1964年の東京オリンピックの体操競技で活躍したチェコスロバキアのベラ・チャスラフスカ(当時も正確に言えなかった)さんがお亡くなりになったとニュースが伝えていますね。僕らの記憶では、「きれいなおねえさんが優美に体操している」という感じでしたが、映画「東京オリンピック」の中でも、大画面で舞う姿を記憶しています。今、改めて写真を見ても、やはり大人の女性ですね。現代の子供のような体型の体操とは全く違っていました。この頃の共産圏の選手は決まって赤いコスチュームでしたね。男子は白いランニングに白い長タイツ。現代の短パンよりも脚のシルエットがきれいでした。十字懸垂脚前挙とかね。4年後の東京オリンピックに招待出来ないのが残念ですね。ご冥福をお祈りします。
で、PEN-FTを入手された。とのことでしたが、到着してみるとブラックモデルで34万台。しかも42mm付。羨ましいセットです。
しかし、かなり使い込まれたヤレ加減と、チェックをして行くうちに、気になるところが出て来ましたよ。まず、巻上げを繰り返すとレバーがカムに掛からず、プラプラしてしまう。チャージ機構が摩耗気味のようですね。
42mmも絞りの作動が非常に重く、トルクの弱い本体ではフリーズをしてしまうでしょう。
トップカバーを分離すると・・例のターミナルネジですよ。スリ割りが破壊状態です。相当の乱暴分解を受けていますね。
駒数板が曲がっていますね。いつも言ってますよね。この部品は分解の時は一番先に取り外して、組立は最後に着ける。
#3445XXの個体にしては疑問の点。画像で分かる人はするどい。ルーペが変です。
このルーペのレンズはねじ込み式になっています。この方式はPEN-Fの全部とPEN-FTの大よそ18万台付近まで。その後はサークリップ式になっています。この個体は34万台なので明らかな付け替えです。交換の事情はあったのでしょうけどね。
シャッターダイヤルと露出計との連動が全くデタラメ。
巻上げのロックがカムに掛かっていません。
一番の問題はこれですね。シャッター幕が折り曲がっていて本体側と接触しています。また、クラックも入っていますので、扇のように、いつ破壊しても不思議ではありません。う~む、最近こういうの来ないよね。君は何をされて来たんだい?
オーナーさんから「費用が掛かっても直して欲しい」とのご希望ですので・・しかし、損切り決断も必要な時が・・まぁ、ご指示ですので始めます。巻上げレバーユニットですが、地板Cを留めるネジが緩んでいました。このネジは緩み止めが塗布されているので通常は緩まないのですが、過去に数例は見ています。
それによって、上下6個づつのベアリングの下側から2個脱落して無くなっています。すべて洗浄をして足りないベアリングを追加で地板Cを取り付けるとレバーが固着する。稀にはレバー中心のベアリングアウターが緩んで総高さが高くなって接触をするケースはあるのですが、増し締めでも殆ど緩んでいない。同じロットの部品構成であれば、部品公差の範囲で組立高さがマイナスになることは無いのですが、他の部品との組み合わせなのか? その状態を回避するために地板Cの留めネジを故意に緩めた? このぐらいしか推測は出来ません。
組立上のマイナスを補正してレバーがスムーズに動くようにしました。
清掃してみると、本体側のギヤカムに傷が付いていますね。ということは、前回の組立者は苦労していたことが分かるのです。
最初からこれですからね。取りあえずスプロケット軸とスプール軸の組立は終了。先が長くなるような予感がします。では、問題のシャッターユニットをどうするか・・
洗浄組立が終わったシャッターユニット。幸い悪くはありませんでしたよ。
で、シャッター幕はストックのものを使いました。ちょっとヤレっているけどね。貴重な交換部品ですので、実用上問題のない程度は使います。時限爆弾を抱えているシャッターよりは良いです。
簡単に組み上がったように見えますけど、2つ問題がありました。まず、露出計の感度が非常に悪いこと。この頃の露出計としては珍しいぐらいです。それで甘く見ていました。完全にダウンしているのならストックを使いますけどね。観察すると露出メーターのローターピポットをいじられた形跡があります。過去にも苦労したようで、それでシャッターダイヤルとの連動を変えて、あたかも正常に作動しているように見せていたものでした。調整抵抗のゲインを吐き出して、何とかしましたけど・・もう一つは例の巻き上げレバーユニットに付属するレバーがネジで固定されないトラブル。これも考えられないことで、不思議な個体でした。
付属の42mmですが、ピントリングも摩耗気味で、手垢も蓄積してかなり使い込まれています。絞りの作動が非常に重く、動きも緩慢です。
分解して行きます。ヘリコイドグリスが流れてベトベトになっています。
各部に分離しました。洗浄・脱脂とレンズのクリーニングをします。
ヘリコイドグリスは殆ど無く、茶色に変色しています。この頃はホワイト系のグリスになっているはずです。これは入れ替えをします。
洗浄をしてヘリコイドグリスを入れ替えたところ。
後玉の内側端にカビがあります。湿気が入ってカビが発生するのでしょう。分解清掃をします。かなり状態はよろしくない個体でしたが、幸い、持病の中玉曇りが無いのがラッキーでした。
本体に装着して作動は良好です。結局、シャッター幕とハーフミラーが交換となりました。比較的感度良好な露出計が多い後期の34万台でも中には感度が低下している個体はありますが、半分はその後の分解で壊されたような個体でした。高価なブラックモデルでも状態の悪い個体もありますし、ジャンク扱いの個体でも、素性の良い個体もあるのです。アイテムの42mm付きFTブラックモデル、幾らで入手されたのか気になります。
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