今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

二年越しのPEN-F

2011年12月31日 11時50分00秒 | インポート

Dscf317428 今年中の作業は終了する予定だったのですがね。予定していた腕時計の部品が到着しなかったり、オークションでは出物が落札できなかったりで暇となりましたので、二年越し覚悟でPEN-F #2131XXを始めます。「特に不具合は無い個体」とのことで、レリーズボタンが復帰しにくいとのことです。あら、ほんと。PEN-Fは多いトラブルです。PEN-FTになると、レリーズボタンを垂直に上下ストロークさせる目的で、ガイドピンが追加されていますが、PEN-Fはそれがないため、レリーズボタンは常に斜めになってストロークしています。長期に使用していると、一部、特にトップカバーと接触をしている部分のメッキが剥離して、真鍮が露出してくると、益々、復帰がスムーズでなくなります。(噛みこんでしまうので)その他の印象では、巻上げ感触のゴロツキ感。裏蓋のラッチの飛越がありますね。

Dscf317675 トップカバーを分離してみると・・この個体は、過去にメンテナンスは受けていますね。全反射ミラーは汎用ミラーからカットされたものに交換されています。レリーズボタンは、ご覧のように、メッキが剥離していますね。リンケージの調整で症状が治まらない場合は、交換します。また、気になったのは、ビスの緩み止めにエポキシ接着剤を塗布してあるということ。接着剤は、再度の分離を想定しない材料ですから、間違った使い方ですよ。折角、緩み止めに対する神経を使う方なのですから、用法を考えるべきです。スリ割まで埋まってしまってどうするの?・・・

Dscf314452 みなさんは正月の準備で忙しい方もいらっしゃるでしょうか? 帰省や旅行途中の方もいらっしゃるでしょうね。まぁ、大晦日に根を詰めて作業しても仕方ありませんので、お遊びもしながらです。これは、キングセイコーの5626-7121ですが、中身の機械はO/H済みなので、ケーシングをして完成させたいと思って保管してありました。但し、風防ガラスのキズがひどいので交換をします。純正品の場合は左のガラスと中央のリングは予め接着をされてASSYで出てくるのですが、すでに純正品は出ませんので、リングに接着されていた古いガラスを取り除いて、同じ規格の汎用ガラスを接着します。

Dscf317515 こんな感じですね。現在、メーカーでは紫外線硬化の接着剤を使うようになっているようですが、紫外線装置がありませんので、通常の透明度の高いエポキシ接着剤を使いました。本物の平面ガラスの接着は、圧入作業はありませんので、プラ風防などより簡単な部分もありますね。しかし、新品の風防ガラスで見通しすっきり。来年こそは世の中もそう願いたいものです。では、2011年の更新はこれで最後にします。今年一年のお付き合いありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。(年明けすぐに始まりますけど・・)

Dscf316755 新年おめでとうございます。元日も、あっと言う間に暮れて行きました。おせち料理とお雑煮、若干のお屠蘇は良いものですね。私は子供の頃から餅は大好きで、沢山食べてしまいましたよ。お餅を食べて今年一年健康に暮らせますように、ですね。この歳になると・・初詣は行きませんで、ちょっと酔い加減で作業を始めておりました。皆さん、今年もよろしくお付き合いください。

で、新年初めがボケた画像ですみませんね。Fのブレーキですが、この個体は変な分解は受けておらず、Oリングもきれいに残っていますが、ブレーキとしての機能は果していない状態ですね。左がOリングホルダーで、右がブレーキリング。バイクのドラムブレーキみたいな構造です。Oリングは交換になります。

Dscf3168641 Oリングを交換して組み込んだ状態です。真鍮製の締め付けナットは緩み止め機構は無いため、緩みやすいので、←のように2ヶ所(個体によっては3ヶ所)のポンチ加工を施し、緩みを防止しています。そのため分離する場合は、真鍮ナットが変形していますのでナットのスリットに完全に合致した工具でなければスリットを壊して開けられなくなります。再度組立てた場合は、ポンチ加工を追加しておきます。ポンチ加工で変形させる目的があって材質を真鍮としてあるわけです。しかし、この緩み止めの方法は、エンジンなどの機械で取られることが多いのですが、予期せぬ緩みの発生で、苦肉の策だったのかも知れませんね。

