りませんでした)

ここ数日、ぐずついた天気が続いています。今週末は子供のころに住んでいた隣の立川の諏訪神社のお祭りだったのに残念でした。しかし、子供のころの記憶でも、境内の夜店は足元が泥んこでびちゃびちゃの記憶が強いのです。ちょうど季節の変わり目なんでしょうね。

では、組立です。ファインダーレンズの清掃と新しいモルトを貼って取付けです。レンズの状態は非常にきれいです。

接眼プリズムのコーティングは曇り気味、プリズムの角にピリが入っています。衝撃があったのでしょう。こちらも清掃とモルトを貼って取り付けます。

 

全反射ミラーは腐食は無いのですが、反射率は低下傾向ですので、オーナーさんのご希望で新品と交換します。

 

これでメカ部は完成です。

 

 

シンクロターミナルとリード線の取付け。ここも米谷式設計ですね。カバーの巻き戻しダイヤルの落とし込みが干渉をして、ドライバーが入りませんね。工場ではどのような工具を使ったのでしょうね。未分解機にはスリ割の痛みは無いので、流石、組立現場はプロです。

レンズは38mmが2本と100mmが来ています。まず、カメラ本体に付属していた個体。F用としては非常にきれいです。しかし、絞り羽根に油付着で開閉の作動が緩慢。オーナーさんの試写でも、露出オーバーになったようです。

未分解かとも思ったのですが、分解を受けていますね。ヘリコイドグリスがホワイト系が使われていますが、F用は普通のヘリコイドグリスの個体が多いです。FTになる直前に変更をされたものか、後年に入れ替えられたものかですね。

すべて脱脂洗浄をして組み立てて行きます。しかし、脱脂のままではスムーズに作動しないので注油は必要です。

 

清掃をした後玉を取付けて、マウントをセットします。

 

 

PEN-Fの後期なので非常にコンディションが良い個体でした。90点ぐらいは付けちゃいます。巻き上げ快調、シャッターのショックも良くコントロールされています。あとは、残りのレンズです。

 

もう1つの38mmは割愛。で、100mmですが、あまり使用された形跡が無い個体ですが、こちらも絞り羽根に油が回って作動が重くなっています。その他、レンズに曇りも出ていますね。プレートのネジが1本欠落しています。

分解洗浄で組み立てます。後玉はきれいになりましたね。

 

 

絞り羽根もきれいになりました。

 

 

原因は、ヘリコイドグリスが流れ出して、絞り羽根と作動機構部に付着するため。

 

非常にコンディションの良い個体になりましたね。最後に欠落していたネジを取り付けておきます。

 

カメラ本体とレンズの素性はすばらしく、オーナーさんの選択眼は確かだと分かります。良いコンディションを維持してください。

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どこまで続くPEN-Wの巻

2016年08月24日 10時18分07秒 | ブログ

〽どこまで続くPEN-W三日二夜を食もなく雨降りしぶく鉄兜かぁ。PEN-Wが続きますねぇ。で、一見ハゲの少ない個体に見えますが、これ自然乾燥塗料によるリペイントです。全体的には稚拙ですが塗装は下手ではないと思います。

塗装面がポツポツしていますね。これは手汗による真鍮のピンホール腐食で、元のコンディションはかなり悪いと分かります。塗装前の下地研磨を当て板を使っていないため、角がダレ気味です。

 

見にくいですが、リベットは分離せずにそのまま塗装をされています。よって、リベットの側面には塗料が付着しています。

シャッターは、ゆっくりと作動する状態。ファインダーの曇りは激しいです。塗装に就いては見ないことにしてオーバーホールのみ実施します。

では始めます。人様の手が入った個体はいろいろありそうで、永くなりそうな予感がします。まず、塗装のために駒数ガラスを分離したのか、自然に剥がれたものか知りませんが、再接着が不完全ですでに剥がれています。どなたでも作業は出来るのですが、「完全な作業」をすることは意外に大変なんです。

裏蓋は塗装時に圧板も分離せず、マスキングもしないので、塗料が回っています。

 

ファインダーの分解。カバーを接着している古い接着剤は完全に取り去っておきます。これをやらない方が多いです。前面保護ガラスを分離せずに塗装をしたため、塗料が回っています。お手軽作業はダメです。

 

シャッターは、前回と同じ39-9(1964-9月製造)です。白いネジロックを溶かさずにネジを緩めようとすると、このようにスリ割りを壊します。シャッター羽根はドロドロでゆっくり動く状態。本来は油が回るはずがないのです。

あぁ、これも水油が点されていますね。これではシャッター羽根に油が回ってしまいます。羽根も先端が折れ曲がっています。

 

分離して見ると・・こりゃダメだ。

 

 

すべて洗浄して組み立てました。接着が終わったファインダーをカバーに取り付けます。接眼部の防塵カバーが取り去られたまま。追加しておきます。

 

例の調整ワッシャーも取り去られています。追加しておきます。駒数ガラスはお約束のクラック入りですが、交換のご希望がありませんので、清掃のうえ再使用としました。

 

駒数部分のキー付きワッシャーが欠落して組まれていました。これが無いと、正確に針が動きません。(動くことは動きます)只のワッシャーではありません。

 

レンズも過去に分解を受けていますが、悪くはないですね。

 

 

後玉も多少の曇りはありますが、良い方です。清掃をして組みます。

 

 

