今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO スピードタイマー+スイス製ムーブの巻

2015年06月30日 21時47分31秒 | ブログ

デジカメが違うので見にくくてすみません。以前にセイコー・クラウンのO/Hをされたオーナーさんから2個の時計が来ています。簡単にUPしておきます。この手巻きの時計はセイコー5328-5000となっていますが、中身の機械はスイス製の138001という機械が使われています。クォーツ時代になってから、スイスから機械を輸入してセイコーで組み立てたものらしいです。振ると短時間は動きますが、すぐに止まります。油切れでしょうね。

たぶん婦人用(女持ち)の機械ではないでしょうかね。小さくて組立しにくいので私は苦手です。それほど古い機械ではないので、部品の仕上げは今風の安っぽい感じです。

 

はやっ。文字盤の留めがネジではなく偏心カムのようで、それが緩めても抜けてこないという分解しずらす構造。流儀が違うのでやりにくいです。

 

どちらもワンオーナーですが、やはり大切に扱われていた個体は、同じ時を経過してもきれいですね。当時、アルバイトをして購入されたそうです。スピードタイマー6139-6031は今でも人気のモデルです。SSベルトも純正でこれだけでも価値があります。58秒で停止するという、このモデルには良くある故障で、技術解説書にも修理方法の記載があります。

プッシャーボタンに腐食がありますね。文字盤はきれいな方ですが、一度オーバーホールをされているのかな? ちょっとすり傷と小窓の変色。

 

小窓の針を抜くのは苦手なんです。

 

 

あら、香箱車の蓋が外れていますよ。これで動いていたわけですね。

 

 

クロノグラフは部品点数が多くて小分けで管理しないと間違えます。すべて超音波洗浄をしたところ。

 

各部の摩耗や腐食は少ない個体です。解説書の手順通りに組み立てていきます。

 

一応動く状態まで組み立てて作動を見ています。

 

 

素性の良い個体と楽観していたのですが、何故か受けに歪があって、ネジを締めると不調になる不安定な現象の解決に時間が掛かりました。文字盤と針を着けます。

 

ストップウォッチ秒針がどう調整しても0時ぴったりにならない。急速復帰をさせると緩み易いので、ここの軸は角型になっているため、最初に圧入された位置で針側の取付け内径が変形をしており微調整が困難なのですね。

洗浄をしたケースに機械をセットして自動巻き機構を取り付けます。

 

 

最後に回転錘を付けて組立は終了。

 

 

実用キズはありますが、ベルトもオリジナルで、ワンオーナーで大切にされて来たのが分かりますね。輸出を意識した大型のケースで、標準的な日本人にはちょっと大きくてなにより重い時計ですが、70年代の時代の流行だったようにも思います。6139の中では、最も人気のあるデザインだと思います。

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やや難ありの三光PENの巻

2015年06月26日 21時10分14秒 | ブログ

いわゆる三光PENですね。シリアル№は#1036XXとかなり初期の番号です。何度も分解歴があって、シャッターダイヤル、巻き戻しダイヤルなどの作動が非常に重い。駒数計の針は不動、絞り表示とクリックがずれる、等々、何となく怪しさが漂っている個体ですね。さて、内部はどうなっているのでしょう。

巻上げダイヤルカバーが欠落しています。当初はねじ留めタイプかと少し疑問でしたが、良く良く見ると熱カシメの足のみが残っていますので、初期タイプに間違いありません。幸い、スプールのクラックは無いようです。

 

裏蓋の底とトップカバー横にへこみがあります。角はまず出ませんが、修正をしてみます。

 

過去に何人の残念な方が分解したのでしょう? 駒数ダイヤルと駒数レンズのクリアランスを全く考慮していないので、ダイヤルとガラスが接触をして全く回転しない状態。少し考えれば分かるでしょ。カニ目ネジはみなさんの知識では「逆ネジ」と思われていると思いますが、残念でした。三光の初期は正ネジです。(巻き上げダイヤルネジも同じ)無理してカニ目を緩めようと、一生懸命に締め込んでいたのでしょう、カニ目孔が壊れています。元々、この頃は孔が非貫通の設計なので、余計に外しにくいのです。以後は貫通孔となりますが、加工が容易にはなりましたが、スプール軸が見えてしまう。設計者の米谷さんは、その点を気にした設計をされたのでしょう。しかし、組立現場からすると「組みにくい」となったのですね。