Dscf3169771 ほぼ組み上がっています。オーナーさんのご希望で、全反射ミラーも交換してあります。巻上げのゴリツキ感は改善はしていますが、もう少しというところですね。同じように作業を施しても、これが個体差というところでしょうか。問題のレリーズボタンの作動不良ですが、主な原因は、←のように、レリースバーが板をL型に曲げただけの構造のため、使用により曲がり角度が狂った(前にお辞儀をした)ことでしょう。Fの場合は、必要以上に強く押し下げない方がよろしいですね。FTは、全く設計が違いますので、変形の心配はありません。一応修正はして問題なく作動していますが、将来的までは保証出来ません。

Dscf316958 で、二年越し機は完成です。新年の1号機ですね。この個体は汚れが多めで、シボ革の洗浄では茶色の汚れが出ましたよ。新年早々、すっきりして気持ちがよいですね。付属でついて来たF用38mmはシボリ羽根に油が回って動きが緩慢です。こちらも分解・洗浄をすることに致します。

Dscf317061 特にF用となると古いですからヘリコイドグリスが変質して内部に流れ出ています。マウント側もベットリと付着していますが写りませんね。右側本体の外周部分が光っているのでお分かりになると思います。

Dscf317177 本体の距離環ヘリコイドから流れ出たグリスは右の鏡胴へも伝わってベトベトになっています。それが最終的にはシボリ羽根へと流れて作動不良となっているのですね。これはシボリ羽根も完全に分離した後、洗浄脱脂をする必要があります。

Dscf317237 これで全て完成です。じつは、どうしても巻上げの感触が納得できず、カメラ本体を再度分解して調整をしました。どうしても納得できないものはお出ししたくは無かったもので・・。今年の正月休みは曜日の関係で短いですから、明日(3日)で終わりの方も多いと思います。また一年頑張って行きましょう。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


今年の仕事納めかな? PEN-S 2.8

2011年12月24日 21時31分08秒 | インポート

Dscf316161 作業に没頭している間に暮れも押し詰まって来たようですね。皆さんはいつご用納めでしょうか? 例年は、元日でも作業をしていましたが、暮れは時計のO/Hをしようかと予定しておりますので、このPEN-S 2.8 が最後になるかも知れませんね。数年前はご依頼が多かったPEN-Sですが、最近は少ない気がしますね。この個体は#2707XXと、PEN-Sとしては比較的前期の生産機です。操作感はギシギシとしたもので、メンテナンスをされていない個体に多いフィーリングです。シャッターはお決まりのゆっくり作動をしている状態。O/Hが必要です。スプロケットはアルミアルマイト地のもので、スプールはグレーモールドですね。

Dscf316477 観察すると、シボ革の端が剥離していることから、一度分離された可能性がありますが、意外に駒数ネジやシュー下ビスを開けたことは無いのかもしれない。ただし、裏側のシャッターユニット留めビスのスリ割りにはためらいキズが有ったりで、ちょっと分からない個体ですね。巻き戻しレバーのバネ抑えビスが欠落しています。まぁ、全体的には、古い割にはそれほど悪くは無い個体だと思います。

Dscf316358 今日は、家族の依頼で買い物の運転手をしていましたので、あまり作業は出来ていません。しかし、ショッピングモールは大変な人出ですね。私はあまり人ごみに出ませんので余計に感じました。不景気なのにね。帰宅するとお二方から腕時計が届いておりました。画像は、ダンヒルのクオーツですね。ムーブメントはスイスのETA製ですから、そこそこ良いものでしょう。電池はSR920SWですが、在庫を調べたらswatchに使う371と同じサイズでしたので交換してみました。問題なく作動するようですので、石に注油をしてケースの洗浄でよろしいと思います。

Dscf316552 こちら(左側)は、前回の三光PENのオーナーさんから送って頂いたセイコー、ベルマチックですね。私も国内向けの27石を所有していますが、これは輸出向けの17石でして、右のセイコー5の通称、座布団よりは一回りも大きいです。この時計は、時間設定でベルを鳴らすことが出来る時計で、ビジネスマンの出張などで目覚まし時計として使える優れものです。国内よりも海外で根強い人気があります。しかし、私のような細い腕には似合わないなぁ。やはり、丸太棒のようなポパイの腕でなくっちゃね。その後は、NHKの「坂の上の雲」最終回を見てしまいました。日本海海戦の戦闘シーンは中々良く出来ていましたね。一昔の東宝映画の特撮と違って、CG技術が格段に進歩しています。かなり費用も掛けたと思いますね。この海戦の戦術については色々論議がありますが、まぁ、結果的に勝ったから良かったような時の運もあるのでしょう。一斉回頭の解説が明確で無かったですが、あれだって、バルチック艦隊の砲撃精度が高かったら命取りだったでしょう。バルチック艦隊は黒色火薬を使用していたために、一発発射すると、煙幕が晴れるまでは、連射が出来ない事情もあったとか。とにかく、薄氷を踏む思いで勝利したことが、国民の勘違いを生んで、その後の破滅へ向かうことになるのです。日本人という民族は・・。