ヘリコイドグリスを塗布して組立、ピント調整をして完成。ところで、このmarumiのフィルターですが、個体差があるのかも知れませんが、ねじ込むと、レンズホルダー(黒い部分)と接触をして絞りが回転しなくなります。フィルターのネジ部を0.2mm程度削ってやれば問題は無いです。

ということで、自然乾燥塗料は工業製品には全く不適で、溶剤やアルコールでさえ塗膜を侵してしまうので、作業は非常に困難になります。出来るだけメーカー品質に近づける組立作業。これが難しくて日々努力をしています。

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こんなにあるんだぁ、PEN-Wの巻

2016年08月20日 20時03分07秒 | ブログ

なんですか、日本近海で次々と台風が発生していて関東地方も強い雨が断続的に降っていますよ。今年の夏は様子が変ですね。リオオリンピックは予想外?の日本人選手の活躍で盛り上がっていますが、男子400mリレーの銀メダルには感動しましたね。走力の足りないところをバトン技術で補う。創意工夫の日本精神です。で、最近、何故かPEN-Wばかり集まって来るのです。「こんなに現存数があるんだぁ」と感心したり、マニアさんの放出で入手がし易いのかな? とも思ったりします。どちらしにても、同じ機種が続くのは、画像がみな同じになってしまうので都合がよろしくない事情もあります。

この個体。かなりきれいですね。過去に無傷の個体も確認していますが、それには及ばなくともかなり良い方です。駒数ガラスはお約束のクラック入りですが、オーナーさんが純正のデット部品を入手されて交換をご希望です。純正品は良いのですけどね。使われていないだけで、クラックが入り易い欠点は同じですよ。また、梨地メッキ仕様に比べて、塗装面への接着は、接着剤が塗装膜と一体になっており、きれいに分離することが非常に困難なのです。しかも、観察すると駒数ガラスと塗装面の隙間にも接着剤が染み出していて、これは難易度がさらに高いです。

こう同じ機種が続くと書くこと無いよなぁ。ブツブツ。レンズの状態も良いですね。バルサムの黄変も少ないのが分かりますか?

 

吊環部のネジが欠落していますね。

 

 

全体的には素晴らしい状態の個体なのに、何故かシャッターリングのメッキの腐食が進んでいます。最初のオーナーさんが汗かきの手だったのかな? ここのメッキは下地のニッケルが無い直付けメッキなので、余計に汗には弱いのだと思いますね。何故に直付け? コストの問題でしょうかね。まぁ、メッキは非常にチープです。

で、シャッターユニットを本体から分離する時、1本のネジが妙に硬いのでした。この個体は未分解機と思われますが、組立時にネジを曲げたままねじ込んだため、ハウジング側のねじ山を壊しているのでした。表付近のねじ山の損傷が大きいため、完全ねじが残っている裏側からガイドとしてM1.7P0.35のタップで修正をしておきます。

何故、ネジを倒れたままねじ込んだかですが、設計にも原因があります。画像のようにネジ頭に合うドライバーで締め込もうとすると、ドライバーが垂直に入らないのです。米谷さんの設計には、このようにドライバーが真っ直ぐに入らない設計が多いと感じます。組立の容易さより、理論的な必然性を優先させた設計なのかとも思いますが、組立屋上がりの私としては、組立現場は組みにくかっただろうなぁと思います。

まぁ、そんなことで、無事シャッターユニットを本体に取り付けました。駒数ガラスも交換してあります。いつまでクラックが入らずにいられるかは知りません。

 

え~と、その他は問題のない個体ですので、ここまで組み上げました。駒数ガラスは新品できれい。吊環部の塗りネジは追加してあります。で、ここでオーナーさんからのご連絡で、メッキの劣化したシャッターリングのデッド品をお持ちとのこと。すごいですね。貴重な部品をどこで入手されたのでしょうか? その新品部品と交換して欲しいとのことですので、到着まで作業を中止とします。その間、腕時計をやる予定です。

 部品が到着するまでの間にチュードルのゼンマイ交換をしておきます。機械はETAの2824-2の8振動ですからゼンマイは強力で自動巻きのゼンマイは香箱の内周を滑るので、すでにメッキが摩耗して真鍮が露出していました。急速に摩耗が進むかも知れませんね。

香箱を組み込んで行きます。

 

 

自動巻き機構を取り付けます。

 

 

やはり、新品のゼンマイになると歩度が非常に安定してタイムグラファーの精度も非常に優秀です。

 

そうこうしている間にシャッターユニットが届きました。COPALのパッケージに入っていますよ。上下に防錆紙でサンドイッチされています。うちにもシャッターユニットの新品は残っていますけど、シャッターリング(カム板)は付属していません。カム板はシャッタースピードの調整をされている個体もありますから、本来はこれが正解ですね。

ということは、シャッターリング(カム板)はコパルで作られている訳ですね。新品の作動はシャッタースピードのクリック感がはっきりとしています。回転トルクなどを参考に覚えておきます。(それほど軽くはない)

 

クリックは先端が丸い板バネがカム板に開けられた孔に嵌ることで固定されます。使い込むと孔の角が摩耗をして、クリック感が乏しくなります。

 

その他、レンズの清掃、ヘリコイドグリスを塗布して組立、ピント調整で完成です。

 

作家の松本清張氏もPEN-Wを愛用していたんですね。枚数が多く撮れますから、取材用には重宝したのでしょうね。東京駅ホームのトリック、「点と線」など好きですね。

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