基本的なレイアウトは変わらないのですが、個々の部品については後年のPEN-Sなどと比べると幼稚な部品との印象を受けます。加工が洗練されていないのと、図面上の嵌合や寸法公差がかなりラフな感じがします。駒数ギヤの上下間には後年の製品のようなウェーブワッシャーは入りません。よって余計に駒数計の調整がシビアになります。

片耳吊環の角にへこみがありますが、このぐらいの年式になるとへこみがあって当然です。あまり神経質になることも無いと思います。

 

とにかく古いカメラはばっちいので、完全に洗浄をしてからです。

 

 

初期の駒数ガラスは成形の問題で、かなり歪があります。お約束のクラックも・・。しかし、これも特徴ですから交換はせず、キズの研磨をしておきます。

 

作業は接着剤の硬化時間の関係でファインダーから始めますが、あら残念でしたね。どうも樹脂の本体の材質の風化が少ないと思いましたが、このファインダーは後年のPENのものに交換されていますね。対物ガラス(2枚)は本来は樹脂製の頃ですが、ガラス製となっています。ファインダーの樹脂部品は一番、経年変化を受けやすいところです。たぶん強度劣化で割れたのでしょう。実用する以上仕方ないですよ。

長くなるので簡潔に。シャッターは古いだけあって、あまり調子は良くありませんね。すべて洗浄、組立をして行きます。

 

洗浄だけでは落ちない汚れの歯の部分を真鍮ブラシできれいにしてから組み込みます。

 

初期のスプールは滑り機構が異なります。板バネを内径に嵌めて滑りをコントロールする簡単な構造。バイクのドラムブレーキならさしずめ内部拡張式ですかね。

 

ここで予想外。当初、巻上げダイヤルカバーは変更後のネジ留めタイプと思っていたので、初期の熱カシメタイプの複製品を用意してありませんでした。慌てて作りました。ダイカスト本体の横から取付孔に挿入するタイプ。

で、このようになります。以後のネジ留めタイプよりグレーの色調は暗いので再現してあります。チャージのリンケージが摩耗で、2回に1回チャージミスをする状態。リンケージを曲げて調整するのですが、すでに曲げられているので、折れはしないかとひやひやです。

 すみません。今日の日曜日は久しぶりに作業を休んで自分の趣味をやらせて頂きました。ヤマハ FS1の復活作戦。まずガソリンタンクの錆落とし洗浄です。中にカムチェーンを入れてガシャガシャ半日振って漱いでも錆が出ます。相当ひどかったですね。最後に「花咲G」を投入して目下洗浄中。穴が開かなければ良いですけどね。

で、北海道のINOBOOさんからOMEGAのスピードマスターが来ていて、いいですねぇ。本物って感じがしますよね。私もいつかは欲しいです。キャリバーはETA 2890-2 cal1143 が搭載されています。歩度調整のご依頼です。

PENですが、昨夜の画像が1枚。ファインダーは後のオリンパス工場製となったPENからの流用ですね。三光の頃は、遮光カバーはアルミではなく、只の黒厚紙です。

 

残念ながらこの個体にはいくつかの疑問点があります。オーナーさんからは、「絞りのクリックがずれている」とのご指摘がある。確かに、強く回されるとずれてしまう構造ではあるが、この個体は一度分解をされて、緩み止めに接着剤が塗布されている。しかし、三光の頃にしてはレンズがきれい過ぎるのです。後期のPEN用レンズとFlash彫刻付(三光の特徴とされている)のアウターを組み合わせるための分解とも取れるのです。

遮光フェルトの接着と圧板の研磨をしましたが、この圧板も???。フックへの取付けバネ部が外されて変形がありました。まぁ、外すこともあるでしょうけどね。初期の圧板はフックの位置が異なっているものがありますが、この圧板は以後のタイプと同じです。

後ろ側はこんな感じ。

 

 

とにかく三光PENは古いので、個体維持のために善意で部品の入れ替えをされている個体もあるわけです。使えることが大前提ですからね。私のような者が余計な指摘をしなければ、すべて平和のような気もします。しかし、前回のPEN-FT(B)といい、オークションものに残念が続きますね。

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ブラック続きでPEN-FTブラックのはずが・・の巻

2015年06月23日 12時00分25秒 | ブログ

本物のPEN-Sブラックに気を良くして、次は程度の良さそうなPEN-FTブラックと思ったのですよ。最初はね・・シボ革はすでに剥がされて再接着をされていますが、この剥がし方。強引に剥がしてビニール地を破って前板側に残っています。(私の仕業ではありませんよ)これを見れば分解の素性が分かります。