Dscf3162551 少し本題をやっておかないと叱られそうですので・・トップカバーを分離してみましたが、このカメラは未分解機だと思います。通常、分解するのはファインダーを清掃したいためですが、この個体は遮光カバーの接着を剥離された形跡がありません。そこで、ちよっと気になるのは・・・左右にバネがありますが、じつは、これ同じものが使われていますが、本来は、左側のバネは全長がもう少し長いものが使われているはずです。の部分までの距離を比較して頂ければお分かりと思います。しかし、この個体は「分解歴」がないのでしたね。とすると、工場で同じバネを使って組んだことになります。初期の頃の個体でも、今まであまり記憶がありません。コパルにてシャッターユニット製造1961-10月で、カメラ完成は1961-11月に製造された個体になります。

Dscf316471 シャッターユニットは、緩慢な作動でしたが、これは未オーバーホールのユニットであれば仕方ありません。機械的な磨耗も殆どなく、羽根の腐食もありません。推測では、あまり使用されたカメラではありませんね。フィルム10~20本程度かも知れません。

Dscf3166611 すでにシャッターユニットは本体に組み込んでいます。と、ここで、例のバネです。やはり長さが違い過ぎて負荷が掛かりますので、オリジナルに交換することにします。首の長さが全く違うでしょ。で、やはりちょっと初めから違和感を感じていたのですが、アルミ地のスプロケットとグレーのスプールです。これは、初期の17万台頃までの仕様なんですね。27万代は無いと思いますけどね。PEN-Sも製造番号は正確に製造順には並んでいないのですが、私の資料を見ると例えば、#2080XXがこの個体と同じシャッター製造1961-10、カメラ完成1961-11なんですが、スプロケットはブラックアルマイト、スプールはグレーです。#2341XXはシャッター製造1961-6、カメラ完成1961-8ですが、スプロケットはブラックアルマイト、スプールはグレーとなっています。仮にトップカバーが付け替えとすれば、バネも交換された可能性もあります。(交換するようなバネではありませんが)しかし、シャッターの製造捺印とシュー部分の表示は整合性があるんですよね。ファインダーを分解した形跡は無かったし・・まぁ、分からん。

Dscf316825 いや、ファインダーの対物レンズはゴム系接着でしたね。貼り直された可能性もあります。一応組み上げてテストをしてみましたら・・巻上げダイヤルがロックする時がありますね。ははぁ、分かった。原因はシャッターを切った後でもピンセット下の二回巻上げ防止レバーが解除されないのです。それを、バネを強くして強制的に復帰させようとして短いバネを使ったのでしょう。原因は、スプロケット軸のカム下に入るピンセット先の真鍮製のカラーが少しこの個体の部品組合せ(組上り寸法)には厚みが薄いのです。(0.1mm)それによって、スプロケット軸の回転が規制されるために、レバーの動きが重くなっているのです。工場での問題であれば、カラーを交換して調整すれば良いので、やはり、途中で対症療法の修理をされたのでしょうね。不具合の根本の原因を突き止めなければ、本当の理解は出来ないのですね。適合するカラーと入れ替えておきます。また、右側のチャージレバー軸のビスが真鍮製で、ガタが多くありましたので、ニッケルのビスと交換してあります。(上の方の画像と比較)

Dscf317166 まぁ、ちょっといつもの推理がしにくいミステリーな個体でした。この個体は、オーナーさんのお父様のお知り合いから譲られたカメラとのことで、何やら過去の経緯が明らかになるのかも知れませんね。カメラとしてはファインダーのリンクル塗装を見ても明らかなように、消耗は少なくレンズもきれいですから問題はありません。一緒にご依頼を頂きましたオリジナルのレンズキャップを装着して完成です。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


帰国子女の三光PENフィート機

2011年12月20日 18時47分30秒 | インポート

Dscf314151 先日のセイコー十型と一緒に来た輸出向けフィート表示の三光PEN。部品取り機が多数付いていますが三光PENの状態はあまり良好ではなく、さりとて、なるべく製造時期の異なる部品は使いたくない。まぁ、そうも言ってられませんので、少し考えて見ましょう。同時に古いスモールセコンドのジャンクが多数入っておりまして、当方にプレゼントをして頂けるとのことです。目に留まった一つ。WEALTHのEXTRAとなっています。裏蓋を開けてみるとスイス製の時計のようです。不動の状態でしたが、点検をすると、ガンギ車が固着して動かない状態。応急的に動かして見ましょうか。テンプ、アンクル、ガンギ車を分解してみると輪列は固着は無い状態でしたので、この部分だけ洗浄、組み直しをして見ました。しかし、アンクルの受けとテンプの受けの精度が悪く、一部ヤスリで削られたりしており、そのままビスを締め込むとアガキが無くなって止まってしまいます。現在は、ビスを緩めてアガキを確保して作動状態としてあります。テンプが回っているのが見えますでしょうか?

Dscf314246 しかし、ケースの裏蓋を見ると1175の刻印と鶴のマークが入っていますね。それはセイコーのケースのような気もしますけど、詳しくは分かりません。どちらにしても、この頃の地板と受けの精度は悪く、実用とするためには相当な調整が必要だと思います。途中でテンプを交換されている可能性がありますね。片振りなども全く調整が外れているようです。

Dscf314752 う~ん、未だレストア方針について思案中です。部品取り機は多数付いて来ていますので、状態を良くすることだけを考えればそれは可能ですが、出来るだけオリジナル性も考慮したい。画像の三光本体を塗装することも考えましたが、費用とオリジナル性がネックとなる。最終的には、ご覧のような塗装の状態ですが、これはこれで、そのまま使用してシボ革のみを交換する案を採用しようかなと思っています。シボ革は、過去の修理時に剥離をされて粉々となっておりましたが、三光PENのシボ革は弱いということを知らなかったのでしょうね。海外のリペアマンでは、それだけの細かな神経も使わないのでしょう。そもそも、シャッターユニットを分離するためにシボ革を剥離する必要などないのです。

Dscf314877 取りあえずシャッターユニットのオーバーホールをしておきます。北米(かな?)にあった個体ですから、湿気によるダメージは少なく、シャッター羽根やレンズなどの状態も意外に良好なんですね。国内ものでは考えられません。特に消耗も不具合もありませんが、後ろのハウジングを留めるビス3本のうち、2本は脱落していました。この頃はネジロックが施されていないからです。組み込み式のスローガバナーは洗浄して組み込んでおきます。

Dscf314615 で、応急で動かしておいた時計ですが、あら、意外に止まらず動いていますよ。この頃のジャンク機は、仮に作動をさせても、まず夜明けは迎えられずに止まっているのが常です。スイス製はやはり優秀なんですかね。戦後すぐは、外貨の問題で腕時計の輸入が規制されていた頃で、中身の機械だけ密輸入をして、国内でケースに収めて販売された時計が多くあったようですから、その辺りの事情ものかも知れません。戦後の復興期は、中古の時計でも貴重で、時計屋さんのウィンドウに並べると、飛ぶように売れたようです。まだまだ、国産時計の信頼性は低く、舶来時計は高嶺の花だったのでしょうね。よくよく見れば、受け板にはコートドジュネーブ装飾が施されていますね。時間がある時にまじめに組んでみます。角穴車のネジが固着していますので556を浸透させてありますので、それの効果が出て来た頃に・・平行でレストアしているキングセイコーの新品針とモレラートの皮バンドを手配しました。楽天で今ならポイント5倍だったので。新品の風防ガラスはすでに入手していますので、暮れはKSを完成させるつもりです。

Dscf314911 さて、本題に戻って。オーナーさんとの打ち合わせで、塗装をするしないと二転三転しまして、結論は塗装せずにそのまま仕上げるということになったのですが・・シボ革を剥離してみるとね。レンズの状態があれほど良かったのに、ダイカストの塗装劣化が激しいですね。アルコールで拭き上げでいくと溶けてなくなってしまいます。そんな焼付塗装ないですよ。おまけにダイカストが腐食して粉になって落ちます。毛唐の汗は強すぎだね。しばし考えましたが、この状態でシボ革を貼ることも出来ませんので、今回は三光PENの個体数維持のためにサービスで塗ることにします。(数台のジャンク機もご提供頂いていますので)しかし、色合わせは適当ですよ。あくまでも母材の保護が目的です。