ハーフミラーは汎用のミラーから切り出されたものに交換されています。いえ、これが悪いとは言いませんよ。

 

あ~、ダメだなぁ。トップカバーのシリアル№は#3281XXですが、本体はもっと古い、たぶん20万台初期です。リターンミラーユニットが前期型(リンケージ)そもそも一番右のボタンキャップは32万台ならシールに変更されています。

 

巻き上げレバーユニットの取付けネジが一度外されて傷になっていますね。ブラックの個体から外して移植したのでしょう。それにしても、こんなに傷をつけることも無いのに。ネジロックも塗布されていません。この個体は最近オークションで入手されたそうですが、20万台の本体に32万台のブラック外装を換装したものですね。カバーの状態は良い方で、32万台の本体を何故放棄しなければならなかったのでしょうね? 私なら32万台の本体を治しますけど、フィルムレールの腐食などがあったのかな?。残念ですがオリジナルの個体ではなくなってしまいましたね。

スプール軸を留めているネジが真鍮のスリ割ネジ。前期型の特徴です。

 

 

すべて分解洗浄をして組み立てに入っています。ご覧のようにスカッときれいになっています。巻き上げレバーの端部は何故こんなに削られているのだろう? 故意に研磨されています。レバーユニットの取付けネジ下に入る調整ワッシャーが取り去られているため、そのまま組むと巻き上げレバーが復帰しなくなりますのでストックから追加をしてあります。

シャッターの洗浄をして、各部の点検をして行くと・・コントロールレバーの軸受けナットが緩んでいます。ここは緩み易いところです。放置をするとシャッタースピードが変わらなくなります。

 

部品構成はこのようになっています。プーリーが組み込まれているのが味噌。

 

 

完成したシャッターユニットを搭載します。シャッター幕の軸受けは無給油のため多少の「かじり」があって回転抵抗が重い状態でした。電池室のリード線は新製しました。

 

何故かセルフタイマーユニットは本体に付属の変更前のユニットを使っているのに、レリーズのリンケージは後期型を使っている。(ブラックモデルのものでしょう)しかし、調整をすれば使えないことはありませんが、そのまま無調整で交換してあるため、画像のようにタイマーが途中で衝突して止まってしまいます。

セルフタイマーの改良前と後では地板も異なり、調整も異なるのです。そこで、当方の前期型のリンケージに交換します。セルタイマーレバーをブラックに交換したため、止まり位置が水平になっていませんね。調整がされていないのです。

この個体はフィルムカウンターが戻らない状態でした。原因は、ブラック用に巻上げレバーユニットに交換したため、裏蓋で抑えるレバーが本体と接触して作動を規制しているため。単に部品を交換すれば良いのではなく、すべて調整がされていない個体なのです。

セルフタイマーレバーの白色入れが何故か痛んでいたので入れ直してあります。レバーも水平に調整してあります。

 

32万台の本体を何故放棄したのか? 後期型ですから、それほど機械は疲労しているとも思えませんが、何とも残念な個体でした。

 

付属の20mmですけど、こちらは悪くはないですよ。持病は中玉の曇りと後玉の水滴状の汚れなのですが、後玉の汚れが出始めています。早めに清掃をしておかないとコーティングを侵します。

 

現存中では非常のきれいなレンズです。本体に装着して完成です。幸いオーナーさんは大切にしたいとのお言葉でした。

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リサイクルショップのPEN-Sブラックの巻

2015年06月20日 21時00分08秒 | ブログ

その前にと・・梅雨の晴れ間で夏の暑さが来る前にバイクを見てやります。ヤマハ・FS1ですが1969年ぐらいの生産です。このバイクより年下の読者の方も多くなったことでしょうね。私にしたら、ついこの間のことです。長期にエンジンを掛けなかったので、鋳鉄シリンダーが錆びてピストンが固着してからずいぶん経ちました。ダメ元でショックハンマーで打撃を与えて荒療治でピストンを離します。その後、1000番のペーパーでオイルを着けて研磨修正をしました。

エンジンを掛けようとタンクを確認すると・・あ~ダメだ。タンク内のガソリンが腐って錆びています。入院などでずいぶん長期間の放置をしてしまったようです。これではエンジンは掛かりません。「花咲G」でタンク洗浄しなければ・・

メッキのフェンダーやショックカバーなども錆が進行していましたので必死に磨きます。めっき屋さんに再めっき依頼かなぁ?