Dscf315155ダイカスト本体は劣化した塗料を剥離しましたが、腐食も進んでおり、表面は研磨してあります。トップカバーは洗浄済みです。摩滅もあると思われますが、梨地は細かくピカピカに光っています。駒数ガラスは新品を接着します。問題は樹脂のファインダーブロックです。この個体のオリジナルは落下により割れて欠損部分がありますので、片耳PENから調達しました。しかし、こちらの部品も、樹脂の劣化により表面が白く変色しており、一皮剥いて研磨をしましたが、樹脂の種類は不明ですが、すでに全体の材質に劣化が起きているようで、新しい樹脂のように平滑面に光ってくれません。この程度で妥協ということで・・

Dscf315054 今日の日中は寒かったですね。塗装をしていましたので暖房無しで過ごしていました。ダイカスト本体の塗装をしましたよ。時間を掛けた精密な調色は一切していません。勘で色を作ったそのままで塗りました。ちょっと青味が強かったです。まぁ、母材保護が目的ですのでご了解です。オーバーホールを終えていたシャッターユニットを組み込みました。左側のカバーは、海外でシボ革を乱暴に剥離されたためにキズだらけですね。私が剥離すると右側のようになります。

Dscf315275最近、三光PENのレストアが多く入って来ますが、初期の巻上げダイヤルカバーが痛んでいたり、欠落しているものが多くなっています。この個体も欠落していました。初期の熱カシメタイプは貴重となっており、レストアのネックとなっていますので、今回は、過去に複製した部品を塗装をして使用してあります。熱カシメタイプは、以後のタイプとは微妙に形状が異なるのですね。三光PENの場合は、その辺も拘りたいのです。今後は、グレーの純正色で製作をする予定です。

Dscf315335 シボ革を貼りました。片耳だけど三光ではない個体からの調達ですが、すでに材質は変化しています。洗浄したこともありますが、オリジナル裏蓋よりも明るいグレーになっています。本来は、三光PENの頃もこの程度の明るさであったと推測しますが、材質の劣化が進んだために、黄ばみが強くなっているのが現状だと思います。距離リングは実用を考慮して、m表示のものをセットしておきます。前面のFlash表示はftですので、里帰り機の距離リング付け替えと分かりますけど。

Dscf3155511_2

細かなパーツも汚れや腐食のままで組み込むのは気分がよろしくないので、丁寧に磨きます。駒数ノブのローレット谷部分に汚れが詰まっていますので、時計の修理では定番のファイバーペンで磨きます。ニッケルメッキを傷めず、光沢を甦らせることが出来ます。

Dscf315620_2 すでに分解を受けている個体は、ネジのスリ割りが痛んでいるものが多いですが、そのまま再使用はしたくないので、定盤でスリ割りを1本づつ修正をしてから使うようにしています。

Dscf3160841 いろいろ問題があった個体ですが、何とか完成にこぎ着けましたね。レストアの手は入れましたが、この個体の戸籍は守るように心がけましたので、いわゆる、ニコイチ、サンコイチのような幽霊カメラにはなっていません。三光PENとしての整合性はすべて持っている個体に仕上がっています。調子も非常に良くて性能は完全に復活しています。

Dscf315875

オーナーさんは、旧車の愛好ファンでもおありで、ご自身でも車のメンテナンスをされている方ですから、ごまかしの作業は通用しません。さて、どのような評価を頂けるでしょうか。輸出仕様でフィート機とされて海外に渡った個体が、数奇な運命を経て里帰りを果し、「車籍復活」です。愛娘さんもフジカミニを愛用とのことで、頼もしいかぎりですね。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


歴戦の勇士PEN-FT(B)

2011年12月18日 14時36分16秒 | インポート

Dscf313588 少し使い込まれて汚れたPEN-FT(B) #2799XXが来ています。不具合など、気になる点をご指摘頂いていますが、その中で、巻上げ10回程度で駒数カウンターが進まなくなってしまう。とのことでしたが・・あらら・・。すごいことになっていますね。駒数板のリターンスプリングを見てください。なにか、先日のセイコー10型のひげゼンマイを見ているようです。

Dscf313615 分解してみると、とんでもないことになっていました。どうしてこのようななるのか全く理解が出来ません。交換することになりますね。

Dscf313722 かなり汚れていたダイカスト本体を洗浄して、いつものように組立てて行きます。すでにモルトは貼ってあります。スプロケットの磨耗を点検してからクラッチを潤滑して組み込みます。

Dscf313822 オーバーホールを終えたシャッターユニットを組み込んでいます。特に問題のないユニットです。スローガバナーの作動が少しギシギシとした感じでしたのでメンテナンスをしてあります。ピンセット先の洗浄したロアーギヤにグリスを塗布してスプロケット軸にセットして、ギヤ列を連結させます。

Dscf313985 セルフタイマーユニットです。途中で作動が止まってしまうという状態でした。構造は時計に似ていますね。右側のコイルバネが香箱のゼンマイで、中央がガンギ車、左側がアンクルに相当します。分解、メンテナンスで快調となっています。

Dscf314011 問題の駒数板の復帰バネですね。一応、修正を試みてみましたが、ステンレスバネ鋼は一度癖をつけてしまうと元には戻せないですね。仕方がありませんので、右の良品を用意しました。しかし、リプロ部品は製作しておりませんので、数に限りがあります。ですから、不良品は無条件で交換してもらえるとは思わないでくださいね。少ない在庫をやり繰りしてお出ししているのです。大変な損失を出すなら、オールドファンのために、一つでも部品の再生産をしてくれると有り難いのですが、もとより無理な望みですので・・


珍しいゾーンフォーカスのオートハーフ

2011年12月15日 19時32分52秒 | インポート

Dscf313119 今日はね。胃カメラ飲んで来ました。私、初めての経験で、オリンパスの内視鏡のお世話になって来ました。あいにく、鼻からの予約が取れずに、口腔からのやつでしたが、まぁ、画像に写って一目瞭然ですね。すばらしい技術なんですから頑張って欲しいですね。

で、帰ってから始めたのはオリンパスではなくて、リコーオートハーフです。珍しいゾーンフォーカス機ですね。裏蓋や前面中央のプラ枠がグレーとなっており、ちょっと趣が変わっておもしろいです。問題は、ゾーンフォーカスのレンズが固着して回転しませんね。の表示がいかにも後付けの感じで微笑ましかったりして。ファインダーの曇り、お約束の裏蓋モルトの劣化などありますが、フリクションモーターは健在のようです。

Dscf313237 カバーを分離して様子を見ます。レンズはヘリコイドも渋いのですが、ファインダーへの表示をするピンを直接レンズ部のカムで押し上げる構造など、負荷の掛かる設計になっています。

Dscf313399 ヘリコイドグリスが変質硬化して固着しており外れません。溶剤を浸透させながら分離しました。ヘリコイドネジの加工も粗く、それもスムーズに回転しない原因です。レンズ自体はきれいですので、清掃のうえ新しいヘリコイドグリスを塗布して組立てます。

Dscf313444 ファインダーを清掃します。対物レンズはガラス製ですが、何故かオートハーフのレンズは清掃をしてもクリアーにならない気がします。PENはそんなことないのですが・・ハーフミラーは腐食がありますが、まぁ、いいでしょう。

Dscf313777うちの古いデジカメではうまく写りません。ファインダー内の距離表示はこのように出ます。その他、フリクションモーターのグリスアップをしておきます。

Dscf313952 トップカバーのファインダー保護ガラスですが、フレーム枠が正確な矩形ではありませんね。ファインダーからも左端に見えてしまいます。これは、PENでは、左側のスリガラス部分はサンドブラスト加工をされているのですが、オートハーフの場合は、乳白のフィルムを裏から貼り合わる構造です。その接着が正確でないためにフレーム左枠が斜めになっているのですね。フィルムの接着が甘い個体の場合は矯正が出来ますが、この個体はビクともしません。修正には、セレン枠の熱カシメを外さなくてはなりませんのでこのままとします。

Dscf313855 オートハーフのメンテナンスで一番面倒なのは、裏蓋のモルトの交換です。まずは、古いモルトをきれいに取り去って清掃をしておきます。モルトは全体を一体で切り出す方法もありますが、頻繁にご依頼がある機種ではありませんので、画像のように4ピースで切り出す方法を取ります。ファインダー用の開口部に注意してください。ハーフなのに縦型ではなくて横型ですね。ゾーンフォーカスの表示部が増えているからです。

Dscf314067 こんな感じですね。圧板もピカピカに磨いてあります。この圧板の取り付けラグの先端が少し曲げられて加工されているのは、組立易くて良いですね。PENは非常に入れにくいです。

Dscf314175 これで完成です。リコーの年表によれば、このカメラはOEM供給用に企画されたモデルだそうで、1963年11月の発売で価格は13.800円だったそうです。当時の貨幣価値からすると、お安くはないですね。3点ゾーンフォーカス、上部のダイヤルにはガイドナンバーが付き、セレン枠や裏蓋がグレー化されているため、普通のオートハーフとは違った印象があります。オートハーフファンは欲しい1台でしょうね。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/