 

ハブは真鍮ブラシで磨いて、スポークとリムはビカールで磨きます。タイヤはミシュランのM38を履いてから走っていません。

 

意外にマフラーのメッキは丈夫なんですね。磨いたらピカピカになります。もう1本予備も持ってるし・・

 

さて本題です。リサイクルショップで購入して来たというPEN-Sブラック #1650XXです。本体は1961年5月の記録がありますが、シャッターは昭和38年1月の製造。38年は1963年ですから整合性が合いませんね。PEN-Sは1960年5月の発売ですから1961年表記は有りえますね。

で、オーナーさんが気にされていた、問題のブラックの真贋ですが、おめでとうございます。本物です~。シャッターは不動で、巻き戻しノブが欠落しています。

 

しかし、全体のコンディションは素晴らしいというところでしょう。Sのブラック塗装は、Wと違って劣化が少ないと感じます。個人的には時期的な問題で、塗装工場か塗料などが異なるのだと思っています。本体関係はすべて洗浄済み。これからファインダーのO/HとシャッターのO/Hをして行きます。

シャッターユニットを分解して行きますが、この#000番シャッターとしては、かなり初期の頃の個体ですので真鍮地板の酸化やホコリの混入が激しいです。例によって写っていませんが・・このシャッターは分解歴があるようです。

例によって、バネを曲げて細工がしてありました。正規に戻してあります。初期のシャッターとしては作動は悪くはありません。本体に組み込みます。

 

シボ革の接着。研磨をしておいたシャッターダイヤル(カム)をセットします。

 

レンズの分解清掃後、接着硬化を待ってトップカバーに取り付けます。接眼部のモルトの交換。駒数ガラスにはクラックがありますが、オーナーさんのご希望で再使用としています。

 

裏蓋も並行して作業をします。変質したモルトと接触していた上面端の錆が多いので、研磨後タッチアップをしておきます。モルトの交換。圧板の腐食が進んでおり、軽く研磨をして鏡面としてあります。

 

初期の個体はスプロケットはアルミアルマイト、スプールはグレーです。きれいになったと思います。

 

トップカバー横のネジはメッキタイプが使われています。ブラックモデルなので通常は黒塗装ネジのはずですが、分解機ですのでオリジナルか否かは判断できません。

 

巻き戻しダイヤルのレバーは良品と交換してあります。EE系の部品でも取り付けることは可能ですが、幅が僅かに細いので隙間が空きますのでPEN-S用を使います。本体とシャッターの製造記録ですが、私の資料を見てみると、#165033や#167136などシリアルが近い個体があって、いずれも本体の製造は1961年5月となっています。たぶん、今回の個体も同じロットで生産されたものと推測します。シャッター捺印は「61-1」となっています。通常の生産品はシャッターの完成月と本体完成月は同月か翌月が普通ですが、このブラックモデルのロットはシャッター完成後、約4か月後に製品化されたようです。ということから、この個体のシャッター「38-1」は後に交換された可能性があるようです。もちろん断定はできません。一般的には市販されなかったと言われるPEN-Sブラックのこの個体は、数奇な運命でリサイクルショップに流れ着いたのか? どちらにしても、救出されたオーナーさんのお手柄です。

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ローライフレックス・オートマットMXのメンテナンスの巻

2015年06月17日 21時24分11秒 | ブログ

と言ってもね。UPする予定は無かったので、殆ど終わっていますけど。以前に整備をしたPEN-FTと同じ方が所有されていたご遺品だそうです。かなり放置が長く汚れ放題でシャッターは不動状態でした。シボ革が劣化しており、剥離をするとバラバラになるのでレンズを外してのメンテナンスとしてあります。反射ミラーも腐食と汚れが進んでいます。

ピントグラスも汚れが激しいですので清掃しておきますが、取付バネの片方が錆ついており、途中から折れています。仕方ありませんので分離せずに清掃をします。

 

前面を押してもマグニファイヤーが固くて出て来ませんでした。

 

 

画像右のダイヤルがシンクロコンパー1/500までのシャッターダイヤル。左が絞りダイヤルで窓に表示が出ています。

 

向かって右下がこのモデルの名称となったシンクロMX切り替えレバー。撮影レンズはツァイス・オブトン・テッサー1:3.5 f75mm ビューレンズとも清掃できれいになっています。

 

左下のシャッターボタンには機械式のロック機構が付いていますね。

 

 

内部もきれいです。レンズも清掃しました。

 

 

いつも感心するのが裏蓋のロック機構。精密な動きのギミックです。放置のため外観のアルミアルマイト部分の劣化が目立ちますが、機械の程度は悪くないと思います。これからも長く使えますね。

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